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【連載版】狂犬の……  作者: いずみあおば
10:東奔西走
379/413

58

◇◇◇◇


 次の日、昼飯時。

 食堂の中で叫び声が聞こえて来た。



「ニフェール!

 お前、何やった!!」


「何のことだよ、フェーリオ。

 突然言われても何が何だか……」


「うちの親父に何言った!!」



 親父……ジャーヴィン侯爵に?

 ……何って、ナニ?



「ヒント無いか?

 言えないことが多すぎて、どのことか想像つかないんだが?」



 そう言うと、僕が色々知り過ぎているのを思い出したようだ。

 ボソボソとではあるが、説明し始めた。



「……うちの両親、ジルの両親、そしてお前の両親。

 当人たちが学園生の時代の話とそれについてだな」



 ……あぁ!

 ジル嬢の話から発展したあの件か!



「内容は分かった。だけど、それを僕に言われても困るよ。

 メインはお前で、僕はむしろ何の役にも立たないよ?」


「はぁ? 何でだよ?」


「ジル嬢を抑えきれるかどうかが主目的だから。

 特にこの件が関わる時に僕はお前らの傍にはいられない。

 いくら文句言っても助けようが無いんだよ。

 だからこそ、侯爵方はお前を鍛えるしかないんだ」



 修道院関連であることは感づいたのだろう。

 とは言え、泣き言を止められる訳でもないようだ。



「延々と母親たちが何やらかしたかを説明され、対策を考えさせられるんだぞ?

 何がどうなってそんなことになったのか、よく分からないまま」


「わからない?

 説明されてないの?」


「説明されたのかもしれないけど、よくわかってないなのかもしれない。

 言われたのが『ジルが暴走したらお前が止めるんだ!』ってのだけ」



 侯爵、説明端折りすぎ……。

 仕方ないので、僕が理解できる範囲で説明してあげる。



「……なんだよそれ?

 え、もしかして母親たちの薫陶を受けたジルが周囲を煽るのを止めろと?」


「そうそう、婚約者なんだし適任でしょ?」


「無茶言うなや!

 双方の父親がお手上げだった相手が全力で指導した危険物の結晶!

 そんなの勝てるはずねえだろ!」



 フェーリオ、当人(ジル嬢)の前でよくそこまで言えるな。

 隣の人物の目が吊り上がって来てるぞ?

 この件、助けないからね?



「だからと言って僕に頼るのも違うくない?

 フェーリオの婚約者でしょ?

 自分でどうにかしなきゃ」



 むくれるフェーリオ。

 でも、ここはちゃんと言っとかないと。



「それに、この話が関係するイベント。

 あれは僕がお前らをフォローできる余裕が無い話だぞ?

 その状態でどうにかしろって言われても、無理だよ。

 なんなら、最悪二人はイベント参加取りやめるか?」


「……それはちょっと避けたいな。

 ジルが悲しむし」



 ……そのジル嬢の顔のデッサンが崩れかけてるんだけど?

 喜ぶのは分かるんだが、もう少し人間の範囲内で喜べ?

 笑顔が不定形生物(スライム)になりかけてたぞ?



「ならお前が頑張るしかないんじゃないのか?

 告白の一押しに協力とかじゃないんだし、今後一生一緒にいる相手だ。

 自力でどうにかしないとマズくないか?」


「まぁ、そうなんだけどなぁ。

 言ってる内容がぶっ飛び過ぎて受け入れにくいというか……」


「それは分かるんだがなぁ」




「だからこそ、異常な事態に慣れ親しんだお前に助けて欲しいんだよ!」


「全力で喧嘩売って来てるのだけは分かったよ!!」




 人を何だと思ってやがる!

 好きで無茶しているわけじゃねえんだよ!!


 というかジル嬢笑い過ぎ!!!



 とはいえ、フェーリオも困っているんだろうけど……どうしよ?



「というか、以前僕が言った依頼とやること同じじゃないの?

 親世代の情報をあの本で確認して認識の差を埋めるって奴。

 あれやれば奥様達の暴走って情報見つからない?」


「一応五巻まで読んだが、暴走しているのはお前の両親だけだった。

 あれで分かれと言われても正直……」



 ……もしかして?

