足フェチが仇になった
一通りのルームツアーを終え、俺たちは自室で腰を下ろすことにした。
二兎はというと、あれだけ余裕綽々だったのにも関わらず妙に落ち着かない様子だった。
俺の部屋に戻ってきても同様で、視線を何度も彷徨わせている。
「どこでも座ってくれよ。汚くはないと思うし」
「男子の部屋って、もっと荒れてるイメージあったんですけど……みんな言ってたし。でも、先輩にしては片付いてますね」
それは情報源が特殊なだけではないか。そう思ったが言わないでおいた。
「それじゃあ私も座りますね〜」
そう言った二兎は、蚊のように不規則な軌道で歩き回り――ベッドに座る俺の横に、ぽすっと体重を預けた。
「……他にも座るところ、あったよな?」
「はい〜? 先輩って本当に女の子の事が分かってませんねぇ?」
彼女は人差し指を立てて俺に向けてくる。
「いいですかっ! 女子を家に上げた時は、一番柔らかい場所に座らせるんですっ!」
「……なるほどな?」
今までの二兎の傾向からいって暴論かと思いきや、確かに女子はスカートだし、スラックスの俺よりも尻に対するダメージがデカそうだ。
今回ばかりは学んだと言わざるを得ない。
「これからは気をつけるよ。じゃあ二兎にベッドはやるから、俺は床に――」
「なぁぁにを言ってるんですか!?」
素直に陣地を明け渡そうとしたのだが、彼女は信じられないものを目にしているとでも言いたげに俺を止める。
「またご教授してくれるのか?」
「ええと……その、こういう時は隣の方がいいんです!」
「どうして?」
「とにかくっ! 全部に理由があると思わないでください! ちびっ子ですか!?」
失礼な。男子はいつだって理由を求めたくなる生き物なのだ。
かといって、これ以上やり取りを続けてもシバかれそうだし、黙って従うことにした。
「ふぅ……これで良いんですよ」
ようやく物事が思い通りに進んだ。
そういう顔をしている二兎を見ていたが、ある部分に目がいってしまい、急いで逸らす。
「……先輩? どうしたんですか?」
「い、いや、何でもないよ」
伝えるべきか悩んだが、言うな否や「先輩ってそんなに飢えてるんですかぁ? キモいんですけど!」なんて言われそうで、躊躇ってしまう。
しかし、二兎がしつこく言うように求めるものだから、ついに――
「いや、あのな……その座り方だと、見えそうというか……」
ベッドに座る俺と二兎の間には、人が一人座れるくらいの空間があった。
変なところで育ちの良さそうな彼女は俺の方へ身体を向けているのだが、片足をあぐらのように曲げているため、短いスカートの中が見えそうになってしまう。
彼女は俺に良い思いを持っていないだろうし、俺も同じようなものだ。
そんな人物からデリケートな注意を受けるのだ。文句を言われるのは免れない。
だとしても目に毒だ。
二兎の外見自体はかなりレベルが高く、仮にボクシングと柔道が戦うような異種格闘の場を設けられれば、葉音や涼とも張り合えるだろう。
そんな美少女が、ほっそりとしつつも肉感のある足を惜しげもなく晒しているのなら、見てしまうのが男というもの。
ゴミを見るような目で見られるとしても、明日の朝刊に載ることになっても、これ以上、隠すのはやめよう。
一種の武士道のような思考で口から出た言葉。
それを受け取った二兎は、俺の予想通り絶対零度の視線をぶつけてきた……のではなく、小悪魔のような微笑を浮かべた。
「……へぇ〜? 悟先輩も、やっぱり気になっちゃうんですかぁ?」
普段通りの甘い声と、わずかに嗜虐的な声色。
「そ、そりゃあ……嫌でも視界に入るだろ? 耳を塞いでても完全に音を遮断できないのと同じで」
自分でも弱い反論だと理解している。
「だったらぁ〜、これはどうですかぁ?」
二兎は恥ずかしげもなく、自分のスカートを少しだけ摘み上げた。
下着が見えないギリギリの位置で手が止められている。
「別に、俺は見ようと思ってないぞ?」
「目を閉じればいいじゃないですかぁ。そ・れ・と・もぉ〜……頭がこの中のことでいっぱいになっちゃって、そこまで考えられないとか?」
思わず「ぐっ」と唸ってしまう。
その通り過ぎた。俺は無意識のうちに彼女に釘付けになっていたのだ。足フェチが仇になった。
二兎の追撃は止まらない。彼女はゆっくりとこちらに近付いてくる。
今度は、いつの間にか第二ボタンまで外されていたシャツから下着と、浅くない谷間が飛び込んできた。
「――ッ!」
跳ねるように顔を背けるが、こんなの「自分は胸に目を向けてしまいました」と大声で叫んでいるようなものだ。
「巻島先輩も東堂先輩もいるのに、いけない人ですねぇ」
二兎がクスクスと笑う。
みんなは何フェチ?俺は全部!
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