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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
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68

「んじゃ、まずは……どう考えてもこの紋章だよなぁ。

 これ、鴉だよね?」


「だな、知恵の象徴とか言われてるけどなぁ」


「光り物に目が無い象徴だよね、これ。

 金銀財宝宝飾品系な奴」



 兄弟でディスりつつ紋章の周辺を調べる。

 ちなみに紋章自体は円形、その中に鴉が飛んでいる図柄。


 さて、まずは……押してみるか。



 グッ!



 ……反応無し。

 次は引く……って引きようが無いな。

 壁に埋まっている感じだから無理か。

 なら……回すか。

 右に回転させてみると……(カチッ!)


 おや、何か聞こえたぞ?

 でも何も変化なし。



「なんか音が聞こえたからロックが解除されたと思うんだがなぁ」


「だよねぇ、僕もそう思う。

 となると、まだ一つ目だってだけで次に動かす者があるんだろうなぁ。

 ティッキィ、カリム、それぞれ窓よりと廊下よりの壁を押して。

 僕は中央を押すから」



 二人とも指定されたところで一緒に壁を押すと――



 ズ ッ



 ――僕の前の壁だけが少し動いた。



「おっ? 動いたんじゃねえのか?」


「うん、でもこれ以上は動かな……あれ?」


「ん、どうした?」



 なんか似たようなネタを見た記憶があるな……アッ!

 スホルムでのアンドリエ商会!!



 となると、横に動かす?

 前回左にずらして動かずに冷たい視線送られたから……今回は右!



「フッ!」



 力を入れて右側に壁を送ろうとしたが……びくともしない。

 右と左が違うだけであの時と同じじゃねえか!!



「ニフェール……」


「マーニ兄、その視線止めて!

 なんだよ、前回と違うのかよ……フッ!」



 左にずらしてみたが……こちらも動かない。



「ニフェール…………」


「止めて、マジで心がきついから!

 とはいえ、左右どちらも動かないんだ……」



 ちょっと想定してなかったなぁ。

 んじゃ何で押せるようにしたんだ?

 動かす以外に思いつかないんだけど。



「押して左右どちらかに動かそうとしたんだな?」


「うん、でも動かなかったんだよねぇ。

 スホルムの成功があったからそれと同じと思ったんだけど」


「ふむ……ちょっと調べてみるか」



 え゛?

 ジーピン家で一番悪戯好きのマーニ兄が動く?

 モゾモゾと壁のあたりを探り、「ん~」だの「あ~」だの言い始めた。



「ニフェール様、マーニ様が悩まれているようですけど?」


「あ、気にしないで。

 あれ、マーニ兄が調べるときはあんな感じだから。

 とはいえ、あの壁を動かせなかった?

 あそこ動かすってことに意味はない?

 いや、それは無いだろ……」



 僕もブツクサいいつつ検討していた所、マーニ兄が何か見つけたようだ。

 壁をずらしたところの床?


 そこを見て頷き、怪しい笑顔を僕に見せて来る。



 ……

 …………

 ………………



 あっ、え、そういうこと?



「マーニ兄、まさか……」


「気づいたか?

 なら試してみろ」


「……自分でやらないの?」


「今日の仕事は基本力仕事と監視だからなぁ。

 ヒントは出すが、それ以上はお前に任せるよ」



 弟の教育のために身を引いていると言えばいいの?

 それともサボリ?


 どちらかは分からないけど、取り合えず推測を試してみるか。



 マーニ兄と入れ替えて壁の中央に立ち、軽く壁を押す。



 ズ ッ



 その後、動いた壁の左の廊下側の壁。

 動かなかった壁に触れ、中央に引く。



 ズ ズ ッ



「え?

 動いた?!」



 カリムが驚きの声を上げる。

 ティッキィも声は出さないが結構驚いているようだ。



「さて、壁の裏はどうなってるかな?

 ……すぐに降りる階段か、こっちの方ってことは……外?」



 開けた壁で通れるようになったのは狭い踊り場。

 そこから外の方角に向かって降りる階段が続いている。

 地下通って外に出て……逃走用ルート?



「マーニ兄、ありがとう。

 全然気づかなかったよ」


「スホルムの成功例があったから、その考え方に捕らわれてしまったんだろ?

 良くあることだ、気にするな。

 今後もう少し過去に囚われずに調べればいい。

 で、これ、どうする?」



 指差したのは降りる階段。

 明かりもないしなぁ……ストマに頼んでランタンでも借りるか。


 というか、普段は灯りどうしてるんだ?