 いや、ここで話すのはマズいな。



「まぁ、とりあえずもう少しあの本を読み解くのと侯爵方の指導を受け入れな。

 それくらいしか言えないよ」


「マジか……」



 落ち込むフェーリオ。

 すまんなぁ、今この場で話すとマズいんだ。



「おっと、もう時間だぞ」


「あぁ、急ぐか。

 じゃあまた明日な」



 そう言って三人別れる……フリをして僕はフェーリオに近づく。



「な、何だ?」



 ……なんでそこで顔を赤らめる?



「フェーリオ、さっきの件、侯爵に聞いてみろ。

 もしかして『砕拳女子』での奥様方は作られ過ぎてないかってな」


「……そういうことか?

 自分たちの評価が下がらないように調整してる?」


「もしかするとな。そこは確認してくれ。

 僕も今日王宮に報告に行く際についでに聞いてみる。

 追加でフェーリオに伝えるようとも伝えとく」


「すまん、助かる」


「ちなみにこのタイミングで言う意味も分かるか?」



 ポ ッ ♡



 なに勘違いしてんだよ、この馬鹿たれ!



「ジル嬢や奥方のこと話しているのに、当人の目の前で言う訳にはいかんだろ!

 変な方向に妄想してないで現実に戻れ!」


「あ、あぁ、確かにそうだな。

 ん? というか、この件についてはジルは敵側?」


「敵と言っていいのか判断し辛いが、奥方側じゃね?」


「ちょっと言葉に気を付けないとまずいな……」



 そうなんだよなぁ。

 内部での駆け引きは面倒でしかないんだけど。

 とは言え……あぁ、もう!

 ここで考えても分からん!!



「とりあえず、ジル嬢にバレないように侯爵様と話し合え。

 それ以上は正直対処策が思いつかん」


「分かった……って、授業始まる!

 じゃあな!!」



 おっと、僕も間に合わなくなる。

 フェーリオを見送り、僕も急ぎ教室に戻る。


 そして放課後、ラーミルさん達と合流して王宮へ。



「……大忙しだな、ニフェール」



 前回と同じメンバーを集めて待ち構えていたジャーヴィン侯爵。

 その割にはラスボス感より中間管理職感が前面に出てますよ?



「何で皆落ち着いて生きられないんでしょうねぇ。

 のんびり生きていたいのに」


「まぁ、そこは儂のせいじゃないからあまりツッコまないでくれ。

 で、会談の報告を頼む」



 午前中の状況が分からないからカルに一通り話させる。

 ……え、キンスンはメラムの家に直接報告に行ったの?

 他二人はそう言うこと無しっと。

 で、強盗の残り二人のチェックはしてもらえるんだね。



「このキンスンとやらはどうする?」


「強盗襲撃後に報告という形で長全員集め、説明後に捕縛して殺します。

 現時点で後不安な長は二人。

 調べてもらってますんでその結果次第でこいつらもですね」



 カルの説明に呆れと少々羨ましそうな表情をする皆さん。

 まぁ、立場的に簡単に殺すとか言えないからねぇ。



「あ、それとニフェール様。

 ジジイから強盗ギルドの残りの情報貰ったぞ。

 それと、日付決まったら教えて欲しいと。

 それに合わせてオブスたちにギルドに集合するよう周知するらしい」


「加えて、かかわりのない面々は行かないように連絡するって感じ?」


「そうらしい。

 なんで、襲撃時間に合わせて集合連絡かけるそうだ」



 あぁ、そう言うことね。

 なら……。



「マーニ兄、そっちはいつでも構わない?」


「あぁ、大丈夫だ。

 あまり遅いのは勘弁してほしいけどな」


「そりゃ僕も勘弁してほしい。

 んじゃ、今日から四日後の夜八時に襲撃を行おう。

 マーニ兄は人集めておいて。

 特に死体運び要員」


「分かった。

 特に騎士側での襲撃は不要だな?」


「うん、下手に騎士に暴れさせてもねぇ。

 住民を襲う騎士なんて言いがかりつけられても嫌でしょ?

 僕たちが殺し尽くした後にメッセンジャーをそっちに送るよ。

 そしたら駆けつけて死体運びと中にある情報のかき集めかな」



 おや?

 何悩んでいるの?



「ニフェール、書類とかの調査に――」


「――それやっちゃうと徹夜になったりしない?

 運ぶだけにしておいて、次の日に調べたら?」


「お前、分かってるんだろ?

