↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様はダラダラしたい!  作者: おもちさん
第二部
272/313

3ー41  情勢の変化

まおだら the 3rd

第41話 情勢の変化




クライスから執務室に呼び出された。

何やら用事があるらしいが面倒臭い。

シンディとの大切な時間を削るとは何事かと。

これが下らん話だったら、あの野郎をグッチャグチャにしてやろうと思う。



「ご領主様、今日はお越しいただき、ありがとうございます」


「おうよ。用件はなんだ」


「先日、凍結の湖畔に行かれたそうですな」


「ちがうぞ、そこまで奥には行ってない。泉の辺りまでだ」


「左様ですか。まぁどちらでも構いませんとも」


「おい、その手は何の真似だ?」



クライスがオレに向けて両手を差し出した。

さらにうっとおしい程に、手を握って開くを繰り返す。



「かの地まで行かれたならば、当然トワブドウも手になさったでしょう。あれは大変に良いものです。情報料として一房頂戴いたしま……」


「果物の事かよ。んなもんねぇよ。精霊とやらに会って話を聞いただけだ」


「なん……です……とぉ!?」



クライスの落胆ぶりはすさまじかった。

まず膝を折り、両手をついて、それから地にした。

それから外皮や骨格がワケわからなくなり、ワケわからない生き物と化した。

水の精霊を隣に並べたら瓜二つだろう。

とろみ感や光沢なんかも遜色がない。



「ったく、世話が焼ける」



未開封の砂糖袋をバリッと開き、液体の上に降り注いだ。

それから撹拌かくはんだ。

存分にまじぇまじぇしてやる。


するとどうだろう。

先程より血色の良い執政官が目の前に現れたではないか。

……なんでだよ。



「失礼しました。あまりにもショックでしたので、迂闊にも正体を失いました」


「そうだな。今のは比喩じゃないな」


「では、お話ししておきたいことですが……」


「この流れで真面目になるなよ」



卓上一杯に地図が広げられた。

大陸全体を記した大きいものだ。

ツヤツヤの爪がプリニシアを指した。



「国境の者から報告があがりました。グラン側からプリニシアへ援軍があったようです」


「援軍ねぇ。それが1000や2000でも怖くはねぇが」


「今回は兵士自体の援軍はほとんどおりません。代わりに最新の兵器が送られました。我らもこれまでのように、常勝というわけには参りますまい」


「兵器だって? それはどんなものだ?」


「申し訳ありません。詳細は不明です。物見の者も最先端技術に明るくはありませんので」


「そっか。まぁ仕方ないか」


「具体的な言葉は、鉄の馬車のようだった、とだけでした」



たいしてヒントにならねぇな。

黒鉄兵を超える戦力で、馬車ねぇ。

ちょっとピンと来ねぇが警戒だけはしておくか。



「すると、オレはどうすりゃいい。まさか先手を打ってプリニシアを制圧してこいとは言わねぇよな?」


「まさかまさか。パパッと滅ぼしてきて貰えれば大助かりですが、さすがに無理でしょう」


「だよなぁアッハッハ」


「どうにか潜入し、破壊工作を……」


「ふざけんなこの野郎」


「おや、無理でしょうか? ダダダッと行ってシャーっとやってドゴーンで済みそうですが」


「擬音で立案すんなよ。さてはお前の中でも筋道たってねぇな?」


「ご明察。さすがですな」


「そうか。お前はもう生きるのに飽きたのか」



破壊そのものはともかく、潜入と離脱が不可能と思えた。

その兵器とやらがハリボテやハッタリなら構わんが、手こずるほどに潜入部隊の危険度が増す。

アシュリーなら秘術での隠蔽が可能だが、アイツは森から離れられない。

つまり自力で多数の警備網を掻い潜って、破壊して、安全に退避する。


……絶対無理だろ。



「相談させてくださいますか。何がネックなのでしょうか」


「相談もクソもねぇ。確実に見つかって殲滅されるだろ。お前たちの魔王さんが死んじゃうぞ?」


「ですから、そこはバリバリのグシャーで」


「さっきと音が変わってんじゃねえか」


「ふむ。では、身軽なもの……スペシャリストをお付けすれば可能ですかな?」


「そうだけどよ。潜入に特化したやつなんか居ねぇ……」



そのとき、廊下が騒がしくなった。

バタバタと駆け足がいくつか。

衛兵の制止する声もセットだ。

それは治まることなく、執務室のドアが開かれた。


そこには二十歳くらいの、服をはだけさせた青年。

二人の衛兵が掴みかかっているが、石像のようにビクともしない。



「はじめまして、オレはアラン。魔王のダンナ、オレを雇ってくれよ!」


「なんだよお前。取り込み中だぞ」


「ダンナがレジスタリアに居るときしか売り込めねぇからな、こうして邪魔させてもらったよ。んで頼むよ、雇ってくれ、な?」


「そうかそうか、さっさと帰れ」


「つれねぇなぁ。こう見えても役に立つんだぜ? アーサーたちも雇ってんだからさ、オレも頼むって」


「なんだお前。アーサーやミアの知り合いか?」



アーサーとミアの会話でたびたびその名を聞いた気がする。

たしか浮浪児時代の兄貴分だったとか。



「ようやく食いついてくれたな? ついこの間までアイツらを食わせてやってたぜ。荒事に首突っ込んだり、屋敷に潜入してトラブル解決したりな!」


「ほほう、潜入とな? アランとやら、詳しくお伺いしたいのだが」



クライスの目が夜の猫のように光る。

この野郎……最悪のタイミングで現れやがって。

もしミッションが成立したときは、死地という死地を引きずり回してやるから覚悟しておけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。