3−38 面会謝絶
まおダラ the 3rd
第38話 面会謝絶
娘を泣かせた罪は重い。
それこそ100回処刑されても仕方ない程だと思う。
まぁ、もちろん死なぬがな。
そんな事したらシンディがもっと泣いちゃうからなヘヘッ。
だから数日は娘ベッタリで過ごそうと思う。
どんな要件を持ち込まれてもお断りだ。
たとえ世界が滅びかねない一大事だとしてもだ。
シンディに泣かれる方が遥かに辛い。
「魔王様、お休みのところ申し訳ありません。ベンリーです」
通信が入る。
返事なんか聴く前から決まってる。
「任せる。上手くやれ」
クライスもやってくる。
最近はノックすらしなくなった劇甘党。
「領主様、本日は報告に……」
「あとで聞く。数日後に持ち越せ」
「わかりました。では空白期間の菓子をいただきたく……」
「くたばれ」
ーーバタン、カチャリ。
鍵を閉めて追い出してやった。
しばらく嘆き声とともにドアを引っ掻かれたが、知らんがな。
そうやって卑劣な者共を討ち果たしていると、シンディが声をかけてきた。
少しばかり不安そうな顔をしていて、その様子がどうにも胸に刺さる。
「おとさん。おしごと、いいの?」
「大丈夫、大丈夫。シンディは何も心配しなくていいんだよ?」
「でも、おじさんが、まだそこにいるの」
ドアの向こうには粘り続けるクライスが居る。
傷心の愛娘を怖がらせるとは許されん、死をもって償え。
ーードウゥ!
後ろ手で魔力砲を放ち、ドアごと遠くまで吹き飛ばしてやった。
これで悪は滅びた。
「お父さんは頑張ったからな。しばらく暇になったんだ。だから一緒に遊ぼう」
「ほんとう? じゃあダンゴムシさんであそぶ?」
「いいねえ。最高だね。クールじゃん」
シンディを肩に抱き、外の原っぱへと向かう。
辺りは相変わらず草花が茂ってるし、天気も最高に良い。
雲ひとつない青空ってやつだ。
オレはどうにかして、娘の心も同じ色に染めてあげたいと思う。
「おとさん、みてみて。ダンゴムシさんがいるの」
大きめの石をひっくり返して、シンディが指をさす。
そして無造作に手を伸ばして手のひらに乗せる。
他にもミミズやら小さな虫が隠れていたが、今回はフォーカスしない。
「この子は、まるまるの。たまに、まるまんない子がいるの」
「そうだなぁ。コロっとならないヤツがいるよな」
「おとさん。どうしてなの? どうして、まるまんない子がいるの?」
きた。
子供の好奇心からくるクイズ。
あいにくオレは学者でもマニアでもないから、理由なんか知らない。
だが、知らないと答えるのもどうかな……。
しばらく無邪気な目を見つめた後、回答した。
「丸まらないのはな、思想のせいだ」
「シソー?」
「思想っていうのは、こうありたい、こうなって欲しいという考えの事だな。丸まらないヤツは、丸くなりたくないと強く願ってるんだ」
「へんなの。ダンゴムシさんなのに」
「変わりモンってのは、どんな場所にも居るもんさ」
よし、大成功。
シンディは完全に納得してくれたぞ。
どうにか父親の威厳は保てたな。
安堵の息を吐いていると、家から人がやってきた。
ミアだ。
彼女は手元にいくつもの紙を抱えている。
良い予感がしないのはなぜだろう。
「魔王様。お休みのところすみません」
「ミアか。良かったら一緒に遊ぶか?」
「もちろんご一緒します。ですが、こちらをお読みいただいてからです」
手渡された紙は、何かの図面だった。
設計図というほど精密じゃないが、かなり細かく描かれている。
木の板の組み合わせ、手動による仕掛け、咎人に刃。
「ミア君。一応聞くが、これは何かね?」
「魔王様が中々粛清をなさらないので、はかどるように処刑具を考えました」
「やめてぇーー。今娘とほっこり遊んでるのー、ほんとやめてぇー」
そのときふと思い出す。
ファングから魔道具を貰ってたんだ。
腰の小袋から取り出し、それをシンディにつけてやる。
「おとさん、これなぁに?」
「これはお土産だ。ミアと喋ってみて」
「ミアちゃんと?」
「あれ、あれ、シンディちゃん。もしかして……」
「しゃべれるの! ミアちゃんとはなせるの!」
両手を取り合って飛び跳ねる2人。
手からこぼれ落ちて地面に転がるダンゴムシくん。
いや、そっちはどうでも良いか。
「ミアちゃん、ミアちゃん!」
「シンディちゃん、シンディちゃん!」
「これからは、いっぱいはなせるの。おハナとか、ムシさんとか!」
「色々お話しましょう。新しい処刑法や、粛清すべき顔ぶれとか!」
「ショケーホーってなぁに?」
「ええとですね、ベーシックなものから説明しますね。まず火あぶりという……」
「ミア、その説明ちょっと待った」
会話が可能になったは良いが、悩みがまた一つ増えてしまった。
もしかするとシンディがミアの思想に染まってしまうかもしれない。
どうにかして染まる事なく、自分のスタイルを貫き続けて欲しい。
例のダンゴムシのごとく。
丸まらないダンゴムシのごとく。
まぁ実際のところ、その辺を管理しているのはリタだ。
だから丸投げしておく。
アイツの手腕に期待しつつ、キャアキャアとはしゃぎ続ける2人を眺め続けた。




