あーるー晴れたーひーるー下り
現場に続く道。
俺たちは馬車に乗って移動してた。
そして、俺の対面にはアリシアがいる。
意味がわからない。
危険な目にあった経験のあるアリシアに魔素を吸収させ安全性を上げるなんて言ってるが…。
んなわけあるかい!
という事で、本当の理由を聞いて歩いたら…。
北辺境伯のご子息であられられる、ヴァレッグ様のワガママだった。
バカなの?死にたいの?
問い詰めたい。
小一時間ほど問い詰めたい。
色々な人(主にマシュー)に詳しく聞いたのと、若干の推測によると。
どうやら、ヴァレッグ様はそもそもアリシアにご執心だっっらしい。
どこで見たのか知らないけど結構前からの話らしい。
バラカルでの騒動も、アリシアを手にれるための暴挙だったらしい。
そんな辺境に領主の娘がいる訳がないのに。
妖魔の森周辺での騒動も、モンスターに襲われているところを颯爽と助けて好感度アップのためらしい。
出てきた相手強すぎて、ビビって逃げたんだってさ!
で、今回は自分がモンスターを倒すところ見せたいんだと。
戦闘中の事故って理由でこいつ全力でぶん殴ったらダメなんだろうか…。
あと、俺の推測だけど、クソジジイことガジュマルはこの辺の事情ある程度知ってたね。
最後にあのトレントで足踏みさせたの、タイミング見計らってた可能性大!
ちなみに、馬車は2台で前に俺たち疾風隊、後ろにあいつら第二近衛騎士隊。
道中は俺たちが露払いなんだとさ。
そして、これにも一悶着あった。
第二近衛騎士隊の馬車にアリシア乗せろって言い出した。
最終的にはアリシアが選ぶって事で決着したんだけど…。
ずっと不満タラタラで、正直めんどい。
一服もったらダメかな?
さっき毒キノコ見つけたんだよな…。
若干ダークサイドに落ち入りかけてたら、馬車が停車した。
休憩には早いタイミングなんだけど…?
「少し先にいるぞ、臭いはゴブリンなんだが…どうにも気配がおかしい。
警戒した方がいいな」
御者をしていた三元豚のファイファーが、御者台から顔を覗かせてこう言ってきた。
三元豚兄弟は全員鼻が良い。
種族特性らしいんだけど、確か前世でも豚にトリュフ探させるとかいう話聞いたし、犬より豚の方が嗅覚優れてるとか聞いた気がする。
こっちも同じなんだな。
しかも、この兄弟はメイシアやエレオラ程じゃないけど、なかなかの歴戦の戦士らしく、その経験と鼻で下手な斥候より敵を察知する能力に優れているらしい。
少しの間様子を見ていると、向こうからゴブリンが顔を出す。
そっと俺も荷台から覗いてみたけど、確かに気配がおかしい。
「あ!あれ、レッドキャップですよ!」
その声は、いつの間にか隣から覗いていたアリシアだった。
いそいそとアイテムボックスから事典を取り出してパラパラとページをめくって周りに見せる。
「頭頂に突起があって、それが赤いでしょ。
レッドキャップの特徴です」
確かに言われてみればあるけど、よく見つけたなぁ。
言われなければ絶対気づかなかった自信あるわ、俺。
「レッドキャップってゴブリンじゃないの?」
「いえ、ゴブリンなんですけど、特殊進化種なんです。
あれはまだ赤い部分が小さいですから、素早いオークって感じですが、強くなるにつれ赤い突起が大きくなって、帽子に見えるくらいになれば、オーガより素早い分厄介って言われています。
知性もかなり高くなっているので、ステータス以上に強いと言われています」
「俺たちが行こう」
黒い三元豚がお揃いの黒い革鎧姿で馬車から降り立った。
「フィドラー!プラティカル!ブラックストリームアタックだ!」
だいたい察しがつくと思うけど、厨二臭のする攻撃名は俺のせいだ。
訓練中に俺の前世で流行ったロボットアニメの敵方に出てきた三体が得意としてた攻撃方法を、この世界風にアレンジして話したら、すっかり気に入ってしまった。
俺もついつい調子に乗って、なんとなく覚えてた動きを想像で補完してそれっぽくアドバイスしてしまったもんで…。
猪突猛進が種族的にもピッタリはまったせいで、なんかちゃんと戦闘の陣形として機能してしまった。
既に疾風隊のメンバーはジョブを獲得してるんだけど(俺を除く)、3人ともこの陣形の為だけに突進攻撃の得意なストライカーにジョブチェンジしている。
若干心が痛いが、本人たちが気に入っているんだから、ヨシとしておこう。
そうしよう。
ちなみに装備は全員黒い革鎧に黒のフライトキャップっぽい革製の帽子を被り、先頭のファイファーがハルバード、2番手のフィドラーが柄が長めの両手持ちのトゲ付きメイス、3番手のプラティカルがトゲ付きに肩当てとトゲ付きセスタスになっている。
3人で1体を倒すのが基本戦法なので、集団戦にはあまり向かない。
体格差が大きい相手にもあまり効果がないのでボス戦にも向かない。
正直、かなり汎用性の低い陣形だと思う。
気に入ってるみたいだから良いけど。
こちらの馬車から3人が降り立つと、向こうも臨戦体制をとってきた。
普通のゴブリンなら逃げるはずなのに向かってくるあたり、上位個体なんだなって思う。
三元豚が縦に並ぶ。
ファイファーが駆け出すと他の2人も後に続く。
敵も突進してきた。
柄の長いハルバードは接近戦に弱い。
レッドキャップはそれを的確に判断したようだ。
やるな。
ファイファーが柄の内側に入らられる寸前に横っ飛びをしながらハルバードを横凪に振る。
あわてて回避するレッドキャップ。
だがそこには既にフィドラーが位置取っている。
レッドキャップはこれも回避するが流石に体勢が崩れる。
そこにプラティカルがショルダータックルからの抱きつきで動きを止める。
動きを阻害された相手にハルバードを大きく振りかぶったファイファーが止めの一撃を叩きつける。
汎用性は低いけど、型にハマれば絶対抜けられない必殺の陣形である。
「なんだなんだ、ゴブリンごときに手間どりおって」
相手が倒されたと思った途端に後ろの馬車から、バカ息子御一行が降りてきてごちゃごちゃと言ってくる。
難癖つけないと死ぬ病気なんだろうか?
そして、こいつらはまさかレッドキャップが1匹しか居ないとでも思ってるんだろうか?
童謡




