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さっちょんの苗字を初めて出しました。(名前決めたのは最近ですけど)
さっちょんは佐々 知彩里【さっさ ちおり】、よっちんは吉木 佳誉【よしき かよ】です。
あだ名がどう変遷していったのか気になる……。
ちおりん、さっち、さっちお、さっちょ、さっちょん?
よっしー、かよちん、よっちん?
いろんな呼び方ありそう。
「……どうした?」
『たまき?どうかした?』
立ち尽くしたままのたまきに、電話の向こうの心悠と梧が、同時に心配した声を上げた。
たまきはハッと我に返り、
「あ、ごめん。今戻るね」
そう言って電話を切り、梧を見上げる。
「……大丈夫か?」
梧の顔は、たまきを心配して不安そうだった。
梧にとってはいつも通りでも、梧に恋人がいる—————のかもしれない—————と知ってしまったたまきにとっては、ただ苦しくて、申し訳ないことだった。
たまきの存在が、梧の幸せを、邪魔しているんじゃないだろうか。
一瞬、泣き出しそうに込み上げる感情を、俯いて唇を噛んでこらえた後、たまきは再び顔を上げ、笑う。
「すみません、梧さん。私……戻らなきゃいけないので……」
持っている材料を軽く持ち上げて言うと、梧はまだ心配そうな顔のまま、
「あぁ、そうだな……」
と、相槌を打った。
「じゃあ……」
そう言って軽く俯き、たまきは梧の横をすり抜けようとした。
だが、梧がそのたまきの腕を軽く掴んだので、弾かれたようにたまきは顔を上げる。
不意打ちに、たまきは表情がうまく作れなかった。今、どんな顔を見せているのか、わからない。
梧が眉根を寄せて、目を見開く。
「…………行かなきゃ…………」
たまきがかすれた声で言って俯くと、僅かに梧の手に力がこもったが、
「……少し見て回ったら、君のクラスに顔を出すよ」
梧はそう言って、一瞬の躊躇を指先に残しながら、腕を撫でるようにゆっくりと手を離した。
たまきは俯いたまま、返事をせずにその場から離れた。
来ないでほしいとは言えなかった。……正直に言うと、離れたくないとさえ、思った。
たまきは、そんな自分が……嫌だった。
―――――――――――――――――
たまきは教室に戻るまでに何とか気持ちを切り替えて、笑顔で教室に入った。
「ごめん、遅くなって」
心配そうな顔の心悠の横をそう言ってすり抜け、すぐにバックヤードに行ってしまう。
心悠はすぐにでも追いかけたかったが、「注文お願いしまーす」というお客さんの声に、仕方なくそちらへ向かう。
「ごめんね、冴島さん。あちこちおつかい行かせちゃって」
「ううん、大丈夫。これで足りるかな?」
「足りる足りる。ありがとね!」
「ええと、それじゃあ、何作ればいいかな?」
たまきはあたりを見渡して、今入っている注文のメモに目を通し始めた。
「あ、いいよ。冴島さん休んでて」
「え?大丈夫だよ。みんな忙しいし」
「ううん。私たちもみんな、交代で休憩入ってるからさ」
「そーそー。準備の時からたまきちゃん、ずっと動き回ってるじゃない。疲れたでしょ?」
調理班のメンバーが次々とたまきを労い、椅子を持ってきて座らせた。
「……これ、俺が作ったヤツ、ちょっと焦げちゃったけど、食べて」
そう言って、少し焦げたパンケーキに生クリームをたっぷりかけたものを差し出して、親指を立てる。
たまきは差し出されるままそれを受け取り、驚いた表情で、笑顔のメンバーを見渡した。
別に感謝されるためにやっていたわけではなかったし、梧のことを思い出したくなくて忙しくしていただけだったのだけど、みんなの気持ちは素直に嬉しかった。
「……あ、ありがと……」
たまきは少し照れながらお礼を言って、「いただきます」と言うと、パンケーキを食べ始める。
そこへ、さっちょんがバックヤードに顔を出して、休んでいるたまきを見つけ、
