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18

 そして次の日。

 朝食後、カル達と合流してそのまま娼館街へ。


 婆さんの所に向かうと、他の長たちに加えてノスカも起きてきていた。

 とは言え、身体がまだ本調子ではなさそうだけど。

 ちなみに、ニフェールとニフィを見分けられては無いようだ。



「やぁ、婆さん。

 ノスカの方は大丈夫なのかい?」


「傷はそう深くは無かったようだ。

 とは言え、下手に動くのは止めてるがね」


「そりゃそうだ。

 血が足りない状態で無茶しても碌な事にならないしね。

 さて、ノスカ。

 概要は昨日の夜に聞いたけど、今日は詳細を聞きたいな。

 君がここを出てからの話を聞かせて欲しい」



 そう言うと、ノスカは一通り説明し始めた。



 ……つまり、陛下たちの暗殺は確定。

 でも、僕の暗殺も囮とは言え実行すると。


 こちらの利点は騎士が敵についていることがバレてるのを知られてないこと。

 狙いは最低限王家と大公家。

 食事に毒入れないとか言ってたか……正直どこまで信用するか悩ましいな。



「ふむ、君が生きているかはあちらも知らない。

 なら表に顔出さなければ、死んだと見てくれるかな?

 侯爵に直接会ったかい?

 どんな判断しそうかな?」


「いや、会ってねぇ。

 長の言葉から察するに結構頭は回るようだがね」



 まぁ、貴族派の領袖となる以上、それなりには頭使えないとねぇ。



「そっか……まぁ、それなら今までの方針のまま進もうか。

 こちらとしては王家の方々を守ることには変わらないしね。

 後はこちらの利点だね。

 騎士について敵味方を大体分かっているのがバレてないこと。

 この一点はとても有利に働くよ」


「……そこまでか?」



 あぁ、王宮や騎士の弱体化っぷりを知らなければそう思うか。



「正直、騎士たちが色々あちらの調略を受けていてね。

 結構穴だらけなんだ。

 でも、こちらがその穴に気づいてないと思ってもらえるのなら……。

 相手の都合のいいように動きつつ、狩り場に連れて行けるよ」



 ……あれ?

 なんで皆ビビってんの?



「……ピロヘース様。 カル様。

 こちらの方はこれが普通なんでしょうか?」


「通常運転だねぇ」


「むしろ初めての人物がいるから手加減している可能性もあるがな」



 ……二人とも、僕はもう少し優しさを所望したいんだけど?



「ちょっと年上からの心無いイジメに耐えながら話を進めます。

 ちなみに、昨日ノスカを助けた後、偶然君を探していた奴らを見つけたよ」


「……殺したのか?」



 カル、お前がそれを言うのか?



「ひどいな、情報源になりそうだからそのまま気づかれずにお帰り頂いたよ。

 お喋りの内容からすると、ノスカを襲ったうち何割か……感覚的に若手?

 その面々が暴走して他の奴らは自分の命を守るために動いたっぽい」



 僕の説明に納得するノスカ。



「だろうな。

 一応東部でも仕事のできる奴らを纏めて連れて来た感じなんだ。

 だが、ギルドや依頼人等の自分以外の立ち位置が分かってないようでな」


「あぁ、殺せれば問題ないとか言う奴かな?

 依頼を受けることで規則を破ることになるとか考えないタイプ?」


「考えないというか、そういう経験をまだ積んで無いって感じだな」



 成程ね。

 多分、まだ若手だからある程度中堅の者たちが色々制止してたんだろう。


 だけど、今回の件は依頼主が規則を破ることを求めていた。

 本来は長が率先して断るべきだけど、今回は長が金に屈した。

 そして若手がノスカの裏切りを報告することで評価アップを狙った?

 もしくは確実に金を貰えるように、断る方向に動いていたノスカを切った?

 こんなところかな。



「となると、ノスカ以外に指揮官みたいなことできる奴いる?」


「皆、その手の事苦手だからなぁ……。

 基本一人で動くことしかやらない奴らしかいないんだ。

 昔、東部にフリーの暗殺者で俺たちよりももっとできる奴がいたんだ。

 だが、最近出て行ったらしくてな。

 助っ人に頼みたかったんだが……」



 何となくですけど、ティッキィですね。

 分かります。

 長もノスカもあいつより弱いようにしか見えないし。


 カル、感づいているようだが笑うなよ?



