66
すみません!
投稿忘れてた!!
10章66話です。
◇◇◇◇
「……なぁ、ヘリン。
さっきのどう思う?」
弟分のモリーから聞かれた俺、ヘリンは同じような困惑した表情を浮かべる。
先程侯爵と執務室で話しあったが妙に喜んでいた。
普段そんな反応はしない。
加えて、俺たちが正直に動く許可貰えなかったと伝えても文句を言わない。
いつもなら愚痴りまくるのに。
ぜってぇ裏がある!
とはいえ、その裏もよく分からないんだがな。
「ん~、まず喜んでいたのは王宮攻略の手が見つかったってとこじゃねえの?
一つ依頼あったろ?
東部のギルドに依頼したいから繋ぎ付けろって。
それとその内容だな。
確か次期侯爵が言ってたが、何でも学園生を暗殺しろだったか?」
学園生如きを殺せとはなぁ。
侯爵家の名が廃れるんじゃねえの?
それにその暗殺を東部に頼む?
俺達お払い箱って奴か?
あれ? でも、学園生の暗殺と王宮攻略が繋がらねえな?
それに俺たちに東部との仲介を頼むって?
この二つが繋がる?
東部仲介は多分……理由は二つだ。
現時点で俺たちが動けないこと。
そして動ける奴で動きそうなのが東部ってだけだろう。
あっちもディーマス家……だったか?
テュモラー家と似たような家と組んでいるんだろう。
ただその場合、学園生をどう使う?
まさか一人で侯爵家を潰すほどの力があるわけじゃないし。
どう考えてもこの学園生は囮だよなぁ。
囮と東部使って、狙うは王宮?
貴族なんだろ?
建国祭のパーティに参加できるだろうから、王宮内で仕事する理由になるな。
ただ、その場合どうやって東部を騙す?
それに王都側だって、自分たちがやったかのように思われたら嫌じゃん。
もしかして、東部に王都側を騙せっていうのか?
そして東部の思惑を知らずに王都側が囮を狙うことを許可する?
で、東部は囮を狙うフリして本命である王家の襲撃を行う?
王家は王都の奴らが襲撃したと思うだろう。
王都の奴らは東部がやらかしたと思うだろう。
だが、王都のやつらと王家側で争う以上東部にちょっかい出す余裕はない。
お互い立場が違うから認識の乖離を正すことはできない。
会えるはずがないしな。
仮に王都側が東部を潰しに動くにしても難しい。
受けた依頼通りに囮を狙った。
運悪く王家の奴らが巻き込まれた。
王家を狙ったわけじゃない。
こう言われたら何もできん。
本来の仕事に巻き込まれた奴らの事を気にする理由はないからな。
それが王家であっても。
仮に東部がビビって北部から受けたとバラしたとしよう。
その場合、こっちに襲撃するかもしれない。
だが、俺たちは侯爵家と東部との連絡要員でしかないこと説明すればいい。
むしろ文句言われても困るとしか言いようがないしな。
まぁ、王都の戦力が莫大な戦力を使えると言うなら別だがな。
例えば、東部、北部、そしてテュモラー家を壊滅させられるだけの戦力?
無理無理、そんな戦力どこにあるってんだ?
王都の騎士団総動員か?
でも騎士の何割かは北部の手の者だ。
内部から瓦解するだけだろう。
うっわぁ、よくこんなこと考え着いたよなぁ、ホント。
貴族ってのはここまで下種じゃないとやっていけないもんかねぇ。
「な、なぁ、いきなり黙ったがどうした?」
「あぁ、済まん。
考えていたんだが――」
そう言って、俺が想定した侯爵たちの狙いを説明する。
あぁヘリン、分かるぞ?
なんて手口を考えるんだって思ってるんだろ?
「あれ?
今の想定が正しいと仮定して、どうやって王宮に侵入させるんだ?
王都の奴らに協力を求めるのか?」
「多分無理だろうなぁ。
以前の俺たちの件で過敏になってんじゃね?
となると、潜入だけは侯爵が協力するんじゃねえかな?
