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3-B 奇跡

 今日は書き上がってるので投稿をお待たせしません。

 サクサクいきます。

「その、昨日は大変失礼致しました」

 ドイルが朝食のトレイを持って立っていた。顔がちょっと赤いが目立たない。顔の左側が腫れているからだ。


 昨日ドイルは旋の悲鳴で駆けつけた騎士に運ばれていった。

 騒ぎになってしまい、説明やら何やらで、お風呂に入って寝るのが遅くなってしまった。異世界にきた疲れも出たのか、旋は昼近くまで寝ていた。


 起きた後、顔を洗っていたら牢屋の扉をノックされた。

 スッピンじゃん、でも化粧品なんてないしな、眉毛いじんなくてよかったじゃん。

 描かないと眉なしになる同級生を思い出して、ちょっと笑いながら扉を開けたらドイルがいたのだ。


「見た?」

 旋は、一番大事な事を最初に確認する。

「はい。一瞬だけ。すぐ気を失いました」

 嘘のつけない漢、ドイル。

 顔を赤くし、右頬も腫らす覚悟で言った。

「まあ、正直に言ったから許す。でも誰かに見たものを話したら、そいつ共々記憶が無くなるまで処す」

 旋が伝染する呪いの言葉を吐き出す。

「処すとは?」

 ドイルが首をかしげて、頬の痛みに顔をしかめる。

「処刑。具体的にはまず・・・」

 旋が怖い笑顔で話しを始める。

「結構、わかりました。もう説明は、いりません」

 ひとつめの罰で我が家の将来がアレごと潰される。

 おののきながらドイルは旋の話を遮った。


「それは?朝御飯は出ないって言ってましたよね?」

 逃げていた猫をかぶり直して旋は聞いた。

「せめてものお詫びです。官給品で申し訳ないのですが、職務上どうしても個人的なお詫びができなくて」

 ドイルが本当にすまなそうに答える。

「まあ、そんなのよかったのに。でも、ありがとうございます」

 さっきまで処刑について語っていた口がお礼を言った。

「では、こちらに置きますね。この飲み物は眠気覚ましで夜間当番の仲間に人気なんですよ。帰えられる際は鍵を忘れずに返してください」

 トレイをテーブルにおいてドイルは部屋を出ていった。

「一緒に食べてはいかないじゃん?」

 独り言を言って旋はドイルと、朝コーヒーを一緒に飲むシーンを思い浮かべた。

「ナイナイ、マダナイ」

 旋は赤くなった顔を叩いてドイルの置いていったサンドイッチみたいなパンをかじり、コーヒーめいた飲み物で流し込んだ。


 「うっ・・・うっ・・・なんでこんな・・・なんで」

 朝食を食べ終わった旋が鍵を返す為にドイルを探していると、扉のない部屋からすすり泣きが聞こえてきた。覗いて見ると女の人が、寝台に寝かされた少年の手をとって泣いている。

 回りの寝台の枕の上には、握りこぶしぐらいの透明な石があって、中でチロチロと小さな炎が揺れていた


「あれ、センさん。何してるんですか?」

 旋が女の人から目を離せないでいると、ホムヅとヤマーが歩いてきた。

「あの人は?あと、手を握られているのは昨日の少年だよね?」

 旋はホムヅに聞く。

「あの人は少年のお母さんです。親一人、子一人で、ダンジョンに入るのには反対してたそうです」

 ホムヅが気の毒そうに答えた。

「少年が受けた毒がこれまでの事件と一緒で特殊なんだ。解毒しないと意識が戻らないまま衰弱して死ぬ。まあ、神殿にいけば解毒できるんだが、金がかかるしな。あの親子には払えんだろう。うちもそこまで予算がないしな。俺が出したいけど規則がな」

 ヤマーが残念そうに言う。

「そうなんだ、いくらぐらいかかるの?」

 旋はポケットの硬貨を全部つかみ出す。

「金貨が一枚からって話だ。今回の毒はうちの治療役も解毒できなかった。毒を受けた前後の記憶が無くなる厄介なヤツだ。神殿の捧げ物にはもっとかかるだろう。中々庶民には手が出んよ」

 ヤマーが教えてくれる。

 旋のつかみ出した硬貨に金の輝きはない。

「ダンジョンで受けたキズだから死んでも再生できるんだが、そういう話じゃないしな」

 ヤマーが寝台にある透明な石を見て目を伏せる。

「ええ、こういうのは何回見ても慣ません」

 ホムヅも辛そうだ。

 ヤマーとホムヅが顔を見合わせてため息をつく。

「忘れ物した」

 旋は一番いい牢屋に戻った。


『ふぁい。なんじゃ?』

 戻った旋は扉の鍵を締めてテレポンカードで電話をかけた。寝ぼけた声で闇と夜の神が電話にでる。

「ゴメン。寝てた?」

『夜の神じゃからな。昼間に寝るんじゃよ』

「そうなんだ。ホントごめん。でも、どうしても聞きたい事があるんだ」

『遠慮は入らんよ。なんじゃ?』

「この建物の中見える?女の人が男の子の手を握ってるところ」

『ああ、見えた』

「あの毒なんとかならない?」

『名前も忘れてしもうた、今のワシでは無理じゃ。でもお前さんが変身すればダークニュイを通じてなんとか出来る』

「名前も忘れた?」

『そうじゃ、神が力を行使するには、人類から名前を呼ばれて、祈られなきゃいかんのじゃ。ワシの名を知る人類はもういないんじゃ』

「それって、凄く問題あるじゃん?」

『そうじゃ、力ない神なら消えてしまう』

「神様、消えるの?」

 旋が泣きそうな声で聞く。

『大丈夫じゃ。ワシ闇と夜の神じゃし。この世界から夜がなくなりでもせん限り消えんよ』

「なんだ、心配して損した」

『ワシは心配してくれて嬉しいよ。でもワシも心配じゃ。ダークニュイでワシの力を使うと待機時間が伸びるのじゃ。しばらく変身できんくなるぞ』

「スポット変身はできるじゃん?」

『でも、お前さん今、素材も魔石もないじゃろ?』

「すぐ取ってくればいいじゃん」

『う~ん。ま、ええか。お前さんに限ってないとは思うが、最後まで諦めるんじゃないぞ』

「もしかして、未来見えてる?」

『少しだけじゃ。今のワシの見える未来なんぞ、変えようと人が決意すれば、すぐ変わるぐらいのもんじゃ。どんどん良い方向に変えるとええ』

「うん!頑張る。じゃあね」

『じゃあの』


 電話を切った旋はポーズを決める。

「変身!ダークニュイ!」

 騎士詰め所の上に闇と夜の神像が出現した。

 優しく腕を広げて、全身から、やすらげる闇を放ちながらすぐに消える。


「なんだ、何が起こった?被害は」

「昨日の巨人がここの上に?」

「はい、見回り組が飛び込んできました!」

「屋上に登れ!どんな物でもいい、少しでもおかしいものは集めろ」

「夜番も起こせ、特別部隊を組む」

「詰め所を空にしないぐらい、いや、人が聞きにくるか?いつもより多く残せ!」

 変身が解けた旋が一番いい牢屋からでると大騒ぎだった。


「ああ、ああっ。ありがとう、ありがとう神様」

 あの部屋では奇跡が起こっていた。

 すがりついた母親を起き上がった少年が優しく抱き締めている。

 回りの寝台では透明な石から再生した少年達が寝ていた。

 基本ダークニュイは大きな敵がこないと戦いません。

 巨大化変身英雄が騎乗変身英雄の敵を踏み潰しても面白く無いですよね。

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