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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
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59

 一通り説明したので解散となったが、両侯爵には少しお待ちいただいた。



「……なんだ?」


「フェーリオへの指導の件です。

 あいつの方で『砕拳女子』を読んで親世代の状況を整理してます。

 ですが……奥様方の情報は侯爵方が言うような行動には読めないそうです」



 ヒ ク ッ



「それ故、あいつは両侯爵の指導がただの脅しなのではと感じております。

 ちなみにお二人はあの本読んでみました?」


「読んだと言うか……耳元で朗読された」


「はぁ?!」



 ……侯爵家のプライベートに踏み込みたくないけどさぁ。

 むしろ教えないでくれよ……。

 カル達も笑っていいのか困ってるよ?



「性癖までは僕に教えなくても……」


「そうじゃない!

 サプルが悪戯でそう言うことしてくるんだよ!」


「……まぁ、そう言うことにしてきましょう」


「信じろっ!」



 なんか息荒くしてるけど、こういうやり取りになると思わなかったの?



「とりあえず怪しい単語は置いておいて、把握はされているんですね。

 なら、あの本から奥様方の暴走は読み取れないのは分かるのでは?」




「……お前はラーミルが耳元で囁いている時にそこまで理解が及ぶのか?」


「……絶対不可能ですね」




 それを言われると僕は何も言えません。

 あぁラーミルさん、グネらないで!



「取り合えずそんな余裕が無いのは分かりました。

 とは言え、フェーリオも困っていることはご理解ください。

 そして、今の僕との会話を伝えてやってください。

 あいつ、本気で困ってます」


「伝えるのと理解は分かった。

 だがなぁ、どうやって暴走を抑えられるか……」


「問答無用で押し倒す?

 うちじゃないから鉄拳制裁は無いでしょ?」


「流石にそれを文官や騎士たちの前でやったら別の意味で不味すぎるぞ」



 命は失わないけどあだ名でも付いちゃいそうだな。

 例えば【性豪】とか?



「……ちょっとすぐには思いつきませんね」


「だろうな。

 儂らが長年一緒にいても勝てない相手を簡単に制圧出来たら驚きだよ」



 そんなこと言われてもねぇ。

 こちらも対処策なんてないしなぁ……。


 手っ取り早く、ジル嬢を抑えられる人物を派遣すればいいんだけど……。

 フェーリオじゃあできないんだよね?



「現場に両侯爵参加します?」


「実はそれも考えた。

 だが、儂は騎士側、ヘルベスは文官側の指揮官として王宮から動けん。

 下手に動くと情報整理が追い付かなくなる」


「あ~……そりゃそうですね。

 ジル嬢を制御できる大人?

 立場的に絶対逆らえないような人物?

 ……うちの母親位しか思いつかないんですが?」


「……最終手段として考えておこう」



 出来れば手を借りたくはないんだけどねぇ。

 後は誰かいたっけ?



「後パッと思いつく人物だとチアゼム家の侍従長か侍女長あたりですかね?

 それで駄目なら正直……」


「その二人は確かに何とかなりそうだが……アニスが裏で手を回しそうだな」


「あぁ……」



 面倒(くせ)ぇなぁ、もぅ。



「これ以上はちょっと思いつきませんね。

 とりあえず各自検討しません?

 今はもういっぱいいっぱいですよ」


「あぁ、分かった。

 何か思いついたらすぐにでも提案をしてくれ。

 こちらもさっさと終わらせたいのは同じなんだ」



 そうして僕たちは王宮から出て、パン爺さんの所に。



「……そちらのお嬢さんはどなたかな?」


「僕の婚約者のラーミル・ノヴェールさん。

 もしかするとパン爺さんも知ってるかも」


「……【才媛】か?」


「あたり」



 流石パン爺さんだ、あだ名の情報も持ってたか。



「何と言うか、混ぜるな危険って奴か?」


「個人的にはうちの長兄の嫁や次兄の婚約者の方が危険だけど?

 それはともかく――」



 そう言って、先ほど王宮で整理した話を伝える。

 納得してくれたようだ。



「分かった、その日に集まるように指示を出す。

 それと明後日までにはアゴラとポストスを調べておく」


「お願い。

 一応週末報告する形にしようと思っているから。

 やらかしていたらそこでキンスンと一緒に処罰しよう」


「そうだな、あまり時間を掛けたくないしな。

 ピロヘースにはわしから伝えようか?」


「あ、お願いできる?

