臭いのイヤとレイラの優しさ
所で獣人って奴隷しかいないのか。
山や、深い森に隠れ住んでいる者がまだいますわ。
そうなのか。
獣人は身体能力に優れ、嗅覚や聴覚が人族の何十倍もありますの。
なので、何とか潜んでいる状態ですの。
自由に暮らせる日が来るといいのだが。
アリスト様はお優しいのですわ。
(うひょー、ステキすぎますわー)
アリューシュ、顔が・・・・・
コホン。私は「死神のアリューシュ」
全てを狩りつくしますわ・・・・
本当は乙女ってばれているのよ。クス
(クルーシ談)
エルフの国に行く方法を考える為、数日滞在する事にした。
その為、冒険者ギルドに来た。
この町のギルドで承認をとれば自由に滞在できる。
「はい、承認致しました。これで滞在期限は無くなりますが、今日からの10日間で最低一つ依頼を受けて下さい。それが条件になります」
受付嬢がにっこり微笑む。
「ああ、了解した」
ベイルも笑顔で頷いた。
「さて、どうする。早速依頼を受けるか」
「何か、適当な依頼あるかな」
「見てみましょうよ、レイラ」
レイラとクルーシが掲示板を見に行く。
「皆来て、これなんかどう。内容の割に高額報酬」
クルーシが手にした依頼書を見た。
「南の街道沿いに出る、オークの群れの討伐か」
オーク、Ⅾランクの魔物だ。何でも食う雑食性の魔物。人肉を好む為、犠牲者が多い。
今も昔もザコ魔物だ。多少数が多くても問題無いだろう。
しかし、ザコの割には報酬金が高いな。
「これ、いいじゃない。ね、ベイル」
「でもよ、クルーシ。数がさ。出現予測50~80体って書いてあるぜ」
「そうね~」
覗き込むレイラの顔引きつっていく。
「うぇ。そんなにいるのか」
「何だ、レイラ。何か問題があるのか」
「アリスト~」
いつも気の強そうな顔が、情けない顔になった。
「オークってさ、臭いんだよ」
「はぁ」
「臭いんだよ。それも吐き気がするくらい」
「そうだったか?」
「そうだよ。それが50体以上だよ」
レイラが必死だ。
「5~6体なら報酬が良いから我慢するよ。でもさ~」
アリューシュが笑顔でレイラの頭を「なでなで」する。
「レイラ、いい魔法があるのですわ」
「お姉さま。いい魔法って、なあに」
「匂いを感じなくなる魔法ですわ」
「えー、そんな魔法聞いた事ないよ」
「当然ですわ。私の考えた魔法ですもの」
「すごーい。流石お姉さま」
レイラは大喜びだ。
「これなら大丈夫だよ、クルーシ」
「そうね。受けましょうか。良いわよね、ベイル」
「よし、決まりだな」
なるほど。オーク討伐の依頼報酬が高いのはこれが理由か。
嫌がって受けるやつが居ないのだな。
「所でお前の魔法、なんて名前だ」
聞くと、アリューシュは固まった。
「えっ。それは、えーと・・・・臭いのイヤ、ですわね」
「プッ・・・・・ゴホン」
吹き出しそうになった。ダメだ、笑うな。堪えるのだ。
「そうか。分かりやすい名だ」
アリューシュは真っ赤な顔で下を向いている。
考えてなかったな。
それにしても・・・・センス無し。
問題も?解消されたので依頼を受ける事に。
南の街道を南下している。
東に見える山々は300年前と変わりはない。
今も美しく聳えている。
あの山の向こうはアジミール王国だ。
知っている街道だと思うのだが、道幅が広くそれなりに整備されている。
俺の記憶だと、この先は小さな漁村が2~3ある程度だった。
「レイラ。この街道を行くと、何処にいくのだ」
「ああ、アリストは知らないよね。この先には港町バラトーラがあるんだ」
「だから行商人の通行が多いのか」
「そうね、漁業が盛んで、大きい港町だよ」
