7 情報を集めよう!
アルちゃんが情報源を持ってきたよ!
敵二人を連れてきた私は、ターちゃんに馬鹿を見る目で見られました。たくさん悪態をつかれて、二人にも酷い暴言を叩きつけましたが、すぐに二人分座れるよう場所を譲ってくれました。本当に優しい子です。
「本来、私達がお前達を助ける道理なんてないんだからな……アルのお人好しに感謝しろ」
「ああ、わかってる」
「わかってて助けを受け入れたんなら、情報の一つや二つ流してくれるってことかな☆」
「うん、別に隠すようなことはないよ。聞かれたことにはちゃんと答える」
「へぇ……?情けは人のためならずって奴かな。あの子は本当に運がいい。主人公補正って奴かな」
「すまない、お前さんが何を言っているのかわからん。質問ならもう少しわかりやすい言葉で頼む」
二人の名前は男性の方がカラド=クリフラ、女性の方がアザナミ=ムールミム。呼び名はクリフさんとムーさんだそうです。中央の下っぱ兵士だと言っていました。
もっと色々お話が聞きたいですが、その前にカルカロットさんを助けなければなりません。実際に神の試練という訳ではないので、放っておいたら誰も助けてくれません。急がなくては!
ひゅーん……ズドオオオオォォォン!
駆け出そうとした直前、空から何かが降ってきました。ああ、間違いありません。ブルーさんですね。傍らにカルカロットさんを抱えています。
「グルルルルオオォォォォン!」
「くたばる覚悟を決めてたってのになんだこの化け物は……まさか、こいつも精霊様なのか……?」
ブルーさんはカルカロットさんを焚き火に放り投げ……っと危ない。ギリギリで天使様がキャッチしました。私より小さいのに、力は凄いですね、天使様。
「アルちゃん基準ならそうだね☆ほら、無駄死にする暇があったらさっさと回復して情報を吐き出す装置になってよ。あ、シチュー食べる?」
「あのチビッ子といいお前といい、辺境の奴等はこう危機感ねえ奴ばかりなのか?」
危機感がない……とは自分自身思っていなかったのですが、中央の方々は、毎日これ以上に気を張りつめて生きているのでしょうか?それは大変そうです。
「私は、お前達を許す気はないよ」
「……ま、話を聞いてから判断するさ。ほれ、材料は何かわからんけど旨いぞ。食え」
「……そうだな、村にも色々な奴がいたのだろう。シチュー、いただきます」
さて、落ち着いたら話を聞くということでしたが、暫くすると三人の元気がみるみる失われて行きました。特に、ムーさんが顕著です。どういうことでしょう。
「えっと、焚き火では温まりませんでしたか?」
「……え?いえ、そうではないの。……本当に、優しい子ね。貴方みたいな子を私は何人手にかけたのかしら」
どうやら、一息ついたところで自分の殺してきた人たちを思って気を落としているようです。それに気づいたターちゃんが怒りを露にしてムーさんを怒鳴り付けました。
「おい、何ふざけたことをいってるんだ。お前達に感傷に浸る権利なんてない!」
「ターちゃん、落ち着いて」
「いいの、アルちゃん。ターちゃんさんの言うとおり。貴方も、彼女も私を糾弾する権利があるわ……」
やっぱり、様子がおかしいですね。ムーさんはむしろ糾弾して欲しがっているように感じます。というか、最初から何か変だとは思っていたのです。村で会った女騎士様もそうでしたが、性格と行動が合っていない感じがしてなりません。
「ムーさんは、平気で人を殺せる性格じゃないと思うんですが、よくこんなこと続けられましたね?」
「お嬢ちゃん、被害者の君達にはわからないと思うが、真っ当な人生を送ってきた人間のなかに平気で人を殺せる人間はそんなにいない」
答えたのはクリフさんでした。辛そうな、絞り出すような声でした。そして、何錠かのお薬を取り出して私達に見せてくれました。
「これは……?」
「罪悪感を殺す薬さ。討伐隊の奴等には必ず支給される」
ターちゃんも、おじさんも、勿論私も、息をのみました。あまりにも酷い話ではありませんか。人の心を殺してまで小さな村ゝを潰す必要があるのでしょうか。
「えっぐいなぁ。これ飲ませて家族を手にかけさせて自殺を封じる刑罰とかあると犯罪率減りそう」
