帝都廃墟攻防戦
少し長いエピソードになってしまいました。
飽きずに読んでいただけるとありがたいです。
「倒してきたぜ」
「ええ、完了したわ」
「こっちも終わったぜ」
廃墟周辺の偵察に出ていたパーティーが戻って来た。
ドロイア帝国帝都エルダット。元は大きな城下町に囲まれた城だった。
だが、300年の年月で周辺は森に侵食され、城周辺の限られた場所だけが残っている。
「巣の周辺をゴブリンが少数で徘徊するなんて。それも1~2つじゃなかったわよ」
エリゼリーエの問いにゼオギースが答えた。
「明らかに偵察部隊だな。グライムこれは」
グライムは少し考えて答えた。
「ジェネラルより大物がいる」
「だよな。あーあ、気が重いよ」
ゼオギースは天を仰ぐ。
エリゼリーエが不安そうに聞く。
「グライムさん。大物って、もしかして」
「エリゼリーエ達は始めてか。ゴブリン・キングは」
「話は聞いたことがあるわ。戦うのは初めてね」
「ゴブリン・キングは知能が高く、人語を会す。統率力が高く500前後の群れを率いているのだ」
「魔物が喋るの・・・・やだ」
エリゼリーエは不快な顔で横を向いた。
そこに、偵察に出ていた銀翼のメンバー2人が目に入った。
「あ、偵察が戻ってきたわよ」
ローゼルとディーナが戻って来た。
ローゼルは茶髪で中肉中背、特徴のない印象だ。希少な隠密スキルの持ち主で気配を消す事が出来、同時に2人まで使用可能だとか。弓の腕も達人級らしい。
もう1人がディーナ。くすんだ金髪の長髪で、目尻の下がった瞳が特徴の美人だ。魔法技術も優れていて、元王国魔法師団に所属していたエリートらしい。
「ローゼル、城跡の様子はどうだ」
「はい、グライムさん。ベイルの報告通りでした。城跡に砦を築いています。数、およそ600はいるかと」
「予想より多いな」
「ラフェス、何かおかしいよ。周辺に多数のゴブリンの群れがいるわ。それも上位種が」
「ディーナ。それは他にも巣があると言う事か」
「分からない、こんな大規模な巣は見た事が無いわ」
「そんな事は聞いたことが無いぞ。ゴブリン共はここに国でも作るつもりか。どうするグライム」
ラフェスの問いに考え込むグライム。
ゴブリンの群れが多数か。上位種も複数いる。しかもキングが居るのは確実だ。
どうする。もどり王国騎士団に報告して・・・・いや、ダメだ。ここまで大きい巣ならば数日中にも町に攻め入ってくるかもしれない。
この人数で勝てるのか。
「これはゴブリン・ロードがいますね」
「ロードだとー」
グライムは驚き振り向いた。
「アリスト・・・戻ったか」
「結界は張り終えました」
「そうか。後方は安心だな。それでロードと言ったな」
「はい。偵察部隊を編成する統率能力、1000前後の集団。大規模拠点を作り、そして前回、ジェネラルが前線にいました。これらを考慮するとロードが支配しているのは確実です」
「なるほど、ロードに詳しい様だな」
「あ。いや、昔聞いたことがあって」
「俺もロードは初めてだ。ほぼ伝説級の魔物だからな、情報はありがたい」
エリゼリーエが青い顔で聞いて来た。
「ねぇ、ロードってSランクだったりする」
重々しい口調で答えるグライム。
「S+ランクだ」
エリゼリーエが昇天しそうだ。頭から煙が出ているぞ。
あ、ベイル達も煙が出ている。
だが、ロードがいるとなると、相当な年月の巣になるはずだ。ベイルの話では半年前の調査では小さい巣しかなかったと言っていた。
おかしい。何かありそうだな。
目立たない様にとか、言ってる場合ではなくなったな。
「アリスト、キングもいるのか」
「ゼオギースさん。通常、キングも複数存在しますよ」
「複数いるのか。これは笑うしかない」
「アリスト、ゴブリン・キングは魔法耐性があると聞いたのだけれど」
