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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
4:学園風景
54/358

17

 さて、大公様とアゼル兄が会談をしている間にもう少し考えないと。

 次はマーニ兄。


 なぜマーニ兄は実家に戻ったのだろう?

 騎士科実技一位、筆記三位なら確実に騎士団が欲するだろう。

 点数落とした理由が法律と国語なら特に兵站に関わらないから即戦力扱いされる。


 ただし、【死神】の情報が事前に騎士団に流れていたら向こうから断る可能性がある。

 その場合は諦めるしかないが。


 ただ、今後ロッティ姉様のヒモとして生きるのは流石にまずかろう。

 できるだけ自分で稼げるような方法となると……実力見せつけて爵位でももらうか?

 領地無しで爵位だけでも十分。


 薬の調査に関わらせてみるか?



「マーニ兄、ちょっと話いい?」

「ん、なんだ?」



 他の面々から離れた位置に移動する。



「マーニ兄、騎士にならなかった理由って言える?」

「……」


「言いずらいのなら言えないと断って欲しい。

 もし言えるのなら教えてもらえるとありがたい」

「何を考えている?」



 どう回答しよう?



「いくつか考えていたけど、まずロッティ姉様のヒモでいたい?」



( ゲ フ ゥ ! ! )



 正直に答えたのに、なぜそんな反応を?



「ニ、ニフェール、なんでそんな単語を?」

「今のマーニ兄って引きこもりでしょ?」



( ぶ は ぁ ! ! )



「ちょ、ちょっと違うな!

 ジーピン家の当主補佐として……」


「スペアの役割はもうそろそろ終わるんじゃない?

 なら、独り立ちを考える時期かなって思ったんだけど?

 それに……」


「それに……なんだ?」



「カールラ姉様とロッティ姉様を常時同じ家にいさせるのはなんか危険な気がして……」

「あぁ、確かに」



 否定しないんかい!



「それと、先日の実家内サカリ場二重奏は流石にアムルの教育によくない気がするんで」

「誠に申し訳ありません!」



 というか、僕もラーミルさんもイロイロ困ったことになってましたし!

 言いませんけど!



「そんなわけで、ロッティ姉様と一緒になるのなら仕事確保しないといけないのかなと思ったんだけど?」

「……確かに」


「んで、思いついたのがさっきジャーヴィン侯爵が嘆いていた兵站担当。

 マーニ兄筆記三位なんでしょ?

 なら十分できそうな気がする」


「ん、まぁそれなりにはできるとは思うが……」

「ただ、マーニ兄が騎士団に行かなかった理由が分からなかったので下手に提案はできないかなって……」



 そう言ったらマーニ兄が僕の頭を撫でてくれた。

 そんなことすると淑女Cと淑女Lが暴走しますよ?




「気を遣わせてすまんな。

 騎士団に行かなかったのはそんな大仰な理由じゃないんだ」


「え?

 嫌がらせを受けたとか、国から来ないでくれとか言われたとかじゃなくて?」


「どんな嫌がらせだよ!

 それに国から来ないでなんてどんだけヤバいと思われてるんだ?」



 靴にガラス片入ってたとか、階段で後ろから押されたとか?

 もしくは鍵をかけられる部屋に閉じ込められ……扉ぶち壊して脱出するか。



「えっ、自覚無いの?

 学園でも教師に【死神】の名はまだ有効だったよ?

 騎士団でも他団員が怯えるから勘弁してくれとか言われているのかと……」



 なぜか、落ち込んでしまったマーニ兄。

 なんか、ゴメン。



「まずは誤解を解くか。

 騎士団行かなかったのは単純に騎士団の問題を把握していたから。

 行っても兵站担当になるのは丸わかりだし」



 まぁ、ジャーヴィン侯爵も説明してたしね。



「んで、裏方より前に出たかったんで入るのを見合わせたんだ。

 ちなみに、似たような考えをする人はいるぞ?

