6 そろそろ真面目に戦ってみよう
頑張るぞー♪
ここは焚き火から少し離れた場所。更地にならずにすんだ森の中です。私は、ホワイトさんと向かい合っています。何故かはわかりません。気づかぬうちに無礼でも働いてしまったのかと、内心震えています。
「あのう……?」
「ブルーにそれの使い方教わってないでしょう」
ブルーさんは、私が始めに会った精霊様です。いま着ている服はブルーさんに頂きました。
ホワイトさんは服の腰部分に付けられていた布団たたきのような棒を指しています。そういえば、イエローさんも持っていましたが、これはなんの道具なのでしょうか。
「それを手に取ってみて、アルさん」
「はい……、こうですか?」
「それはラブリーロッド。まだ起動してはダメ。初回起動時に精神干渉が発生する。自分の正義観を動かせなくなるわ……ちょっと貸して」
難しいことを言われても分かりません。取り敢えず、精霊様の言うとおりにしましょう。
「これを、ちょっとこうして……よし、解除できた。こういうのはブルーが得意なんだけど、お薬のインターバルがあるからね、ちょっと雑だけど許して」
私の持つらぶりいろっどを、ホワイトさんが何かしら弄ったようです。布団たたき……『らぶりいろっど』の頭の部分を握って、モミモミしていましたがきっと神聖な儀式か何かだったのでしょう。
「さあ、それをしっかり握りしめて。ブルーの『ハートフル・ブラスター』は見たでしょう。あれを心に思い描いて、さあ、元気よく!『ハートフル・ブラスター』!」
「は、『はあとふる、ぶらすたあ』!」
言われるがままに叫んでみます。らぶりいろっどの頭と同じ形の光がキラキラと現れました。とても幻想的ですね。
「違うわ。Heartfulじゃないの。Hurtfulなのよ、あの技」
「はあとふる」ではなく、「はあとふる」だそうです。違いがわかりません。そもそも「はあとふる」が何かわかりません。取り敢えず、不思議な力を使えた感想を言っておきましょう。
「とても綺麗ですね」
「そうね……貴方の魔法は、これでいいのかもしれないわ」
試しに私にぶつけてみなさい、というので、もう一度「はあとふる、ぶらすたあ」を使います。危なくないのかなとは思いましたが、精霊様の言葉です。疑うより従った方がいいに決まっています。
ホワイトさんにはしっかり当たりました。見たところ、苦しんだり、痛がったりする様子はありません。しかし、不思議な力の実態を私ごときの推量で理解した気になるのは危険でしょう。ここは、先生でもあるホワイトさんの意見が欲しいところです。
「……どうですか?」
「……んー……ほわほわして、ちょっと心地よかったわ」
「マッサージに使えそうですね」
「そうね……私としては、一つくらい攻撃を覚えて欲しいのだけれど」
あまり天使様に頼ろうとしない方がいい、とホワイトさんは念押ししてくださいます。なるほど、本来は自分のことは自分の力でどうにかするべきです。天使様の力を借りられるのは、有り難いことであると同時に畏れ多いことでもあるのです。
少しくらい戦えないといけない。暴力は怖いけれど、これから先、必ず必要になるタイミングは来るでしょう。
「ブルーに、力を借りてみましょう」
「え、どういうことですか?」
「貴方は、私達を精霊様と呼んでいるでしょう。その精霊様から力を借りるのよ。『ブルーさん、力を貸して』!とでも言ってみなさい。その杖は、貴方の願いを形にしてくれるはず」
精霊様の力を……?天使様のはダメで、精霊様のはよいのでしょうか。いえ、疑いません。ブルーさんのなんか凄いあれをイメージして……。
「『ブルーさん、力を貸してください』……あづっ!?」
「何で杖を立てたまま使うの!?『オールクリア』っ!」
私は自分に向けて魔法を使ってしまったようです。ブルーさんのあの力がそのまま出てきたら私は死んでいました。ぞっとします。
ホワイトさんの魔法でしょうか。私のおでこは火傷痕も残さずきれいになりました。ホワイトさんが呆れています。本当にごめんなさい。
「まあ、攻撃が使えるようになったのは良かったわ。あとは、ずっとする練習あなたは上手くそのために貴方自信を必要なのは」
「え、え?何ですか?」
突然ホワイトさんがおかしなことをいい始めました。精霊様の言葉でしょうか。