「魔法耐性は在るが、低級魔法だけだ。中級以上なら問題ない。セシリアなら大丈夫だろ」
「なるほど、そうね」
セシリアか。金髪の長髪で聡明な印象だな。細身だが背が高い。俺と同じくらいだな。
「さぁ、グライムさん。後方の憂いも断ちました。討伐開始ですね」
「おい、アリスト。この状況は想定外だ。どうするつもりだ」
「グライムさん。作戦では無いですが、提案があります」
「キングでさえ、倒すのは容易ではないのだぞ。ましてやロードとなると」
「ゴブリン・キングは白亜と氷の刃で当たれば倒せます。銀翼は単体で、ラタールとグライムさんで倒せるでしょう。ゴブリン・ロードは俺が倒します」
「一人で倒すつもりか」
「はい」
「おいおい、死ぬぞ」
ゼオギースは驚いている。
「俺は強いから大丈夫だ」
「な・・・」
「私より強いのかい」
ラフェスか。たしか唯一のAランクだったな。
「この戦いで判断してくれ。無理だと思ったら全員で倒そう。それでいいかな」
ラフェスは笑顔で答える。
「いいだろう。見せてくれ」
俺は笑顔で返す。
「このまま放置して帰る訳にも行かないし。グライムさん。ここはアリストを信じよう」
「ベイル。そうは言っても」
「私はアリストを信じるわ」
「仕方がない。ダメなら全員で倒すだけだ」
「エリゼリーエ、ゼオギース。ありがとう」
「仕方がない。俺も見させてもらうぞ」
「ありがとう。グライムさん」
「それで、提案とは」
「この廃墟は広いですが、幸い町の大部分は森林に侵食され、生息範囲は城跡周辺に限られている様です」
「俺の魔力探知でも中心付近に集中している」
エディスと目が合う。俺は頷いた。
「偵察隊は全て潰したので、生息域まで進みます。そこで3つに分かれ、3方から包囲殲滅します。俺とラタールの翼、グライムさんで正面から突入します」
「正面から行くのか」
「はい。白亜の剣と氷の刃は左右に展開して待機。銀翼の大剣は後方支援をお願いします」
「俺達は後方支援かよ、アリスト」
「ローゼス。まぁ聞いてくれ。先行した俺が大魔法で周辺を焼き払います。それにつられゴブリン共は集まってくるでしょう」
「そこを俺達と白亜で挟撃するのだな」
ゼオギースは嬉しそうだな。死ぬかもしれないのに、戦闘狂かな。
「で、俺達は支援と臨機応変に対応ってとこか」
「その通りです、ローゼス。混乱する戦場で、適格な状況判断で行動が出来るのは上位パーティーの銀翼の方々が適任でしょう」
「よくわかっているじゃないか。アリスト」
銀翼の皆さん、気分良さそうだな。顔に出ているぞ。
唯一のBランクパーティーだからな。多少は持ち上げてやらないと、な。
「俺達と銀翼はゴブリンをある程度殲滅したら城跡に向かい、残りの2パーティーは掃討戦をお願いします」
「了解だ」
皆は頷いた。
「囚われた人がいると思いますが、必ずロードの元に運ばれます。城跡周辺のゴブリンを掃討し、囚われた人々を救い出します。俺はロードを倒す。以上です」
「了解だが、連絡はどうする」
ゼオギース、良い所に気が付いた。
「皆さん、念話は使えますか」
念話は高度な技術だ。使える者は少ないと思うのだが。
「クルーシが使えるぜ」
ベイルは使えないのか。今度教えてやるか。
「念話か、うちは、俺とセシリアが使えるな」
「私とアニス、マリエールが使えるわ」
「銀翼の大剣の皆さんは」
「私とディーナ、アルティアの3人だ」
流石トップパーティーのメンバーだ。
グライムを見る。
「俺は当然使えるぞ」
「では、準備が整い次第、念話で連絡を下さい。作戦開始の合図は大魔法です」
{待機出来たぞ}
氷の刃から連絡が来た。
続いて白亜の剣からも連絡が来る。
{位置に着いたわ}
{了解。作戦開始します}
「さぁ、派手に行くぞ」
