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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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82.衣替え

 



 白熱の文化祭から数日後。熱気の余韻も既に消え去り、高校生が一様に期末テストの恐怖に脅かされている頃。

 優心たちは先送りになっていた打ち上げを満喫していた。




「いやー、ほんっと大変だったねぇ〜」


「そりゃ真田さんは大変だったでしょ。身を粉にして頑張ってたんだから」


「文字通り粉になるかと思ったよ〜。みんなにもずいぶん助けてもらっちゃったしねー」


「桜ほどじゃないよ。アタシなんかずーっとハラハラしてたんだからさ」


「心配かけてごめんねぇ。可奈ちゃんはやっぱり優しくて大好き!」



 ギャルズの友情は永遠に不滅!なんて二人は言ってる。でも今回は真田さんにおんぶに抱っこだったからな。後ですごい感謝されたけど、少しでも力になれてたならこれ以上はない。


 そういえば文化祭から帰った後、綾乃が珍しく甘えモードになってたのを思い出した。綾乃自ら、撫でろと言わんばかりに頭を差し出してきたり、ハグを要求してきたり。挙げ句、その…目を瞑って何かを待っているような顔になったり。

 俺もつい、一回だけ応えてしまった。もう一回、とおねだりもされたけど、そこは理性が働いた。それ以上は、なんとなく戻れなくなるような気がしたから。




 それはさておき、地味に奮闘していたジョージや、無尽蔵の体力で貢献してくれた孝太とも乾杯する。ジョージは、ものすごい美人がいた、なんて話をしていた。どこに意識を向けているのか、本当に残念なイケメンだ。


 孝太は何というか…怖かった。『良い鍛錬になった』とか言ってたし。これ以上強くなって、一体どうしようというのか。


 春馬とも文化祭の思い出を語り合う。彼は今回、ひたすら客引きをしていた。聞いた話では、通れば人が寄ってくることから、歩く磁石なんて呼ばれていたそうだ。

 なぜ反発しないのか、世の中は理不尽だ、とはジョージの談である。


 そしてその思い出話の中で、春馬は気になったことがあったようだ。




「そういえば、優奈ちゃん見かけなかったな。一年生だから普通に参加してると思って、教室を何度も周ってみたんだけどいなくてさ。なんか知ってる?」


「それが、聞いても教えてくれなかったんだ。『大事な役目があるから秘密』、とは言ってたけど」


「ふーん。ま、優奈ちゃんも年頃だし、家族に知られたくないことの1つや2つあるだろ」


「おい春馬。それ以上の悪ノリはお兄ちゃんとして見過ごせないぞ」


「冗談に決まってるだろー?唯一の肉親なんだし、シスコンになるのも分かるけど」



 俺はシスコンじゃない………とも言い切れないか。実際、俺の中で綾乃と優奈はほぼ同列。場合によっては優奈に傾くことだってあるだろうし。


 しかし春馬の言う通り、三日間で優奈を一度も見掛けなかったのは不自然だ。理由はありそうだったから体調不良の可能性は低いと思う。

 今度会った時に聞いてみればいいか。綾乃と初詣に行きたいと言っていたので、遅くても年明けには顔を合わせる事になるだろう。




 放課後、閉門までの時間はあまり多くない。日が沈むのは早くなったが、それでも暗闇に包まれる前には解散、下校となった。



 帰り道を綾乃と指を絡めて歩く。氷の女王なんてあだ名されていた頃が懐かしいと思うくらい、その手は温もりに包まれていた。

 数日前に残暑に苦しめられたというのに、今度は急激な寒さに襲われている11月半ば。流石に素手では冷えてくるので、手と手の間にカイロを挟んで温める。もちろんカイロで体の芯から温まることはないが、底冷えするほどの寒さでもないので問題はない。




「ふふ、温かいわね。でもこの気温だと、そろそろ衣替えしないと厳しいかしら」


「確かに。いつもの薄着じゃ少し辛くなってきたかも。それにしても綾乃の手、カイロがいらないくらいあったかいんだけど」


「そうなの?結構冷えてると思ったのだけど。きっと優心の手が冷えすぎなのよ」




 俺は綾乃の手を温かく感じてるし、そういうことなのか。初めて言われたけど、俺の手が温かいとも言われたことは無いから、実際のところは分からない。


 それはそれとして、綾乃の手、スベスベだな………。毎日手入れを頑張ってるっていうのが伝わってくる。美容には相当気を遣ってるみたいだし、自分磨きを欠かさないところも綾乃の美点だ。


 そうやって綾乃の手の感触を確かめていると、綾乃は恥ずかしそうに口を開く。



「ちょ、ちょっと。その、手をにぎにぎするの、やめてくれないかしら。カイロ越しでくすぐったいのだけど…」


「あ、ごめん。綾乃の手がスベスベでつい………」


「まったく。優心にそう思ってもらえたのは嬉しいけど、あくまでも乾燥しないためのスキンケアよ。最低限だけどね」



 これで最低限なら、全力を出すとどうなってしまうのか。お餅みたいに伸びたりするのだろうか。そのことを綾乃に話したら、「なに馬鹿なこと言ってるの」と呆れられてしまったが。




 帰宅し、綾乃が夕食の支度をしている間、俺はタンスとクローゼットの中をチェックする。さっき綾乃が言ってた衣替えのことを覚えていたからだ。

 一通り見てみて、冬物の服があることは分かった。一人暮らしを始めてから断捨離は行ってないので、あまり心配はしていなかったけど。


 ただ、その‥改めて見るとセンスが絶望的というか………はっきり言ってダサい。

 最近は綾乃に見劣りしないように、服装や見た目には気を使うようになった。ただし、それは進級してからの話だ。綾乃と迎える初めての冬がこんなダサい格好じゃダメに決まってる。


 また春馬に頼ってもいいんだけど、たまには綾乃に直接聞いてみるのもいいかもしれない。綾乃の好みを知るチャンスでもあるからね。


 そうと決まれば善は急げ。調理中で申し訳ないけど、綾乃をデートに誘う。




「優心、そこの大きめのお皿、取ってくれ…」


「週末、デートしよう」


「それは全然構わないのだけど、とりあえずお皿だけくれる?」


「あ、はい………」




 何となく、上下の立場はこの先も変わらないような気がした優心であった。





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