(2) ここが二次元・・・
部屋を覗いた波奈はこういった。
「汚い部屋☆」
「人の部屋を勝手に覗くんじゃねぇ!」
「パソコン持ってる?」
「人の話を…え?ああ、持ってるけど。」
「貸して。」
「別に良いけど、なんでよ?」
「ありがとー!あと、好きなアニメがあるでしょ。それ、表示して」
なぜ、ヲタクがバレたし。
まあ、いいか。
「好きなアニメね…」
そう言いながら、結局お気に入りフォルダの一番上にあった【エクセレント・コントラクト】にした。
タイトルを直訳すると、[優秀な契約]。タイトル的にはバトル物かと思うが、至って普通に日常生活を送るラブコメである。
お気に入りな理由はラブコメだから。というシンプルなものだ。
「これでいいのか?」
ニ○ニコ動画の1話再生ページを表示した。
「おう!完璧だべ!」
なぜ、群馬弁が混じったのかは不思議だったが、OKだというのでホッとする。が、その安堵も一秒ほどで消え失せた。
なんと、波奈がモニタに右手を伸ばすやいなや、手を液晶が吸い込むように液晶が波打ったのである。
「さあ、行こう!」
「え。」
俺は一瞬時が止まったかのような錯覚に陥った。が、それを遮るように波奈が「さあさあ早く~」と手を取り、液晶へ向かうのだった。
辿り着いたのは全然普通の街。
ただ、違うのは街を歩いている人たちが非常に可愛いということだけだ。
「こ、ここは?」
「見てのとおり、二次元だよ。」
いきなり、画面の中につれてこられ、ここは二次元だよ。なんて言われてすぐ納得するやつはいないだろう。もちろん、俺も納得できないし、しちゃいけないと思う。だって、現代科学の掟に反するではないか。そう思ったからこう言った。
「納得できるか!」
「え~。現実に二次元にいるんだから、納得してよ。」
「ここが二次元っていう証拠は?」
そう、このアニメの主人公に会うことができれば、ここは二次元だということが証明できる。
「主人公とか、ヒロインとか、出てくる建造物を見ることができれば納得してやる。」
「しょうがないな~。じゃあ、会いに行きますか!」
と言うと、スタスタ歩き始めた。
この【エクセレント・コントラクト】という話はライトノベル原作のアニメで、舞台は東京都。舞台が舞台なので、電車や人も多い。ここが本当に二次元ならば。
メインとなる学校があるのだが、俺はこの舞台の詳しい地図とかを知らないわけだし、彼女も知らないだろう。なのに、彼女は自信たっぷりに歩いているのだ。ていうか、そもそも液晶の中に入れる能力なんてどこでもらったんだ。気になることは非常に多い。
体感時間10分。目の前には大きな校舎であろう建物が建っていた。
「着いたよ。ここが例の学校。」
「本当だ。見たことある…」
本当に二次元にいるという驚きとここが二次元なんだという怖さが混じって緊張してきた。
「さあ、中に…」
「ちょっと待て。」
「え?」
確か、このアニメ、一話の冒頭は授業中だったような。話の中に俺らが混ざってしまって、タイムパラドックスみたいにならないだろうか。
「大丈夫だよ。ちゃんと、話も出来るし、実体としても存在してるし。」
聞くと、普段俺らが見ているアニメというのは表面的なものでしかなく、蓋を開けてみれば、そこは三次元同様の世界なのだという。つまり、内側の世界で撮られたドラマのようなものを【アニメ】と呼び、我々三次元のヲタクたちはそれを見ているだけに過ぎないとかなんとか。なるほど、わからん。
「じゃあ、俺らがこの世界の主要な人物に会って、話をしても大丈夫なんだな?」
「もちろん。むしろ、その主要な人物ってのもこの世界じゃ何十億分の一の存在だからね。」
「そうなのか。」
ということで、校舎の中へ…と思ったが、授業中に外部の者が入るのは良くない。となったため、近くを歩き回って、下校時刻になったところに行くことになった。
驚いたのは、ちゃんとコンビニもある。ブランド名は【ファミリーオート】。車の店かよ。
時間は経って、チャイムが聞こえてきた。
「よし、行こう!」
波奈は走ると速く、追いつけなかった。
「待てって~!」
引きこもってないで、運動しようと思った。




