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救命活動with転生Girls!〈外伝〉  作者: 涼雲ルミ
語り部様と物語
1/13

語り部の日常(続)

この世界には“魔法”が存在していた。

魔法には“属性”というものが存在しており、個人個人にも生まれ持った“器”がある。その器と一致する魔法を使う且つ魔法のイメージを明確に想像できる者こそが、強い魔法使いであるのだ。


魔法は、“聖”から始まり、“光”と“闇”に別れた。そしていつしか…それぞれの適性に合わせ、分割していった。


“光”からは、“火”、“風”、“水”、“土”となり、“炎”、“雷”、“氷”、“栄”に。

“闇”からは、“療”、“打”、“幽”、“算”となり、“治”、“斬”、“呪”、“機”に。


長い長い時を経て、始まりの魔法である“聖”に近い器を持つ者は…伝説の救世主、クリスティーナ・ラグジュアル・サンスベリアに近い存在とされ崇められるようになったそうな。


そして、その伝説は様々な困難を掻い潜り、現代のこの世界にも…誰もが知っている神話として浸透している。


伝説は逸話となり、寓話とされ…、いつの日かある程度の人々は信じなくなった。クリスティーナ・ラグジュアル・サンスベリアなど、ただの御伽話の登場人物にしか過ぎない…と。


もちろん、信じている人々も大勢いる。

信じて信仰する者もいれば…いないとわかりつつも信仰し、安心を得ようとする者もいる。


まるで異世界のようだと思わないかい?

神様が本当にいるのかどうかもわからず、参拝やイベントを重ねる。きっと、どの世界でも本質は同じなのだろうね。



さて、この物語を続ける前に…話が逸れてしまったことをお詫び申し上げよう。わがままだが、君達の時間を無駄にはしたくない。



さあ、ここからは新しい物語の幕開けだ!




―――これは…伝説の救世主であった転生少女と、普通の高校生だった転生少女が…、知らず知らずのうちに新しい伝説を作り紡ぐまでの物語―――





ーーー




「どうかなマリアージュ!?結構良い書き出しだと思わないかい!?!?」

「………却下、」

割と自信があったからこそ、マリアージュに呆れたような目で即答されてしまい少し凹む。


「伝説の救世主って盛りすぎだし、多分普通でもないでしょ心愛さんは」

ため息をつきながらそう言ってくるマリアージュ。…そんなこと言わないでくれよ、俺だからこそ心にくるものがある。


「だが安心してくれ、俺は自分の人生を極普通だったと思っている、だから心愛さんの人生も広く捉えれば普通さ。それに、ティーナのことも…」

「あーはいはい、ティーナちゃんは貴方より立派でしたー!」

「…それはそうだな、アイツは俺より立派だった」


…死にさえしなければ。俺がその一言を述べずとも、マリアージュはそっと目を伏せる。

俺とは違い努力で全てを成し遂げてきた彼女。

そんな彼女だからこそ、後世に名を残すべきなのだ。…もちろん俺が兄だからそう思うのも無理はない。

それでも、彼女の方が凄いという根拠があるから。


「…書換魔法に反射魔法、そして無効化魔法…」


本来は加護により成し得るようなことも、彼女自身が努力し分析し、そして新たな枠として展開し、更にその魔術式を編み出した。

それは誇るべきことだし、消して良い事実なわけがない。明らかに残していくべき偉業だ。


「…俺という超えるべき存在がいることで、彼女は飛躍的に成長した。…もちろん君もだけどね、」

「……うるさいわね、私達の殆どが貴方を超えられなかったでしょ!」


その言葉には答えることなく笑っておく。

…まあ、マリアージュの場合は俺がいたから俺の上に飛べたというよりも、マリアージュがいたから俺が抗えなかったと言った方が正しいだろうか。


いずれにせよ、クリスティーナは俺の自慢の妹。

そしてティーアも、俺にとっては大事な大事な女の子。…もしも彼女を傷つけるようならば、例え相手が誰であろうとも許さないだろう。…まあ、マリアージュだったら五分五分かもしれないけれども。