「まぁ、その助っ人がいないなら王宮側としては安心だな。

 ノスカ並みに判断力の高い奴がいないならこちらとしても潰しやすい」


「……そんな簡単にどうにかなるか?」


「まぁ、そこはこちらでどうにか考える所だからな。

 後は……確か、毒を求めていたな?

 ありそうな毒だと……あれか?

 今貴族派で作っている心も体もぶち壊すタイプの毒」


「はぁ?

 そんなのあるのかよ?」


「今年の夏辺りかな?

 これ以上下手なこと言わせないように犯罪者に毒盛ってたよ?

 確か紅茶に混ざるようにしていたはず」



 プロスとその兄が壊れた奴だね。

 禿が頑張って毒ぶち込んだはず。



「……王都って怖ぇ」


「何を今さら。

 とりあえず事前に王都の対応は決めてあるから、後は王宮内か……。

 そちらは侯爵方と相談しないとね」


「はぁ?

 侯爵ってそんな雲の上の奴と話せるのか?!」


「まぁ、それなりに?」



 部下がお世話になってます。

 婚約者もお世話になってます。

 未来の上司が二つの侯爵家に関わります。

 ……というか、陛下ともそれなりに接点あるからなぁ。



「まぁ、そのあたりはともかく大体必要なことは聞けたかな?

 じゃ、ノスカ。

 最低限王宮でのパーティが終わるまではここで傷を癒していてくれるかな?

 できればそのまま東部へのメッセンジャーも兼ねて欲しいけど」


「それはこちらとしても願ったり叶ったりだ。

 命までは奪われなかったが、アンタに応急処置してもらわなければ……」



 まぁ、あの時ジャーヴィン家に潜り込まなけりゃ失血死だったんじゃないかな?

 それなりに応急処置できる奴じゃなきゃ今も起きられなかった可能性もあるし。



「ちなみに、アンタは暗殺回避できるのか?」


「僕だけなら何も問題ないよ?

 でも、本命である王家の方々をどこまで守れるかは何とも……。

 ま、こちらとしてもこれ以上邪魔されるのは腹立たしいし、潰しときますか」



 ちょっとヤる気を出していると、何故か困惑の声がノスカから聞こえた。

 カルが相手してやってるようだが。



「……俺、回避って言ったよな?」


「諦めろ、

 あの方々は回避なんてまどろっこしい事せず、潰して終わらせる。

 実績たっぷりあるからな……何回かあの方々と仕事すると慣れて来るぞ?」


「慣れたら何か大事なものを失いそうで怖いんだが?!」


「大丈夫だ、命だけは失わない。

 それより大事なものなんて無いだろう?」


「人格とか常識とかは大事じゃないんですかねぇ?!」



 お前等、当人の目の前でよくそこまで言えるもんだな。

 婆さん以下他の面々、笑うな!



 その後、解散となり僕たちはチアゼム家経由で王宮へ。

 侯爵方に報告すると、頭を抱えてしまった。



「早くもバレたか……」



 ええ、そうなんですよ、ジャーヴィン侯爵。



「向こうも色々考えているんでしょうね。

 ともあれ、ある程度は僕たちの方向に似通った予定を組んでいるようです。

 後はあちらに都合の良い事態と思ってもらうことでしょうか?

 下手に都合悪くなって策を根本的に変更されるのが面倒なので」


「うまく進んでいると思わせたいか……。

 とは言えどうす……おい、まさかあっちの暗殺者を王宮に入れるのか?」



 お、流石!

 僕の考えに慣れました?



「そうです。

 向こうも想定していた流れはパーティ会場へのルートに部隊配置すること。

 暗殺者を潜入させるには必須ですから。

 ならそこは協力してあげましょう」


「……言いたいことは分かる。

 だが、会場へのルートに邪魔が入らないことに懸念を示さないか?」



 あぁ、そりゃあるでしょうね。



「だからこそ、使える部隊があるじゃないですか。

 具体的に言うと、会場へのルートは第一、王宮の門は第七」


「……会場自体は第二だよな?