けろっとした顔で天使様が言いました。私達は、揃って戦慄しました。やはり、天使様のお考えは常軌を逸しておられます。
「……それは、恐ろしい発想ですな」
「これがマジもんの天使様かよ……人の心なんて持ってねえな」
「カルカロット!あまり軽口を叩くものではない!上位の方は、敵には無慈悲だぞ。我々が無事なのは、お嬢さんの口添えがあるからにすぎない」
「そんなに悪い子じゃないのに!ああ、僕が皆の中でどんどん天使になっていく」
どうせなら可愛い天使が良かったな、と天使様が笑っておられます。私には無慈悲な方には見えませんが、味方の立場にいるからなのでしょうか。
「薬で正気を奪うなんて馬鹿なことをするのね。私達は、クスリでやっと皆と会話ができるというのに」
森の奥からホワイトさんが現れました。私と目が合うと申し訳なさそうに目を泳がせました。何かあったのでしょうか。
「ごめんなさい、アル。あんなタイミングでクスリが切れるなんて……。怖い思いをさせたわね」
「いえ!ホワイトさんが前もって色々教えてくれたから助かったんですから」
「いや、お前さんの攻撃自体は全く役に立ってなかったぞ」
「一心不乱に逃げられた方が厄介だったな」
「あの……私が言うのもなんだけと、下手な攻撃で挑発するよりは大きな声を出して逃げた方がいいよ。こんなに強い精霊様が助けてくれるんならね……」
兵士の方々にもっともな指摘を受けました。ホワイトさんがどんどん落ち込んでいきます。私もなんとかフォローしようと思いましたが、ホワイトさんの助言を有効に活用できなかったのは私です。なにも言えません。助け船を出してくれたのは天使様でした。
「お前って一人で頑張っていつも空回りするよね。ウケる」
助け船ではありませんでした。ただの追撃です。ホワイトさんはかなり遠くまでフラフラと歩いて行き、更地の隅っこの方に膝を抱えて座り込んでしまいました。
「まあ、あれはどうでもいいや。縮国政策について詳しく教えて欲しいな」
「精霊様にも慈悲はないのか」
「縮国政策を知っているのか。これは貴方が情報を求めているというよりは村の者達への確認と取るべきだな?カルカロット、私が説明してもいいか」
「頼む、こういうのはお前が一番上手くやる」
クリフさんは私達を殺そうとする政策について言葉を選びながら話始めました。
「今、この国は金がない。政治から神教を切り離したのと、三年前から発生しだした戦争で我が国の資産は尽きかけている」
「国が、貧乏なのですか?」
「ああ、国民を生かすための資金もままならず、王は国を縮小することを選んだ。そのなかで、戦争に参加しなかった遠方の村を切り捨てることに決めたんだ」
「戦争……?そんな話、聞いたことないぞ?」
おじさんが言うと、驚いたのはクリフさん達の方でした。カルカロットさんは「徴兵令があったはずだ」といい、ムーさんが「王様、自分が慕われてないことをいつも嘆いてたけど」と不思議がっています。クリフさんは話を中断し、当時のことをおじさんに問いました。
「三年前、お前達はどうしていたんだ」
「少なくとも、王については皆なんとも思っていなかった。そんな余裕もなかったよ。皆、明日のために必死になって自分の仕事をしていたさ」
「徴兵令が届いていたら、お前達は来ていたのか?」
「国を守る必要があって、立ち上がらねえ軟弱な男は村にいねえよ」
「……どういうことだ?」
いつの間にか、話の趣旨が変わってしまいました。面白くなさそうなのは天使様です。明らかに不機嫌になり始めました。
私が閑話休題を求めようとしたところ、その前に天使様が言葉を発しました。あまりお怒りにならないといいのですが。
「ねえ、アルレーリヤ。あと、タツリカユもかな?君達、神官に聖書を読んでもらったと言っていたね」
「え、はい。神官様に」
「……一応、そういうことはあったけど」
「いつの話だい」
「え……?確か、2、3年前かと」
「その辺りから、週に一回来たよ。私達の数少ない娯楽だった」
それを聞いた他の4人が反応しました。そして、仏頂面だった天使様が、ニヤアと笑い「なぁるほど?」と呟きました。
