(1) 家に突然女の子。
突然だが、君たちは液晶の中に入りたいと思ったことはあるだろうか。
アキバに行きた~いとか、聖地巡礼した~いとか、ヲタク的な事を常日頃考えている人だったらそんな経験、一度はあるだろう。
もちろん、俺にだってある。
液晶の中に入れたら、今いる次元よりも楽に、楽しい生活が送れるのだろうなんて思っていることだってあるほどだ。
しかし、液晶の中に入るなんて無理難題であろう。
突然、Twitterで
「ワイ、液晶の中からツイートしたったwww」
なんて、つぶやいたら、それこそ国民栄誉賞やら、ノーベル物理学賞とかそのくらいの偉大なる人物の仲間入りが出来るだろう。
そして、なによりも、ヲタクたちから崇められるだろうな。
我々のような平凡な人間たちはこの広くも狭くもない、世界で何十億分の一の存在として平凡らしく生きていればいいのだ。
そう、平凡にな。
これからノーベル賞取れちゃうくらいの非・現実的な生活が待っていることも知らずに、俺は新たな舞台「中学校」へ足を運ぶのだった。
*
俺は千葉俊太郎。この春から夢と希望を持って中学へ入学する人間の一人だ。
中学に進学すると、一生の友達が出来るとか都会のほうでは言われるが、ここは田舎。小学校からそのまんま中学に格上げされるもんだから、新しい友達なんて出来はしない。
いつもの仲間といつもの会話をし、入学式に臨む。
そして、違和感なく下校をし、いつもどおりに部屋に引きこもる。
部活が始まるまでの土日はフリー。つまり、部屋の中でゲームやらラノベやら、やりたい放題だということだ。
そんなある土曜日の朝のこと。ピンッポーンとインターホンが家に鳴り響いた。
親は仕事。…ということは、応対しなければいけないようだな。めんどくせー。
パジャマのまま玄関を開けると。
「こんにちは。あ、うわさよりイケメン!身長もちょうどいい!!」
え。
ショートカットで、俺よりも身長が低く、顔も絵に描いたように整っている…一言で言うならば美少女。
そんな美少女が一人で金もねぇ俺んちになんのようだろうか。
どこかで会ったことあるかな~?いや、ねぇな。
「えーっと、どちら様でしょう。」
聞くと、彼女は
「加藤波奈です!今年から中学一年生です!千葉俊太郎くんですよね?」
「ま、まぁ、そうですけど・・・」
「部屋にあげてくださいな!」
「いや、何でうちに来たのか、理由を教えて…」
「お邪魔しま~す」
「おい!許可なくはいるな!!」
親の顔が見たい。勝手に居間のこたつに座りやがった。
「別に~いいじゃないですか~」
「よくねぇよ!」
「あ、コーヒー、ブラックで。」
「お前に出す茶菓子はねぇよ!」
もう、いいや。諦めよう。あれ?ブラック?見かけによらず、強いんだな~。
「んで、何のようでうちに来たのか。いい加減教えてくれ。」
俺は、コーヒーとポテチを出してから、着替え、こたつに彼女と対面するように座っている。…不本意ながら。
「理由は特にありません。」
「ねぇのかよ!」
「あ、最近ここの隣に引っ越してきました。その挨拶です。」
「いや、あるんかい!」
こいつが隣か・・・。先が思いやられる。ていうか、中一って言ってたよな。さっき。
どんな生活を送ることになるんだろうか。ますます心配になる。
なんて、考えていると、
「部屋見てきますね~」
「おい!汚ったねぇから勝手に見るな!!」
そう言った頃には、既に部屋の扉は開いていた。




