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3-A 暗黒大魔神に感謝

 ちょっと早いけど投稿開始です。

 3放送目は4話です。


 あと、タイトルとあらすじが変わっております。

 どこかにある、忘れ去られた神殿の大広間。

 太い柱が四本立った、ひときわ暗いその奥。

 昔は神像が置かれていたであろう場所。 

 薄いベールの奥に、いろんな種族の骸骨で装飾された椅子があった。


 座る者のいない椅子にひれ伏して、アレニエと呼ばれた男は、自分の所属する組織の主を待っていた。


 周囲には誰とも、何ともつかない影達が、ひれ伏すアレニエを見下ろしていた。


 生温かい、どこか血のにおいがする風が吹いた。


 アレニエの周囲の影達がひざまずく。

 同時に、アレニエの体が震え始めた。

 

 椅子に何かが座ったのがわかる。


「申せ」


 椅子の置かれている階段のしたから幼い声がアレニエに命じた。


「暗黒大魔神の神器を確認致しました」


 大広間で跪く影達がざわめく。


「誠か」

 

 幼い声がした反対側から年老いた声が確認した。

 影達が黙り、静寂が広間を満たす。


「暗黒大魔神に誓って」


 椅子に座った存在がアレニエを見たのがわかった。

 アレニエは頭の中まで見透かす視線を感じて更に震え上がる。


「「功績によりそちに位階を授ける」」


 幼い声と年老いた声が同時にアレニエに告げる。

 影達がどよめいた。


「ありがたき、ありがたき幸せ」

 アレニエの体が畏怖とは別の感情で震える。

 追い剥ぎ、強盗。ダンジョン探索者を殺して奪った金をいくら捧げても得られなかった位階がついに手に入ったのだ。


 主が去り、影達が消えても、アレニエは暗黒大魔神に感謝の祈りを捧げ続けた。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「いや~牢屋って本当に臭い飯なんだね」

 身分が高い人用の牢屋のお風呂に出した黒い電話ボックスで、旋は巷で暗黒大魔神と呼ばれる、闇と夜の神と話していた。


 裸になってさあ風呂に入ろうとしたら、お湯が入ってなかったのだ。家の手伝いをしていないのがバレバレだ。


 風呂場は暖かいし、また服を着るのもめんどくさい。旋はお湯がたまるまで夜と闇の神とおしゃべりして時間を潰すことにした。


『騎士用の食事で、たまたまニンニクが多かっただけじゃろ、好き嫌いはいかんぞ』

「いや、あれ結構好きじゃん。でも一応私、年頃の女子だしぃ、においが気になるっていうか~」

『女子?一日に二回つかまっとるじゃろ』

「仕方ないじゃん!まあ嫌疑ははれたし、牢屋って言っても取り調べで遅くなったから、泊めてくれてるだけじゃん。鍵も渡されているし」

 本来なら外から鍵を締めて拘留だが、旋はドイルから鍵を渡されていた。扉が内側から空くなら、身分が高い人用の牢屋はただの部屋だ。バス、トイレ付き。内装は日本のホテルより豪華だ。


『それで、異世界一日目はどうじゃった?』

「結構、楽しかったじゃん。一回ピンチだったけど。あの半魔物って何?」

『動物が魔物の影響で変質したんじゃ。本来なら起こらん現象なんじゃが、なんせ魔物が多すぎる。神様もびっくりじゃな』

「そもそもなんで魔物を世界に入れる必要があるじゃん?」

『ちゃんとした割合で魔物を入れると人類が争わなくなるんじゃ。共通の敵ってやつじゃな。魔物が全滅する頃にちょうど人類が成熟して、戦争とかがおこしづらくなるんじゃよ』

「そうなんだ。神の誤算ってヤツ?」

『誤算も何も、うっかりじゃよ。スプーン一杯でいいのに闘いの神め、缶を丸ごと落としたんじゃ。慌てて拾ったんじゃがほとんど入ってしもうた』

「oh・・・」

『懐かしいのう。わしらもそんな感じじゃった。誤算と言えば半魔物で嬉しい方の誤算もあった』

「嬉しい?魔物なのに?」

『ひとがたの魔物の一部が自我をもって半魔物になったんじゃ。もうあれは新しい人類じゃな』

「人類になると嬉しいの?」

『わしら神は人類の祈りや捧げ物で力を得ているからのう』

「捧げ物といえばポケットに入っていたお金!神様が入れてくれたの?」

『そうじゃよ。まだワシにまともな捧げ物がきとった時代の残りじゃ。古くって驚ろかれたじゃろ?』

「まあね。でも感謝感激じゃん。ホントありがと」

『異世界で無一文では困るじゃろうし。でも最近の捧げ物は血ばっかりなのじゃ』

「血?」

『野牛やイノシンの生き血じゃ。あいつらワシに生き血を捧げて、自分らは残りで焼肉パーティしとるんじゃ』

「血だけもらってっても困るじゃん?」

『全くじゃ。ブラッドソーセージにするぐらしか、使い道がないんじゃ。ソーセージばっかりたくさんあるのじゃが、少し送ろうか?』

「食べ物に困ったらお願いするじゃん」

『そうか。そろそろお湯が溢れそうじゃよ。あと、女子って言って許されるのはキャーって言ってビンタまでじゃよ?』

「こっちみえてんの?スケベ!」

『ワシは枯れきった老人じゃよ。お前さんは孫みたいなもんじゃ』

「そういう問題じゃないじゃん!切るよ」

『またいつでもかけてくるとええ。じゃあな』

 旋はプリプリしながら、電話を切った。

 黒い電話ボックスも消えて旋はお風呂場に立っていた。


 なんか扉の向こうがうるさい。

「セン大丈夫ですか?セン返事をしてください!セン!」

 お風呂場の扉を開けてドイルが飛び込んできた。

 キャァァァアと悲鳴をあげた旋はドイルにビンタをする。

 ドゴッ。鈍い音がしてドイルが崩れ落ちる。ビンタは手を握ってはいけない。それは右フックだ。


「なんだ今の悲鳴は!」

「一番上等な牢屋からだぞ!」

 声と足音が近づいてくる。

 旋は慌てて脱ぎ散らかした服を身につけ始めた。

 湯船からはお湯が溢れ続けていた。

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