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すいません!
いつもの時間に投稿忘れてました!
先生と初めての授業。
何をどこまで訓練させられるのかと思いきや、最初は「歩く」ことだった。
その位簡単だろうと思って普通に歩いてみると、さっそくダメ出しが。
「歩幅が大きすぎ」
「身体が少し前後左右に揺れている」
「頭の位置は基本動かさない」
いや、これ、淑女科の面々本気でやってるの?
滅茶苦茶大変なんですけど?
騎士科でも乗馬時の体勢とか片手剣と盾持った時身体の中心線を隠すようにとか言われるけど、こっちはこっちで色々あり過ぎだよ!
「正直、予想よりかはちゃんと動けてるわね?
何か事前に勉強したのかしら?」
「多分、騎士科や家で訓練した結果じゃないかと」
「はぁ?」
そこまで変な反応されなくても良くないですか、先生?
「単純に元々体幹の筋肉は鍛えてますから、体の軸をブラさないで歩くとかは慣れれば何とかできるかなと」
「ん~、つまり鍛え方は自信ありということですね」
「まぁ、そうじゃなければ騎士科首席なんて取れませんし」
僕はその会話をしてた時に先生の目が邪な光を湛えていたのに気づけなかった。
だから――
「では、次の訓練に入りましょうか」
――そんな言葉と共に先生が渡してきたのは……辞書。
何です、これ?
「その辞書を頭の上に載せて、歩行訓練しましょうか。
当然だけど、落としちゃダメだからね♡」
……え?
「この辞書、結構分厚いんですけど?」
「鍛えた身体を持つニフェール君ならできますよ」
「この訓練って頭を動かさずにバランスよく歩くのが目的なのでは?」
「あら、よく分かったわね?」
「なら、本を重くしても意味無いのでは?
普通の薄手の本で十分だと思いますけど?」
「……(ふいっ)」
視線逸らさないでくださいよ!
まさか個人的に楽しみたかったとかじゃないでしょうね?
「まぁ、いいじゃない♡」
「うっわぁ、教師が教育放棄しやがった」
「まぁまぁ、まずはやって見ましょ?」
「これ継続したらバランスより先に首の筋肉が太くなりそう……」
やむなくパァン先生に付き合い辞書を頭に載せて歩いてみる。
予想通りではあるけれど、二・三歩で辞書が落ちる。
何度も繰り返したが、いまいちコツがつかめない。
何かの授業、もしくは経験でこれに似たような手口は無かったか?
多分、あるとしたら武器の訓練よりは体術訓練だな。
確か、母上に教えて頂いた訓練時に似たような訓練が無かったか?
油を撒いた滑る場所で滑らずに動く訓練か?
強靭な足腰を作り、揺れる船の上でもぶれない足腰を築くか?
とはいえ、淑女科の女性陣(母上を除く)がやるレベルのことだし男性の筋力でないとできないようなことは求めないだろう。
もしかして戦闘では少々前傾姿勢が多いが、それではダメ?
「先生、すいませんが実例見せていただけます?
辞書じゃなくて構いませんが、横から見たいのです」
パァン先生は僕の反応にちょっと驚いたようだが、ありがたくやって見せてくれた。
スッ、スッ、スッ……。
……なるほど。
想定していたより重心をやや後寄りにしている。
これは戦闘時の体勢ではなく、むしろ乗馬体勢が近いな。
頭から踵まで線が引いてあるようにまっすぐになっている。
「先生、ありがとうございます。
再チャレンジしてみます」
自分用の辞書を持って頭に載せる。
重心を踵、そして尻側に移し頭のてっぺんから踵まで一直線となる体勢を取る。
この状態で右足を一歩。
スッ
左足を一歩。
スッ
繰り返し足を前に出していく。
スッ、スッ、スッ……。
おっ?
予想以上に順調にいけてるな。
教室の壁にぶつかるので、曲がろうとすると……。
バサッ!
