13:感じるままに
男の子の両手は、子どもらしくふくふくとしていて、さわり心地がすごくいい。何度か手のひらをひっくり返し、親指と小指をそれぞれ握る。
「頭がかたい大人には、実際にしてみせたほうがよかろう――いいか、素直に。それがなければ、これに意味はなくなる」
男の子は目をつぶり、額を私の手に押しあてた。
あたたかななにかが、男の子がにぎった手から体に流れてきた。血管をとおり、循環し、内蔵のすみずみへ、足先へ、ゆっくりとしかしはっきりとそのあたたかな流れはとぎれずに。
唐突に。私は目が熱くなった。ぐっと目頭に熱が集まり、しずかに涙が流れた。
「いや。なによ、これ。私に、なにしたのよ」
なんでとまってくれないのよ!
ぐっと目をつむって流れる涙をとめようとしても、まったくとまってくれない。この年でこんなに泣くなんて、恥ずかしい。
私がぽろぽろ流れる涙をとめようと四苦八苦しているのに、男の子は気づきもせずに、その行為をやめてはくれない。私がこの手をはらえば、きっとこの不思議な現象はとまるだろう。無理矢理手をにぎりなおし、またするようなこともしないとおもう。
けれど、なぜだかこの小さな手をはらうことは、できなかった。
「ふむ、お前はどうやら、わしとの波長が合いやすいようだ」
ささやくような小さな声。「少し……おさおねばならぬか」私の手をにぎる男の子の力が少し弱くなる。けど、私の中を流れるそれの強さはかわらない。
男の子のちぐはぐな長さの髪の毛が、しずかに宙にうかんだ。髪先がゆらゆらと水中をゆれるように動きだした。
「な、な、な」
言葉にならなかった。
現実ばなれしすぎなこの現象は、私の思考を停止させるには十分すぎるものだった。
「いまわしは、お前にわしの魔力を流しておる。親指から体内を血流にのって流れ、小指からわしの体内にもどるようにな。しかし、お前はわしとの同調具合がよすぎ、いくぶんかは、涙といっしょに排出されておるのだ。さすがにもったいないので、わしなりの形で回収させてもらっておる」
男の子が「少々明るすぎるな」とつぶやいたと同じくして、パチンと部屋の電気が落ちた。