 それと強盗ギルドの追加情報はカルに渡して。

 こちらは基本襲撃まで娼館側へ行かないようにしようと思う」



 キンスンが調べ始めるとしたら娼館ギルドからだろうしね。



「そうじゃな、何かあったら伝えよう。

 じゃあ、後は当日待ちじゃな。

 よろしく頼むぞ」


「任せて。

 んじゃまた」



 その後チアゼム家へ。

 他の面々に周知して今後について話し合う。



「スケジュールは分かったわ。

 後は当日の配置位かしら?」


「だね。

 と言っても覗いてみた限り表と裏しか入口が無い。

 加えて窓もそう多くない。

 なので、カリムに裏を任せようかと思う。

 窓はカルとナットで十分かな。

 僕とティッキィが突撃部隊」


「絶対突撃されたくない二人だな……」



 お前が言うなよ、カル。



「んで、襲撃完了したらメッセンジャーを送ることになるんだけど……。

 僕行こうかな」


「最強最悪のメッセンジャー送るって……」


「絶対マーニ様と合流した時にその場の面々がヒくと思う……」



 カリム、ナット、言い過ぎ!

 ただの兄弟の和やかな会話なだけじゃん!



「その間、皆はこっそりチアゼム家に戻っておいて。

 僕も連絡して場所案内したら戻るから」


「……わざわざニフェール様がメッセンジャーする理由は?

 うちらの誰かが行けばいい話だろ?

 マーニ様と逢いたくなったとかのボケた発言以外で答えてくれ」



 ティッキィ、結構発言キツイね。



「この前、オブスとメラムの件が発生した日に門番だったのがインスだったんだ。

 ティッキィは知らないか。

 スホルム遠征で付いてきた第八部隊の生き残り。

 十分説得()してあるから馬鹿なことはしないと思うけど、カル達だと……」



 アイツがカル達の事覚えているかも怪しいからなぁ。


 スホルム対応時に僕にはちょっかい出してきた。

 けど、カル達には何もしてなかった。


 となると、最悪平民を見下す可能性もあるからなぁ。

 僕が行った方が邪魔入らなくて楽なんだよね。



「つまり、結構ダメそうな奴ってことだな?

 なら仕方ない、ニフェール様が行くしかないな」


「というか、ちゃんと門番やってたんだ……」



 ルーシー、正直なコメントではあるな。

 僕もあの日同じように思ったしね。



「一応仕事はしてたよ。

 まぁ、当日アイツが対応しているかは不明だけど、一応念の為?

 いきなり訳の分からないこと言い出さないように僕の方で対応しようかなって」


「あぁ、スホルム案件の表に出せない話を喋られても面倒だしね」



 そうだねぇ、商会壊滅の現場とか襲撃してきた暗殺者(ティッキィ)を緊縛しちゃったとか?

 あまり積極的に広めたくないからね。



「ま、そんな感じで動く予定。

 で、次の日に朝から王宮で書類調査。

 僕がここに来てから皆で行こうか。

 ちなみにティッキィは書類仕事とか得意?」


「どのレベルを得意というのかは分からんのだが……。

 一応暗殺依頼されたときに契約書作る位は出来るぞ?」



 あ、そっか、一人で仕事していたんだからその位は出来るのか。



「それなら最低限カリムやナット辺りの仕事は出来そうだね。

 今回の件で実力測らせてもらうね。

 それによっては何かあったときの書類仕事増やすかも」


「……加減してくれよ?」


「出来るならね。

 後は当日まで仕事は……あっ!

 そういや詐欺師側から金確保できたんだよね?

 ちゃんと貰えた?」


「大丈夫だ。

 というか、キンスンも大人しく支払っていたよ。

 まぁ、腹の中は既にバレてるんだけどな」



 楽しそうだねぇ、カル。



「ならいいや。

 金は……ルーシーの方で九等分にしてくれるかな?」


「九等分?

 どういった感じで分けるつもりなの?」


「まず五つはお前等への報酬。

 そして二つはギルドとして管理。

 今後、どうなるか分からないから一応ね。

 残り二つは僕とラーミルさん」


「……正直言うと、ありがたいわ。

 でも、本来ニフェール様が最大の報酬を貰うべきよ?」



 ルーシー、ちゃんと考えてるね。

 でも、特に問題無いんだよ。



「お前等への報酬は説明不要だな?

 というか、本来スホルムに暴動にその他諸々。

 もっと払わなければいけないと思ってるんだが、今の僕ではこれが限界」


「まぁ、そこは本気でありがたいわ」


「で、ギルド二つも分かるな?

 今後どうなるか分からないから仕事用の予算って感じ?

 最後僕たちだけど……実はラーミルさんも報酬貰ってないんだよね。

 スホルム関連で文官顔負けの仕事してるのに」


「……あっ!」



 いや、ノヴェール家の件だろと言われればそれまで何だけどね。

 とは言え、労働に対する報酬無しというのはちょっとね。



「そんなわけで、今回の報酬の一部をスホルム案件の報酬として渡そうかと。

 追加で……僕も塩パスタ大盛生活から脱却したいし」


「あぁ……って、ニフェール様まだ逃れてなかったんですか?!」



 カリム、そこまで驚くか?



「以前のカリムの件については抜け出したよ?

 でも、別理由で週三で塩パスタ大盛オンリーなんだ……」


「……残りの日は?」


「塩パスタ大盛プラスサラダ、塩パスタ大盛プラス揚げ芋。

 それと最近編み出した塩パスタ大盛にケチャップぶっかけ!