「あ、良かった。たま休憩してるね」
と、ニカっと笑った。
パンケーキを頬張りながらたまきが頷くと、さっちょんの表情が次第にニヤニヤとし始め、
「イケメン王子が戻ってきたら、ゆっくり文化祭、回ってきていいからね?」
と、耳打ちした。
たまきは途端に青ざめ、むせてせき込んだ。
かろうじて口の中のものは吐き出さなかったが、のどに詰まりかけて胸を叩くと、気づいたクラスメイトが慌てて水を持ってきて、「大丈夫!?」と顔を覗き込んだ。
その子がパッとさっちょんの方へ顔を向けると、
「佐々さん、何かした?」
と、疑いの視線を向けた。
さっちょんは激しく首を横に振り、「何もしてないよぅ」と、弱々しい声で答えて、たまきに向かって「何もしてないよね?ね?」と、同意を求めた。
たまきは水を飲んで口の中のものを飲み込み、さっちょんの言葉に頷く。
頷きながらも、気は重たかった。梧の気が変わって、戻ってこなければいいと思いながら、気づかれないようにため息をついた。
――――――――――――――――
梧がたまきたちのクラスに戻ってきた。
入口から覗き込むと、よっちんがそれに気づいて笑顔になる。
ちょっと待っていてください。とジェスチャーで示すと、すぐにバックヤードに入っていく。
そのやり取りに気づいて、心悠が梧の方を見た。視線が合うと梧は心悠を手招きする。
心悠はホールの様子を確認しつつ、梧の方へ近づくと、「……たまきのことですか?」と察した様子で言う。
梧は頷き、
「たまきの様子がおかしい気がする……。何かあったのか?」
と、声をひそめた。
「……梧さんもそう思います?……たまきは何も言わないんですけど、最近張り切ってたし……。張り切るのは良いんですけど、空元気って言うか……」
顎に手を当て、眉根を寄せる心悠に、
「そうだったのか……」
と、ため息をついた。
やがて、バックヤードからよっちんとさっちょんがたまきの背中を押しながら出てきた。
「い、いいよ。みんな忙しいし、手伝いたいから……」
お客さんの様子を気にしつつ、たまきは小声で拒否しながら二人を押し返すが、多勢に無勢だ。
「何言ってんの。文化祭見て回らずに終わるつもり?」
「そーだよ。みんなだって交代で見に行ってんだからさ、たまも行っておいで」
「え、あ、じゃ、じゃあ、みんなで回ろうよ」
「私らは、私らで回るから」
「お邪魔はできませんて」
言っているうちに、たまきは梧と心悠の前に押し出される。
まだ、心配そうにたまきを見つめる梧の視線を受け止めきれなくて、顔を逸らすと、心悠と目が合う。
心悠もまた、心配そうな、訝し気な視線をたまきに向けている。
「……気分転換してきなよ」
静かな声で心悠がそう言うと、「ほら、こはもそう言ってるし」と、最後のひと押しで、たまきは梧の胸に飛び込んでしまいそうなほど近づいた。
恐る恐る、たまきが梧を見上げると、眉尻を下げて微笑んだ梧が「……行くか」と、言った。
振り返って三人の顔を見ても、どうにも断れなさそうな雰囲気に、たまきは俯きながら「……はい」と返事をした。
ニコニコ顔のよっちんとさっちょん、心配顔の心悠に見送られ、たまきは梧と並んで歩きだす。
「君の中学の時も、賑やかだと思ったが……。高校になると、また賑やかさが違うな。一般の人の人出が違う」
梧は人混みからたまきをかばうように身を寄せながら、話題を振ってくれた。
たまきは、少し距離を保ちながら、梧にどう接したらいいかわからないまま、ろくに返事もできない。
梧はちらっとたまきを見下ろすが、俯いたままのたまきに、軽く息を吐いてからその手を取った。
「えっ、」
突然、手を握られて驚くたまきに、梧はその手を引いて少し早足で歩くと、人混みを抜けて、人通りの少ない階段の方へ出た。
梧はたまきから手を離し、その手でたまきの額に触れる。
たまきは首をすくめて息を詰めた。
