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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
6:女装訓練
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 第六章『女装訓練』始まります。

 事前に進捗で述べた通り五章と並行した話となります。

 時を戻し、夏季休暇真っ只中。

 べたな言い回しをすると、五章の開始頃。



 僕、ニフェールは学園にいた。



 最近、色々と女装する機会が増えた。


 誘拐未遂事件。

 その裁判。

 そして薬物製造拠点の調査。


 ……いや、期待しているわけでは無いんだが。



 そして、僕の予想以上に男性と思われなかったようだ。

 ……なんせ、宰相様まで堕ちてたらしいし。


 もしかして情報収集に女装姿はかなり使えるのでは?

 いや、女装して酒場とか娼館とかにはイロイロ危な過ぎて行かないけど、侍女っぽい恰好や貴族の淑女に化けることは可能な気がする。


 普段から女装したいとは思わないが(股間がスースーするし……)情報収集やマーニ兄と入り込んだスカイストリートみたいに女性同伴でないと入れない場所には都合がいい。

 普通の淑女なら連れて行けないような場所でも僕なら自力で脱出できるしね。


 ……母上?

 ……普通じゃないからカウントしてないよ?

 ……あの人情報収集要員よりも殲滅要員だし。



 そんなわけで、女装全般の技術を習得するために選んだのは……学園の礼儀作法教師、パァン・ナーナル先生。

 高齢のお婆ちゃん先生だけど学園の生き字引というか、多分誰よりも長く学園にいるんじゃないかな?


 ちなみに、全学科の礼儀作法を教えておられるので男女問わず指導可能なはず。

 授業中のパァン先生は堅くはあるけど、質問や相談にはちゃんと乗ってくれるから、こちらが真面目に学びたいことがちゃんと伝われば教えてくれると思うんだけどなぁ。




「……はぁ……」




 パァン先生、そこで溜息つかれると、心にクルんですけど?



「長年教師しておりますが、女装――というか、化粧や着付け、ダンスなど淑女として学ぶものを一通り教えて欲しいと言われるのは初めてです」



 何十年で初めてなのかは……聞くだけ野暮だな。

 叱られたくないし。



「それも理由が『情報収集と相手の油断を誘う為』って……そんなに有効なのですか?」



 一応、犯罪者共と領地の男ども、裁判で宰相は堕としたことを伝えると溜息から呆れにレベルアップしてしまった。



「セレバス君まで堕ちるとはねぇ……。

 学生の頃は学園内で最初の奥さんに愛の告白して大騒ぎになったってのに、今度は男の子に惹かれるとは……」



 セレバス君って宰相だよな?

 宰相、そんなことまでやらかしていたんだ。


 って、最初のってことは、後何人いるの?

 もしかして恋多き人物なのか?

 個人的には、その恋は女性にのみ向けて欲しかった。



「ただ、実際に有用なんでしょうね。

 ニフェール君を見る限り、化粧したら映えそうなのは事実。

 なので、一つ提案があります」


「なんでしょう?」


「君の女装した姿を見せて頂きたい。

 本当に有効活用できるほどの実力の片鱗を見せてくれませんか?」



 ……微妙に回答しづらいなぁ。

 念の為確認してみるか。



「質問に質問を返す形になって申し訳ないのですが、それ、性癖から来る指示じゃないですよね?

 僕に主に化粧を施した女性陣の半数は僕に女装させて喜ぶ方々だったので、念の為お教えいただきたい」

「そっちの趣味はないけれど……まさか、その半数とやらは【女帝】?」



 やっぱりカールラ姉様は(そっち側で)有名人だったか。



「その通り、一人は【女帝】です。

 後一人は?」

「……ありそうなのは【女教皇】ですが、あの二人とニフェール君との繋がりが想像できなくて」



 いや、想像できないとか言いつつ完璧な回答しているんですけど?



「その二名で合っております。

 ちなみに【女帝】は長兄の、【女教皇】は次兄の婚約者です」


「……君も大変ですね」

「……はい」



 パァン先生もよ~くご存じだったようだ。

 憐れみを込めた視線が痛くてたまらない。



「他のお二人はどなた?」


「母上と僕の婚約者です。

 母がキャル・ジーピンで、婚約者がラーミル・ノヴェール」

「あらあら、【岩砕】と【才媛】とは物凄いメンバーが集まっているのですね……って、【岩砕】?」



 ん?

 どうしたんだ?



「え~っと、何か問題でも?」


「あ、いや、【岩砕】が母親となると、噂通りなら父親が【緊縛】で長兄が【魔王】、次兄が【死神】で合ってるかしら?」

「ええ、合ってますよ」


「……この国の危険人物かき集めた感じね」



 武力的な危険と性癖的な危険ですね、分かります。



「否定はしません。

 で、今の反応から察するに【女帝】たちの方ではなさそうなので、お見せするのは構いませんが、関係者呼んでここで化粧してもらうのはちょっと……」


「あぁ、確かにあの面々を呼ぶのは」

「……危険なもんで」



「は?」



 え、分かってもらえない?



「まず、僕は身体を差し出すだけで、化粧にドレス着用などはお願いするしかないのです。

 さて、僕を好き勝手飾り付けられる状況で、先ほど申し上げました【女帝】と【女教皇】がまともな精神でいられると思いますか?」


「……絶対無理ね」



 ご理解いただけて助かります。



「そして、以前着たドレスは今の所婚約者に頼んで持っていてもらってます。

 持ちだすのは頼めば済む話なのですが、今婚約者は【女教皇】と同じ職場――チアゼム侯爵家――で侍女をしております」



 パァン先生の表情が強張る。

 この後の僕の発言を想像してしまったのだろう。



「【女教皇】にバレずにドレスを学園にもってくるのは現状では至難と言わざるを得ません。

 【女教皇】の嗅覚(?)を誤魔化しきって持ってくるのは僕でも無理です」



 天を仰ぐパァン先生。



「なるほど、確かに学園生時代の【女教皇】の行動からすると不可能ですね。

 分かりました、なら一度わたくしの方でニフェール君を化粧してみましょうか」



 ご理解いただき助かります。


 ですが、学生時代のロッティ姉様ってそこまで凄かったの?

