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救命活動with転生Girls!〈外伝〉  作者: 涼雲ルミ
復讐子息とジンリョク
12/13

そして繋がりを想う。

それから、カタリナさんと言う方がポーションを持ってきてくれたみたいだ。これ、苦いんだよな…と思いつつ、嫌がる兄さんに飲ませる。苦いのは分かるけど!

悲鳴を上げる兄さんを置いて、他にも何人か近くに居た子達にポーションを飲ませる。

…精霊王に「これ飲ませてあげて!」と手渡されたポーションだけは悲鳴を上げられなかったのは気の所為だと思いたいけど、多分本当だ。


………それにしても、本当に書き換えたんだ…。

崩れてしまった洞窟を見て、そう思わざるを得ない。これはティーアが凄いのか、時代の流れが衰退したのか、…ティーアに聞いたら絶対後者って答えるんだろうなぁと思ってしまう。

セラフィーナ様に聞いたらどうなるのだろうか。…でも、前提常識が違うからなぁ。



「フィーナ?」

そして、大方ポーションを配り終え、皆が意識を取り戻す中、一人だけずっと横たわる人が居た。その人はセラフィーナ様と一緒におり、セラフィーナ様やネフェルさんが水魔法を使って水を放出していた。

ネフェルさんが少しだけ誇らしげなのは気の所為かな。

「…この中に水魔法を使える方いらっしゃいますか?」

ティーアが僕らの方を見回しながらそう言う。

「お二人を手助けしてあげてください」

手助けか…、優しさの水を降らして、ってことだよな。

…だけど、僕にはそんなことできない。

だって僕、四大魔法を覚えようと思って頑張っては居るけど、中々上手く扱えなくて…。今の主流は四大魔法だからって。


だから……


「なら俺が引き受けよう」


ー…だから、何だ?


「…まだ魔力が残ってるんだ、先程までは情けない姿を見せてばかりだったからこそ、挽回させて欲しい」


レオンハルト様は、そんなこと考えてないじゃないか。

情けなくなんか無かった、大男を倒してくれた。だけどレオンハルト様は、まだやろうとしてる。目の前で倒れ込んでいる人を助けようとしている。

僕は?…僕だって、やれば良いじゃないか。

無理だったらやめればいい、諦めればいい、…だけど、今挑戦しなかったら…いつまで経ってもそのままだ。挑戦せず諦める理由なんて一つもない。

一歩、踏み出さなければ。

僕は後ろの方から女性に向かって手を伸ばす。…魔力を溜め込み、セラフィーナ様達に加勢する。

まだ魔力が残ってる。だから出来る、練習したんだ、…だから絶対………!!!


「…ぷはぁっ〜! 生き返る〜!!!!」


……絶対、成功する筈だから。

ピカッと光を浴びたかと思えば、そんな呑気な声が聞こえてきた。

「ありがと、君達!」と、優しげに笑みを浮かべるその人は、どうやら種族が違うみたいだ。肌は水色で、水滴のようにぷるぷるしている。瞳はとても透き通っていて、鏡のように光を反射していた。僕のお陰ではないけど、僕にも言ってくれている気がして、少しだけ嬉しかった。

…役に立ってたら良いな、なんて思っていると…


「……とんでもありません、水精霊ウンディーネ様」


…ティーアが、とんでもない一言を呟いた。

精霊王の次は水精霊様とか、聞いてないにも程があるんだけど!?!!


それから、水精霊様と精霊王様は話し合う。

水精霊様はにっこにこだったが、精霊王様はふくれっ面だった。なんてことないようにバンバンと精舞の極を使っていく水精霊様には、最早尊敬の念を抱かざるを得ないし、畏怖の念すら抱いてしまう。

もしも、この人が敵になったら。

…そう思うと、ゾッと寒気が襲ってくる。まだ、味方と決まったわけではないから余計に。





奴隷商人に捕まっていた人達はネフェルさんのお宅に連れて行ったとのことで、僕らは、その男爵屋敷のほぼ裏手側に位置しているモーセの実家にやってきた。

ここは…ギルドかな?噂でしか聞いたこと無かったけど、ホントにあるんだ。

「こんなものしか出せなくてごめんなさいね」

と言いながら紅茶を出してくれるカタリナさんに対して、傍に居たセラフィーナ様は「お腹の中に赤ちゃんがいるんだから、無理しないで…!」と言いながらお茶出しを手伝う。…とても普通の令嬢とは言えない気がしてならない。そこがセラフィーナ様の良い所だけど。


「…まずは状況整理したいのだけれど…」

そう言いながら辺りを見回すティーア。

ここには、僕と兄さん、ロータスさんとティーア、セラフィーナ様とレオンハルト様、キャンディさんとグリムさん、ネフェルさんとモーセ、そして彼の兄であるアロンさんと義姉であるカタリナさん、それから奴隷商人の一人と、スピリット様ウンディーネ様の精霊二人組。


精霊様のティーアに対する態度が前世を思わすようで。

僕はティーアの前世は知らない、…だけど、なんとなく、2人の間に親しみを感じられる。だから恐らく知り合いだろう。

まあ、水精霊様からしたらセラフィーナ様もなんだろうけど。なんというか、全体的に軽い感じがする。セラフィーナ様の方は口を開いたそうにもじもじしている。…水精霊様もそのオトチカってゲームに出てきてるのだろうか。


「…まあ、私も…色々気になるけど、色々あってここに居るのですよねぇ〜」

「なるほど〜!」

その色々を聞きたい!それに、セラフィーナ様のその態度も!

