表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
411/416

13

「……死ぬのは嫌だ」


「だろうね、んじゃちょっと協力してほしいな。

 手を貸してくれたら命は助けてあげるよ?」


「手を貸す?」



 カル、呆れた表情しないでくれ。

 どうせ感づいているんだろ?



「簡単に言うと、オピエ殿の情報をこっちに頂戴。

 暗殺のスケジュール、どこでどうやって実行するのか。

 一通りこっちに報告してほしい」


「……まぁ、その位はやれるがな。

 その見返りは俺たちの命だけか?」


「ん? 後何が欲しいの?」




「東部と王都の安定」




 あぁ、長がバカやったけどそれを双方の関係性には関わらせないってこと?

 ……苦労してるねぇ、君。



 婆さんとカルを見ると、頷いてくる。

 だろうね、そこ否定したら話にならない。



「構わないよ。

 というか、双方の安定はこちらも望むことだから全く問題無し」


「なら、こちらも全力で協力させてもらおう。

 お前が窓口でいいのか?」



 僕は流石にまずいかな。

 というか、暗殺対象だし。



「そのあたりはピロヘース様を窓口としましょうか。

 それとも乞食ギルドにも関わらせます?」



 婆さんに確認するとパン爺さんも関わらせると宣言し、すぐに呼びにやった。



「なぁ、ちなみに情報提供だけか?」


「できれば殺したくないから襲撃前に一斉に逃走してほしい。

 こちらも王都と東部にしこりを残したくないからね」



 僕がそう言うと、チラッとその他の東部の者達を見て頷き合う。

 長より信頼厚いんじゃないの?



「分かった。

 しかしお前何者だ?

 暗殺者の長もお前の発言止めないし、娼館の長もほぼお任せ状態。

 お前が他のギルドの長だと言われても信じてしまいそうだ」



 まぁ、暗殺対象者で王都暗殺者ギルドの裏の長ですけどね。



「王都暗殺者ギルドの新人……中堅にまだ手が届かない位の微妙なお年頃ですね。

 とは言え、頭使う方がそれなりに得意なのでこういう場面でよく発言してます」



 ……カル、「嘘つくなこいつ!」みたいな視線を送らないでくれルと嬉しいな。

 ……婆さん、「嘘つくのも大概におし!」って反応は悲しいよ?

 一応嘘はついてないはずだし。

 暗殺者ギルド乗っ取ったのは今年の秋辺りだから新人もいい所でしょ?



「この若さでこの場に参加できる時点で物凄い逸材な気がするけどな」


「いえいえ、僕なんて大したもんじゃないですよ」



 たかだか学園騎士科首席ってだけですしね。

 まぁ、教えないけど。


 いや、だからカルも婆さんもその視線止めて!

 ちゃんと誤魔化しきる方が大事でしょ?!



 そんなやり取りの途中でパン爺さんが来たので一通り説明しておく。

 ……なぜか呆れの視線が入っていたが追及はしないでおいた。



「ふむ……そちらはお前さんが対応するかね?

 わしはパン、王都の乞食ギルドの長じゃよ」


「えぇ、東部暗殺者ギルドの長の補佐をしておりやすノスカと申しやす。

 よろしくお願いしやす」



 僕の時と喋り方が違うな。

 もしかして、目上とか逆らうべきではない相手にはこっちの喋りかた?


 その後、二人で情報交換のタイミング等整理し始めた。

 とりあえず僕らはお役御免っぽいんで、端に寄っていた。



「とりあえず、今後どうする?」



 カル、今話す内容じゃないだろうに。

 小声だからって不安そうにしてたらあちらの面々が不振がるぞ?



「どうもこうもなぁ。

 パン爺さんの話が終わったらアイツら追い出して改めて話し合いだよ。

 関係者でゆっくり話した方がいいだろ?」


「まぁ、そうだな」


「だから、長っぽく偉そうにしておけ。

 下手に弱気な雰囲気を出すな」


「こんなこと言う新人が何処にいるんだってんだよ」


「知らんのか?