 聞くのが怖いのでこれ以上は触れないつもりだけど。



「では、こちらに座ってください。

 ちなみに、過去に女装した時はどのような感じだったんでしょう?」


「初回は庶民が寝巻に着替えている雰囲気だったので、左頬の傷を消すくらいでしたね。

 確か自然に近い化粧をしていたと思います。

 二回目は裁判であること、陛下の御前に出る必要があったこと、そして裁判の相手が誘拐未遂犯だったことから対比の為にガヴァネスっぽい薄紫のドレスにしてましたので、それに合わせた化粧かと思います」



 僕の説明に少し考えた上で、パァン先生は僕に化粧を施していく。

 その手は僕というキャンバスに躊躇なくなめらかに描いていく。



 途中で「まぁ!」とか「あらあら、これは……」という独り言が聞こえてくるのが気になるが、ここは黙ってお任せしよう。



 口紅まで塗られ鏡で見せられる。


 今までの化粧ももの凄かったんだが、パァン先生のはそれを超える素晴らしさだった。

 二回目のガヴァネスモードをパワーアップしたような感じ。


 先生がドヤ顔するのも分かる。

 これは確かにドヤりたくなる程の完成度だ。



「いやぁ、これは過去三本の指に入るくらいの出来ですね。

 これは捗ってしまいましたわ!」



 捗るって……。

 まぁ満足されたならば文句はありませんけど。



「確かにこれなら覚える価値ありですね。

 よろしい、わたくしが全力でお教えしましょう。

 ニフェール君、これから大変ではありますが、ついてきてくださいね」


「ありがとうございます、頑張ります!」



 その後、今後について相談し、スケジュールは夏休み中は平日午後二時間教えていただき、それ以降については要相談となった。


 必要な小物や衣装についてだが、すぐに衣装が必要という訳ではない。

 それよりも所作を優先し、並行して慣れていない化粧から訓練することになった。



「それと、今日からでも始めて欲しいことがあるの。

 とても大事なことだからできれば毎日してほしいけど難しければ二日に一回は実施してほしいわ」



 え、そんなに重要なこと?



「ドレスや私服で肌が露出するとことの毛を剃っておいて欲しいの」



 ……は?



「何となく分かって無さそうね」

「あ、ハイ。

 まだ生えてなかったり、目立たない状態なので大丈夫かなと思ってました」


「確かにニフェール君の肌は正直まだ剃る必要は無いかもしれない。

 でも甘く見てるとすぐに生えてくるのよ!」



 パァン先生、何です、その覇気は?

 騎士科でもできる奴ほとんどいないのに。



「顔のひげや腕や脛、太ももだけじゃないわよ?

 指や腋、ドレスでどこまで胸元を見せるかにもよるけど胸毛もちゃんと剃っておく習慣をつけないと!」


「ちょっと確認なのですが、剃るときのコツとかあります?」



 ちょっと黙考してから色々と教えて頂いた。



「まず、剃る部分の毛と肌を温めます。

 蒸したタオルで温めるとか入浴後がいいですね。

 その後石鹸を泡立てたものを剃る辺りに塗ってください。

 本当はその前にオリーブ油とか塗っておくといいのですが……」



 え゛?



 毛剃りにそこまで手間かけるの?

 ……予想外だった。



「そして剃毛ですが、毛の生えている方向に剃り、仕上げに剃り残し部分を逆方向から剃ればうまくできますよ。

 どちらも何度も剃らず、可能な限り一度ずつで済ませるように。

 そうするとカミソリ負けの可能性を減らせます」



 ふむふむ、一度でね。


 確かに繰り返し切ると切り口がボロボロになるからなぁ。

 やっぱり髭でも人でも切るなら一撃じゃないと。



「後は保湿ですが、アロエやレモンから抽出したエキスを塗るといいのですが、今は置いておきましょう。

 一気に伝えても覚えきれないでしょうからね」



 助かります!



「ちなみに、保湿用エキスについては婚約者に聞いてみたら?」



 ……パァン先生、めっちゃ嬉しそうな表情ですね?

 にやつきっぷりはロッティ姉様に似てますね。


 ん~、ラーミルさんに最終的には教えるのは問題ないんだけどいきなりか……。



 うん、覚悟決めて相談してみるか。



「かしこまりました、ロッティ姉様にバレないようにデートのタイミングで相談してみます」




【学園教師】

 ・パァン・ナーナル:礼儀作法担当教師

  (淑女科ではそれ以外にも化粧や整髪等美容系の教育も担当している)

  → 名は血圧計製造メーカー、パナ〇ニックの旧名、松〇を無理に英訳&変換

    姓は同様にパナ〇ニックのブランド旧名のナ〇ョナルから

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[良い点] >この国の危険人物かき集めた感じ キケンな2つ名持ちは現時点でほぼ打ち止めらしいという安堵感( ̄▽ ̄;) [気になる点] パァン先生が妙な2つ名持ちに進化しそう(;^_^A [一言] 投稿…
[良い点] >>「……この国の危険人物かき集めた感じね」 パァン先生、的確な講評。 [気になる点] 6章「女装訓練」ってw。 読者が求めているのか、作者の趣味全開!なのか。 [一言] 「ジーピン家、素…
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