「うーちゃん先輩って良いですねぇ〜!」

「え、あ…」

ってか、なんでそうなったんだ…!?

「これからもそう呼んでくれて良いですよぉっ」

「あ、ありがとうございます!?!!」

もう、わけがわからたいよ…。

頭を抱えそうになるのをぐっと堪えながら椅子に座る僕だったが、頭の中は話したいことでいっぱいだった。

そもそも兄さんが捕まったことも不思議だし、精霊様なんて会ったこと無いし、精舞の極って本気で使える人いたの?

様付けが嫌すぎて駄々をこねる精霊王。

それを呆れた目で見つめる四大精霊が一人、水精霊。

精霊様にそう言わせること自体がぶっ飛んでて、セラフィーナ様やティーアらしいと言えるだろうが…、それにしてはぶっ飛びすぎている気がしてならない。

転生者ってどこから来たか問わず皆こんな感じなのだろうか。


そんなことを思っていると、隣で兄さんが立ち上がる気配がした。焦ったように「やべぇ…」と呟かれるので、僕も心配になってしまう。

「どうしたの兄さん!?」

僕がそう言えば、「え、あぁ…」っと、更に顔を真っ青にする。そして、


「またフランに怒られる…!?!!」


どこまでもフランさんのことを思っているんだなぁと。

呆れるよりも前に感心してしまう。こんなに兄さんに想われているフランさんに、少し悔しくなってしまう。まあ、フランさんと話してる兄さんは凄く幸せそうだから何も言えないけど。

それから、ロータスさんが「それよりも」と言いながら兄さんを座らせる。

「今怒ってる天変地異の出来事が見えてないのか?」

「だってぇでもぉ…フランに会いに行く為にフルール村行ったんだしぃ…」

ロータスさんの言いたいことも兄さんの言いたいことも分かるからこそ何も言えない。

ティーアやセラフィーナ様のように、精霊以上に馬鹿げた話を聞いていなければ、僕は兄さんを想うよりも前に倒れていた所だろう。


「アボイ!!!」

アボイドもいつものように尻尾で兄さんを攻撃する。この棘、硬そうに見えてそこまで硬くない日があるんだよね。アボイドってほんと面白い。

「ギャッっ!?!!」

………面白い…?…というか、まぁ…今日の攻撃力は高いみたいだ。

でも、これもきっとアボイドは兄さんのことを心配していたのだろう。僕をここまで連れてきてくれたと言っても過言ではない働きをしてくれたアボイド。それも、兄さんを助けたかったからに違いない。

僕についてくることが多いアボイドだが、兄さんにだって同じくらい懐いている。だからこそ、…あんな目に遭った兄さんを、心配しない筈が無いのだ。

そして……


「「クンペル…」」


それを見たティーアとセラフィーナ様が、同時にそう呟く。精霊王様含め皆は不思議そうな顔をしていたが、水精霊様は何かを含むような婉然な笑みを浮かべた。驚いたようにも見えるが、それ以上に安心したような目。

スピリット様も、「へ〜これがクンペルなんだ!」と呟き、そして微笑む。彼が「噂通りだね」と言えば、隣に座っている彼女が「そうね〜」と呟きながらこちらを見つめた。

「ふーん、時代遅れの王女様に異世界少女、異次元の魔力にクンペル持ち、見慣れない体質に…」

「ちょちょちょ、ストップ!待ちなさいウンディーネちゃま!!」

ティーアがそう言い放つ。すとっぷ…確か、セラフィーナ様の前世の言葉だっけ。止まってって意味だった気がする。

「えぇ〜あの時みたいにうーちゃんって呼んでくれるまで待たないで〜す…えっとそれから、可愛らしい妊婦さんに混血エルフ、あとは…」

「分かった!分かったから!うーちゃん!これで良い!?」

先程の妖艶な笑みとは打って変わり、幼い子供のように元気良く「うん!」言い放つ水精霊…ウンディーネ様は、ティーアを抱き上げて膝の上に乗せる。

満足そうな笑みを浮かべる水精霊様とは対照的に一瞬嫌そうな顔をしていたティーアだったが、反転し、すぐに微笑みを浮かべる。


…1000年以上生きている水精霊様は、たった数歳の少女よりも幼く見え、…1000年前に生きていた十数歳の少女は、1000年ぶりに再会したのであろう精霊よりも大人びて見えた。