 ということは、怪しんで無いと思われる第七を門に。

 会場へのルートは怪しんでいる第一。

 会場自体は一番信頼できる第二ということか?」


「ええ、第一はスピル・インファ殿辺りが何か情報流した可能性があります。

 なら、第一と第二の配置は驚かないと思いますが?」



 スピル殿、口軽そうな気がするし。



「まぁな。

 ちなみに第四は?」



 そこがねぇ……確実に敵と言い切っていい情報が無いんだよねぇ。

 ノスカの話でも部隊名は出てこなかったらしいし。



「唯一尻尾を掴んで無い部隊なので……。

 あまりこちらからもちょっかい出しづらいんですよね。

 個人的には第五を調理場の監視に、第六を庭周辺に。

 そして第三と第四を王都の監視にと考えたのですが……」


「……第三が文句言うだろうな。

 なら、第一と第三を入れ替えるか?」



 ……難しい。

 でも第三まで暴れ出したらなぁ……あれ?



「ちょっと確認なんですが、各部隊の隊長はパーティ参加ですよね?

 なら別にどこに配置されようと、苦労するのは副隊長なんじゃないの?」


「まぁ、そうなんだけどな。

 とは言え、アキュムの奴が大人しくするかは別問題だ。

 ホント面倒だよ……」



 侯爵まで苦悩させて、いいのか? アキュム隊長?



「第一との交換ならまだ大人しく受け入れる可能性あり?」


「そこなら何とかな。

 第一は気にしないだろう。

 むしろラクナにも隊員たちにも憐れまれるかもしれん……」


「あぁ……」



 そこまでなんだ……。



「なら後は侯爵様の方で騎士側の調整お願いしますね。

 もうそろそろディーマス家の裁判だから、あまり余裕なくなるでしょうし」


「だな。

 そっちはどうにかする。

 それと……パーティの時、アダラーを働かせる気は無いか?」



 え……?



「まさか黒いマント付けろって?」


「いや、そうじゃない!

 短剣等持たせて対応できるようにするとかの方だ!

 姿格好は貴族らしい格好にしてくれ!!」


「ですよね、びっくりしましたよ。

 それは今日この後お願いする予定です。

 後、僕らも隠し武器持って行こうかなぁ。

 まぁ、母上とアムルは素手かも知れないけど」


「革製のグローブ当たりは持って行った方がいいかもな。

 相手は毒使うんだろ?」




「そうですね。

 でも暗殺者が動くまではそれ使えませんからね?

 父上の黒マントじゃあるまいし、目立ち過ぎですから」


「えっ?」


「えっ?」




 待って侯爵!

 まさか未だにそういう格好が好きなの?


 ……母上や奥方組に報告か?



「……とりあえず、ジーピン家の方で検討します」


「おいっ!

 サプル達には――」


「そこらは夫婦間での話し合いでお願いします。

 僕が口出すところじゃないんで。

 では、失礼します」


「ちょ、待て、待つんだニフェ――」



 色々とツッコミが入る前に部屋を出る僕。

 部屋の中から必死な叫び声が聞こえるが、聞かなかったことにして逃走する。


 ったく、そう言う趣味とか性癖とかを子供たちにまで巻き込まないでほしいな。

 まぁ、うちの両親の緊縛プレイに比べればマシなのかもしれないけどさ。



 その後さっさとジャーヴィン家に戻り、方針の周知。

 皆受け入れてくれた。

 加えて、母上とサプル様に先程の話を報告。

 二人とも呆れつつ調教準備を始めたので残りの家族は即時撤退。



「ニフェール、最近父上を追い詰めるような情報が増えてないか?」


「僕が望んだわけじゃないのにわざわざ皆教えてくれるんだよ。

 どうしてなんだろうね?

 僕分かんないや」



 アゼル兄、そんな呆れた表情しないでほしいな。




 その後、一部夫婦間で戦闘シーンがあったようだが詳細は省く。

 戦闘シーン(♡)になった夫婦もいたが、省くったら省く!


 ジャーヴィン侯爵やマーニ兄は騎士配置でうまくアキュム殿を操り配置確定。

 カル達も情報収集に(いそ)しんだが、向こうも情報流出を遮断。

 お互い新情報を得られないまま建国祭が始まる。



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