あぁ、いいところまでいったのに。
いったん止まってから向きを変えて動いた方がよかったか?
とはいえ、初めの頃に比べてかなり進んだことに喜びを感じる。
このまま繰り返せば十分「歩く」はクリアできそうだ。
そんなことを考えているとパァン先生からストップがかかった。
「はい、そこまで。
予想以上に早くクリアしちゃいましたね」
「……え、クリアですか?」
まさかこれで終わり?
「ええ、『歩く』という行動はクリアです。
ちなみに、曲がるときの方法は別の時に教えますからその時に。
次は貴族の女性としての礼儀についてです。
……一応言っておきますが、わたくしは『歩く』だけで一週間はかかると思ってたんですからね?
正直予定が前倒しになりそうですよ」
そんなことを言って先生はにこやかに微笑み次の説明に移る。
なお、その後の授業はかなりのスピードで進んだことをここに記す。
……先生、かなり楽しんでらしたようですね?
次の日以降、化粧の説明と扇の使い方、会話技術の訓練をみっちり行った。
会話技術というのは難しく聞こえるかもしれないが、簡単に言うと遠回しにこちらの意図を伝える言い回し。
例えば……本音では――
「乳出し過ぎだ、娼婦かテメェ。
ちっとは隠せ!」
――と考えていたならば――
「あら、胸元が素敵ですわね。
胸元に生花を添えるとより良いかと思いますわよ?」
――とか言って穏便に注意するとか、もしくは――
「あら、胸元が素敵ですわね。
〇〇様が放っておきませんわね」
※ ○○は娼館通いしている有名なオッパイスキー
――のような感じ。
なお、前者は注意だが、後者は状況によって異なる。
○○を狙っている女性だったら――
「おっし、キッチリ攫ってこい!」
――と鼓舞することになるし、○○を嫌っている女性には――
「あの男にエロい目してまとわりつかれてええんか?
あの手の男はしつこいで?」
――と注意することになる。
そしてこちらと不仲な女性であれば――
「あの○○に襲われて淑女人生終わらせてこいや!」
――と、煽りを入れることにもなる。
注意や鼓舞のつもりが煽りに感じられてしまった等、使い方に細心の注意が必要な技術である。
正直、相手を煽ったり貶めたりなんて僕にはできないんじゃないかとヒヤヒヤしたが、パァン先生曰く――
「その生き生きと相手を追いつめる技術はどこで教わったんですか?!
【女帝】? 【女教皇】? 【才媛】?
流石に【岩砕】は違うと思いますが……」
――と僕の師匠を知りたがっていた。
完全に我流なんですけどね。
それと母上って全否定されるくらい淑女科の成績悪かったの?
まぁ、言葉より拳の方が似合っていますけど。
また扇の使い方だが、こちらは喋らずともこちらのおおよその意図を相手に伝える技術として淑女たちの必須技能として利用されているようだ。
とはいえ、とりあえずはナイショ話は扇を開いた状態で会話し、決断の意志を伝える場合は音を立てて完全に閉じること。
最低この二つだけでも理解しておきなさいと言われた。
ただし、想定以上に会話技術が順調すぎて扇の使い方に時間を割くことになりそうだ。
そして、化粧の説明。
頬紅から始まって口紅、眉墨、アイシャドー等。
顔以外にもマニキュア、やすりを使った爪の整え方etc。
正直多すぎてほとんどは基本以上の事は現時点では理解できなかった。
とはいえ僕は髪をカツラで誤魔化すため、他の淑女たちより学ぶ量が少なくて済むようで、そこはホッとしている。
さて、この教育を続けて一週間。
ラーミルさんの休みのタイミングに合わせてデートに誘う。
チアゼム家に迎えに行くとラーミルさんから一言。
「ニフェールさん、何されているのですか?」
「え?」
どうもよく聞いてみると、歩き方が微妙に変わっているらしい。
それも、微妙に女性らしさが出ているように見えたとのこと。
「そこまで変わってますか?」