 俺の前の代も似たことやってた人はいた」


「そう言う人は何やってんの?」

「領地の警備隊長やってる」



 となると、マーニ兄は騎士団に入る気は無いと。



「んじゃ、どうやってヒモ脱出するの?」

「ジーピン領での警備隊と考えていたけど、確かにアムルの教育によくないのは理解できるし、自覚もある。

 とはいえ、どうしようか……」


「ジーピン領にこだわりがあるわけではない?」

「まぁねぇ、アゼル兄が治めるところに口出すのもなんだし」



 ん~、どうしよう。

 確実な策じゃないんだけど提案自体は可能なんだよなぁ。



「ニフェール、とりあえず言ってみ?

 なんか思いついたんだろ?」


「うん、確実な手じゃないんで言いづらかったんだけど……」

「そこは俺が判断する」



 ではとりあえず言ってみますか。



「家興さない?」

「はぁ?」



 いや、正直に言ったのにその反応はないんじゃない?



「新しく貴族になって家を興さないですか?」

「いや、言葉は伝わっている。

 意味というか、どうやってというのが伝わらないんだ」



 ん~。



「今、薬で問題があるよね?

 アレについてジーピン家として手伝う方向で動いているけど、戦力としてより協力してみたら?

 具体的に言うと、薬の製造元潰すのに協力する。

 むしろ、マーニ兄の暴力で薬の関係者壊滅させる」


「その協力の褒美として男爵を賜る?」

「そうそう。

 ただでさえ最近爵位持ちが消えているから、王家の役に立ちそうな貴族として認められるかも」



 僕という実績もあるしね。



「ほぅ、それは面白そうだ」

「そうですね、もう少し聞きたいところですが」



 バ ッ ! !



 マーニ兄と僕が一斉に声の方を見ると、大公様とアゼル兄がこちらを向いてニヤニヤしている。

 あの雰囲気だと結構前から聞いてたな?



「アゼル兄、もしかして……実家でサカリ場開いていたこと辺りも聞いていた?」

「なんだそれ、そんなこと話していたのか!」



 アゼル兄が大慌てでツッコミを入れるが、大公様はニヤニヤがよりひどくなった。



「ん~、どこから聞いていた?」

「ヒモの脱出について話している所から」



 ならと騎士にならなかった理由を聞いたことから今後の未来の提案まで一通り説明する。



「そ、そこまでうるさかったか?」

「お久しぶりだったんでしょうし、ねぇ?」



 苦悶の声を上げるアゼル兄。

 気持ちが分かるのか、マーニ兄は頷くばかり。



「正直ジーピン家としては痛手ではあるが、マーニは下手な貴族共よりできるからなぁ。

 ダメとは言えんだろ。

 勉強しなおしの部分はあるがな」



 しょぼくれるマーニ兄。

 領主科の勉強くらいなら僕教えようか?



「ちなみにうまくいく可能性は?」


「分からない。

 薬の情報がどこまで得られるのか、ジャーヴィン侯爵から助力を求められるか、そこまでどうにかなればマーニ兄が暴れるだけなんだけど」



 多分、ジャーヴィン侯爵から手を貸してくれとは言われると思う。


 今王都にいる最高戦力と言ってもいい面々だ。

 むしろジーピン家絶対参加と言われるだろう。


 ただ、それを有効利用できるほどの情報が得られるか。

 そこが全てだろうな。


 確かストマ・ディーマスだったか?

 あそこから何か追加情報が入れば参戦することも可能だ。




「それと、ジャーヴィン侯爵が頭抱えていた兵站担当の件。

 すぐではないけど対処方法思いついた」

「なにっ!」



 マーニ兄、そのぎょろッとした目止めて、マジで怖い。



「とりあえずそこはジャーヴィン侯爵に相談してみるよ。

 明日の朝かもしれないけど」



 さて、打ち合わせ終わって帰ろうとすると、フィブリラ嬢がアムルを掴んで離さない。

 あ~、もしかしてもう来ないと思われちゃってる?


 大公様は……いや、オッサンの涙目顔って守備範囲外なんですけど?


 アゼル兄は……なにそのスルーパスは?

 ファンタジスタって呼んじゃうぞ?


