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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二八四話、不明艦『ワガブンドゥス』


 廃墟と化したように見える都市戦艦『ウルブス・ムンドゥス』。その周りに展開する本営艦隊に打撃を与えるべく、日本海軍第五艦隊は潜伏していた。


 陸軍による上陸を成功させるには、都市戦艦の周りのムンドゥス帝国艦隊を叩くことが必須。マリアナ諸島へ奇襲に向かい、そして残していった空母部隊を撃破した第五艦隊だったが、一時離脱をしても、敵にほど近い海域にいた。

 次の標的に狙いを定めるためである。

 そしてそれはほどなく見つかる。


「艦型不明の大型艦」


 旗艦『大和』の司令部に、偵察機からの報告が舞い込んだ。

 樋端 久利雄首席参謀は続けた。


「巨大な大砲らしきものを一門積んだ大型戦艦級のフネだそうです」

「特殊砲撃艦か……?」


 神 重徳第五艦隊参謀長は眉をひそめた。

 ムンドゥス帝国の兵器である収束熱線砲――防御シールドがあれば何とか防げるが、そうでなければ当たれば戦艦とて一発轟沈の強力兵器。これを使用することを前提にした特殊砲撃艦を日本軍は使用していた。


 発案は神で、これは改装修理が間に合わず放置されている戦艦を、早々に戦場に投入できるよう改装点を減らし、使用目的に特化させることで間に合わせた兵器であった。

 だが昨今、異世界帝国艦は駆逐艦以外は防御シールドが標準装備化されており、収束熱線砲一撃だけの艦艇では使い勝手が悪い。それゆえ特殊砲撃艦は、純粋な戦艦などに改装され、日本軍の間でもほぼ消えている代物であった。


「主砲一門のみの戦艦……。モニター艦でないなら、何か特殊な兵器を積んでいると考えるべきなんでしょうな」


 神は厳めしく振る舞った。特に深く考えていなさそうな顔で樋端は言った。


「このところの帝国を見れば、転移砲かそれに類するものであると推測されます」


 第五艦隊司令長官である神明 龍造少将が頷くと、神が口を開いた。


「転移砲と予想する理由は?」

「昨今の敵の技術からすると、転移砲が妥当でしょう。例の中部太平洋決戦で、我が軍の無人艦隊制御艦であった『八咫鏡』が撃沈されたのは覚えているでしょうか?」

「うむ、『八咫鏡』と言えば、複数の防御障壁を備えた無敵の防御性能を持つはずだった戦艦が、謎の爆沈を遂げたものだった……」


 そこで神は首をかしげた。


「撃沈と言ったか?」


 突然爆発、轟沈した八咫鏡――キーリア級旗艦級戦艦の改装艦は、近くに敵がいたわけではなく、謎の爆沈として処理されている。艦内で事故が発生したのか、ムンドゥス帝国軍の新たな超兵器なのか……。


 しかし以後、似たような事象が観測されていないため、動力炉辺りの事故だったのではないかと思われつつあった。

 樋端は首肯する。


「はい、おそらくこの巨大な砲を持つ敵に撃沈されたのだと思われます。そもそも、ムンドゥス帝国と我々では転移砲の仕組みが異なります」


 あくまでシールドをすり抜けて無効化するために用いられる地球側転移砲と、直接、目標に砲弾を送りつけるムンドゥス帝国側の転移砲。


「この不明艦が搭載した大砲――これが転移砲として超長距離砲撃を行い、『八咫鏡』を撃沈したのではないかと、私は考えます」


 観測外の超アウトレンジからの必殺兵器。それが転移砲の一種ならば、確かに『八咫鏡』がやられたのも一定の説得力はあるが――


「だがそんな兵器があるなら、奴らももっと積極活用しているのではないか?」


 神は疑問を口にした。


「狙えば必中。しかもこちらに気づかれることなく、一方的に砲撃ができるなら、それだけで戦いは勝ててしまう」

「そう都合のいい兵器ではないのかもしれません」


 樋端は淡々と答えた。


「さすがに射程無視の超兵器といえど、観測は別物ですから、そこのところがまだ上手くいっていないかもしれない。一度使ったら次を撃つまでの準備にとても時間がかかってしまうのかも。……そもそも試作兵器であり、八咫鏡を沈めた一発で色々問題が発生した可能性もなくはない」

「推測ばかりだな」

「情報がないですから、推測するしかありません」


 転移砲自体は、ムンドゥス帝国側も数は限られるが積極的に運用されている。おそらく使用が限られているのは、観測の問題なのだろう、と神明は思う。


「可能性の話であれば、何でもありだ。そしてそれを否定できる材料がない以上、無視もできん」


 参謀たちは神明を見た。


「次の目標は、この不明艦とその周りにいる艦隊だ。マーシャル諸島で留守番ではなく、都市戦艦と同行しているのだ。少なくとも何かができるし、そのためにここにいるはずだ」


 どのみち、都市戦艦周りの敵は排除しなくてはならない。この目的も不明の大型艦も、武器を積んでいる限りは撃破対象だ。

 実際、ただ大きいだけの大砲かもしれないが、これで都市戦艦に上陸した陸軍を砲撃されでもしたら厄介である。


 かくて第五艦隊は、都市戦艦周りの敵の漸減のために、再度接近を行う。対レーダー塗装の彩雲改二が、偵察と共に転移中継ブイを投下。第五艦隊の転移奇襲をサポートする。


「全艦、突撃!」


 神明の号令に併せて第五艦隊は転移。正面に見えた敵艦隊にすかさず主砲が発射態勢に入った。


「あれか」


 列車に大砲を載せたらあんな形になるのか――そんな第一印象が浮かぶ。もちろん列車ではなく艦体はきちんと軍艦の形をしていた。だが艦上構造物が巨大であり、その上に一門のみの大砲もまた巨砲であった。


「何ともアンバランスな形ですな」


 神は双眼鏡を覗き込む。


「あれでは横から殴ったら転覆してしまいそうです」

「間違っても前線に出す艦ではないな」


 神明は相好を崩した。

 第五艦隊水上打撃部隊は波を蹴って突進する。不明艦の周りにいた転移ゲート艦が慌てたように動き出し、メテオーラ級軽巡洋艦をはじめとした護衛部隊も一斉に動き出した。

 だが攻撃は、こちらのほうが早い。大和艦長、有賀 幸作は声を張り上げた。


「目標、正面の大型不明艦! 撃ち方始めっ!」


 戦艦『大和』、そして僚艦の『武蔵』の46センチ砲弾が唸る。放たれた砲弾は、不明艦――特別転移砲艦『ワガブンドゥス』の巨大な艦上構造物に突き刺さり、そして大爆発を起こした。

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