けれど、梧の大きな手が額を包みこんでいると、心地よくて、たまきはほうっと息を吐いて目を閉じる。
「……熱はなさそうだが……」
梧がそう呟いて額から手を離すと、たまきは目を開けて、名残惜しく、離れていくその手のひらを見つめた。
梧がたまきの両肩を掴んで身をかがめ、顔を覗き込んで、たまきは我に返った。
たまきはわずかにあごを引いて距離を取ろうとするが、梧の手は力強く、瞳はまっすぐにたまきを捉える。
「……無理をしているんじゃないだろうな?ちゃんと寝ているか?」
その表情は、僅かに怒ったようなものだった。
梧の真っ直ぐな心配が、痛いほどに温かい。たまきは彼を見つめたまま、縋りたい衝動を押し殺すように、ひどく困ったように視線を下げた。
何も答えられない。何をどう伝えたらいいのかわからなかった。
答えないたまきに、梧はため息をついて、肩から手を離し、体を起こす。
そのため息を聞いて失望されたのかと思い、たまきはパッと不安げに顔を上げた。
けれど、梧は真剣な顔つきで「どこか休めるところを探そう」と、あたりを見渡している。
その横顔を見てほっとしつつ、……嫌われていいと思いながら、いざとなると臆病になる自分にたまきは嫌気がさした。
離れなければ、いけないのに。
そう思って再び俯く。
梧は、たまきの思いつめた表情に気づいて、その頬にふと手を伸ばした。
たまきは揺れる気持ちの中で、その手を見つめながら、受け入れるように軽く目を閉じる。
ふと、その瞼の裏に、ホテルの前で笑顔を交わしていた梧とあの女性の様子がよぎった。
照れたように微笑んだ梧の表情と、それを優しく見つめる女性の瞳を思い出して、たまきはハッと目を開く。
「……だめっ!」
声を上げて、思わず、その手を払った。
たまきは、しまったと思って顔を上げ、梧の顔を見た。
梧は、たまきの拒絶にひどく驚いた表情で固まっている。
「……あ……」
たまきの顔が青ざめていく。
ゆっくりと後ずさり、「……ごめんなさい」と呟くと、踵を返して逃げるように走り出す。
梧は、突然のことにたまきを追うこともできず、振り払われた手のひらを見つめたまま、呆然とその場に立ち尽くした。
――――――――――――――――
どうしたらいいかわからずに廊下を走り抜けていると、誰かの肩にぶつかった。
たまきは振り返って「ごめんなさ……」と言いかけたところで、「たまき?」と相手に名前を呼ばれた。
相手は心悠だった。
「どうした!?」
泣き出しそうなたまきの顔を見て、心悠はすぐにたまきに駆け寄る。
「……こはる……」
たまきはその心悠の胸に額を寄せた。
「なに?どうしたの?……梧さんは?」
それを抱き留めながら、心悠が訊くと、
「どうしよう……、私、ひどいことしちゃった……」
と、震える声で呟く。
たまきの脳裏には、ひどく驚き、ショックを受けた梧の顔が思い出される。
「え?」
その時、急に膝に痛みが走り、たまきは足に力が入らなくなって、そのまま崩れ落ちるように心悠に持たれかかった。
「ちょ、ちょっと!たまき!?」
心悠は慌ててたまきを受け止めようとしたが体勢を崩し、通りかかった生徒に助けられて、ひとまず近くの教室に移動した。
そこはお化け屋敷のお化け役の休憩所で、廊下側の窓は塞がれ、人の出入りはほとんどなかった。
外を見れば、本降りになった雨が激しく窓を打っている。
その教室の隅を間借りし、心悠はたまきと向き合って座ると、その両手を握った。
「どうしたの?……いったい何があったのよ」
はらはらと涙をこぼすたまきに、心悠は静かに訊いた。
たまきは止まらない涙に声を詰まらせながら、
「……見たの」
と、言った。
「見た?」
心悠が首をかしげる。
たまきは目を閉じた。それでも涙は溢れてくる。
「……心悠と、出かけた日……。……梧さんが……女の人っ……居るとこ」
時折込み上げる涙でしゃくりあげ、途切れ途切れに答えると、心悠が「えっ?」と声を上げた。
