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くまさん  作者: きーぼー
9/9

エピローグ その後

さて、こうして二人は結婚し、一緒に暮らす事になりました。

愛子ちゃんと良夫くんの結婚生活は、良夫くんが包容力のある男性だった事もあり、おおかた順風満帆に過ぎていったのですが、長い結婚生活の間には、色々な出来事が起こります。

例えば、こんな事がありました。

それは、2人が結婚し、新しいマンションに引っ越して、すぐの頃でした。

愛子ちゃんは、良夫くんがいない時に、引っ越し荷物を整理していたのですが、良夫くんの荷物の中に、ちょっと角のつぶれた、白い紙箱を見つけたのです。

それは、ちょうど、クリスマスケーキの箱を、縦長にしたような形状をしており、どうやら、プレゼントを入れる紙箱みたいです。

両手で抱えると、思ったより軽かったのですが、どうやら中に、何か入っているようでした。

愛子ちゃんは、その箱の蓋を開けてみました。

するとー。

中には、茶色いクマの、ぬいぐるみが入っていました。


「何これ?」


愛子ちゃんは、びっくりして、そのぬいぐるみを、箱から取り出します。

そして、気付きました。


「これ、ダディ・ベアだわ」


それは、愛子ちゃんの子供の頃から、恋人に対する贈り物として人気がある、有名ブランドのクマのぬいぐるみでした。

抱きかかえて寝るのに、丁度いい大きさなのです。

でも何で、良夫くんは、こんなものを大事そうにしまっていたのでしょうか。

愛子ちゃんは疑問に思い、自分の知らない良夫くんの秘密の一面を、かいま見た様な気がして、なんだかモヤモヤしました。

しかし彼女は、ふと、ある事に気づきます。

ぬいぐるみを取り出した後の、空箱の底に、小さな紙片が入っていたのです。

愛子ちゃんは、その紙片を手に取り、読みました。

そこには、こう書かれていました。


大好きな愛子さんへ


それは、良夫くんの字でした。

愛子ちゃんは、思わず息をのみます。

そして、ハッキリと思い出しました。

高校時代の事を。

そうです、その白い箱に入れられたクマのぬいぐるみは、かって良夫くんが、愛子ちゃんに告白の際に、手渡そうとしたものだったのです。

高校時代の愛子ちゃんは、その贈り物を、告白に対する拒絶の言葉と共に、良夫くんに突っ返したのでした。

おそらく良夫くんは、その自分の思いが込められた品物を捨てられずに、ずっと手元に置いていたのでしょう。

そして、いつしか彼は、その事を忘れ去ってしまったのです。

座り込んだ愛子ちゃんは、床に置いたクマのぬいぐるみを、じっと見つめました。

なんだか、愛子ちゃんは、そのぬいぐるみが、自分の心の様に思えました。

迷子になって、ずっと忘れられていた、自分の心にー。

愛子ちゃんは、床からぬいぐるみを持ち上げて、両手でギュッと抱きしめました。


「おかえり、くまさん。あなたも、やっと、自分の家に帰れたんだね」


そう言って、愛子ちゃんは、クマのぬいぐるみに笑いかけます。

クマのぬいぐるみも、なんだか、嬉しそうに見えました。

そうして、愛子ちゃんは、クマのぬいぐるみを側に置くと、荷物を片付けながら、良夫くんの帰りを待ちました。

うれしさの中に、ちょっぴり切なさが入り混じった、不思議な気持ちでー。


[完]


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