 最近これで味変していて――」




「「「「「「ちゃんと飯食え!!!」」」」」」


「おおぅ!!」




 なんか一斉にツッコまれてしまった。

 ちょ、ちょっと目が怖いんだけど?



「ラーミル様、ちょっと日々チクチク突っついてもらえませんか?

 他の誰かが言うよりも確実に従うでしょうから。

 ついでにジル様辺りにも協力頂いた方がいいかもしれませんけど」


「ええ、分かったわ。

 流石にこれは私も許容できませんからね。

 何が何でもまともな食事してもらいますわ!」



 あ……に、逃げたいんだけ……カル、こんな時だけ行動早すぎだぞ?!

 扉へのルート完全に塞いでんじゃねえか!!



「ねぇ、ニフェール様。

 塩パスタ以外の選択肢は無かったの?」


「皆、勘違いしているような気がするんだが……。

 まず、実家からの仕送りが予定通りなら明後日届く。

 そしたら塩パスタ三昧は不要となるよ?

 今乗り越えれば元に戻るってだけだよ?」


「塩パスタ狂いって訳じゃないんだ……」



 何そのイカレた狂い方は?

 単純に仕事による



「あれ、でもなんでそんなに金無いの?」


「例えば双剣を研ぐための道具の確保とか、勉強するためのノートやペンの確保。

 他にも、まぁ色々必要経費が(かさ)んだと言うだけなんだけどね」



 言えない……。

 

 ラーミルさんとデートしたら金が消えたなんて……。

 もっきゅもっきゅしているラーミルさんが可愛すぎて食わせ過ぎたなんて……。


 流石に言えない。



 ラーミルさんは……あれ、冷たい視線かと思いきや、困惑の視線もあり?

 もしかして、勘づき始めてる?



「今回の報酬の一部を貰うことで生活は十分以上に潤うよ。

 なんで明日からは普通の生活に戻る予定。

 だからそこまで監視することは無いよ」


「……(チラッ)どうします?」


「……とりあえず信じてみますか」



 ルーシーとラーミルさんの反応からすると、ギリギリ許されたかな?



「でも、ジル様には報告しましょうか。

 お昼休みにでも罵ってもらえばいいんです!」


「ルーシー待って、本気で待って!

 それ、結構キツいから!」



 ジル嬢が本気で罵り始めたら、僕泣いちゃうかも。



「まぁまぁ、皆が心配するような食生活していたのは事実ですし。

 少し叱られましょ?

 反省してくださいね?」


「はぁい……」



 ラーミルさんに言われては大人しく返事するしかない。

 ルーシー、ニヤニヤすんな!



「ルーシー、九分割ってすぐできるかしら?」


「少し時間かかりますね。

 ニフェール様に最初にお渡ししましょうか?」


「そうね、流石に寮に戻るのが遅くなるのは大変でしょうから。

 その後、皆で分けましょう?

 私たち自身は明日になっても困らないけど……。

 ニフェールさんは明日以降塩パスタ禁止にしたいから」



 とりあえず解散。

 ルーシーが金持ってくるからということで僕はラーミルさんと待ち状態。

 そう思っていたら、ラーミルさんから質問された。



「ニフェールさん、もしかしてなんですけど……。

 塩パスタ続きの原因って私です?」


「……なぜそうお思いで?」


「デートの時に一緒に食事する頻度が高いなと思いまして。

 いや、楽しいのですよ?

 食べてて嬉しいですし。

 ですが、ニフェールさんの懐に大ダメージを与えたい訳ではないので……」



 バレてますねぇ。

 まぁ、大して隠したわけでもないので、バレても仕方ないのですが。



「いえ、僕もラーミルさんがおいしそうに食べるのを見るのが楽しくて……」



 ポ ッ ♡



 いや、そこで顔赤らめられると……照れます♡

 まぁ、推しの喜ぶ表情を見るために課金するのは大事ですよね♪



「まぁ、臨時収入も入ったことですし、無茶な生活はしないで済みそうです。

 なんで、また一緒に食事に行きたいところですが……。

 すぐには難しそうですね」


「仕方ありませんわね、厄介事が終わるとしたら二月中旬。

 その頃には余裕を持ってデートできれば……」



 そう言って、僕の方にしな垂れかかってくるラーミルさん。

 お? いい雰囲気じゃね?


 そのまま顔を近づけ、唇を――



 コンコン、ガチャッ



「ニフェール様、お待たせいた……」



 固まる三名。

 それぞれ表情は異なる。



 あぁ、また叱られるのか……。

 イチャつくの邪魔すんな!

 人が仕事してたのに何しとるんじゃ、ワレ!



 誰がどう考えたのかは今更説明しない。

 だが、ブチ切れた人物その2から雷が飛んできた。

 カルが襲ってこないからってこっちに怒りを向けるなよ、ルーシー。


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