 ここにいるだろ」



 カルと馬鹿話をしていると一通り話は終わったようだ。



「カル、ニフィ。

 一通り話は済んだが、他に何かやることあるか?」


「途中の事情が分かんないだろうからこの後話しますよ。

 ただ、先行してオピエ殿を起こしてからですね。

 ちょっと待っててください。

 カル様、ピロヘース様、起こしてサッサと解放しましょうか」


「ふむ、なら起こすとするか……パン、この後お前が監視するのか?」


「いや、若いのに任せる。

 事情の説明は声かけた後にでも頼む。

 ちなみにニフィが起こすんじゃろ?」


「流石にピロヘース様に起こせなんて言いませんよ」



 婆さんのキスで目覚めるとか?

 そういう拷問は流石にねぇ……。


 そのまま先ほどの応接室に向かいオピエ殿を起こす。

 と言っても脇腹蹴りつける位だけどね。



「……はっ!

 こ、ここは?!」


「忘れたのか?

 気絶してたようだが?」



 前後の記憶があやふやなようだが北部の依頼を受ける気は変わらないようだ。

 ったく、ノスカ殿が哀れすぎるな。



「ノスカ! 行くぞ!」


「へいへい……」



 愚痴るノスカ殿たちを連れて出ていくオピエ殿。

 パン殿がこっそりついて行った。


 僕らも応接室に戻り、パン爺さんが戻ってくるのを待つ。



「ニフェール、あれ、さっさと消した方がよくないかい?」


「個人的はそうしたいですけどねぇ。

 ノスカ殿達の想いを踏みにじるのは少々まずいかなと思いまして」



 あちらに不満持たれたら面倒だからね。



「まぁ、あの者たちを味方にできたのはよかったよ。

 下手に敵に回したら面倒だったからねぇ」


「ええ、あれでこっちについてくれてホッとしてますよ。

 何となくオピエ殿に色々と思うことがあったんでしょうね。

 アレの尻拭いをやらされてたら……ねぇ。

 不満も出るってもんですよ」



 そんなこと話しているとパン爺さんも戻ってきた。

 一通りここで話されたことを共有する。



「……愚か者はどこにでもいるもんじゃのぅ。

 カルがまともに感じてしまうぞ」


「おいっ!」


「何となく、女性関係はどっちもダメダメな気がするけどね。

 方向性は別だけど」


「おいぃっ!!」



 仕方ないじゃん、理由不明だけど暗殺者の長は女性の扱いがダメダメっぽいし。

 文句あるならルーシーの想いに答えたらいいのに。

 まぁ、オピエ殿の様に男と見なされてないとかよりマシなんじゃない?



「ちなみに、オピエの周りに誰もいなくなったことに気づいたらどうなるね?」



 婆さんからの指摘を受け考える僕。

 ありそうなのはオピエも即刻逃走。

 その場にいても一人じゃ何もできないしね。


 次にありそうなのは……王都の他ギルドに応援を頼むかな?

 婆さんから頼れと言われたとか?

 そんなこと言われたら協力するかな?


 後何かあるかなぁ……。



 一応一通り思いついた手を伝えてみると、二つ目は思いつかなかったらしい。

 新しい強盗ギルドの長、スケッツオに注意しておくそうだ。


 だが、同時に僕が思いつかなかった手を婆さんが思いついていた。



「ニフェール、人がいればいいのかい?

 何か技量とかは必要かねぇ?」


「技量ですか?

 そりゃ武器を使える奴だったら助かりますけど。

 近づいて攻撃は無理だろうから、投擲か短弓、クロスボウ辺りかな?

 毒使うのは誰でもできるわけじゃないからなぁ……」



 そう答えると「嫌な予想が当たりそうだ」と言わんばかりの表情をする。

 婆さん、何考えた?




「……オピエに騎士を付けたらどうなるね?」




 ……え?

 もしかして、アゼル兄の結婚式の再来?

 第一と第四、第七が合同で?



「それ、暗殺というより反乱の方が近いかな。

 とは言え、一応ジーピン家総出でパーティ会場で対応するよ。

 第二部隊にも出張(でば)ってもらうからそれなりに何とかなるかな?

