1話 吉兆転調
初書きのため下手くそな文章です。誤字脱字もありましたらすいませんがそっと教えてください。
「これからクラス委員長と副委員長を決めたいと思いますが…誰か立候補者はいますか?」
そう1年3組の担任であり女性教諭の英がクラスに声をかける。
「山口おまえやれよ」
「んなめんどいことすっかよ」
ヒソヒソとみな話し、名乗りを上げる生徒はいない。
その様子に英は小さくため息をついた時だ。
「はーい。誰もいなさそうだから私やりますよー。」
「あら、門木さん」
「門木まじかよ」
「お前じゃ無理無理」
あんたらよりマシでしょうがと男子たちの揶揄いに鼻を鳴らして笑みをたたえた女子生徒は門木茉乃だ。
門木は和やかな笑みのまま話を続ける。
「ちなみに副委員長も立候補する人がいなさそうなので、私から1人推薦したい人がいるんですけどーー枕木さんはどうでしょうか」
「びくっ!?」
一番後ろの窓側の端席に座っていた枕木胡羽は突然の名指しに大きく身体を揺らした。
「えーー」
「確かに適任じゃね」
「枕木さん真面目だし」
「ね!一緒にやろうよ枕木さん!」
門木は目を輝かせ胡羽を見つめ、他の同級生達も期待の目で胡羽を見た。
「ーぐっ。…やります副委員長…」
「門木さんに枕木さんありがとう。助かるわ。」
「枕木さん責任感あるね」
「流石優等生だな」
「ほんといい人だよね、枕木さん」
担任も同級生も口々にそう胡羽の副委員長立候補を讃える中、胡羽は気恥ずかしげな笑みの下で思った。
ーーいい人、ね
ーーその言葉は賞賛のはずなのに
ーーそれなのに
(はぁ…また自分の首締めちゃった)
ーー酷く憂鬱で息苦しく感じる時がある
*
*
*
「それじゃ私部活あるから先に行くね!」
胡羽が声をかけようとしたが門木はそそくさと教室を出て行ってしまった。
クラスの提出物を取りに行くため門木に黒板の清掃をお願いしようとしたのだが、今日も今日とて行かれてしまった。
胡羽は仕方ないと小さくため息をつき、黒板の清掃に取り掛かる。
胡羽と門木は中学時代からの間柄だ。
門木は明るくコミニュケーション能力に優れ、誰とでもフランクに接し、リーダーシップがある。反面、胡羽は控えめな性格で人前に出るのは苦手なタイプであり、お互い正反対の性格のため接点はそれほどなかった。
胡羽は門木の自分にはない明るさに好感を持っていたが、正直何か一緒にすることは極力したくないと考えていた。
それが今のいい例だ。
門木は中学の時から色々やると名乗り出てはいたが、その実ほとんどのことを自分ではやらずに周りにやらせていたのだ。
そしてその際には胡羽は格好の餌食になっていた。
皆の前で名を挙げられれば断ることもしづらく、また胡羽の断れない性格も理解していたのだ。
(まぁ…通知表に載るからいいんだけどさ)
クラス活動を統率、また積極的に行う立場は受験や周りからの評価を良く保つためには重要だと胡羽は誰よりも理解していた。
胡羽は黒板の清掃を終えると今度は大量のプリントを持って教室を出た。戻るのは面倒くさいという思考から全て持ってきたがいかんせん不安定だ。
そんな中で廊下の曲がり角から誰かが出てきたため、少しよろついてしまう。
「ー胡羽ちゃん?え、この量大丈夫?」
そう声をかけたのはーー小学生からの幼馴染、というより胡羽の認識では腐れ縁の日野光哉だった。
「俺手伝うよ」
そう日野が穏やかな笑みを携えて手を差し出すが胡羽はするりとかわす。
「だ、大丈夫だよ、みつく…日野くん」
胡羽は足早にそこから離れる。
日野の伸ばした手と寂しげな表情が胡羽の背を名残り惜しく追っていた。
「お、いた光哉。一緒に部活行こーぜ」
「ーうん…行こうか」
胡羽は職員室が見え、ようやく足取りを緩めた。
(あからさまに避けちゃった、な)
胡羽は日野に顔を合わせずらい事情があるのだ。
それはずっと消えることのないーーいや。
消してはいけない戒めがあるからだ。
胡羽は一呼吸し、プリントを抱え直して職員室に入る。
*
*
*
ーーボア・ヘンリッジご令嬢殿、
ーーあら嫌だ聞き間違いかしら…私の名はボア・ミシュナ・ヘンリッジですよ侯爵殿。
ーーふん!あの女の名をミドルネームに据えるとはどうかしておる。
ーーあら。侯爵殿はお好きだと思なたのですが…だってこのミドルネームの女にたんまりと貢いでくださっていたようですし…正妻様よりも
ー!?
