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シラミズアキラの異世界遊び  作者: アーギリア
8/8

8 お風呂イベントに飛び込もう!

今回、主人公シラミズアキラの秘密が明らかに!

 皆さんが驚いています。私もです。小鳥のように口をあんぐり開けています。目の前には、女の子の服を剥ぎ取った状態の天使様と、すっぽんぽんのイエローさんがにこやかに立っています。何ですか、これは?


「シラミズアキラ?なぜイエローの魔法装束を突然脱がしたの?」


「いやあ、エロいかなぁって」


「……?えっと……えろ……?イエローが?」


「あははははは?皆幸せー☆」


 イエローさんは楽しそうに布団叩き……いえ、ラブリーロッドでしたね。それを振り回しています。エロ……と言うことは、これはエッチなのでしょうか。男性であるおじさんとカルカロットさんの様子をうかがいますが、どちらかというと天使様の奇行に驚愕しているだけのように見えます。


「……その子、アルより年下だろう?天使様は何をいっているんだ?」


「僕も流石に人選間違えたと思うよ。あっ、イエロー!そのままいっちゃ……あーあ」


「皆仲良し!幸せ!」


 イエローさんはキャッキャとはしゃぎながら、すっぽんぽんのまま走り去って行きました。ホワイトさんが天使様を真顔で殴り付け、イエローさんの後を追います。突然の出来事はその勢いのまま、なんやかんやうやむやになって消滅しました。


 それはそれとして、これから水浴びの時間です。ターちゃんと一緒にシャワーを浴びるのです。近くの川に浸かりながら、ラブリーロッドから暖かいお湯を出せるようにホワイトさんに指導してもらいました。


 同じ女性であるムーさんが見張りを受け持ってくれたので、安心してシャワーを浴びられます。さて、体をきれいにしましょうか。


「アルちゃん、辛くはない?」


「ターちゃん?……私は大丈夫です。ターちゃんこそ」


「あたしは、アルちゃんが居てくれれば大丈夫」


 私とターちゃんはお互いに親や友達を一気に失いました。同じ境遇の親友がいたから、お互いに壊れずに済んでいるのです。ターちゃん少しだけ私に近づいて来ました。


「アルちゃん、このウォッシュタオルとかいうの、使いやすいね」


「そうですね。天使様に感謝です」


「……あれ、何なんだろうね。アルだってあれが天使なんかじゃないって気づいてるでしょ」


ターちゃんが体を洗い終わったので、私がラブリーロッドでシャワーを出します。なんだかターちゃんがツルツルになった気がします。


 天使様が何者か。ターちゃんはとても気になっているようです。私は……正直な所気になってないのです。天使様であろうとなかろうと、私の力なんて到底及ばない方であるのは間違いないのです。精霊様も天使様も神様も、私にとっては一緒なのですよ。


「ターちゃんは、天使様や精霊様が怖いですか?」


「精霊……ホワイトさんは怖くない。ブルーさんはよく分からない。レッドさんは怖い。イエローさんには近づきたくない」


「イエローさん?いつもにこやかですよね。そんな怖いですか?」


「そっか、アルは見てないもんね」


 ターちゃんはさっきチラッと話題に上がった天使様の闘いの様子を教えてくれました。どうやら、私が教われる少し前くらいに30人位の傭兵団に襲われたそうです。


「天使は、真っ赤な槍を取り出して私に持たせようとしたの。慌てて手を隠した。絶対危ない奴だったし」


「そんな、手ぶらじゃ危ないから武器を貸してくれたのではないですか?」


「貴方はあいつが物を渡すときの顔をよく見るべきだわ。……話を戻すね。天使はその槍を振り回して上手く30人を抑えてた。実際強かったよ。私はおじさんの後ろに庇われながらずっと見てたんだけど、大きな槍をビュンビュン振って……まあ、5分位でやられたけど」