 まぁ、全員の命を守ることはできないけどね」


「そこまでは期待されても守る騎士も困るだろうよ。

 ちなみに、その騎士たちの中にオピエが混ざったらどうなる?」



 ん~……相手次第だよなぁ。



「よほどの実力者なら対応しきれないかもしれない。

 でも、あの実力なら余程タイミングが悪い時でない限り攻撃が当たらないかな」


「余程とは?」


「ん~、例えば護衛必須の人物を守りきるために攻撃を受けざるを得ないとか?

 避けるのは簡単だけど、避けたら別の人に攻撃が届く時。

 加えて動きを制限されたときかな」


「ん? 動きを制限?」


「例えば、誰かを守ろうとしている時。

 僕の背中に隠そうとしたら右腕に(すが)り付かれるとか?

 そんなことされたら守り切れないね」



 縋り付いた当人は助けて欲しいんだろうけど、実際は邪魔してるだけって奴。



「つまり最悪の条件がそろわない限りそうそう負けは無いってことだね?」


「この場合の負けは僕と王家の皆様が殺されることかな?

 であればその通りだよ」


「となると、一番やられて困るのはパーティ会場の人員を減らされること。

 それと、無関係な人が想定以上に増えることかい?」



 あ~……。

 最初は騎士がいなくなるから守りが減る。

 二つ目は会場の人口が増えると邪魔でしかなくなる。

 確かにその通りだね。



「婆さんの言う通りだよ。

 それやられるとかなりキツイ。

 でも、二つ目の件は可能性低いかな?

 パーティに参加できる条件ってのがあるからね」


「あぁ、貴族とその家族って奴かい?

 それ以外で増えるとなると……侍従侍女が何故か増えた?」


「そのあたりはこの時期だけ新規に人増やすとかあるのかなぁ?

 そんなことしたら暗殺者入り放題だしねぇ」



 僕が女装して侍女として入ることも出来そうだよね?

 そこまで脇が甘いのかなぁ?



「ちょっと確証は無いから、そこは侯爵方に聞いておくよ。

 ちなみに一つ目は無いとは言い切れないかな。

 王都で何か事件起こすとかしたらそっちに出向かなきゃいけなくなる。

 流石に第二を動かすことはしないだろうけどね」


「となると、パーティ当日に王都の監視できるかい?」


「無理だね。

 騎士側もテュモラー家の手口にひっかかって当日の人員が結構ギリギリなんだ」


「はぁ?!」



 まぁ、驚くのは分かる。

 事前に騎士団内のまともな人たちと話し合ったから分かったけどね。

 正直、一歩間違えれば当日大混乱になっていただろうよ。



「つまり王都の守りは?」


「当日は王家の方の命を守ることを最優先にします。

 なので、むしろ邪魔な奴らを外回りにするでしょうね。

 具体的に言うと北部に浸食されている第一・第四・第七。

 最悪、こいつらが反乱起こしたら王城で籠城戦になりかねない。

 まぁ、その場合はパーティ自体が延期とかになるんじゃないかな?」



 中止にすると王家の立場が無くなっちゃうからねぇ。



「……国も人員が足りないねぇ。

 まぁ、こちらもだけどさ」


「どうにかしたいんですけどねぇ。

 まぁ、人員が足りないと言うか、邪魔者が多すぎるだけというのもありますね。

 なので、国については無駄を省けばまだ何とかなります。

 こちら側は……都合のいい人材なんてそうそうないでしょ?

『暗殺経験者急募!』なんて出せるはず無いし」


「それで誰かやってきたらそっちの方が怖いよ……」



 デスヨネ~。



「ん~、ちょっとオピエ殿の行動次第かなぁ。

 できればカル達を動かしたくないんだよねぇ」


「何でだ?

 別に動かして問題ないだろ?」



 カル、お前等は僕が扱える数少ない部下なんだからな?

 忘れてないか?



「当日お前らを王都側で動かせる余裕は多分無い。

 それに、こちらは少数精鋭なんだから戦力は可能な限り一点集中しとかないと。

 広範囲の調査とかは騎士たちに任せるよ」



 カル、何照れてんだよ。

 もしかして「少数精鋭」って単語にキュンと来ちゃった?


 そういうことすると、誤解……というか事実改変する人がいるから止めてね?

 具体的に言うと姉様達とかフェーリオ辺りが危険すぎるから!

 だから頬を赤らめるなって!!



