最終話 私と皆
「今日は禁句を言ったのに何も起きなかった……訳がない!!! サーチ!!」
まずは現状を把握する。
限界まで思考を高速化して周囲の状態を探る。
なにも、こんなギリギリに送り込まなくたっていいじゃないか!!
と、だれに向かってその愚痴を言えばいいかわからないけども……
うっわ、私の家断層の真上、しかも4っつの断層が美しい調和を持って綺麗に潜り込んでる……
この織り込まれたエネルギーが一気に跳ねっ返るのか、そりゃ家も飛んだわけだ。
さて、このエネルギーを逆に利用して潜り込んだ断層部分を溶解させてぬるぬるにしちゃうよー。
そのまま他のか所に影響を与えないように縮めていっちゃうぞー……
おっと、他のか所にひずみが……え、なにこれ、めっちゃ難しい。
簡単に見えるかもしれないけど、そのうえで人間が生活している断層をいじるってすっごい気を使うし、どっかで必ずひずみが発生する、そのひずみを治すために別のところを動かすとまた違うひずみが……
なにこれ、パズルゲームみたいで楽しい。
最初はうちの街をいじるだけでいいだろうと思っていたのに、気が付けば日本中の断層をいじり倒してるし、これ、終わるの? 私の魔力は足りるのだろうか?
だいじょうぶだよね、今のところ厳しくないし……
よっしゃ! 海溝部分にひずみ移動できた!
海溝が数キロレベルで狭くなって学者さんはびっくりだろうけど。人知れず日本を救ったのよ。
まぁ4個のひずみの一つなんだけどね、あー、これ、しんどい。
でもあと3個やらないと、一個でも残したらそれでも十分この町は壊滅になっちゃう……
二個目はすぐに復元できた。別の乗り上げている地盤を戻してちょうどよかった。これで南海沖の地震もしばらく防げて一石二鳥。
3個目は……これ、中国の方へもっていかなきゃいけないよね……治せるか所が遠い……慣れてきたけど、しんどくなってきた……なんか、頭痛も惨い、意識が遠くなってくる。
気合いだ、真紀、気合よ!
……マジしんどい、結局太平洋までもっていった。
地球半周とかやりすぎです。
もうね、頭痛というかトンカチで殴られているみたい。
思考がまとまらない。
あと一つだっけ、二つだっけ、あー、私、なんでこんなことしてるんだっけ……
「俺らを助けるためだろ」
そうそう、皆を助けるため、今の声なに?
「まったく、マキはしょうがねーな」
しょうがねーなじゃないよ、あんたらを助けるためにこちとら必死に……
「一人でしょい込みすぎやで」
「そうですよ、もっとマキ殿には頼ってもらわないと」
「そのために異世界で鍛えてきたんだからさ~」
「マキ君、最短ルートを示すよ」
「移動の補助はぼ、僕が手伝います」
……皆がいる。
どうして? この世界では動物じゃないの?
「マキが一人で戦っているのに、ほっとけるわけがないだろ?」
ハルがそっと手を添えてくれる。あったかい。ハルの魔力が頭痛を和らげてくれる。
「さあ、最後の仕事だぜマキ!」
ナツが膝の上に乗ってくる。さらに頭痛が緩んで思考が軽くなる。
「ちゃ~んとミーたちが見守ってるのさぁ~」
リッカの歌声で失った魔力が回復する。
「マキ君、その断層をずらして、そうだ、そうすればこの位置に余裕ができる」
当時が的確な指示をしてくれるおかげで操作に集中できる。
「そやでー、そっちうごかせばこっちに余裕が、これはうちがやっとくわ」
アキの補助は的確で随分とやりやすくなる。
「さぁマキ殿、残り4手で詰みです」
フユの声が魔力となって体にみなぎる。
「マキさん、最後ですよ!」
ナギちゃんが私の最後の魔力を効率よく利用してくれる。
皆のおかげで、私は、最後の仕事をやり終える!