 30人相手に5分は健闘しましたね……私は三人相手に自滅して終わったのに。これは経験の差というやつでしょうか。見た目は私と同じくらいの歳なのに。


「で、天使がやられていよいよ私達が殺されそうになったとき、イエローさんが何処かから吹っ飛んできたの」


「吹っ飛んできた!?それは驚きですね」


「そして、傭兵団に突っ込んで虹色の爆風を起こしたの」


「虹色の爆風……?」


「風がやんだときには、イエローさんは天使に捕まってて、傭兵団は皆壊れてた」


「壊れてた……それは……ちょっと怖いですね」


 イエローさんの扱いが爆弾みたいですね……壊れていたってことは傭兵団の皆さんは手とか足とかがバラバラだったのでしょうか……ひえぇ。


「……壊れてたの。皆、楽しそうに笑って地面でのたうちまわってた。死にかけて暴れるミミズみたいだった」


「……あ、そういう意味でしたか」


「うめき声を上げてたの。皆、イエローさんみたいに『幸せ』『仲良し』を連呼してた。突然大笑いしだす人もいたし。最終的には自殺したり仲間を攻撃したり酷いことになってたよ」


 想像したくありませんね。この世の地獄と言わんばかりの有り様ではありませんか。


「それは……確かに怖いですね。でも、イエローさんなりに助けてくれたのではありませんか。近づきたくないなんて失礼です」


「イエローさんは、天使に捕まれてる間、ずっとあたし達の方を見て杖を振っていたの。『皆仲良し!』ってね。きっとそのままの意味。イエローさんは、『皆』をあの状態にしようとしてる」


 思い出して怖くなったのか、ターちゃんがぎゅっと私に抱きついてきました。ターちゃんは強い子だと思っていましたが、こうしてみるとやはり私と同い年の子供なのですね。


 少しでも安心してくれればと思い、私はターちゃんを抱きしめ返して上げました。


 それにしても、天使様がイエローさんだけ警戒していた理由はこういうことだったのですね。皆仲良く幸せにするのがイエローさんの精霊様としての使命で、それは私達にも適用されてしまうということでしょう。そして、精霊様の幸せは人の幸せとは異なる物のようです。


「イエローは厄介だよ。ホワイトがいればオールクリアでアンハッピーズクライシスの効果を打ち消せるけどね。人をダメにするお薬を撒き散らすような魔法だから対処が遅れると依存性が発生して面倒なんだよ」


 おや、天使様。いつの間にここに来ていたのでしょうか。


「天使様。アンハッピーズクライシスがイエローさんの魔法なのですか?」


「そう。『不幸』を無くしちゃう魔法だよ。いわば不幸(アンハッピー)存在否定(クライシス)。魔法がかかると何に対しても幸せを感じるようになる」


 それだけ聞くと悪い感じはありませんね。確かに、幸せの魔法です。


「素敵な魔法ではありませんか」


「刺激が全て幸せに変わるんだ。本来、幸せにならないはずの刺激も全て、ね。さあ、問題。手っ取り早く強い刺激を得るには何をすればいい?」


「……刺激、ですか。んー」


 少し考えてみます。刺激……刺激ですか?そんなの求めたことありません。ちょっと想像がつかないです。


「自分の体を傷つけることだよ。痛みは身近な刺激だ。または、ふだんしないような大きな事をしでかすとか。罪悪感も、忌避感も全て幸せに変換されるから、行動が突発的で大雑把になる。つまり、あの魔法がかかった人間はとち狂って自殺したり近くの人を攻撃したりするのさ」


 刺激を、幸せを得るために何かを傷つける。私は真っ青になりました。精霊様と幸せの感覚が違いすぎます。


「でも、皆を幸せにと言っているのに、傷つけられた方は不幸ではありませんか」


「いや、皆が魔法にかかっているなら殴られた方も幸せだよ」


 あっ、そうですね……だったら、確かに、皆、幸せ……、で、す?