「…それにしても気になるな、…この男…」

「?あぁ、えっと…異世界の、オトチカの作者の??」


古の乙女と永遠なる誓い…通称オトチカ。

その原作者であるこの男がどうにも引っかかる。…何故こんなにも正確に模倣して未来を描けたのか。逆に考えれば、この男が描いた通りの未来になっているとも言えるこの状況。


この男が未来予知の加護でも持っているのか。

それとも三人成虎の加護でも持っているのか。


前者ならまだしも、後者ならば厄介なことになる。

何故なら未来を作り変えることができるということになるからだ。

三人成虎…根拠のない噂でも、多くの人が何度も言えば、いつのまにか真実のように受け取られること。

つまりまあ、根拠がなくとも書いたことが本当になる能力を持っていると仮定するのであれば納得はできるが…


「天地がひっくり返ってしまうな…笑」

「貴方がそれ言う?????」


クリスティーナや心愛さん達の役目とはまた別なのだろうということだけはわかる。

それに、例え彼自身にそれらの加護が備わっていたとしても、不思議ではないだろう。何故なら彼には、2つの世界を同時に行き来したという過去があるから。

ただ、その出来事とこの出来事を結びつけるのは少々忍びないな。


「…とりあえず今は何もできないし、何かするつもりもないさ」

「そんなこと言って、ホントは霊感強そうな子達の所に行こうとしてるじゃない。あとこの日の為に何年も前から国王に顔を覚えさせて…」


…いや、普通に国の未来を任せられるかどうか確認してたけど…。だけかと聞かれれば答えづらいな、確かに。


「加護だかなんだか知らないけど、あんまやり過ぎるとグレイヴ様に怒られるからね?」

「…その時はその時。一緒について来てくれるだろ?」

「もぉー!なんでそんな自信が湧いてくるのよぉっっ!!!!」


マリアージュのポカポカとした殴りを受け止めながら、俺は水晶から妹を眺める。…ちょうど彼の孫を助けたらしい、異世界転生者―天羽(あもう)心愛(ここあ)さんと共に。



…世界は繋がっている。そして世界は回っている。

無数に広がるこの場所は、絶えなく重なり、交わり、時を経てまた新たに紡がれる。


離れていても、心は繋がっている。


そんな綺麗事を綺麗事で終わらせるつもりはないから。

お前なら出来る。天才と謳われたこの俺―クリストファー・ラグジュアル・サンスベリアが近くにいようとも、絶え間ない努力をし続けた、挑戦し続けた、…そんな俺の自慢の妹―クリスティーナ・ラグジュアル・サンスベリアなのだから。


…例え何があっても、俺がお前を見捨てることはない。

お前が頑張った分、今度は必ず誰かが助けてくれる。隣で立ち上がってくれる人がいる。


その行為は、巡り巡って返ってくる。…俺は必ず返す。



「…それじゃ、ちょっと復讐子息からシフトチェンジした霊感少年と会って来ようかな、」

「ほらぁーやっぱり行くんじゃない!…でも意外ね、第二王位継承者なのかと…」


まあ、彼も彼で割と霊感は強めだからな…


「でも、なんとなく立場が同じすぎて好きになれないんだ、」

「うわぁ主観」


…妹が大好きな気持ちも、王家の第一子の子供であることも、俺の子孫であることも分かっている。それでも、俺がマリアージュに堕ちたことを考えれば、もしものことを考えてしまうから。


「お前だってそうだろ?マリアージュ、」

「うっ…まあ、確かに第二王位継承者はそうかも…」


マリアージュだって、自身が制御しきれなかったという経験を考えれば、彼の行く先が心配になるのは仕方のない話なのだ。

…そう、俺達は彼の危うさを誰よりも理解している。

彼本来の立場も、彼の境遇も、彼の身近に潜む危険も、そして知らないうちに既に巻き込まれているという点においても。

それでも、だからこそなるべくならティーナに近づいては欲しくない男No.1なのだ。…ティーナは優しいから、きっと彼のことを受け入れようとする。それがたまらなく悔しい。悔しいけど、マリアージュを受け入れてくれたティーナには、俺も同じように受け入れる努力をしなければならない。…嫌われたくないもん。


