26話 子狐の切ない雫
ジュピテールは左肩の痛みを堪えて、そっとマーズを抱えた。
「私は寄るところが出来た、騎士団長殿は先に皆を連れて戻っていてくれ。」
「国王殿ここは敵国です、私も護衛でついて行かせて貰います。」
「すまないな、さてこの傷では外から降りるのは厳しいな。」
「王城を降りるにもこの大きな穴は厄介ですね。」
その大きな穴は、大樹が作った穴だった。
「信号弾で合図を送ろうにもこの雨だからな。」
「しかしこのままだとマズイですね。
敵の騎士団が来るのも時間の問題ですし。」
するのその穴の下からバランが氷の階段を作り登ってきた。
「お父様!! 大丈夫ですか!?」
バランは国王に駆け寄ると氷で止血した。
「助かったバラン、全部隊撤退する詳しい話は後だ!」
「分かりました。」
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バランとチタ部隊はA地点へと到着した。
「上手く行かなかったみたいだねー。」
バラン達の顔色を見たアルスが言った。
「詳しい事はお父様しか分からない状況です。
ただメルキュール様を、見つけることは出来ません出した。」
バランが悔しそうに言った。
「そうだったか……、国王様は何処に?」
アルスが寂しそうに言った。
「寄るところがあるから少し待って居てくれと。」
「結局俺達の出番は無しかよ〜!」
アレイユが文句を言った。
「そうとも限らないぞアレイユ、これから本部隊と合流してこの梅雨霧戦争の因縁を終わらせるぞ!」
国王が騎士団長に肩を支えられながら歩いて来て声を上げた。
「このまま戦場に行き挟み討ちにして降伏させましょう。」
騎士団長が案を出した。
「よし、これより戦争を終わらせに行くぞ!
騎士団長殿後は任せた、私はこれ以上戦えない。」
「それなら指揮はバランに任せましょう、騎士団長として国王殿を国にお連れします。」
「分かった、バラン後は任せたぞ!」
バランは頷き、国王は騎士団長に支えられながら歩いて行った。
「よし、これより戦争に駆けつける。
第1第2部隊が前線へ、第3部隊は……。」
バランは言いかけた時、アレイユとリュンヌの輝いた目が合った。
「全部隊前線へ、各部隊隊長の指示に従い全力を尽くそう!」
「おぉーーーーーー!!!」
全員が声と拳を上げて、隊長を先頭に走り出した。
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朝日が昇り雨が止み戦場では、また戦いが始まっていた。
戦場はすぐに乱闘になりハルジオン王国側の2人の男女が、アジサイ王国側の騎士団達に囲まれていた。
「ウルフード副隊長、バラン隊長と同じコンビ魔法で敵を一掃して差し上げましょう。」
黒髪ロングの大きな胸の、美しい凛とした女性が半獣化しながら言った。
獣耳と太いしっぽが生えていた。
「フォリネ隊長、了解した。」
騎士団の戦闘服の下に灰色のフードを着た、アッシュグレー短髪の目つきの鋭い青年が、半獣化しながら余り感情の無い声で言った。
獣耳と太いしっぽに鋭い牙が生えていた。
「子狐の切ない雫。」
七匹の子狐達が現れて、全方向に均等に別れて行った。
子狐達が位置に着くと、しっぽの水が大きくなり直径5mほどの大きな水の玉になった。
「フードルコード・オールディレクション。」
ウルフードから全方向に計16発の雷の稲妻が撃たれた。
稲妻が水の玉に当たり水の玉が敵方向に弾け飛んで、水の中で凄まじい稲妻が走り広範囲の敵を感電させて倒していった。
「コード・コンプリート。」