「それってどういう……。いや……きょうだいとかじゃなくて?お姉さんとか、妹さんとか……」
たまきの言っているのは、梧が恋人とかそういう人と一緒にいたという意味だろうとは思ったが、心悠の目から見て、梧がたまき以外に親しくしている人が居るとは思えない……いや、思いたくなかった。
だが、たまきは首を横に振る。
「……一人っ子……って……言ってた……」
心悠は言葉に詰まった。
親戚とか友達とか、仕事先の人とか、いろんな関係が思い浮かんだけれど、どれを言っても慰めになる気がしなかった。
たまきは顔を覆うと、体を折って突っ伏した。
「……すごく……お似合いだった……。私なんか……」
たまきは肩を揺らし、荒い呼吸を繰り返しながら泣いている。
心悠はたまきの背中を優しくさすった。
普段、たまきと居る梧の様子や、ついさっき、たまきのことを心配していた梧のことを思い出すと、たまきの言っていることをすぐには信じられなかった。
だけど、ここまで思い詰めている様子を見れば、たまきにはそう見えたのかもしれない。
「……梧さんはなんて言ってたの?恋人だって?」
「…………聞け……なかっ……た……」
それもそうか……と、心悠は自分の浅はかな質問に目を閉じた。
「……じゃあ、今は、何があったの?」
それでも心悠は平静を装いながら、訊いた。
たまきは、また激しくしゃくりあげながら、
「……梧さんの……手……、振りはらっ……。私……、最低だ……」
そう答えた。
たまきの震えを手で感じながら、心悠の胸が、たまきに共鳴するように締め付けられるように痛む。
好きな人に恋人が居るかもしれなくて、だけど優しくされてどうしたらいいかわからなくて、自分がとってしまった拒絶の態度が、相手を傷つけたんじゃないかと、たまきは自分を責めている。
優しいたまきらしくて、いじらしくて、そのたまきに何もできることがない自分が悔しい。
「……でも……、これで……いい。……嫌われなきゃ……、離れなきゃ……」
わずかに、たまきが体を起こした。
心悠は自分の胸が引き裂かれそうなくらい、その言葉が痛かった。
「……なんで?嫌われなくたっていいじゃん。梧さんだって、謝れば許してくれるよ」
「……でも……、梧さん……優しいもん。……また、私のこと……心配して……、私も、辛い」
顔を上げ、目をはらしたたまきが、伏目がちに呟いた。
心悠は、また何も言えなかった。
何でこんなことになったんだろう。
あんなにうまくいきそうだったのに、本当に梧には恋人がいるの?
だとしたら、たまきに対して優しくしないでと思う一方で、たまきみたいな境遇の子を、大人なら放っておけないのかもしれないとも思った。
梧を責めるのも筋違いなのかと迷う自分もいる。
いや、でも、もし本当に恋人がいるんなら、あんなに甘い視線で、たまきを見つめるのは反則じゃないか。
たまきを抱き寄せつつ、心悠もどうしたらいいかわからずに困惑していた。
――――――――――――――――
梧は、追うタイミングを逃して、立ち尽くしていた。
たまきから拒絶されるとは思っていなかった自分が、心底、馬鹿だと思った。
—————いつから……
梧は胸中で呟く。
—————いつからたまきは、我慢していたのだろう。
振り払われた手で、顔を覆う。
ひどく冷たい自分の手が、自分のものではないようだった。
たまきに対する梧の行動がたとえ嫌でも、優しいたまきは言い出せなかったのではないか。
それとも、大人の男性である梧のことが怖くて言い出せなかったか。
自分は、いつから勘違いをしていたのだろう。
梧は出口に向かった。
たまきを追いたい気持ちが、ないわけではない。
だが、今追いかけても、たまきは喜ばない気がした。
重い足取りで玄関までたどり着くと、外の雨は激しくなっていた。
もちろん、傘など持ってはいない。
梧はしばらく空を見上げた後、車までの間を走ることにした。