 とは言え、反乱までいかなくても王都で騒ぎを起こす可能性は十分あるな。


 騎士だけでは止められないどころか、騎士がやらかす可能性もある。

 犯罪者側が仮に周囲の面倒を見ようとしても絶対無理。

 それどころか騒ぎの原因はお前等だと言われるのがオチだ。


 とは言え、王都の住民を殺すとかするか?

 わざわざ皆殺しにして王都をカラにして北部から引っ張ってくる?

 効率悪すぎだろ?


 税とかで金をとるにも人がいないと話にならない。

 と考えると、一番ありそうなのは……。



「婆さん、生産ギルドに声かけてもらうことできる?

 後は詐欺師ギルドの貸金部門。

 当日王都を軽く見回って欲しいんだ」


「……あいつらに暴力行為をやらせるのは無理だよ?」


「いや、そうじゃなくて!

 わざわざ住民を怪我させて暴動起こしちゃ王を消す意味無いでしょ?

 自分のものにしたいのに統治しにくい環境にしてどうするの。

 見回るって言っても火事に対してのものであって、暴力沙汰は関わらない。

 そのくらいなら大丈夫だと思ったんだけど、無理かな?」


「その位は出来るだろうけどねぇ、何を期待して……火事?

 まさか、向こうが王都に火を付けるのを想定してるのかい?」


「ほぼ合ってるよ。

 とは言え、嫌がらせとか人を派遣しなくてはいけなくなるのを防ぎたいだけ。

 向こうも騒ぎが起きたら御の字って感じじゃないかな。

 なら、火付けされたの見つけたら即刻消火。

 それで嫌がらせを無力化出来るんじゃない?

 ついでに、消そうとせずに火事だとか騒ぐ奴は北部の回し者かもね。

 ちゃんと捕縛できればしてほしいけど……そこまでは無茶言わないよ」



 強盗部門を護衛にしたいんだけどねぇ。

 そこまでは期待できないでしょ。



「言いたいことは分かった。

 だが、なぜ商業ギルドを使わない?

 あそこなら護衛として雇っている奴がいるはずだ。

 そいつらに警備させればいいのでは?」


「パーティ当日は王都でも書き入れ時かと思ったんだけど?

 商業ギルドに所属している面々が仕事放棄して警備に付けって無茶じゃない?

 ついでにカジノ部門とスリ部門、ストリート部門も避けたのは同じ理由。

 皆稼ぎ時と思った。

 というか、娼館ギルドもじゃないの?」


「……確かにねぇ。

 貴族なのにこっちに理解があって驚きだよ」


「文官方面の勉強が役立ってるね」



 いや、なんでそんなに呆れるの?

 いいじゃん! 騎士科の人間が文官になっても!!



「……詐欺師の貸金部門は大丈夫だと思う。

 生産は……作ってるモノによっては忙しいはずさ。

 なので、可能な範囲でという条件としよう。

 それと、商業も今年はもうよそに移動しない商人がいるはずさね。

 そいつらにも協力してもらおうかい」



 おっ!

 商業にも手すきの人がいるとは思ってなかったよ。

 これで、どうにかなるかな?



「一応妾の方で周知をしておこう。

 むしろ、対象となるギルドの長を呼んで話した方がいいかねぇ?」


「むしろ、全員呼んだら?

 そして北部がやらかしているという認識を共通化させて対応していいのでは?

 これ以上ゴタゴタに巻き込まれたくないから手伝えって感じでさ」


「……ついでに東部暗殺者の事も伝えるか。

 出来ればノスカ当人にも参加してもらう方がいいかも知れないが……」


「まずはいるメンバーに現時点での情報を展開してその後考えればよくない?

 北部が王都にまたちょっかい出してきた。

 これだけでも皆が手を取り合う価値あると思うけどな」


「……今日の夜集まらせる。

 ニフェール、アンタもカルと一緒に来な。

 というか、ニフィとして説明した方がいい」



 まぁ、婆さんに全て任せるのはちょっと厳しいか。

 提案を受け入れて一旦チアゼム家に戻る。



【ディーマス領暗殺者ギルド】

 ノスカ:暗殺者ギルドの長の補佐

 → ノスカピン (ケシの実で天然生成されるアルカノイドの一種)から

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