 カールラ姉様……あ、いいです、ヨダレだけ拭いといてください。



 年上が働かないので、やむなく二人から話を聞く。



「さて、フィブリラ嬢、どうしたんだい?」

「ア、アムル様と離れたくなくて(ギュッ!)」



 カールラ姉様、ヨ・ダ・レ!

 アゼル兄、拭いたげて!



「ん?

 なら明日も会ったら?」

「え、いいんですか?」


「さあ?

 ただ、まだ領地に帰るスケジュール決まったとは聞いてないし

 アゼル兄、どうなの?」

「あ、あぁ、まだ決まっていない。

 今日か明日の朝ジャーヴィン侯爵と話してからだな」



 まぁ、そんな所かな。



「で、どうする二人とも。

 明日も一緒に遊びたい?」

「「ぜひ!」」



 チラッとアゼル兄と大公様を見ると、ヤレヤレと言わんばかりに肩を竦める。



「アゼル兄、誰が担当でもいいけど明日もここに連れて来る大人を用意して。

 あとフィブリラ嬢、流石にお別れもせずにいきなり消えるつもりは無いから。

 それと、もしよければアムルに勉強教えてやってくれないかな?」


「勉強ですか?」

「同年なんだし、一緒に勉強してみるのも経験かなと。

 それに、アムルもフィブリラ嬢も他の人と一緒に勉強なんてしたことないんじゃない?」


「確かにそうですね」

「なんで、学園に入る前の予行練習ってところかな。

 それと、互いに苦手な部分を教え合うのもいいんじゃない?」



 フィブリラ嬢が考えている所にカールラ姉様がこっそり近づき耳打ちすると、目を輝かせだす。

 ねぇ、何言ったの?



「ぜひ、一緒に勉強したいですわ!

 アムル様、よろしくお願いしますね♡」

「は、はい」



 アムルがついて行けてないんだけど?

 ちょ、本当に何言ったの?



 大公家を辞しジャーヴィン家に移動中にカールラ姉様に何を言ったのか聞いてみる。



「あれは私とアゼルが一緒に勉強した時のことをちょっと教えたのよ」

「え゛っ!」



 な~にを驚いているのかなぁ、アゼルにぃ~?

 詳細な説明を求めます!



 あ゛?

 黙秘権?

 貴様にそんなものやると思うんか、あぁん?



「ニフェールちゃんが何を期待しているのか知らないけど、もっとこう甘酸っぱいタイプのお話しよ?

 流石にオトナな話はフィブリラちゃんにはまだ早すぎるもの」


「……信じていいんですね?」

「信じてくれないの?」



 アゼル兄なら堕ちるであろう上目遣い。


 でも、今までの実績がねぇ……。

 どうやって信じろと?



「ジーピン家で繰り広げたサカリ場を思い出してから同じ発言をしてみてください」

「誠に申し訳ありませんでしたぁ!!」



 勝った、勝ったが……勝利とは虚しいものだ。



 そんな話をしているとジャーヴィン家に到着。

 そこで解散しようとしたところ侯爵様から呼び出しを受ける。


 って、もう帰って来たの?

 まだ騎士たちを金銭的に追い詰めていると思ったのに。



「ニフェール、急ぎで話があって戻って来た。

 もう少ししたらチアゼム侯爵も来られるからそこで話そう」



 なんか、面倒そうな話ですか?



「それと、カルディアとやらについてだが、どれだけ使える?」


「一般的な騎士科の生徒ですよ?

 成績自体は中の上位。実技も同じ

 足が速いのが特長ではありますが、薬の件で前線に連れて行くのは反対です」


「そうか……いや、それが普通だよな」



 すいませんねぇ、逸般人で。

 それはともかく、薬の方で進捗があったということか。


 チアゼム侯爵も参加して話し合いが始まる。

 あ、侯爵が気を利かせてくれたのかロッティ姉様とラーミルさんまで連れてきてくれました。

 あぁ、癒される……。


「ストマ・ディーマスがまたやって来て情報を置いて行った。

 追加情報は薬の製造拠点。

 カルディアが見つけたあの小路。

 あの奥あたりに拠点があるらしいんだが、入り口がどこかまでは分からん」



 あの辺りってことは小路全てが怪しい?