「まあ何でも良いじゃない、ティーナちゃんが幸せなら…」

「…バカ言え、…色々考えはあるが、思っても見ればまだあの子には早い。」

…それに、10歳にも満たなかったあの日…婚約者を亡くした彼女に、また同じ想いをさせるわけにはいかない。


だからこそ、ピンチの時は助けてやるけどな。

…だから、何があっても絶対助けろよ、必ず。



「…これは国王命令だからな、」


俺は一人になり小さくそう言い放つ。

その声は酷く冷たかった。…おかしいな、そんなつもりはなかった筈なのに。感情が制御しきれていないとは…俺もまだまだ若いな。

たった100年弱しか外界で生活していない筈なのに、今や900年も死の国で生きてしまった。…9倍は異例すぎて、100年経つ度に「さっさと地獄行け」と死の国の使者のクンペルから言われる始末。

…俺自身は天国行きか神になるのが妥当だと思ってるのだが…

それでも、まだ地獄にも、そして天国に行くつもりはない。ティーナのことが心配なのはもちろんある。でもそれ以上に、彼のことを放って置くわけには行かない。


「さぁて、…当代の国王には悪いが、…少々見逃すことにしよう、」


俺は国王であり王子。王子として民の希望となり、国王として民を導かねばならない。

…だがそれ以前に、あくまでも一人の人間だ。

死んだ後の国のことよりも、嘗ての仲間を応援したくなるのは当然のこと。…その目的が可愛い可愛い妹を尊敬してて、一目でも良いから会いたいというものであるのならば、尚更応援せざるを得ない。


「俺は綺麗事が嫌いだ、」


綺麗事を綺麗事で終わらせるのが大嫌いだ。

…だから、スーを助け皆も助ける。…綺麗事なんかじゃなく、事実として。



その為ならば、微力ながら全力で手を貸そう。



「はじめまして、少年」

「だぁれ?…にいちゃは…?」



未来への投資って奴だ。



「…へぇ、…クンペル持ちなら話は早いな、」

「アボイ?ボイ!!!」



…必ず全てを円滑に終わらせる為に。



「…君に、未来を託そう」

「???」




これだと異世界の俺となんら変わりないので、思わず笑ってしまう。結局彼の光る物は見過ごせない。どの世界線でも俺は彼に未来を託すのだ。

唯一違うのは、…可愛い妹は俺の隣には居らず、未来を託す筈だった少女の隣に立っているということだけ。


その、小さいようで大きな大きな歯車が、一体どこで綻びるかは興味深いな。


…そして、その綻びの先で…誰がどこにいるのかも。

未来を予知した所で、それを知り動けば変わっていく。何年も前にした予知なんて何の当てにもならない。だからこそ、足掻き続ける理由になる。



「にいちゃー!きんいろのひとにこれもらった!」

「?何それ???」

「らーない!」


…知らなくて良い、知る必要はない。

それでも、いつか君の助けになる事を信じて。


俺の想いを付与した宝石を、必要な時に思い出してくれることを願って。どうか頼んだぞ。






あぁ、それから。

これは外伝なので、本編を読んでからの方が内容を把握しやすい筈だ。…もしも読んでいる人がいるのなら…俺の名も知っているだろうからな。

俺の名を知っている人だからこそ、分かることも多い。

逆に言えば、知らなければ「なんだコイツら」と思ってしまうかもしれないね。


でも、この出会いは嘘じゃない。

…例えエイプリルフールでもね。



ふふっ…さあ、改めて聞いてみようか。

頭脳明晰容姿端麗完全無欠完璧尽善尽美尽力大天才…加護持ち王子である俺の名は…






やっぱ語り部様から始まらないとね(?)




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