(うわぁ不倫かー…すけこまし虫けら侯爵め)
胡羽は眉間に皺を寄せながら次のページを捲る。
胡羽が呼んでいるのは『令嬢と華たち』という小説だ。
ネリサ・アーシェットという亜麻色の髪にグリーンの瞳を持つ心優しいヒロインが主人公であり、ヒロインを中心に様々な人物達の人間模様をハートフルに描いた作品だ。
胡羽は図書館にあった、お勧め図書でこの本を手に取ったが魅了されてしまい現在3巻目に突入しているが、特に読む牽引力になっているのがボア・ミシュナ・ヘンリッジという悪役令嬢の存在だ。
ボアは物語では自分勝手な振る舞いと自分が優位に出ようとして相手を嵌めようとする狡猾さからかなりの嫌われ役なのだが、逆に胡羽は愛さずにはいられないキャラだと感じた。
思ったことをここぞとばかりに言ってくれ、相手を蹴落とす時程に立ち振る舞いは上品で高尚で、次に何をしてくれるのかと毎度ボアへの期待を募らせ、その動向を追ってしまう。
(あぁ…私もこんな風にガツンと言えれば…)
ーー先の事業を自分の功績のように鼻にかけていらっしゃいますけど…私がいなければ貴方はただの目立ちたがり屋なだけの道化にも等しいのに
ーー侮辱するのも大概にしたまえよ!
ーーあらごめん遊ばせ。まーでも…そう顔を赤くして怒鳴られるということは…心当たりという赤い的にあててしまったのかしら。だとしたら、ずいぶんと当てやすいプライドをお持ちのようで。…お可哀想に、苦労されそうですね
(かー!こんなこと言ってみたい、)
「ーー枕木さん」
胡羽ははっと顔を上げる。
そこには倉門雅人という2年の先輩が佇んでいた。
倉門は眼鏡の越しから凪いだ涼やかな瞳を胡羽に向け薄い唇が小さく動く。
「これから委員会で使うから、悪いけど違うところで呼んでくれる?」
周りを見れば何人かの生徒が入ってきており、気づかず読んでいたことに気づく。
「ご、ごめんなさい。夢中になっちゃってて」
「全然大丈夫だよ…その本、面白いよね」
「え…」
胡羽はまさか倉門が読んでいるとは思わず唖然とした表情で倉門を見たが、別のテーブルへと歩いて行ってしまったため何も聞くことも出来なかった。
胡羽はさらに人が入って来たのを視界に捉え、逃げるように貸し出し簿に著名して、足早に図書室を後にする。
(倉門先輩と対面で話すの初めてかも…)
そう。胡羽側は強く認知していた。
何故なら倉門が胡羽の火の玉ストレートな推しタイプだったからだ。
クールで知的な印象で、何より眼鏡。胡羽は何よりも眼鏡に弱かった。
(ーん?でも先輩に苗字認知されてた?…話したことあったけ?…あーでも図書委員だから貸し出し簿とかで覚えられてたのかな、最近よく借りに行ってたし)
推しに認知されてるとかなんだか畏れ多いななんて真琴はるんるんと嬉しげに歩いていたの、だがーー
「じゃあ枕木さん。あとよろしくねー」
「え、ちょっと待っ」
がちゃん
「ーはぁ」
その日の放課後。晴れやかな気持ちは一変してどんより曇り空になる。
またも黒板清掃及び提出物を放っておかれたまま門木に行かれてしまった胡羽はどっさりとまた提出物を抱えて廊下を歩いていた。教室に戻るのも面倒で自身の手提げ鞄もリュックのようにして持っていた。
(あーもう言っちゃおうかな今度ーー)
流石に鬱憤が溜まってくる。
胡羽の性格は元来お人好しではないと自身で感じている。
どちらかと言えば等価交換が合に敵うと思うタイプであり、やりがい搾取ダメ絶対マンなのだ。
「ーー目立ちたがり屋の道化師。鼻にかけてないで自分も、」
ガッ
ブツブツと小言を言っていた胡羽の視界はぐらついた。
足を何かに取られたのだ。
ーえ
その先は階段だーー
胡羽は頭への重い衝撃と鈍い痛みに意識を飛ばす。
*
*
*
「ーーいっ…何?…頭が痛い…」
胡羽は長い黒髪を肩に撫で落としながら起き上がる。
「ーあぁ…昨日落とされたのよね。あーあの女。後でただじゃおかない」
「ーそれにしてもどこよここは…私の部屋じゃないわね」
白いベッドから立ち上がった胡羽は近くの洗面の鏡を覗く。
「はぁ?」
そして鏡の中に映る胡羽の顔をした誰かは驚愕の表情を浮かべたのだ。
悪役令嬢の魅力に最近気づき始めて、衝動的に描きました。
続けて書けるかは怪しいですがゆっくり書き進めようと思います。