俺に続き、ラタールの翼が瓦礫の影から一斉に飛び出した。
グライムが遅れて付いて来る。
開戦の合図だ。
「インフェルノ」
廃墟の一画から巨大な火柱が上がる。
大地を抉り、爆音と共に渦を巻きながら天へと昇る火柱。
200近くのゴブリンを焼き尽くす。
「あれ最上級魔法じゃない」
エリゼリーエは青ざめる。
「おいおい、どんなだよ」
ゼオギースも青ざめる。
アリストも青ざめる。
「えー、なにあれ」
なんか、魔法の威力が上がっている気がする。
周辺からゴブリン達が飛び出しきた。
「おー、ゾロゾロ出て来たぞ」
「アリスト、凄い数だぜ。これ倒しながら砦まで行くのか」
「ベイル、暴れがいがあるぞ」
「おう、いいな」
グライムがボソッとつぶやいた。
「遠慮したい」
「ねぇ、私達が一番過酷じゃないかしら」
「クルーシ、泣き言いって無いで早く魔法を放て」
「だって、レイラ」
「近づいてくるよ。早く」
「もう、フレイム・バースト」
爆炎でゴブリンが吹き飛ぶ。
爆風を斬り裂きレイラが切り込んだ。
「撃ち漏らすなよ」
ゼオギースの氷の剣が冴えわたる。
「セシリア、派手なのを一発たのむぜ」
「了解よ。トルネード・スラッシュ」
渦を巻いた強風がゴブリン達を飲み込み、無数の真空刃で切り刻む。
「白刃波」
エリゼリーエの振り下ろした剣から斬撃が飛び、ゴブリン4体を斬り裂く。
「エリー。気合入っているわね。じゃ、私も。ファイヤー・アロー」
無数の炎の矢がゴブリンを貫く。
「アニス、流石ね。さぁ、狩り尽くすわよ」
左右からの攻撃が開始され、包囲陣を作り上げる。
良いタイミングだ。ゴブリン共が混乱している。
後方に回り込むゴブリンは銀翼が倒してくれる。
「フレイム・ショット」
次々に焼き崩れるゴブリン達。
奥の方に大きい個体が複数出現した。
「ジェネラルが来たぞ。油断するなよ」
俺の叫びと同時に、後方から火炎魔法が放たれた。
ゴブリンジェネラルが灰塵に化す。
流石Bランクパーティーだ。戦場をよく見ている。
「ベイル、上位種のホブ・ゴブリンが増えて来たよ」
「レイラ、気を引き締めろ」
「あいよ」
いいパーティーだよな、やっぱり。
着実にゴブリンを倒しながら城跡へと近づく。
グライムがジェネラルを率先して倒している。
「グァハッハッ。どうだ、アリスト。腕はなまってはいないだろう」
グライム・・・あんたも戦闘狂か。
「フレイム・バースト」
クルーシの魔法がゴブリンを吹き飛ばす。
魔力の消費が早いな。疲労が見て取れる。
「クルーシ、大丈夫か。早めにポーションを」
「ええ」
クルーシは魔力回復ポーションを飲んだ。
そろそろキングも出て来るな。数を減らしておくか。
「ベイル、広範囲魔法を使うぞ。巻き込まれるなよ」
「レイラ、グライムさがれ。アリストの大魔法だ」
「ライジング・メテオ」
前方の上空が暗雲に覆われ、無数の落雷がゴブリン達に降り注ぐ。
次々に落雷に焼かれ倒れて行く。
ゴブリン・ジェネラルも一撃で黒焦げとなり倒れた。
「クルーシ、あれも魔法なの」
「天変地異ではないと思うわ、レイラ。もう何でもアリね」
「ひー、落雷の雨よー。エリー」
「アニス、落ち着きなさい。あれは魔法よ」
「あんな魔法聞いたことがないわよ」
「私は聞いた事ある。ゴブリンがだいぶ減ったわ」
「皆、チャンスよ。一気に叩きましょう」
「そうね、エレナ。行くわよ」
「おー、凄いな。まるで天の裁きが降りたようだ」
「ゼオギース、感心している場合じゃないぞ。敵が減った。クリオスはもう突撃したぞ」
エディスに促され、慌てるゼオギース。
「お、おう。セシリア、遅れるな」
「あなたが、ボーっとしていたのよ」
セシリアが愚痴をこぼした。
城跡が見えて来たな。城壁は崩れ落ち、城も半壊している。
今だ、戦火の跡が生々しい。