 うちの面々の書類処理能力の低さを!!」


「自信もって言わないでよ、情けない……」


「分かってんよ、そんなこと!

 でも、うちの面々の実力はお前だって見ちまったろ?

 俺とペスメーが半泣きで書類仕事しているあの現場を!!」



 だから、それを皆さんが見てるところで大々的にばらしてどうすんの!



「んで、僕たちがそのあたりどうにかしてくれと?」


「うちの面々に書類仕事のコツ教えるより早いだろ?」



 イヤな言い方だねぇ。

 でも、事実だしなぁ。



「どちらにしても徹夜で仕事する気はないから、次の日にね。

 女性陣に徹夜させるのは流石に後で恨まれること確実だからねぇ。

 マーニ兄だって、ロッティ姉様に徹夜仕事頼むの?」




「……ごくごくたまにな」


「ベッドの上での話じゃないからね?!」




 騎士たちが馬鹿笑いしてやがる!

 ペスメー殿、ホルターに情報流すぞ?!



「まとめると、四日後の夜八時に襲撃。

 その後、王宮にメッセンジャー送るから騎士たちで死体片付け。

 加えて書類の押収。

 次の日に僕たちで書類のチェック。

 あ、押収した書類は夜間はだれも触れられないように!」


「……あぁ、そう言うことか。

 裏切り者が書類を処分すること想定しているんだな?」


「そう、ただでさえ裏切り者が何処にいるか分からない以上、監視は必須だよ!

 その人だけ徹夜させて申し訳ないけど、確実に守って欲しいな」



 ただでさえ騎士団内に北部の裏切り者がどれだけいるか判断し辛いからねぇ。

 出来る範囲で厄介事潰しておかないと。



「分かった、誰が担当するかはこちらで考えておく。

 次の日にお前らが書類チェックして裏取りって奴だな」


「うん、その後裏切った詐欺師ギルド詐欺担当を追い詰めるので一通り終わり」



 これでやっと一つのイベントを終わらせられるよ。

 ……終わるまでに複数のイベントが発生しちゃったけど。



「ついでに確認だけど、やらかしている文官とか捕まえるの順調?」


「良いペースで潰せてますよ。

 どんどん処分されているし、おかげで風通しも良くなりました。

 ……今まで仕事の邪魔しかしてなかったからなぁ」



 サバラ殿、今までの苦労が籠った言葉ですね。

 まぁ、気持ちは分かります。



「次に修道院側は?

 ラクナ殿、騎士の調査は?」


「現状は仕分けだな。

 先日の情報を元にまともな騎士とろくでなしどもを徐々に別班に分けている。

 最終的にまともな班でダメな班を一網打尽にする予定だ」


「王宮の担当をそのパターンで分けるのは分かる。

 修道院は直前にやってね?

 女性陣を人質に取られるのはマズいから」


「あぁ、分かっている。

 まずは王宮側の整理という形にしてるから、修道院側も大して気にしないだろ。

 向こうは来年一月中旬位に仕分けるつもりだ」



 なら大丈夫かな。

 後は……クーロ殿にお願いした件か。



「クーロ殿、商会の調査は?」


「大体六割くらいか?

 ボシース家分は終わった。

 今はインファ家分をやっている」


「一通り纏まったならば情報のすり合わせしてみるのはどうかな?

 今すぐじゃないけどね」


「確かに追加調査の必要性も出てくるかもしれないしなぁ。

 こちらの情報が纏まったら教える。

 そちらのギルドの情報は誰が整理しているんだ?」


「商業・生産ギルドと情報収集得意なギルド。

 二ヵ所からの情報だから十分信憑性はあると思うな」



 ……もう今更なんだけどさ?

 クーロ殿、そろそろ呆れるの止めない?

 この程度の事、過去にも何度もあったでしょ?



「まだまだお前の行動を受け止められないようだ……。

 まぁその情報の確度が高いのは分かった。

 というか、むしろうちらやる必要なくね?」


「それぞれ視点が違うんだ。

 貴族側からの視点、同業者からの視点、そして犯罪者側からの視点。

 これらを整理すれば見逃しの可能性はほぼ無いんじゃない?」


「あ~、確かにな。

 分かった、この方向でやるか。

 今のペースなら建国祭後くらいにはできるぞ」


「こちらは同業者へ依頼したばかりだからなぁ……。

 祭後に状況確認しましょうか」



 これでおしまいっと。


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