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ババ様との散歩


――ピッコーーン

 魂の契約ができます。魂の一部契約と同時に、スキルの取り込みもできますが、実行しますか?


 へ? ここで脳内アナウンスですか?


 いきなりのアナウンスは心臓に悪い。まぁ、心臓とかないけどさ。と言うか、この状況で契約できるの?

普通に会話していただけなのに? と、とりあえず契約しますと答えておこうかな?




 再び真っ白な空間に俺は一人立っている。うん、前回と同じだね。

周りは真っ白。次第に床が緑になっていき、草が生えてくる。

そして、やっぱり空は青く、目の前では物凄い勢いで木が育っていく。

ん? 前回と違うぞ? こんなに木は生えていなかった。


 前回は数本の木陰ができるくらいの本数しか木が無かったのに、今回は大森林と言わんばかりの樹木。

風が吹くたびにざわざわと木々の声が聞こえる。

俺は森の中を宛もなくゆっくりと歩き始めた。


「そこに居るのは球様かえ?」


 声にびっくりし、振り返ると一人の女性がいた。

見た感じ二十代のおねーさん。白のローブに茶色のロングストレートの髪。

はて、どちら様でしょうか?


「えっと、どちら様で?」


「ほっほっほ。この姿も久々じゃ。ほれ、さっきまで話をしていたババじゃよ」


 な、何だってー! この美人なおねーさんがしわくちゃばーちゃんだって!


「た、大変失礼いたしました」


 俺はババ様と今の村の事やリムルとアムルの事を色々と聞かされた。

数百年前に大森林にあったエルフの里で継承問題があり、里を抜けこの村に来たこと。

数十名でこの村を作り、ひっそりと暮らしていたこと。

俺の方は、ここまで来ることになったいきさつを簡単に話した。


「あの子はいい子じゃ。これからもよろしく頼むぞい」


「あぁ、俺にできる範囲でやってみるよ」


「ほれ、時間がないんじゃろ? 契約をするとしようかの」


「すまないな。俺にもっとできることがあればいいんだけど」


「なに、きっと球様達は大丈夫じゃ。自分を信じなさい」



 次第に空が暗くなってきた。

見える範囲の樹木が風化を始め、小さくなってきている。

そして、次第に世界が鮮やかな色からモノクロームの色へを変色していく。

俺とババ様は立ち上がり、互いに向き合う。


「「「条件はリムルを守る事。報酬は魂の契約!」


「「魂の契約!!」」



 次第に世界が黒くなっていき、目の前にいたババ様も消えてしまった。

そして、俺の体も黒くなっていき、全てが黒一色に染まった。



――ピッコーーン

 魂の契約が完了しました。スキルの取り込み完了まで、三、二、一。

スキル取り込み完了です。スキル登録しますか?


 はいはい、今回も何か分かりませんが登録!


――スキル登録完了です。パッシブスキルを発動しますか?

 発動します! そろそろ何が発動しているのか知りたいんですけど!


――パッシブスキルを発動しました

 よっしゃ、とりあえずこれでオッケー!

魂の契約ではすべてのスキルを取り込むわけではないので、一体何が取り込めているのかが全く分からない。





――



「球様! 聞こえますか! 球様!」


「ん? リムル? 聞こえてるよ? そんな大きな声を出して何かあったの?」


 俺を両手で持ちながら、目の前にドアップなリムルの顔が有った。

そんなに近かったら、俺がちょっと恥ずかしいじゃないか。

もし、肉体があったら鼻と鼻がこんにちはしていますよ。


「ほっほっほ。二人は仲がいいのぅ。どれ、リムルは出発の準備をするかえ? ババはちょっと球様と話がある」


「球様は今ほんの少しだけ無反応でしたよ? 心配しました」


 台座に俺を戻したリムルは、部屋を出ていった。


「どれ、球様。少しだけババと散歩に行きますか」


 俺はババ様に持ち上げられ部屋を後にした。

そのあとは、ババ様さまに抱っこされながら、村を一回り。

そして、村の外に出て近くの森へやって来た。


「のぅ、球様よ。リムルの両親を助けたあとは、どうるるのじゃ?」


「正直何も考えていないな……」


 俺は現状リムルがいないと動けない。そして、リムルに放り出されたら最後、自分では何もできなくなってしまう。

かといって、リムルを俺の足代わりにするなんてことは絶対にできない。


「もし、無事に皆が帰ってきたら、リムルと旅に出てもらえんかのうぅ?」


「それは、俺とリムルと二人でこの村を出ろってことか? 今、村はこんな状況だが、放り出すことはないだろ? なんでそんな罰を……」


「罰ではない。リムルにはもっと外の世界を見てほしいのじゃよ。この村の中だけでは世界が狭すぎる。なに、いつでも帰ってきてもいいぞい」


 俺はババ様の両手の中で考える。切り株に腰を落としたババ様は、細い目を彼方に向け、遠い目をしている。

二人旅もいいかもな、旅先できっと学ぶこともあるだろう。


 そんな事を考えていると一匹の黒い狼? がヒョコヒョコとこっちに近づいてきた。


「おぉ、めずらしいのぅ。ブラックウルフがこんなところまで来るとは」


 怪我をしているようで、前足を引きづりながらこっちに向かってくる。


「どれ、何があったのかちょっと聞いてみようかの」



 そんな事を言ったババ様は口をパクパクさせ、狼に向かって無言で話しかけている。

口パクでは何も伝わらないんだけどなーとか、思っていると。


「ほうほう、狩をしている時に怪我をして、群れからはぐれたらしい。他の仲間とも数日会っていないそうだ。どれ、その怪我見せてみい。これはちょっと傷が深いのぅ。ババがいま、手当てをしてやるぞえ」


 ババ様は懐から布と何かを取り出し、ウルフの傷の手当てをしてやる。


「ババ様? ウルフと話せるのか?」


「そうじゃよ。年と重ねると、色々と出来るようになるのじゃよ」


「どうやったら話せるんだ?」


「簡単じゃよ。念話と同じように対象者に向かって話しかけるのじゃ。ちなみに話ができない者もおるからの」


 俺は念話と同じように目の前の狼に向かって話しかけてみる。



『こ、こんにちはー。俺の声が届いてるかー? 聞こえたら返事してくれー』


『……我に声をかけてくる者は誰だ? さっきのエルフとは違う者だな?』


 おぉ! 通じたかも! 俺、初めて動物とお話できちゃった!


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