車の近くまで走ったところで、ふと梧はキーを確認しようとポケットを探り、指先に触れた箱に気づいて、足を止めた。
たまきの様子がおかしくて、すっかり忘れていた。
その箱を、ポケットの中で握り締めながら、梧は雨に打たれた。
浮かれた自分の、愚かさが胸に突き刺さる。
たまきのことに、何一つ気づいてやれなかったくせに、こんなものを用意して、どういうつもりだったのだろう。
たまきから離れなければならないとわかっていて、真逆の行動をとった自分に嫌気がさした。
梧はゆっくりと車に近づいて、びしょ濡れのまま車に乗り込んだ。
そして、握り締めたプレゼントの箱を、ダッシュボードに仕舞い込む。
もう、渡すことはないだろうが……、捨てることもできない。
滴る水をそのままに、梧はハンドルを握ったまま、しばらく動けなかった。
――――――――――――――――
たまきは涙も落ち着き、立ち上がることも問題なくできた。
もう大丈夫だから戻るとたまきは言ったが、心悠は大事をとって保健室に連れて行った。
保健室の先生には、たまきの病気のことは伝えられていて、たまきの主治医とも連絡が取れるようになっているから、何とかしてくれるだろう。
それに、泣きはらした顔もひどいし、足も心配だから帰りまで休むように言った後、心悠は保健室の先生にたまきを任せ、教室に戻りながらよっちんに電話をかけた。
「ごめん、よっちん。……たまきなんだけどさ、なんか……膝が痛くなっちゃったみたいで、一瞬立てなくてさ」
『え!?大丈夫なの?』
「うん、今は歩けてる。けど心配だから、とりあえず保健室の先生に任せた」
『……わかった。……イケメン王子は?』
「あーうん、一緒に回れなくなっちゃってさ。それ、たまきめっちゃ気にして凹んでるから、しばらく梧さんの話、たまきの前で出さないでもらってもいい?」
『マジか……。言っとく。……たま、張り切ってたもんね。ごめん、うちらもはしゃぎ過ぎたかも』
「それが原因かはわからないよ。私も、たまきにとって唯一の文化祭を、楽しませてあげたかったから、止めなかった」
心悠が、悔しさをにじませた声を出す。
たまきがどこかおかしいことに気づいていたのに、せっかくの文化祭に水を差すのは悪いと思って、深く追求しなかった。今になって思えば、食い下がってちゃんと聞くべきだった。
……聞いたからと言って、何ができたのかはわからないけど。
『こはは悪くないよ。様子がおかしかったの気づいてたじゃん?あれを流さないで、私らもたまのこと、ちゃんと休ませるべきだった。ごめん』
「よっちんたちは悪くないよ。……カフェはどう?」
『だいぶ空いてきてる。もう終わりかな。外もだいぶ雨激しくなってきてるらしいし、これから来る人はいないんじゃないかな』
「わかった。私も今戻ってるし、着いたら片付け始めよっか」
『うん、そうしよ』
心悠は電話を切った後、ため息をついた。
梧のことを確認したいが、心悠は梧と直接連絡する手段がない。
手段があったとしても、ストレートに恋人がいるのか聞いていいものかわからなかった。どうしてそんなことを訊くのかと問われても、たまきが梧を好きだからとは、勝手には話せない。
事情を知っていそうな人に聞くのが一番いいのだが……と、心悠は頭を掻いた。
以前、たまきの手術の時に手紙を託した時は、紫露経由でお願いした。だが、その仲介役の紫露とは、最近連絡が取れていない。
この間、心悠から”優勝のお祝い、一言くらいないんか~い”とメッセージを送ったが、返信は来なかった。パブリックビューイングには来ていたという話だったから、一言ぐらいあってもいいんじゃないかという茶化しだったが、紫露は乗ってこなかった。
「……肝心な時に、役に立たないんだから」
心悠はもう一度、深くため息をついたのだった。
来週から残業が入りそうなんで……。こんな展開で間が空きそうでごめんなさいです。
が、頑張る。私も書きたい……。