 いや違うな。

 あの一角の店舗も含めて怪しいことになるなぁ。



「それって調べようが無いですよね?

 あの一角丸々騎士で囲んで一斉攻撃します?」


「無駄だ。

 地下に脱出できる道があればどうしようもない。

 なので、別の方法を取る」



 別?



「あの小路ではなく、その隣の小路が一部の者たち(・・・・・・)には有名でな。

 そこでちょっと変装して潜入調査してほしい」



 一部の者たち(・・・・・・)って何?

 それと変装って、また女装を期待されてる?



「これは知らないだろうが、隣の小路はその……好き合っている者たちが外で……致すことで有名な場所なのだ」



 ア・オ・カ・ン・ですか~!!!



 え、というと、女装してアゼル兄かマーニ兄とそこでイチャイチャして来いと?

 ちょっと待って、そこまで許す気は無いぞ!



「落ち着け、ニフェール!

 別にそこで行為をいたせとは言わん!」



 チラッとカールラ姉様とロッティ姉様を見ると、蛇口の栓が壊れたかのようにヨダレが駄々洩れになっている。

 その後チラッと侯爵を見ると頭を抱えている。

 


「カールラのことは放っておいてくれ。

 こちらの希望はその場所に潜入後、抜け道を経由して内部調査をしてほしい」


「……簡単におっしゃいますけど、抜け道なんて簡単に見つけると思えませんが?」



 反論すると、胸を張って否定してくる。



「いや、抜け道についてはこちらで把握している。

 ただ、その後の調査は出来ておらん」



 つまり抜け道を通った後の調査をしろと。

 それと、どうやってこの抜け道見つけたんだ?



「ちなみに、どうやって見つけたんです?」

「部下が嫁と新しいプレイを試そうと――」


「もう十分です!

 アムルの教育によくないのでこの辺で!」



 もう少しまともな情報を貰えると思ったのに、なぜに部下の性癖を暴露し始めるかな?

 もう少し言い方あるだろう!



「ちなみに、その抜け道は頻繁に使われているのでしょか?」

「いや、それなりにチェックしてみたがほとんど使われていない。

 多分末端の奴らがちょっと近道に使う程度ではないかな」



 大して使われていないと。

 なら……。



「いつ調査始めます?」

「可能なら明日午後から」


「化粧の時間も考えるとそんなものかな。

 であれば、そちらからも二名出してください」



 よく分かっていないのかキョトンとするジャーヴィン侯爵。



「僕たちが潜入調査している間、誰が抜け道を確保するんですか?

 そっちは別の方を割り当ててください」



 そうじゃないと、カーミラ姉様がアゼル兄連れて参加しそうで怖い。

 もしかすると、ロッティ姉様がマーニ兄連れて行くかもしれない。

 どちらであっても勘弁してほしい、大声では言えないけど。



 それに、抜け道を戻ってくる予定なのだから誰か他の人たちが腰の運動中に戻ってきたら困るでしょ?



「それはこちらで人員を用意しよう。

 それ以外に必要なものは?」


「僕の服ですね。

 平民が普通に着る若い女性用の服。

 できればズボン形式がいいのですが」



 ロッティ姉様、ブーイング止めて。

 内部調査に邪魔になるからスカートは穿きたくないの。

 動きづらいし、中見えちゃうし、正直股間涼し過ぎ。



「それは明日の朝前に用意しよう。

 一緒に行くのはマーニでいいのか?」

「はい、アゼル兄はアムルに付き合って大公家に行って欲しいです。

 フィブリラ嬢がアムルいなくなるんじゃないかってぐずってたので」


 アゼル兄は諾を返し、マーニ兄も仕方ないという表情を返す。


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― 新着の感想 ―
[良い点] マーニ兄、ヒモ野郎からの脱出なるか!? 幸せな結婚生活のための立身出世を目指す【死神】の大活躍が今始まる!! [気になる点] >逸般人 ジーピン家以外にも存在しているはず(キャル母さんの…
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