例えば侍従たちを一部だけにして、他は暗殺者にするとか?
そうすれば入ることはできるだろ」
「それ、国にバレた時点で侯爵の首飛ばないか?」
「あ……」
確かにそうだ。
となると潜入させる?
とは言え、王都側が協力するかと言われると難しいしな……あ!
「騎士共に協力させるとか?
潜入までなら十分可能だろう?!」
「そう言えばそれがあったな。
整理すると、侯爵が東部の暗殺者共に依頼する。
狙う相手は学園生のニフェール・ジーピン。
ただし、これは囮でメインは王族の皆殺し。
この囮と本命は使い分けることは厳命する。
狙う日は建国祭のパーティ。
王都側には囮の暗殺で説明、王都に入る。
王宮に入るのは侯爵子飼いの騎士たちに協力させる。
こんな感じか?」
よくこんなバカげた手段を考えたよ。
尊敬するぜ……真似したくも関わりたくもねえがな。
「多分な……全く、ろくでなし共がやる気出したらマジで怖えよ。
まぁ、俺たちに火の粉が降りかかる可能性は低そうだがな」
「王都側か王宮が東部から情報引き出して北部に来た時くらいか?
それなら十分時間あるし、俺たちは逃走の準備を進められる。
まぁ、侯爵たちはこの街を捨てられないから死に物狂いで戦うんだろうがな」
「身軽は大事ってことだな」
命を落とす未来が消えたことで二人で笑いながら軽口を言う。
こんな平和な未来が続いて欲しいぜ。
平和を乱すような怖い奴は消さなきゃいけなくなるじゃないか。
こっちは怖がりなんでな。
危険人物には生きていて欲しくないんだよ。
◇◇◇◇
「お父様、お呼びだそうですが?」
「あぁ、オヴェリア。
少し相談したいことがあってね。
来年度から王都の学園に通うことになるだろう?
で、何時王都に移動するかを考えていたんだ」
「いつ? 学園入学の少し前とかでは無いのですか?」
「初めの予定ではそうだったな。
だが、もしかして建国祭に王都に行くのはどうかと思ってな。
そのまま三ヶ月ほど王都の別宅に住んで入学時にもそこから通う。
こんな感じで考えてみた」
少々困惑しているようだ。
一応フォロー入れとくか。
「あぁ、決定事項ではないぞ?
お前が先行して王都に慣れる方がいいのか、ギリギリまでこちらの方がいいか。
私も判断に迷ってな。
なのでオヴェリアの気持ちを聞こうと思った。
正直、どちらでもいいのだよ。
そろそろ父上が建国祭で王都に向かうから都合がいいとも思ったがな」
「あぁ、なるほど。
時期的に王都に行くきっかけがあったということですわね?」
「その通りだ。
どちらでも対応できるように考えている。
だが、建国祭に合わせるのならそろそろ準備が必要だからな」
オヴェリアは少し考えて……断ってきた。
「お父様、王都に行くのは来年三月頃で十分ですわ。
急いで向こうに言っても別宅で学ぶことしかできませんし。
それならこちらにいても変わりませんもの」
「そうか……分かった。
ならばそのようにしよう」
仕方ない、父上に報告しておかなければ。
それと、建国祭に向かう面々の中に情報収集要員を入れるように伝えておくか。
◇◇◇◇
お父様から王都に早めに移動する提案を受けたけど……。
王 都 行 っ た ら 暇 じ ゃ な い ! ! !
いや、知り合い誰もいないのよ?!
うちから自分の侍女連れて行くにしても限界ってものがあるじゃない!!
どう考えても暇持て余すのが目に見えてるのよ?
それなのにわざわざ先行して行く理由ないでしょ!
お父様ったら、何考えておられるのかしら?
どうせ王国乗っ取りとか王国から独立とか考えているのでしょうけどねぇ。
お爺様もだけど、もう少し声を落として話せばいいものを……。
うちの侍従侍女たち皆知ってますわよ?
これで本当に王都で黙っていられるのかしら?