すさまじい角度で潜り込んでいた4枚の地層はぴったり綺麗に合わさった。
世界中どこを見てもひずみを新たに生んだりはしていない。
むしろこれから先数百年単位で地層は安定させた、褒めてくれてもいいのよ。
「皆、ありがとうね、もう、限界。寝る……」
魔力切れと思考加速の弊害。とんでもない眠気が私に襲い掛かる。
夢か幻か、皆が助けてくれたおかげで、やりとげたよ私……
手に持った紅茶のカップを机に置く暇もなく、意識を失った……
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「真紀先生! 今日もお邪魔しに行っていいですか!」
仕事を終えると華ちゃんがばっちりメイクにふんわり女の子御用達みたいな恰好で話しかけてくる。
最近はいつもこうだ、まるで勝負合コンに行くような格好で、うちに遊びに来る。
「華ちゃん今週もう4回目だよ? うちなんて来ても楽しいの?」
「な、なに言ってるんですか!? あんな天国他にないですよ!」
「あ、二人ともお疲れー。いやー最近は早く帰れてありがたいねー」
「院長先生お疲れ様です。手術は終わったんですか?」
「ああ、ハルケン先生の手術は早いし丁寧だし勉強になるよ。ナツキウル先生も外来万々回してくれるし、なんでうちなんて小さな病院に世界的な獣医師が二人も来てくれたんだろうね本当に不思議だよ。ハッハッハ!」
「この間もテレビでやってましたよ、今熱い町はここだ! って。
世界の流通を支配する天下のKarasunの女性会長が越してきたり、天才小児科医ストウジュン先生やノーベル化学賞受賞したナギエウレンゾ氏、冒険家で考古学の権威であるフユーエル氏、美と芸術の化身と呼ばれるリッカント氏、世界中の超有名人が突然移住してきたって!」
「ああ、うん。うちのそばの新築のマンションにね……」
「し、か、も、全員すさまじい美形ぞろい!! いま日本で一番暮らしたい町ダントツNo1になったんですから!!」
「そ、そうね……」
「そして、真紀先生!! その中心に先生がいるんですからね!」
「ああ、まだいてくれたんだ真紀! 一緒に帰ろう、送っていくよ!」
「ずりーぞハル! 真紀、オレと帰ろう!」
「え、えーっと。お疲れ様でーす」
逃げるように扉を開けると目の前に大量のバラの花束が……
「真紀殿、今日もお美しい、どうか私の気持ちを受け取ってほしい」
「ああ、ハル……お疲れ様……あ、ありがとうね……」
「ハル! 体がでかいんやどいてや! きょうは真紀とごはん食べるんやから邪魔せんといて!」
「おっと、アキ、聞き捨てならないな。マキ君は私と食事をする予定だ」
「ま、マキさん、お疲れ様です……よ、よかったら食事でも……」
「まぁまぁ、皆、いつも通りマキっちの家でディナ~としようじゃないか!」
ああああ、今日も大混乱だよ……なんか報道陣も集まっているし……
「片桐先生ですよね!? 世界の著名人とどういったご関係で?」
「はははははは……」
「おっと、報道陣諸君、彼女のプライベートを邪魔しないように弁護士の方から連絡させたはずだが?」
その一言でまるでモーゼの奇跡のように報道陣が割れていく、その先にはアキのとんでもなく立派なリムジンが……
「あのさ、アキ、私自転車あるし……」
「ああ、もう積んどいたで? さ、いこいこ。しゃーないからみんな乗せたる。はよいこ」
私の毎日は、あの日から変わってしまった。
どうしてこうなったんだろう……
アラフォーの女性獣医師はチートな元獣に囲まれて混乱するのでありました。
はちゃめちゃなギャグっぽいものを書きたかったのに、どうしてこうなった……
しかも予定よりずいぶんと長くなりました。
でも、最後までかけて楽しかったです。
ありがとうございます。
もしよかったらほかの作品も覗いてくださると幸せです。
最後までお付き合いありがとうございました。