 周囲を見渡すと部屋を照らすための照明具が。



「皆、そこらにある照明具で取り外せそうなの無い?」


「……これ外せそうですね。

 ヨッと」



 カリムの方であっさり照明具を外した。

 これなら持ち運んで入れるだろう。



「ちょっと皆待ってて。

 ストマ探して火種貰うのと、少し説明してくる」



 大急ぎで探しに行くと当主の部屋に居座っていた。

 ルドルフもここだったか。



「ストマ、すまないが少し協力願いたい」


「ん? 何かあったのか?」


「当主の執務室に隠し通路が見つかった。

 そこに入るのに灯りが欲しいので火種が欲しい」


「「はぁ?」」



 ルドルフと一緒にストマも変な声を出す。

 まぁ、気持ちは分からないでもないが。



「ちょ、ちょっと待て、隠し通路?

 そんなのあったのか?」


「あったんだよ。

 で、調べる為に明かりが欲しい。

 火種貰いたいから協力して」


「あ、あぁ」



 まだ頭が事態に追いついてないようだな。

 途中カリムに外した照明具を持って来させて種火を貰う。

 ルドルフが「壊したのか!」とか騒ぎ出した。

 が、壊さずとも外せるようになっていたことを説明して落ち着かせる。

 そのまま当主の執務室へ。



「……本当にあったんだな」


「失礼な、嘘つくとでも思ったのか?」


「普通、こんなのが見つかるなんて想像できる奴はいないと思うぞ?!」



 それ、遠回しにジーピン家ディスってない?

 ちょっとムッとしつつもこの後について説明する。



「これからこの通路を進んでみます。

 どこに繋がるか分かりませんが……。

 個人的には書類が見つかればいいなと思ってます。

 で、僕とカリムで行ってくるんでマーニ兄はここで監視。

 ティッキィはカルを手伝ってあげて」


「ニフェール、俺を連れて行け」



 ストマ、何言ってんの?



「……それはどういう意味?

 一緒について行って何するつもり?

 発見されたら不味いような物を処分するとか言うのなら……」


「違う!

 今回の調査で書類とかあったら持っていかれるのは受け入れている。

 だが、何が見つかるか分からない以上この家の人物である俺を連れて行け。

 その方が早いこともあるだろう?」



 あ~、発見した物が何かを判断するのを手伝うってことか?



「……分かった。

 だけど、ルドルフは駄目。

 それと配置は僕・ストマ・カリムの順で進むから」


「まぁ、お前等と比較にならない程度の戦闘能力しかないからな。

 それは理解できる」


「ならいいよ。

 んじゃ、行ってくるんでこっちお願いね」



 居残り組に声掛けして階段を降りていく。

 大体一階分位降りたところで真っ直ぐ進む道。

 少し進むと左に直角に曲がる。



「この流れだと確実に屋敷から外に出てるね。

 流石に敷地内だとは思うけど」


「こんなの知らんかったぞ……」


「そりゃ普通に考えりゃ当主が時を見て後継者に教える類の話だろ?

 お前の親父さんはまだ引退を想定してなかったんじゃないのか?」


「……まぁ、確かにそうだな」



 そのまままっすぐ進むと登り階段がみつかった。

 移動距離からすると……屋敷の奥の方だな。


 その階段を登っていくと書類がびっしり。

 予想以上に整理されてるな、もっと煩雑かと思ったんだが。



「お、おい、これ何だよ?」


「お前ん()のものだろ?

 こちらに聞かれても分からんよ」



 そう言って、一束書類を取り出して内容確認。

 なになに……暗殺依頼書?

 依頼元がディーマス家で依頼先が……トリー?


