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魔王を倒した英雄~300年後に飛ばされ世界を統べる~  作者: 乱丸


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10/20

カミール商会

準備万端

 出発だ。

 俺の魔力感知は最大5キロ。盗賊発見も余裕だな。

 あらあら、油断していると、痛い目を見ますわよ。

 

ん、誰だ?

 食料や回復薬などを買い込み、夕暮れ前にダルーシの町を出た。

 ベイル達は町の南に広がるアーセル平原にグランド・リザードの討伐に出かけた様だ。

 アイツらなら心配無いだろう。

 テーゼの町は王都との中継都市の役割を果たしているらしい。

 商人や旅人の間で盗賊の噂が広まりつつあると言っていた。

 本来、往来の多い街道に人影はまばらだ。

 時折見る商人隊や旅人は多数の護衛を付けている。

  テーゼの町まで馬車で3日。徒歩なら10日程だ。

 門番の話では盗賊の被害が多発している場所はギアの峠付近らしい。

 徒歩で3~4日くらいの場所だとか。

 夜になり、時折設営をしている旅人を見る。

 この辺りまでは平原が続き、木々もまばらで襲撃するには見通しが良すぎる。

 魔力探知にも魔物の反応はない。

 町周辺の街道沿いは、冒険者が定期的に魔物を討伐している。

 この辺りは安全らしいが、念のため結界を張り就寝する。

 ダルーシを出発した初日は何事も無く朝を迎えた。

 軽い朝食をすまし、街道を進む。

 しばらくすると、木々が多くなり街道の両側は森林になった。

 日が傾き始めた頃、後ろから大きな商人隊が迫ってきた。

 グライムが言っていた商人隊か。

 腕の立ちそうな護衛が周囲を囲んでいる。

 商人隊と並んだ時、不意に馬車から声を掛けられた。

「お1人ですか」

 見ると、身なりの良い中年の男が馬車からこちらを見ている。

 男の装飾品も高価そうだ。荷馬車3台に、護衛は30人か。

 大きい商会の様だな。

「はい、1人です」

「冒険者の方ですかな」

「ええ」

「冒険者の方でもこの先、お1人では危険ですぞ。テーゼの町に行かれるのなら、ご一緒にどうですか。旅は賑やかな方がいい。護衛をして頂ければ給金も支払いますぞ」

 屈強な護衛が居る商人隊より、後から来る定期馬車の護衛の方が少ない。

 だが、盗賊にとって実入りが多いのは商人隊の方だ。

 襲われる確率同等か。

「ご提案ありがたいのですが、1人でのんびり行くのが好きなのです。それに護衛の方も十分いらっしゃいますし」

「そうですか、残念ですな。では食事と一泊だけでもどうでしょう。ここで出会ったのも何かの縁ですから」

「食事と一泊ですか」

「はい。まだ先は長いですし。申し遅れました。私、商会を営んでおりますエマルド・カミールと申します」

 商人なら色々知っているだろう。情報収集の為に食事くらいはいいか。

「では、お言葉にあまえて食事をご一緒させて頂きます。冒険者のアリストです」

 冒険者カードを見せた。

「お若いのに、もうCランク。貴方の実力はもっと上ではないですかな」

「それはどうでしょう」

「私、人を見る目には自信があるのですよ」

 エドマンドはそう言って笑った。

「商会のご主人が、ご自分で行商に」

「ええ、行商にはこだわりがあるのですよ」

「主のお仕事も大変でしょうに、素晴らしい事ですね」

「お褒めに頂き、ありがとう御座います。お、思い出しました。英雄と同じお名前ですね。良いお名前だ」

「恐縮です。ところで、護衛の方は私兵ですか」

「はい。頻繁に行商に出ますので、冒険者に依頼するより雇った方が早いのですよ」

 護衛の練度は高そうだ。

「天幕もありますからな。寝心地もバツグンですぞ」

「お父様、私も商会して下さい」

「おお、すまないね」

 馬車の奥から少女が覗き込んできた。

「紹介が遅くなりましたが、娘のアルテシアで御座います」

「冒険者のアリストです」

「初めましてアリスト様。アルテシア・カミールと申します」 

栗色の髪をなびかせ、爽やかな笑顔を見せて来る。

こうして、一晩世話になる事になった。

 日も暮れ、街道沿いの開けた場所で野営をする事になった。

 野営の準備をしていると、背の高い、剣士が話しかけて来た。

「あんた、冒険者かい」

「はい。アリストです。一晩ですが宜しくお願いします」

「おう。この護衛のリーダーでクレイズだ。俺も元冒険者だ」

「他の皆さんもそうなのですか」

「そうだな、元冒険者に騎士崩れとか色々さ。脛にキズを持つ者もいる。カミールさんは中途半端な俺達に居場所をくれた恩人さ」

「いい人なのですね」

「アリストも気に入られた様だね」

「自分が」

「カミールさんは見る目あるからな」

 肩をバンバンと叩かれ笑って準備に戻って行った。

 食事は野営とは思えない美味しさだ。

 夕食が終わる頃、カミールが黒い飲み物を持って横に座ってきた。

 少々太ってはいるが、口ひげを生やし貫禄がある風貌だ。

「食事の後はカフィですぞ」

「はぁ」

 300年前にこんな飲み物は無かった。

 カミールは旨そうに飲んでいる。

 飲んでみた。

...........苦い。

「どうです。旨いでしょう。南の国から輸入した物でしてな。これから流行りますぞ」

こんなに苦いのが流行るのか?

「私、この王国には来たばかりなのです。この王国の事を色々教えて頂けませんか」

「ほう。私、商売柄多くの町をめぐってまいりました。私の狭い見聞で良ければお話致しましょう」

 ミルガルド王国の内情、周辺国との関係性。エルフ、ドワーフ、獣人の現状などを教えて貰った。

「マクレース辺境伯爵様はどんなお人柄なのでしょう」

「辺境伯様は・・」

「お父様ばかりお話して、ずるいのですわ」

 不意にアルテシアが割って入って来た。

「私にもお話させて下さい」

 アルテシアは膨れ顔だ。

「こらこら、失礼ではないか」

「お父様のお話が長いのがいけないのです」

「エマルドさん。大丈夫ですよ」

「無作法な娘ですみません。実は先日15才になりまして、今回が初の行商なのですよ」

 エマルドは嬉しそうに笑った。

「それは、おめでとうございます」

「ありがとうございます。夜明けまでの警備は、うちの者がしますので。ね、お父様」

「そうだね、アルテシア」

「それは申し訳ないです」

「いいえ、よいのです。それよりも、冒険のお話を聞かせて頂けませんか」

「アルテシア、余りわがままを言う物ではないよ」

「宜しいではいですか、お父様。夜は長いのですよ」

「エマルドさん大丈夫です。では、お休みになるまでの時間、お話致しましょう」

「ありがとうございます。アルテシアとお呼び下さい」

「娘がすみません。アリストさん」

「後で話の続きをお願いします。エマルドさん」

「むろんです」

 しばらく300年前の冒険談を話してあげた。勿論、魔物討伐の話だけだが。

 アルテシアが就寝した後、エマルドに色んな事を聞かせて貰った。

 当然の様に私兵団に勧誘されたが、丁重にお断りした。

 そして何事も無く夜は更け、朝を迎える。


充電期間終了。


次は暴れるぜ。

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