銀翼と共に城跡広場に突入した。
「アリスト、ひと際デカいのがいるぞ」
「ベイル、ゴブリン・キングだ」
「あんなデカいのかよ」
「全部で5体いるな」
「マジか。銀翼の大剣に頑張って貰おう」
「ベイル、邪魔な小物から片付けよう」
「おう」
「ライトニング」
アリストの両腕から雷撃が飛ぶ。
雷撃がホブ・ゴブリンを数体貫いた。
「アリスト、小物は任せな。行くよ、クルーシ」
「待ってよ、レイナ」
クルーシは魔法を放ちながら駆け出す。
「ベイル、あんたも来るのよ」
「あ、はい」
ベイル。誰がリーダーだよ。
ラフェスをチラっと見る。
「銀翼の大剣さん、出番ですよ」
「アリスト、人使いが荒いな」
「いやいや、見せ場でしょう。ラフェス」
「お前も来るのだろう」
ラフェスは笑みを浮かべ俺を見た。
「行きますよ」
笑顔で返す。
「皆、キングは私達の獲物だ」
ラフェスの激に銀翼のメンバーが答える。
「おー」
「グライムさん、1体頼みます」
「フッ。俺に任せろ」
おお、頼もしい。流石ギルドマスター。
グライムはキングに向かって行く。
「ヘルエリア・ライジング」
無数の雷が収束し、束になりゴブリン・キングを貫いた。
「ガァァァァ」
超高圧な雷撃を受けゴブリン・キングは黒焦げになり、沈黙した。
銀翼のメンバーは固まった。
「はぁ」
グライムも固まった。
「え」
ゴブリン・キングも固まった。
「ふが」
そして、アリストも固まった。
なぜ、そんな目で俺を見る。
「皆さん、キングが隙だらけですよ」
「お、おう」
「ふが」
皆もキングも我に返り戦闘が再開した。
「まぁ、固まるよな」
状況を見ていたベイルは、ため息を付く。
「もう1体倒すか」
お、まともな剣が落ちている。使えそうだな。
剣を拾い上げた。
だいぶ傷んでいるが最近の物か。
「試してみるか」
グライムは1体か、銀翼が3体ね。
「ラフェス、1体貰うよ」
「アリスト。好きなだけ貰ってくれ」
「ガルガディ、ローゼル、ディーナ。1体任せた」
「任された」
ガルガディか。大柄な重戦士だな。腕とか俺の3倍以上太い。殴り合いでもキングといい勝負が出来そうだ。
「うおおおお」
斬りかかったラフェスの剣を弾き返すゴブリン・キング。
「クッ、あの鎧、ミスリルか」
「ホーリー・エッジ」
アルティアが魔法を放つ。
5本の聖なる光の刃がゴブリン・キングを襲う。
ゴブリン・キングは全てを弾いた。
「グアハハッ、き、きかない」
「魔物のくせに私より良い鎧を装備しているなんて、おかしいでしょう」
アルティアは愚痴をこぼす。
「全くだ」
ラフェスが苦笑いを浮かべ斬りかかる。
「クッ。動きが早い」
グライムの攻撃を交わしたゴブリン・キングは、馬車程の瓦礫を掴み投げつけた。
辛うじて避けるグライムにキングの拳が迫る。
剣で拳を弾く。
「ぐっ、重い」
バランスを崩しながら、キングの懐に飛び込み斬り上げた。
「ぐぁぁぁ」
咆哮を上げながら、キングは蹴りを放つ。
「うお」
グライムは蹴り飛ばされ、城の壁に激突した。
「ガハァ」
剣で受け衝撃を半減したが、この威力か。
グライムは立ち上がる。
チィ、手応えはあったが、浅かったか。
キングの追撃が迫る。
身を捻って拳を避けるグライムに激痛が走る。
グッ、あばらが折れてやがる。
キングの拳は城の壁を破壊し、そのまま横殴りが迫った。
まずい、かわせない。
グライムに拳が当たる瞬間、キングの腕が宙に舞った。
「ぐぎゃぁぁぁ」
なんだ、何が起きた。
「大丈夫ですかグライムさん」
「アリスト」
見るとキングの腕が切り取られている。
「すまん。助かった」
「油断ですか」
「いや、年だろう」
「まだ、早いですよ」
「ははは。て、お前の相手はどうした」
「倒しました」
「はぁー」
グライムが振り返ると肉の塊が見えた。
