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第一話 形見


「あんたぁ! あんた、どうして私を置いて逝ってしまったんだい……。私はこれから、どうすればいいのさ」

 女は泣きながら、男の亡骸に顔を伏せていたが、泣き疲れたのか、涙を拭い立ち上がると、「これはあんたの形見だからね。私が身をもって守るよ」そう言って、男の懐から一本の刀を鞘ごと抜き出した。





※これは、小説とは一切関係がございません。



この話は、私自身をモチーフにしたエッセイもどきです。約七年の話を短く集約し、話としてまとめました。


話としては、小説ではないかもしれませんが、お目汚し宜しくお願い致します。



 その正しさは何処からくるのか……。その正しさは誰が決めたものなのか……。誰も教えてくれない。誰も知る事を許されない。


 朝……。目が覚める。【生きている】という絶望感と【仕事かぁ……】という喪失感が入り乱れる。

 毎晩のように思う。

『明日がこなけりゃいいのに』

『このまま命が尽きればいいのに』

 でも世界は、社会は、世間は、それを許してくれない。そうして朝、生きる気力を無くしたまま目が覚める。そう死んだ魚の目をしたような人間が目覚める。

 俺の家族は朝、やたらと無口だ。各々が各々に準備をし、妻だけが子供を叱責するかの如く叩き起こしている。朝食は、各々に用意された菓子パンを頬張り、「行ってきます」と決まり文句の様に言うと、「行ってらっしゃい」の言葉も待たずしてドアを出ていく。そしてかく言う俺も「行ってらっしゃい」の声が届かぬうちに、団地の階段を駆け降りて行くのだった。

 一日のうちで一番キツい時間は? と問われれば、この時間だろう。酷い吐き気と頭痛、目眩に襲われながら職場まで歩く三十分。他の人々は何を考えて通勤しているのだろう……。と、よく考える。俺の思考回路は至って単純だ。

『行きたくない』

 この言葉に全て集約される。

 仕事の内容は至って簡単だ。元来は介護職を希望していたのだが、病と障害、それに伴いメンタルが弱いとされ、現在は施設内の清掃業務を承っている。とはいったものの、病院の指示から始まった時短労働。実労働時間、五.五時間と限られた時間の中で出来る事など限られている。

 仕事中にも、気分不良はあるのだが、仕事が終わった後の方が酷い。皆、同じ条件のもと働いているのに、自分だけ時短である事に対する自己嫌悪。仲間と呼んで良いのかわからないが、同じ職場で働く者達に対する申し訳なさ。そんなものが頭を支配し、朝と同様に酷い吐き気と頭痛に見舞われる。

 帰宅後は症状も治まり、日常生活に支障をきたす事は無いのだが、我が家の妻は片付け下手というか、少し病的な片付け下手な為と病的なヒステリー持ちの為、やや世間一般から見ればゴミ屋敷と化している。部屋にはゴミが溢れかえり、台所もゴミと洗濯物に占領されている。流し台には、洗う前の食器や使った後の割り箸等が散乱している。その為、夕食は外食。ある一定のファミレス等を順に回るという習慣がついている。

 そしてもう一つ悩みの種がある。それは寝れないという事だ。夕食後に睡眠導入剤の効果を高める粉薬と安定剤、抗鬱薬を服用し、入浴後暫くしてから『さあ、そろそろ寝ようか』という時に、睡眠導入剤を服用するのだが、なかなか寝付けない。そうして、夜中迄起きたままの状態が続き、知らぬ間に眠りについているというのが、今の俺の現状だ。

 とは言っても、そもそもこんな状態になったのには、原因がある。それは約七年前のある出来事が発端となったのだ。約七年前の俺の愚かな過ち……。それがまさか、ここまで己を苦しめる形になるとも知らずに。





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