そうか。今では町になったんだな。
「行った事はあるのか」
「依頼で、一度ね。海の料理も美味しかったよ」
「いいな、海の食材は何年も食べてないな」
前方から行商人が来る。
「魚、譲って貰おうか」
レイラは行商人の元へ行き、交渉を始めた。
見た目は冷たそうだが、思いやりのある優しい子だ。
「レイラはどうしたの」
クルーシが不思議そうに尋ねた。
「魚、譲って貰うらしい。魚は久しぶりだ」
ベイルは嬉しそうだ。
「いいわね、魚は美味しいものね」
クルーシも喜んだ。
アリューシュも笑顔で見ている。
レイラは新鮮な魚を掲げ、笑顔で戻って来た。
レイラは魔物の情報も聞いた様だが、オークの情報は無かった。
日が落ちてきたので、野営の準備を始める。
「クルーシ、やっぱり塩焼きでしょう」
「レイラ、正解よ。この魚は、塩で直火焼きが一番だわ」
「外で食う直火塩焼は最高だぜ。酒が無いのが残念だけどな」
「ベイル、魔物が出たらどうするの」
「怒るなよ、クルーシ。冗談だってば」
笑いが起こる。
皆で、火を囲み笑いながら食事をする。
「アリスト、美味しい?」
「ああ、美味しいよ。レイラ、ありがとう」
「いいわよ。お礼なんて」
少し照れるレイラ。
魚か。何年ぶりだろう。素朴な味だが、美味い。
こんなふうに食事をする事が、心から嬉しいと思う。
レイラの優しい心に感謝しないと。
食事も終わり、皆が紅茶を飲み始めた。
「明日はオークの襲撃のあった地点に到着しますわ。気を抜いてはいけませんのよ」
アリューシュが、明日の為に空気を引き締めた。
「まかせろ」
ベイルは力こぶを作って見せた。
レイラとクルーシが笑顔で口をそろえて言った。
衝撃の言葉を。
「まかせて。”臭いのイヤ”魔法が有るからね。」
グッ・・・ププッ・・・いかん、堪えるのだ。笑ってはいけない。
アリューシュは真っ赤な顔を手で覆い、下を向いてしまった。
2人は気づいてはいない。そんな気持ちは微塵も無いだろう。
だが、これは無意識の嘲笑か。
あの2人は鬼なのか。そうなのか。
だが、しかし。何となく違和感があるのは俺だけか。
辺境伯爵、いや、公爵邸に行ってからだ。
食後の紅茶。
これが貴族かぶれ、と言う物なのか。そうなのか。
アリューシュだけは絵になる美しさをかもし出している。
これが王族の血と言う物なのか。そうなのか。
と、そんな事はどうでもいいのだ。
魔族の動向も気になる。早めにエルフの国に行く方法を考えなくては。
港町も気になるが、致し方ない。
「なぁ、アリューシュ」
まだ顔が赤い。
「はい」
「アジミール王国ってどんな国だ」
「そうですわね。最近は余りいい噂は聞きませんわ」
「そうか」
「ええ、初代の王は誠実な良い王でした。ですが今の王は欲望の塊の様な人物ですわね」
「欲望の塊ね」
「この国は希少な鉱山を複数抱えていますわ。それが欲しいのですわ」
「なるほどね」
「あの山を越えるのはどうだろう」
東の山脈をさす。
「あの山々は険しい上に魔物の巣窟。何十日もかかる山越えは自殺行為ですわ」
「無理か」
どうするか。やはりアジミール王国に入らないとエルフの国に行けそうもないな。
とりあえず、依頼をこなす事を考えよう。
何かいい方法があるはずだ。
さぁ、久しぶりの冒険者の依頼だ。
腕がなるね。
ササッと討伐しましょう。
みんな、張り切っているな。
だって、臭いのイヤ があるからね。ムフフ
もう、忘れて下さいまし・・・・
悪い悪い。所で他にないのか、変わった魔法。
あ、ありますわ。
教えてくれ!
イヤ、イヤなのですわ。
早く魔物討伐にいくのですわ。
ぴゅーーーーーー
行っちゃったよ。