「……?だから、といって、きっとその力は例えそう使うのならば守ります使うことができます貴方……!?『オールクリア』っ!」
「ひあっ!?何ですか……あれ、ホワイトさん?」
突然放たれた魔法の光に目が眩んで、少し目をつむった間に、ホワイトさんはいなくなってしまいました。
精霊様の行動はやはり複雑怪奇です。比較的わかりやすいホワイトさんも不思議なところはあるのですね。
「こっちから声がしたよね」
「……誰かいるぞ。構えろ」
この声は……まあ、味方ではないですよね。余りにも物騒な会話です。出会い次第殺そうとしているようではありませんか。
「おい、止まれ……なんだ、こいつ?」
「綺麗な服……こんなところにお嬢様がいるなんて」
現れたのは男の人が二人、女の人が一人でした。きっと、私達を殺そうとする人々なのでしょう。ホワイトさんがいなくなった今、頼れるのはらぶりいろっどだけ。握る手が思わず強くなります。
「ふむ、保護対象の可能性があるか。おい、名前は」
保護対象?もしかして、助けに来てくれた人の可能性もあるのでしょうか。取り敢えず、名前は答えておきましょう。お話ができるといいのですが。
「え、ええと、アルです。アルレーリヤ」
「苗字は」
「みょうじ……?」
「よし、対象外だ」
何がいけなかったのでしょう。三人が一斉に武器を取り、こちらに走ってきました。
「ひっ……あ、あの、『ブルーさ』……」
ズバッ……と私は先頭の男の人に剣で見事切られました。私はその衝撃で1メートルほど吹き飛びました。とても痛いです。
なんとあっけない最後でしょう。決意を固めて一時間でこれでは天国の父に顔向けできません。
「切れなかった」
「ちょっと……やるなら一発でやってよ。こんな小さな子を可哀想に」
ん……?切れなかった?恐る恐るお腹を確認してみると、服は新品同様に綺麗なままでした。まさか、この服も魔法の服なのでしょうか。
「……『ブルーさん、私に力を貸してください!はあとふる、ぶらすたあ』!」
ピチュンッという音ともに、私を切った男の人に光が飛んでいきました。
「熱っ……」
「え、嘘、反撃してきた?」
「今のはなんだ。おい、カルカロット大丈夫か」
おお、攻撃成功です。でも、よく考えるとこのちっちゃい光で三人を相手にするのは無理ではないでしょうか。攻撃に私は微妙に長い呪文を言わなくてはなりません。一撃で倒せる技ではありませんし、倒しきる前にらぶりいろっどを奪われて、袋叩きにされるのは間違いないでしょう。固いのは服だけなので、頭を狙われれば私は一発で死にます。
よし、悪あがきをしましょう。
「わ、わたっ……私は、精霊様に力をもらったのです!皆さんは、もしかして、私を殺しに来たのですね!?」
「……精霊様?」
「いや、別に貴方を殺すのが目的ではないけど……ほら、突然森の大部分が消えたから様子見に来たのよ」
なるほど。そりゃあ様子見にも来るでしょうね。ただ、目的が私達でないならはったりが通じるかもしれません。だって、私達が何者かわかっているわけではないのでしょう?
「それをやったのが私だといったら……?」
「危険人物だ、すぐに殺せ!」
「油断するな!あの杖を持つ右手か、頭を狙え!」
「女の子かと思ったら化け物だったなんて!遠慮はいらないわね!」
おや?もしかして、私は自分の命の灯火に『はあとふる、ぶらすたあ』をしてしまったのでしょうか。三人の威勢が良くなってしまいました。ほら、見てください。やっぱり自分の判断で精霊様を利用しようとするとろくなことはありません。
ああ、お父さん!どうかそちらであったとき、他人の振りなどなさらないでください!このアルレーリヤ、自分の愚かさに恥じ入るばかりです。
さようなら、ターちゃん、おじさん、天使様。アルは先に逝きます。ホワイトさんも、ブルーさんもごめんなさい。どうか、審判の際には御容赦を頂きたいと存じます……。
……人間死ぬ際には時間が長く感じると言いますが、長すぎませんかね?あの女の人の言葉ではありませんが、どうせなら一思いにやってほしいです。苦しみが長く続くのは嫌です。
「……ってあら?」
「……すっ……すっ……」
私の目の前に、いつの間にかレッドさんがいらっしゃいます。相変わらず泣いていますが、私の見るに堪えない末路に涙が止まらないのでしょうか?
