石川さんのちょっと。
何で、こんなのハッピーエンドじゃない!
漫画を読み終わった最後コメント欄の感想に一人そういつも呟いていた。ラブコメはもう見たくないって何回思っただろう。そのたんびまた自分に合うラブコメを探し続けた。私は私の思った通りの結果に何なきゃどうしたって納得できないしょーもない感性の持ち主でそれでいて夢見がちで理想系を追っていた。
そんな私の理想の中でも一番酷いのは幼馴染を選ばないのはNTRだとかいう過激な思想である。このしょーもないこだわりは正ヒロインエンドを迎えるたび私を蝕み、軽く二週間は立ち直れなかった。だから私は「普通」になりたい。ラブコメを楽しんでみれる感性を持ちたい。そのために私は多分現実のラブコメを知りたい現実がわかれば普通の感性が持てるってそう信じているから。
だから石川縁は今日も静かに後ろの席を見る。7時から毎日ずっと教室で勉強している私はある人が来たら話かけに行くようにしている。吉田満。中学からの同級生なのだがリアクションが面白いしいじりがいがある。そしてこいつは人とは違う。どこか狂っている。だから8時くらいに登校してきたとこをいつも狙って話しかけているのだが......。今日は明らかに様子がおかしかった。
「吉田くんどうしたの?」
「ああ石川さん。ちょっとしたことだよ。」
腹立たしい態度である。何も言ってくれないんじゃいじりがいがない。もっと面白い話が聞けると思っていたのにろくに話すらしないとは。
「生意気なやつ......。」
「......は?」
「いやいや、なんでもないよ。」
こいつ、どうせ昨日大喧嘩で絶交したとか言ってた秋田理子のことだろう。どうせ彼はこいつのことでしか悩まない。本当にその点ではからかいがいのないやつだ。
「それでなにがあったんだい?聞いてあげよっか〜。」
「いや別にいいよ。なにも困ってないし。」
「明らかいつもと違うけど?」
「......なんだよ、気持ち悪いヤツ。」
ぼそっと呟く彼。聞こえてますからね?
「態度にめっちゃ出てるから!結構わかりやすいよ?」
「......あ、まじ?」
「それで、秋田理子となにがあったのか教えて。」
「......だから、言うわけないだろって。」
珍しく頑なに譲らない。つまらないヤツである。
「へ〜じゃあ本人に直接聞いちゃお!」
「......マジで?」
そりゃあ焦るよね。残念ながら面識あるんですよ私たち。どんまい!どんな仲かと言うと委員会で話したことあるよね。ってそれぐらいの仲。それでも全く間違いではない。正しいか間違いかこれはちゃんと声色に出るのである。だから多分大丈夫なハズ。
「......まあどうせ大したことのない仲だと思うけど。」
興味を示すと思っていた。もっと焦ると思っていた。だがどうだろうか彼はどうってこともなくあっさりと引いてしまった。
「なんで?怖くないの?」
「いや、だって昨日思いっきり理子の悪口言ってたし。」
「あ......あはは。それぐらい言い合える仲ってことだよ。」
「友達に言うようなことではなかった気がするけど。まあいっか、一応リコに聞いておこうか、自称友達が現れた旨について。」
「......やめといてください。」
私にとって秋田理子は結構怖い存在である。なんでかってそりゃみんなと同じくあのルックスと性格、多分簡単に話しかけられる女子はいないんじゃないんだろうか、強いて言うならいつも隣にいる久慈葵、彼女も別枠だが。
「やっぱり大したことないんだな。じゃ、席にでも戻りな。」
結局うまく躱されて、聞き出すことはできなかった。個人的には結構残念な朝であった。
放課後、秋田理子をたまたま見かけてしまった。これがなかなか私の頭を悩ませた。
秋田理子に話しかけてみようか、あのことを聞いてみようか。いやまずなんの話題で話しかけりゃいいのかって感じか。
自分の中で葛藤し気を取られていると逆にあっちから近づいてきた。
「縁ちゃん!どうしたの?」
ギャル......。こう言うタイプが結構苦手な私なのである。彼女はそんなに濃い化粧だとか派手な髪色とかそう言うわけではないが、こう言うところであまり面識のない私に話しかけてくるあたりもう苦手である。
「あ、秋田さん。いやちょっと考え事してるだけだから大丈夫。」
「え、私でよかったら話聞くよ?」
あなたに話しかけるかどうかで悩んでたのになんであなたに相談するんだよ!私の立場からすればこんな思いだったが相手からしたら私がなんで怪訝な顔をしているのか訳が分からなかっただろう。
「いや、無理に聞くつもりはなかったんだけどさ。」
私は高圧的な感じで来るだろうと身構えていたが思ったより秋田さんは下手に回ってくれた。この人は実はそんなにギャルくないのかもしれない。
「ほら、私たち中学同じだったのになんの接点もなかったじゃん?本当はもっと仲良くなりたいって思ってたんだよね。」
秋田理子は吉田くんの幼馴染だもんな。確かに同中なハズである。それはそうなのだがこんな美少女茶髪ギャルい女子は私の頭には記憶がなかった。
「本当にね!同中だって今知ったぐらいだよ。」
「......あ、マジ?まあ私中学の時はいけてなかったしそりゃそうだとは思うけど。」
失敗したかな......。しょぼんとした彼女に申し訳なく思う。この人は多分私の嫌いなタイプではない、そのことは今までの会話の節々から明確に感じとっていた。それに......。委員会ではいられなかったがこの守ってあげたくなる感じ、とんでもなく愛らしい。
これが石川縁の特別な一日。大切な親友との出会いだった。