「あれがゴブリン・キングの成れの果てなのか」
グライムが唖然としているとアリストに呼ばれた。
「グライム」
「どうした」
「あ、倒しましたよ」
「・・・・・」
グライムは再び唖然とした。
キング2体を瞬殺だと。夢でも見ているのか。
グライムはアリストを見る。
何事も無かった様に辺りの様子を伺うアリスト。手にする朽ちかけた剣。
「そんな剣で斬ったのか」
「剣に魔力を流しているので、強度も切れ味も上がるのです」
「そ、そうか」
いくら魔力で強化しても、あんな朽ちた剣では無理だろう。普通は。
グライムは何を驚いているのだろう。
ベイル達は片付けた様だな。
「クルーシ、グライムを回復してくれ」
「はーい」
クルーシが駆け寄りグライムに治癒魔法をかける。
ベイルとレイラが駆け寄って来た。
「アリスト、大方片付けたぜ」
「さすがだな」
ラフェスとガルガディはどうかな。
「アルティア、キングの足を止めてくれ」
「はい」
アルティアはゴブリン・キングの死角に回り込んだ。
「グランド・マッド」
ゴブリン・キングの足元が泥土に変化した。
足を取られバランスを崩すキング。
「疾風光斬」
「ガハァァ」
ラフェスの大剣でゴブリン・キングは切断され絶命した。
「この程度では効かないわね。じゃ、これはどうかしら。フレイム・トルネード」
火と風の複合魔法を放った。
炎の渦がゴブリン・キングを飲み込んだ。
「グォォォ」
炎に包まれたまま、ゴブリン・キングが殴りかかってくる。
「え、動けるの」
ディーナに襲い掛かるキング。
ローゼルの矢がキングの目を貫いた。
「がぁぁぁぁ」
キングの攻撃は空を斬る。
「助かったわ」」
「油断するな」
「ええ」
「うおぉぉぉぉ」
ガルガディの魔力を込めた大槌がキングを叩き潰す。
「ガフッ」
ローゼルが魔力を込めた矢を放つ。
「とどめだ」
矢がキングの頭部に刺さり爆裂した。
城の地下に弱い反応があるな。人族だな。
「グライムさん。囚われた人達は地下にいる様です」
「地下牢でもあるのか」
「10人程います。頼めますか」
「承知した。お前は」
「城内深くに反応が幾つかあります」
「ロードか」
「グライムさん頼みました」
「おい、本当に一人で行くのか」
「はい、問題でも」
「いや・・・」
「アリスト。私も行くぞ」
「ラフェス」
「ここはラタールの翼に任せればいいだろう」
「じゃ、2人だけにしてくれ。囚われた人の救出もあるからな」
「了解した」
「ベイル、頼んだよ。まだ周辺に小物が居るから」
「おう。アリストなら心配ないとは思うが、気を付けろよ」
「心配するな」
城内に入ると死臭が漂って来る。
「酷いな」
「ええ」
ラフェスとディーナは顔をしかめる。
通路には食い散らかされた死体が散乱していた。
ロードのやつ、相当喰った様だな。
「アリストは剣も凄かったのね。でも、その古びた剣で大丈夫なの」
「大丈夫だよ、ディーナ。ロードを倒すまでは持つと思うから」
「そ、そう」
あれ、ディーナがドン引きしている。
確かに剣はボロボロだが、魔力を通せば何とかなるでしょ。
しばらく行くと通路の先に大きな部屋が見えて来た。
奥の玉座に巨大なゴブリンが座っている。
笑ってやがる。胸糞が悪い。
「ロードとジェネラルが2匹、それと入口の上に2匹隠れている」
「奥に居るのがロードか」
ラフェスの目が鋭く光る。
「ジェネラルを頼む、ラフェス」
「ああ、任せてくれ」
アリストは謁見の間に入った。
同時に上から剣を持つ2体のゴブリンが飛び降りて来る。
2体を一振りで斬り捨てる。
玉座に座るロードは薄ら笑いを浮かべている。
ラフェスとディーナがアリストと並び立つ。
「魔物風情が玉座に座り王様気どりか」
「グフッフッ。3人カ、他は死んダか」