「くそ……この子は囮だったか……」
「寒い……なにこれ?体動かない……」
「ああ、こんなことしてるからな。恨みを買うのは当然だ。俺たちだってこれが正しいことだと思ってる訳じゃないしな」
違ったようです。レッドさんの前に、三人の人が倒れています。レッドさんが不思議な力で三人を無力化させたのは明らかでしょう。
……私はまた助かったようですね。私はどれだけ神様に愛されているのでしょうか。
「有難うございます……神様、天使様、精霊様」
「……ふん、神教なんぞと思ってはいたが、なかなかどうして馬鹿にできないじゃないか。こんなのがいるってんならあいつらがデカい顔してたのも頷ける……」
「……神様の祟りで死ぬなんて縁起が悪いなあ……いや、当然だよね。ごめんね、チビッ子。怖い思いさせて、さ」
「……おい、精霊様よ。こちとら命令を受けたときから覚悟はできてんだ。せめて、さっさと殺してくれねえか。まさか、動けないまま捨て置いて餓死させる気じゃねえよな?下っぱ兵で拒否権が無いところを加味して、情状酌量してくれませんかね」
……心が痛いですね。この人たち、すごく普通の人ではありませんか。そういえば、おじさんも言っていました。彼らにも、家族があって、立場があると。
「歩けますか?」
「何?」
「あっちに、焚き火があるんです。寒さで動けないということなら、少し頑張れば、助かるかもしれません」
「おいおい、情けをかける気か。止めとけ。その甘さは神様ですら擁護しきれないだろうよ」
リーダー格らしきお兄さんに助かる道を提案してみましたが、すげなく却下されました。私の行いは神様も見放すほどおかしなことなのでしょうか?
「……たが、もし。その慈悲が神の意思だってんなら」
「え?いや、神の意思とかそういうのでは……」
「お前ら、武器を捨てろ!」
凍えて動けないらしかったのに、その行動は素早いものでした。命令を受けた二人が即座に剣を抜き、放り投げたのです。
「この二人だけでいい、助けてやってくれないか。肩を貸してくれればきっと動ける」
「カルカロット!?」
「何いってんの!?」
「こいつらの罪は俺が持っていくから……後少しだけ、猶予をくれてやってくれよ、神様。」
カルカロットさんは、二人を助けてくれと私に懇願しました。どうしましょう。私は別に神の代弁者でも何でもないのですが。
……でも、チャンスなのでまずは二人を助けちゃいましょう。
「二人が辿り着いて、まだ生きていれば助けます。えっと、これが神様の試練みたいな奴です」
「……」
カルカロットさんは何も答えません。私は取り敢えず、二人に肩を貸しました。二人ともすごく冷たいです。実はもう死んでいるのではないでしょうか。
いや、それよりも、勝手に神様の試練とか言ってしまいましたが、怒られませんかね?怒ってませんよね、精霊様?
一抹の不安を抱えつつ、私は焚き火のもとに急ぐのでした。大体歩いて2分くらいですかね。
カブロ なんちゃってステータス
攻撃力 野盗とタイマンで7:3で勝てる位。
防御力 筋肉の鎧は子どもの攻撃くらいは防ぐ。
敏捷力 走りは鍛えてねえなあ。
精神力 2日食わずの仕事を耐え抜いたものさ!
知力 農業関係ならまあ……計算は少しだけ。
スキル
苦痛耐性 B 女子供の不幸は俺が背負う。
根性 C 頭ぶち抜かれた程度なら大丈夫。
筋肉の鎧 D 食うもん食ってねえから質は……。
農業能力 C 知識だけでない本職の力。