 あれ、確かトリーって……。


 ストマが驚きつつそこらを見ているようなので、今のうちに確認する。



「なぁカリム、トリーって禿の偽名だよな?」


「ええ……まさか記載ありました?」



 無言で書類見せると引き攣った顔を見せる。

 そりゃなぁ、これ不味すぎるだろ。


 カリムがざっくり見ているようだが、念の為確認しとくか。



「一応確認だが、お前らの本名はバレないよな?」


「それは大丈夫です。

 一緒に仕事する際にはジドとチアで通してましたから」



 ならとりあえずは大丈夫か。

 ざっと見てみると、かなりろくでもない情報が満載だ。

 先ほどの暗殺依頼書に加えて強盗ギルドへの依頼書も見つかった。

 多分邪魔する貴族に暴力で心をへし折るように指示したんだろう。


 これ見せれば確定で処刑になるな。

 後は王宮に持って行ってもらって内容確認してもらうか。


 書類を元に戻してストマを現実に戻す。



「ストマ、そろそろ戻ってこい。

 執務室の方に戻るぞ」


「え、あ、戻るのか?」


「俺たち三人で何しろって言うんだよ。

 どう考えても人手が足らない。

 これ王宮に持っていけばお前らが今まで提出していた資料を軽く上回る。

 ざっと見ただけでもディーマス家が犯罪者に色々依頼していたことが分かる。

 十分な成果だ」


「……そうか。

 分かった、戻ろう」



 三人で先ほどの隊形になり元の執務室に戻る。

 その場にいたメンバーに状況を説明すると、苦笑されてしまった。

 まぁ、いたメンバーがマーニ兄、カル、ティッキィだからなぁ。

 あ、ルドルフは唖然としていた。




「お、おいニフェール!

 そんな戯言(ざれごと)を――」


「ルドルフ、控えよ!」




 およっ?

 二人の間でイザコザ?



「ストマ様、いくら何でもこんな話があるはずないじゃないですか!

 どんな物語でももう少しまともなストーリーになっているでしょうに!

 王宮から学園生を派遣?

 派遣された場所で簡単に問題資料を見つける?

 話盛り過ぎです!!」


「ルドルフ、気持ちは分かる。

 だが、それが俺の目の前で見せつけられたのだ。

 お前は俺の目が節穴だと言うのか?」


「い、いえ、そんなことは!」


「なら諦めて受け入れろ。

 先ほどのニフェールの説明は全て俺も見た。

 まぁ、呆れる位に素早過ぎて夢でも見ているようだがな」



 なんか、主従のいい雰囲気なんだけど、実際は僕ディスられてるよね?

 カル、カリム、ティッキィ、マーニ兄、笑い我慢してるのバレバレだよ?


 とりあえず二人が落ち着いてから今後の方針を話し合う。



「まず、あそこにあった書類や本を見るのは無理。

 だけど、ざっと見ただけでも色々と非合法な組織への依頼等があった。

 なので、とりあえず書類をこっちに持ってきたいんだけど……カル?」


「俺の方はざっと見たけど何の役にも立たない情報だった。

 だからそっちに注力できるぞ」


「助かる、なら皆でここに運ぼうか……あ、その前に他の状況確認してからかな。

 人手増えるのならその方がいいし」


「……一応確認だが、ラーミル様達を輸送要員にとかしないよな?」


「そんなことしたらどうなることやら。

 危険なことする気は無いよ。

 向こう終わったならここで仕分け作業をお願いするつもり」



 という訳で皆の状況を見に行く。

 予想通りではあるけど侍女長の部屋は何も無かった。

 僕たちの方に合流するそうだ。


 当主の部屋は後一時間以内にはチェック終わるらしい。

 それ終わったら来てもらうことにしておく。


 ……ジル嬢は暴走してないようだ。

 まぁ、フェーリオとサバラ殿、護衛の騎士だけだからなぁ。

 何かぶつける相手が居ないのもあるのかもな。



 執事長の部屋は……。



「おぅ、ニフェール殿。

 様子見か?」


「それもあるけど、こっちの報告もあるんだ」



 そう言って、クーロ殿に一通り説明するといつも通りの唖然とした顔。

 ねぇ、そろそろ慣れようよ……。



「無茶言うな! いつまでたっても慣れねえよ!」


「サバラ殿はちゃんと慣れてくれたのになぁ……」


「あいつ……毒され過ぎだろ」



 僕が毒使いか毒虫か何かのように言わないでよ。



「そんなわけで多分メインは当主の執務室になる。

 とは言えここで手を抜くことは駄目。

 なんで、ここクリアにしてから手を貸して欲しい」


「あぁ、それは分かってる。

 多分一時間程度で終わると思うからそしたらそっちに行くわ」


「よろしく。

 ……ちなみに二人は大人しかった?」


「最初以外は大丈夫だったぞ。

 慣れか、仕事と趣味を分けられるようになったのかは分からんがな」



 それならいいんだけどねぇ。

 何と言うか、ムラムラを無理矢理抑えつけてるとか無いよね?

 仕事終わったところでクーロ殿に襲い掛かるとか?


 ……まぁ、気づいても言わないでおこう。

 その方が面白そうだし。



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