「あの…はい、精霊様は一旦置いておきましょう。クンペルも置いといて、問題は…」

ティーアは一度こほんっと咳払いをした後、頬を少し赤らめてこう言い切る。


「………レオンハルトさん、責任は取りますから」

…なんの責任なのか、レオンハルト様本人は分かっていないようだった。だけど、…なんとなく察してしまう。

「暫く会わない方が良いですよね」

「え…?」

ティーアのその唐突な言葉に、レオンハルト様も心の声が溢れている。

ティーア、そんな口数じゃ伝わるものも伝わらないよ。……僕が言えたことじゃないんだけど。


「…さっすがです、ティーナちゃん…」

周りが静かだからか、水精霊様がそう呟いたのが聞こえてくる。

……やっぱりそうなんだ、1000年前から居るんだ…。

ティーアと知り合いっぽかったからなんとなくそう言ってみたけど、ほんとにそうだったんですね。


そして、レオンハルト様とティーアが話し合いを始めるが、どことなく言葉が弱い気がする。…十数歳程生きていた割に、単純と言うか純粋というか…。2歳で死んでるわけじゃないだろうから、前世合わせたらきっと僕より年上な筈なのに。

……そして、ふと思ってしまう。ティーアは前世で婚約者様は居たのだろうか、と。

童話ではそんな王子様みたいな人は出てこない、出てくるのはお兄さんだけだ。

だけど、居るのだろうか。婚約者様。

だとしたらその人はどんな思いでティーアと別れたのだろう、そしてティーアはどんな思いで今を生きているのだろう。お兄さんだって別れたくなんか無かった筈なのに。

…それだけじゃない、彼女の前世には繋がりがあった筈だ。それなのに、…その繋がりが、パタリと途切れてしまったのだとしたら……


「……」


だとしたら。…水精霊様が子供のように見えてしまうのも、無理はないのかもしれない。1000年間生きていても、心は1000年前のままなのかも。

ティーアを膝に置くのだって、…これ以上、離れたくないからなのかもしれない。

僕だって、これから突然兄さんや皆とはもう二度と会えませんってなったらどうなってしまうか分からないし、…そんな時会ったことのある人と出会えたらそれだけで嬉しい。


そう思い、皆がシーンと静まり返る中、唯一…





「チッ…どうなっていやがる!!」





奴隷商人の男が口を開いた。

彼は、兄さんにロータスさんがいるので動けなくなっている。更に、魔力封じの縄で縛られているので、簡単には動けない。


「テメェら全員バケモンかよ…」

「ネーちゃんがバケモンなわけあるか!撤回しろよ!」

バチバチと睨み合う男とモーセ。

あ、そういえばネーちゃんって、お姉さん…ミリアムさんのことだと思ってたけど、ネフェルさんのことだったんだ。確かに、いい意味でネフェルさんは普通だから、モーセがそう言うのも無理はないかぁと思ってしまう。でも、モーセだって普通だと思うんだが。

そんなこといえるはずもなく、睨み合う2人を見つめるだけ。


水精霊様が気になったかのように、何故縄で繋がれているのか…と聞けば、セラフィーナ様が答える。

「へ〜」

それから、水精霊様が指と指を擦り負わせて指を鳴らす。


「「「え??」」」


…誰が発したかは分からない。少なくとも自分や隣からは聞こえてきた。綺麗に合わさった声、殆どの人が声を上げていた。…上げざるを得なかった。

レオンハルト様もセラフィーナ様も他の皆も、縄から解放された男を唖然として見つめ、その男本人も驚愕している。

そんな中、恐らくその原因である水精霊様はティーアの髪を弄りながら、こちらには見向きもしない。

「あら?これが普通じゃないんですかぁ〜?」

「知らなーい、けど別に好条件なんじゃない?…ウンディーネは鬼畜だと思うけどね」

「あらやだ。王子の方が外道じゃないですか〜!」

水精霊様と精霊王様が当然のようにそう言い放つ。

そちらを見てみれば、ティーアの髪がキラキラと輝いていた。…気の所為かな、物凄くツヤツヤでサラサラで、…めちゃくちゃ手入れされてる……

されるがままになっているティーアは珍しいなと思い、思わず微笑んでしまった。


それから…


「…帰ろうかな。フランが心配してるだろうし…」


隣からは、そんな声が聞こえてきた。

そうだよね、兄さん、フランさんの所に行く予定だったのが2日くらい遅れたんだもん、ただでさえ最近伯爵家のことで忙しいっていうのに。

僕も「行った方が良いよ」と言い放つ。

お継母様なら絶対そう言うだろうし、お父様には逆に怒られるかもしれない。「何故奴隷商人なんぞぶっ飛ばしてでも行かなかったのか」って。

お母様もお継母様も、そういう所に惚れたんだろうなぁと納得せざるを得ないくらい、人一倍愛情を持っているお父様。平民でも貴族でも何でも、愛があればなんとかするのが信条らしい。


そんなことを考えていると…カランカランと扉が開いた。そこにいたのは…


「ネフェル!!!」「お、お父様…!?」

恐らく、タリティ男爵家の当主ジャミル・タリティ様。そしてその後ろには…


「王国騎士団…」

僕達のソレイユ王国が誇る、王国騎士団の人達が数人、神妙な面持ちで立っていたのだった。



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