エピローグ
あれから二年が経った。
俺は高校を中退し、親元を離れて働いている。
あの出来事からというもの俺に備わっていた能力は跡形もなく消えていた。
別に寂しいわけじゃないが、やはりどこか空虚が残る。
今まであったものが突然無くなるのはとても違和感があった。
でも、それでいいと思う…。俺には代わりに見える人ができたから…。
「ただいま〜。篤君」
「君?」
「ごめんなさい。おかしな癖が出ちゃったね」
そう言うと彼女はえへへ、と笑う。
「ただいま。篤…」
「うん。お帰り…。ユイ…」
俺が微笑むとユイがまた、えへへ、と笑う。
そんな日々が楽しくて、幸せで、俺が笑うと彼女も笑ってくれる。
『幸せ』という意味を彼女と一緒にいて理解したと思う。
「夕ご飯の支度するね」
「うん…」
「…篤」
ユイがエプロンを着ながら言う。
「なに?」
「私、幸せだよ!」
「うん」
俺は思う『幸せ』ってこの事をいうんだと…。
今、俺は幸せだと胸を張って言える。
大切で掛け替えのない人がすぐ傍に居るから…。
だから俺は幸せだと胸を張って言える。
「俺も幸せだよ…」
今回でこの話は終わりです。最後までお付き合いいただいた方々、誠にありがとうございます。