正直心配だわ……。
とりあえずまだ王都に行く必要はなさそうですわね。
ならのんびりしてましょうか。
とは言え、春になったら学園生活ですか……。
学問の方はまぁ、そこそこ点を取れるでしょうから卒業は出来るでしょうね。
ですが、別の問題がありますわねぇ。
旦那様を捕獲しなければなりませんわ。
誰でもいいというわけではありませんのよ?
テュモラー侯爵家にふさわしい立場の男性。
テュモラー侯爵家にふさわしい実力の男性。
出来れば両方兼ね備えていれば良いのですが、最悪実力だけでも構いません。
侯爵家を継ぐのは兄ですから、私は兄を補佐できればいい。
なら立場が無くとも実力さえあれば構わないと思ってます。
父上やお爺様も文句は言わないでしょう。
むしろ出来の良い婿を連れ帰ってきたら大喜びされるでしょうね。
となると、次男か三男。
年齢的には……学園で出会える範疇なら誤差少しですし範囲内でしょうか。
まぁ、出来ることなら同学年がいいのですが。
……あれ?
確か王国の第二王子が同学年になるのではなかったでしたっけ?
父上たちが動いたら亡国の王子になるんでしょうけど……。
王族としての学びを長年続けているのなら引っ張ってくるのもアリ?
王太子の方でそろそろ産まれるんじゃなかったかしら?
なら第二王子は一代限りの大公家となるか高位の家に婿入りになりますわね。
確かジャーヴィン家は既に後継者がいるはず。
チアゼム家は長女だけだけど婚約者を得ているからこちらも特に何も無し。
確か二つ上だったわね。
公爵も後継者はいるはずね。
バキュラー家はどうだったかしら? 居た気がしたんだけど。
後はディーマス家ね。
この家はまだいなかったはずよ。
となると、婚約者に都合がいいのは第二王子かディーマス家ね。
でもねぇ……。
噂――お爺様方の廊下にまで聞こえてくる話――ではディーマス家消える?
何でも今までの犯罪がバレそうだとか。
そんなところに嫁いでも仕方ないわよねぇ。
それどころか、私が学園に入学するまでに家を存続できるの?
となると、第二王子一択かしら?
まぁ、実際に会ってからね。
人格的にロクデナシならお断りだし。
そんなこと考えているとノックの音が響いた。
「どうぞ」
「失礼します、お嬢様。
紅茶とクッキーをお持ちしました」
「あぁ、そこに置いてちょうだい」
とりあえず時間はまだあることだし、紅茶を楽しみましょうか。
◇◇◇◇
(レルカとクレイが)待ちに待った王宮での打ち合わせ。
昼休みの時点で怪しさMAXになってるんですけど……。
え、これ王宮に入れちゃまずい気が……。
「ニフェール、一応予定通りこいつら連れて行くが……」
「ちゃんと大人しくさせておいてね?
僕ラーミルさん達連れてこないといけないから」
「正直自信ないんだよなぁ……」
「ヘタレてないでちゃんと連れて行ってよ?
未来の部下なんだからちゃんと使えないのは問題じゃない?」
「分かってるんだ。
分かってるんだが……あの二人が人に思えないんだ」
……獲物を追い求めるかの如く目をギラつかせるレルカ。
……禁断症状が出たかのように身体を震わすクレイ。
「九割ケモノかもしれないけど気にせず連れて行って」
「その言葉にあっさり頷いてしまいそうな自分が怖いよ!」
「どうせラーミルさん連れて行ったらラシー嬢とニミー嬢もヤバい人になるだろ?
今更だよ」
王家派の者達が頭抱える中、状況を理解していないストマとルドルフ。
変な奴らとか思ってるんだろうなぁ。
「ニフェール、こいつら大丈夫なのか?」
「多分としか言いようがないかな。
まぁ、一緒に王宮行っといて。
僕は婚約者と部下連れて行くから少し遅くなる」
「……正直不安だが分かったことにする。
王宮で会おう」
フェーリオ達に任せて僕はチアゼム家に急ぐ。
皆準備は整っていたようなので、即刻王宮に向かう……あれ?
「お前等、何しているんだ?