「普通の人なら分からないかもしれません。
また、男性には気づかれないかも。
でも、貴族女性は感づく人がいると思います」
「そんなに分かりやすいですか?」
「カールラ様とロッティには確実にばれます」
「あ……」
あの二人は流石に誤魔化せないでしょうね。
「で、何されているのですか?」
そんな睨まれると……照れる♡。
なんてボケた行動は止め、最近学園で学んでいることを一通り話す。
「……本気ですか?」
「本気で学んでますよ。
誘拐未遂の件、裁判の件、裏道経由での調査の件。
どう考えても女装が有用過ぎて学ばないという選択肢は存在しませんでした」
有用という一点において、ラーミルさんも納得せざるを得なくなっているようで、苦悩の表情を浮かべている。
「確かに情報収集するにあたって有用なのは理解できます。
ですが、それをいつまでできるとお思いですか?」
……痛いところを突いてきますね。
「やれて二十歳でしょうか。
僕も身体が成長するでしょうし、髭の生え方によってはもっと早く辞めることになるでしょうね。
ですが……」
この後言おうとする言葉に恥ずかしさを覚えて情けないけど小声で答える。
「その間少しでも家族や……その……婚約者を守れるのなら、そのぐらいの苦労は受け入れようかと……」
僕の顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。
正直火照って仕方ない。
それと同時に、ラーミルさんも顔真っ赤になっている。
これはこれで眼福というか、ご褒美というか。
「……」
二人で顔真っ赤にして、でも互いの顔を見れなくて……。
会話は一切無いけれど、個人的には楽しい時間だった。
「そう言えば、指導して頂いているパァン先生に提案されまして、ご存じでしたら教えて頂きたいのですが?」
「なんでしょう?」
「ラーミルさんって、肌の保湿にどのようなものを使ってらっしゃいますか?」
ブフォッ!
「ちょ、ちょっと大丈夫ですか?」
物凄く吹いていらっしゃいますが?
「ゲホッ! ゴホッ!
……何とか大丈夫です。
突然どうされたんですか?
肌の保湿でしたっけ?」
「えぇ、アロエやレモンから抽出したエキスを塗るといいと聞いたのですが、その時にパァン先生から『婚約者に教えてもらったら?』と……」
ブワッ!
ちょ、ちょっとまってラーミルさん!
なぜ、どうやって覇気使えたの?
冗談抜きで落ち着いて、目が殺気立ってるから!
「あんのババァ、人の婚約者使って遊ぶんじゃねぇよ」
小声でボソッと吐き捨てるように言ってるのがなお怖いんですけど!
ラーミルさんが何度か深呼吸して落ち着いてから話を続ける。
「もしかして、パァン先生って……よく言ってお茶目?」
「……基本真面目なのですが、面白そうなものに乗ってしまう事もありますね」
「ということは、歩きの練習で頭に辞書乗せられたのは……」
「滅茶苦茶楽しんでいたと思いますわ。
表に出さないようにしていたかもしれませんが、当人ウッキウキだったかと」
「やっぱり、指摘したら視線逸らしてましたし……」
「つまり、一応真面目な範疇だけど欲望には耐えられない?
……カールラ姉様系?」
「欲望の内容が異なりますけどね。
カールラ様はちっちゃな子。
パァン先生は面白いこと」
二人して呆れて溜息を付く。
「念の為確認なのですが、口堅そうですか?」
「そこは大丈夫です。
面白そうなことでも自分が楽しむのであり、誰かにばらすようなことはしません。
教師として一線は引いているつもりのようです」
「なら、ロッティ姉様辺りに情報は流れないってことですね」
「あぁ、確かにそれはやらないと思います。
面白いでしょうけど、あの子は冗談抜きで危険なので」
まぁ、学園で【女教皇】モードで話始めたら何人堕とすかわかったもんじゃないしねぇ。
学園が腐るのは僕も避けたいし。




