球様の鎮座
暗い……。
上空数十メートルからの自由落下に、地面へ叩きつけられた俺は見事に埋まった。
周辺では色々な声が聞こえ、騒ぎになっている。
『球さん。大丈夫ですか?』
リムルに穴から拾われ、何とか無事に救出された。
もし、このまま埋まったままだったら人生ならぬ、球生終わったところだ。
『あぁ、問題ない。大丈夫だ。助けてくれてありがとう』
『そんな……。私の方こそみんなを助けてもらって』
その後、一番大きな家に皆が集まり、俺はなぜがみんなの目の前に祭られている。
台座のてっぺんに白い座布団のようなものが置かれ、その上に鎮座している。
そして、目の前には数十人の方々が俺を拝んでいる。
マジやめて下さい。お願いします。普通に接してください……。
「球様。この度は我らを救っていただき、誠に感謝いたします」
俺に話しかけてきたのはしわくしゃなおばーちゃん。
でも、耳がとがっているので、きっとこの方もエルフなのだろう。
「いえ、お礼ならそこにいるリムルに言ってください。俺は少し手伝っただけなんで」
リムルは薬か何かで傷もすっかり癒え、身だしなみも普通になっていた。
他の人と話をしているようで、声も出るようになったらしい。
「そんな事はありませぬぞ! 球様がいなかったら、きっとこの村は全滅しておったに違いない!」
「そうです! 球様がいたからこそ、皆助かったんです!」
どうやら外にいた連中は全滅していたようで、助かった人間はいないらしい。
亡くなった人々は丁寧に埋葬され、燃えていた建物も、大分落ち着いているようだ。
「元に戻るまでは少し時間がかかるが、きっと元に戻るじゃろう」
ばーちゃんがしみじみと俺に話しかけてくる。
「おばば様、父と母の姿が見えませんが……」
近くに寄ってきたリムルが妹のアムルと一緒にばーちゃんの隣に来る。
「キールとリリーか……。他の村人数人と一緒に馬車で連れて行かれたわい。すまんのぅ、我らじゃどうする事も……」
「そ、そんな……」
「おねーちゃん……。お父さんとお母さんは無事なの?」
リムルはアムルの頭に手を乗せ、髪をなでる。
「きっと大丈夫。今から私が助けに行って来るわ。でも、ちょっと遠いかもしれないから、アムルはここでいい子にしていてね」
「私もいく! お母さんとお父さん、それに他のみんなも助ける!」
「ダメよ。もしかしたらここにまた人間が来るかもしれない。アムルはここでみんなを、おばば様を守ってあげて。貴方にしかできない事よ」
「分かった! 私はここでみんなを守るわ!」
アムルはリムルと話を終えた後、俺の元に駆け寄ってきた。
「球様! 助けてくれてありがとう! これからも私達や、おねーちゃんこ事を守ってね!」
「あぁ! 安心しな! リムルもアムルもみんな守ってやるさ!」
「ありがとう! 球様!」
笑顔になったアムルは、走って家の外に出て行ってしまった。
「球様。私と一緒に母と父を助けに行ってもらえますか……」
「行くに決まってるだろ! 準備が終わったらすぐに出発だ!」
俺とリムルが話をしていると、ゆっくりとばーちゃんが俺達に近寄ってくる。
「二人だけで行くのか? 他に力になれそうなものはおらんかい?」
はっきり言って、俺はこの村の状況をわかっていない。
何人くらいいて、誰が何を得意として、何ができるのか。ここはリムルに丸っとお願いしよう。
「リムル。正直なところ、現状を俺が良く理解していない。リムルに任せるよ。ところでババ様の名前をまだ聞いていないんだが」
「ほっほっほ。ババの名前を聞いてどうするのじゃ? ババに恋でもしたのかえ?」
「ちゃうわ! 名前くらい聞いたっていいだろ! 愛称だと俺が呼びにくいんだよ!」
「まぁ、ええじゃろ。ババの名前はセルニアじゃ。仲のいい連中にはセルーと呼ばれておった。球様もセルーと呼んでもいいぞえ」
いえ、遠慮しておきます。普通の名前で呼ばせてください。
「おばば様。この村の事も考えると出来るだけ人を残しておきたいの。きっとまだ移動中だから、奇襲をかけて、皆で逃げ出せばそんなに人数はいらないと思う。私と球様だけで行きます」
「そうか……。では、何か力になれることは?」
「大丈夫よおばば様。自分で準備するし、みんなに心配はかけないわ」
「分かった、必ず無事に帰るんだよ。球様は何か必要かえ?」
「いや、俺も特に何も必要じゃないかな?」
「そうかえ。球様、この子を、リムルを守ってほしい。このババの命をかけても……。お願いします」
――ピッコーーン
魂の契約ができます。魂の一部契約と同時に、スキルの取り込みもできますが、実行しますか?
へ? ここで脳内アナウンスですか?