「玉座が潰れているぜ。雑魚」
アリストの言葉に激高するロード。
「グウウ。貧弱な人ガ。殺セ」
ロードの号令でジェネラル2体が襲い掛かってくる。
ラフェスとディーナが迎え撃つ。
「おい、お前は来ないのか。デカいだけのクズが」
「お、おまエ、殺ス」
ロードは立ち上がった。
キングの倍近くある巨体だ。
ロードの頭上に魔法陣が現れた。
「生意気に魔法攻撃か」
巨大な火球が襲い来る。
アリストの剣が火球を斬り裂いた。
「魔法は無駄だ。低能」
アリストに挑発され、ロードは更に激高した。
「おのれゴミ共メ。ひネり殺ス」
ロードは巨体を揺らし突進し、巨大こん棒を振り下ろす。
素早く身をかわすアリスト。
こん棒が床に突き刺さり、破片が飛び散る。
破片を掴み、アリストに投げつけた。
避けた破片が壁に当たり、壁が崩れ落ちる。
「ライジング・ジャベリン」
雷の槍がゴブリン・ロードを襲う。
「ガァァァ」
ロードの魔法耐性が雷撃を軽減する。
焦げ付いた身体でこん棒を振り上げ向かって来る。
アリストの剣がロードの片足を切断した。
「グガァァァァァ」
「どうした、耐性があっても動きは鈍くなるな」
ジェネラルを倒したラフェス達は呆然としていた。
「ラフェス、何であんな剣で斬れるの」
「それよりも、魔法の火球を斬ったよな」
「ええ、斬ったわ」
「なぜ、斬れるのだ」
二人は顔を見合わせて、ため息を付いた。
ロードの回復力で焦げた皮膚や内臓は回復していく。
「ガァ、あ、足ガ」
「どうした。足が生えてこないのか。切断面を魔力で塞いでいる」
「キサマー」
振り上げた腕がこん棒ごと宙に舞った。
「グギャァァァ」
悲鳴を上げ、ロードはうずくまる。
「おい、クズ。ロードにしては弱すぎる。本来ロードとは長い年月を生き抜き、経験を積んだゴブリンの究極の進化だ。貴様にはそれが感じられん」
「グッ」
「お前は強制進化したのか。魔族の秘薬によって」
アリストの言葉に、ラフェスは驚愕した。
魔族と言ったか。魔族が絡んでいるのか。
もしこれが魔族の仕業だとしたら、大変な事だ。王国領内に魔族が侵入している事になる。
ラフェスは状況を凝視した。
アリストの問いにロードは沈黙している。
「図星か。まぁ、魔族はもう居ない様だが」
「お前は、殺す」
ゴブリン・ロードは残った片腕で、アリストを潰しにかかる。
「お前は用済みだ、死ね」
アリストは攻撃を交わし、下から斬り上げた。
「グアァァァァ」
ゴブリン・ロードは絶叫を上げ絶命した。
アリストの剣はポロポロと崩れてゆく。
「何とかもったな」
やはり魔法の威力が上がっている。魔力量も増えた感じだ。
それに戦っている時の感情が・・・・
「アリスト」
二人が駆け寄って来た。
「魔族とは何だ。どうやって魔法を斬った。何でそんな剣でロードを斬れた」
二人同時に食いついて来る。
「ラフェス、ディーナ落ち着いて」
この人達、怖い。
「いや、しかし、アリスト」
「はいはい、とりあえずここを出ましょう。ゆっくり説明しますから」
「そうだな。とりあえず出よう」
ラフェスは大きく頷き、ディーナを即して歩き出した。
外に出ると戦闘は終わっていた。全員大怪我も無く無事だ。疲労困憊している様だが。
囚われていた人々も全て救出した。全て女性だ。
男は全て食料、女は繁殖の為に生かしておく。ゴブリンは多種族との繁殖能力があるので、仕方のない事なのだが。
2日後、問題なくダルーシの町に到着した。
救出した人々はギルドが責任を持って元の村々に送り届ける事になった。
後日、戦闘に参加したパーティーメンバー全員がギルドに召集された。
ラフェス
ロードなど私の敵では無い。
アリスト
倒したの俺だけど。
ラフェス
・・・・・・・・・・・そんな事もある、かもしれない。