もっと前に出発した癖に」
フェーリオ達と王宮前で会ってしまった。
「レルカとクレイの暴走を止めて、移動したらこのタイミングだっただけだ。
というか、そっちの方が早すぎないか?」
「僕が本気で走って、うちの面々が出発準備を既に整えていただけだよ」
なんかカルとナットが胸張ってるけど……まあいいか。
一応褒めているのは事実だし。
「ほら、サッサと入るよ。
侯爵方を待たせるのもいかんだろ?」
いつまでも進みそうにないんで、そう言って率先して入っていく。
流石に一人動けばついてきたか。
ジャーヴィン侯爵の執務室に到着。
ノックして入ると……おや?
文官メンバーは三名揃い踏みですね。
騎士メンバーは想定通りマーニ兄+三名。
後は両侯爵。
「お待たせしました。
こちら学園生側紹介します」
そう言って、全員紹介していく。
自己紹介にしなかったのは……レルカたちが暴走しない為。
ラシー嬢とニミー嬢はラーミルさんにくっついてご満悦だ。
これならこっちは暴走しないだろう。
「さて、まずはストマ・ディーマス、ルドルフ・ルキミア。
協力感謝する」
「いえ、家が消滅するか存続させられるかの境目。
ここで拒否するのは自殺行為だ……ですから」
……ストマが普通の会話をしてる。
こちらとしては悪気はないんだが……聞きなれないと言うか、似合わねぇ。
まぁ、当人も慣れてないのだろう。
微妙にしゃべり辛そうだ。
「調査について文官からフォロー役を出す。
とは言え、基本はニフェールの指示で動いてくれ。
それと証拠書類を王宮に運んだりするのに第二部隊に協力してもらう。
基本は力仕事と護衛担当だから書類仕事は期待しないでくれよ?」
笑いながらジャーヴィン侯爵が言ってるけど……。
本当に役に立たないのがいるからなぁ……特にメリッス殿。
ビーティ殿は先日の調査で少し手ほどきしたけどさぁ。
メリッス殿バックレたからなぁ。
「あれ? 侯爵、文官の皆さん三人とも参加?」
「あぁ、慣れなきゃいけないのはこちらも同じだ。
なら、全員経験しとくべきって話になってな」
「あまり無茶しないでね?
具体的に言うとケダモノになった学園生が出てきたら殴っていいんだよ?
必要なら僕を呼んでください。
きっちり殴り倒しておきますんで」
「おいっ!」
何ツッコミ入れてんだよレルカ?
自分のやりそうなこと胸に手を当てて考えてみろ?
この発言以外出てこないだろうが?
呆れられた視線を侯爵方から受け取るが、そっちが決めた側近でしょ?
その視線は僕じゃなくレルカたちに向けてよ。
その後、アイコンタクトでこちらに振られたのでこの後は僕が説明。
「今回の目的はフェーリオ達四名に書類を読む経験を積ませるため。
なので、基本的に経験者である僕たちはフォローに回ります。
それと書類を見つけるのは基本こっちで」
「見つけるって……宝探しじゃあるまいし」
「結構需要あるんだよ?
具体的に言うとノヴェール家の執事の執務室とか?
スホルムの商会とか?
結構頭使ったんだけどね」
「マジかよ……」
フェーリオが代表して発言してたが、他の面々も驚いていた。
……いや、ラシー嬢とニミー嬢は気にもしてなかったようだが。
「そんなわけで皆さんは書類調査に専念して下さい。
なお、うちの部下からはカルとルーシー、それとラーミルさん。
書類調査を手伝ってあげてください。
ナット、女性陣の護衛を頼む。
カリム、そしてティッキィ。
二人は僕と一緒に書類探索担当。
当然終わったら調査を手伝う方向で」
「な、なぁニフェール!
サバラ様たちはどうするんだ?!」
目の色変えて聞いてくるなよ、怖いから。
「お前等のフォロー要員だ。
だからと言って暴走すんじゃねえぞ?」
「……努力する」
努力じゃなくて実績叩き出していただけませんかねぇ?!