語調を強めて話に割り込んできたのは意外にもホワイトさんでした。いつの間にか復活し、近くに来ていたようです。
「これだけ情報が揃えば誰でもわかる。神教が徴兵令を握りつぶしたんだ!神教の力を削いだ王への意趣返しだ。この騒動、ことの発端は神教にあると見るわ!」
「そーだね。そんなこと皆わかるから君は座ってていいよ。さあ、新しい、有用な情報が舞い込んできたね。これをもとに、僕たちがやることは一つ」
「「神教をぶっ潰すんだな?」」
「神教に協力する……嘘だろ、君達」
大変です。天使様とそれ以外で意見が別れてしまいました。私は、理解が追い付かず回答できなかったので、取り敢えず話を聞いておこうと思います。
「……しまった、天使様の前でいうことじゃなかったか」
「え、でも。精霊様も私達と同じ意見みたいだよ」
「シラミズアキラ、どういうこと?悪いのは神教。なら、そいつらを潰すのが筋じゃないの?」
カルカロットさんとクリフさんは天使様と対立したことに明らかに動揺しています。ホワイトさんは天使様を訝しげに睨み付け、それをムーさんが体を縮めて見つめています。おじさんとターちゃんは単純に驚いているようです。
「僕、一度でも誰が悪いとかいったかな?この世界に来て一度も人の善悪を説いた記憶ないんだけど」
天使様が珍しく呆れたような顔をしています。ええと、天使様にとって、善悪はこの場において考慮するべきではないということでしょうか?
「アル。そもそも僕たちの目的はなんだい?」
「え?王を止めること、ですか」
「王の最大の敵は?」
「天使様ですか?」
「アル、普通に考えたら神教だ。そういうことだろう、天使様?」
「おっさんもナチュラルに天使様って呼ぶようになったね。そんなに僕の大立回りはカッコ良かったかな?」
なるほど、確かに神教は王様の敵でしょう。同じ敵を持つということで協力できるかもしれません。ましてや、こちらには天使様と精霊様がいらっしゃるのです。
ところで、大立回りとはなんですか?私のいないところで、そんな素晴らしいものが合ったのですか?今回ばかりは不幸ですね。天使様の大立回り、見たかったです。
「待ってくれ、この際だ、お前達に協力するのは吝かではない。だが、王も王だが神教も大概ろくでもないぞ。そんなのに協力をあおぐなんて……」
「ふーん?ほーう?へえぇぇぇぇ?ろくでもない、ねえ?そのろくでもなさで内部はどんだけ潤ってるんだろうね?だって、戦争中に国の邪魔できる余裕があるんだもん。そんなでっかい組織、味方にするに越したことある?」
さも当然、というような天使様の笑顔に、その場の全員が言葉を失いました。ようやく口を開いたのはカルカロットさんです。
「本当に、貴方は天使様なのか?」
「違うよ。でも、僕はさっき言っただろう?人を善悪で判断したことはないってね。目的が一緒ならそれでいい。味方にできるなら、僕は悪魔すら味方につけるよっ☆」
この時、最も天使様に対して強い非難の視線を向けていたのはが、精霊様たちで合ったことに気づいた人は私以外にいたのでしょうか。ホワイトさんだけではないのです。ブルーさんと、レッドさんもいつの間にか近くに来ていて、じっと天使様を見つめています。
ここで、私のとなりにこっそりやって来たターちゃんが私の耳元でぼそぼそと呟きました。
「あいつ、一人で何十人って兵士を殺し尽くしたんだ。真っ赤な槍をもって、なんの躊躇もなく。今までの話を聞いていて、私は確信したよ。アル、あいつは人間の味方じゃない」
Ex-045 血濡れの朱槍 レベル3
・2メートルほどある真っ赤な槍。シラミズアキラが便利に使っている武器。
・自分より強い相手に大ダメージを与えることができる。多分、アルレーリヤでも宇宙最強の大魔王とかを一撃で殺せるようになる。
・欠点として、自分より強いものを敵味方問わず殺すこと以外考えられなくなるというものがある。また、自分より弱い相手に対してはただの汚れた無駄に重い槍である。
・なお、シラミズアキラはこの力を発揮できない。つまり、ただの汚れた無駄に重い槍である。