……取り敢えず、イエローさんにはあまり近づかないようにしましょう。


「アル、なに平然と話してるの」


「平然となんてしてませんよ!とっても恐ろしい話でした」


「そうじゃない。なんでいるの、変態天使」


「酷いなあ、ちゃんとデリカシーは守ってるよ?ほら、バスタオルで下半身を隠しているのさ!」


 天使様はバスタオル一枚の姿で私達の前に君臨しています。……言われてみればちょっと大胆ですね?私も柄にもなく顔が熱くなってしまいます。


 ターちゃんはかなり本気で警戒しているようです。体を川に沈めてしっかり隠そうとするのはとても女の子らしいですね。私もそうするべきでしょうか。でも、川の水は少し冷たいです。止めておきましょう。


「天使様の常識では男と女が一緒に水浴びするんですかねえ!?」


「え、ターちゃんとアルちゃんって男だったの!?」


 ターちゃんが天使様に食って掛かり、天使様はその言葉に驚きを示します。……おや、話が噛み合ってない気がしませんか。


「男はてめえだろうがよ、シラミズアキラ!あと、気になってたけど何気安くターちゃん呼びしてんだ!」


 ああっ!?ターちゃんが天使様のタオルを剥ぎ取ってしまいました!それは天使様よりも大胆です!女の子らしいのかそうでないのかわからなくなってきましたね、ターちゃん。


「付くもん付いてんだろうが!てめえはおと……あ、あれ?」


「いやーんえっち」


 おや?天使様、あれがついてない……ということは、天使様は女の子の天使様だったのですか?正直、私も男の子だと思っていました。


 ターちゃんが何とも言えない表情になっています。脱力したせいで天使様のタオルが川に浸かってしまっていますよ。とりあえず、謝るべきではないでしょうか。


「……あ、えっと……ごめんね」


「いやーんもうお嫁にいけない☆まあ、女の子でもないんだけどね。性別とか僕には無縁の話さ!あ、タオルびしゃびしゃにされたのは驚かせたお詫びに不問にしておいてあげるね」


「え、女の子でもないの……?ほんとなんなのさ、お前」


 ターちゃんがげんなりとした顔をしています。まあ、なんと言いますか、天使様って不思議な方ですね。


「あんまり冷たい川に入っていると風邪引いちゃう。もう一度シャワー浴びてそろそろ出たら?」


「そうですね、ターちゃん上がりましょう」


 私達はシャワーで暖まり、魔法の風でさっと水を乾かしました。ラブリーロッド、攻撃以外にはほんと便利です。


 ところで、イエローさんの持つ杖もラブリーロッドですよね。これでも使えるのでしょうか。『アンハッピーズクライシス』。


「虹色の爆発……ですよね。皆が不幸を忘れて幸せになる。『アンハッピーズクライシス』」


 虹色の爆発が轟音ではなくキラキラという音を立てて発生しました。巻き込まれた植物が急に成長し直ぐに枯れ始めました。鳥や虫がバタバタと落ち、痙攣しながら気絶しています。


 ……念願の攻撃魔法を手に入れました。絶対に使わないと思います。巻き込んでしまった生き物たちは私にはどうすることもできません。一言ごめんなさいといって、その場から逃げました。




「あれっ!?アルちゃんとターちゃんが天使様になってる!」


「広範囲の見張り役なのに、目の前だけをじっと見ていたあたりで察していたけど……もしかして君、馬鹿って呼ばれていなかった?」


「失礼だなー!素直さだけがとりえのムーさんとは私のことなんだよ!」


「多分、馬鹿のムーさんと同じ意味だよ、それ」

Ex-107-y

・髪の色も服も基本的に黄色い。身長は118センチ。よく見ると四人のなかで一番狂った目をしてるよ。

・理性も良識もなく、『皆幸せ』だけをもとめて魔法をばらまく。発動が遅いので見てから全力で逃げれば回避は簡単。

・薬を自分の意思で使うことはないみたい。無理やり使うと面白い姿が見られるよ。

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