表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
支配された帝国【番外編】、淑女養成学院  作者: 鎖乃れいな
第4章〜神の器として〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/116

エピローグ〜アガペーの檻、1945年の戦火に咲く絶望という名の花〜

 「…な、……いな、……れいな。起きてくれ。れいな。頼む。俺はこの世界ではまだ、お前に会ってすらないんだ。また『お兄ちゃん』って呼んでくれ」

あれ?お兄ちゃんの声がする?この世界?私はゆっくり目を開けた。


 「れいな。気がついたのね。あなた、テュフスにかかってずっと昏睡状態だったのよ」

「あれ?…お母…さん?…」

お兄ちゃんがどこにもいない。それに声が出る?

「お母…さん…お兄…ちゃん…」

「…ッ」

なぜかお母さんが驚いている。

「あなた、一人っ子でしょ?可哀想に。まだ意識が混濁しているのね。先生を呼んでくるわ」

一人っ子?お兄ちゃんは?由羅様は?愛理様は?え?どういう事?それに、この天井、見た事あるし、何故か隣で私の記憶よりも儚げな夢様が寝ている。


 「気が付きましたか、春夏秋冬れいなさん」

入って来たのは氷室様だった。

「え?な……ん……で…いやぁ、助けて、助けて、いや、ごめんなさい。もう規律は破りません。許してくたざい」

おしおきされる。私は自ら終焉を迎えた。そんなの、あの学院では、絶対規律違反だ。

「落ち着きなさいれいな」

お母さんが抱きしめてくれる。でも私はそれを振り払う勢いで暴れた。


 「お母さん、まだ意識が混濁しているようです。処置をします。待合室でお待ちください」

「はい。娘をよろしくお願いいたします」

「いやぁぁぁぁあ。行かないで。お母さん、お母さん」

お母さんは振り返りながらも、看護婦さんに連れていかれた。


 「落ち着いてください。れいなお嬢様。僕は何も致しません」

れいな『お嬢様』?『僕?』

「落ち着かれたようですね。入られたらいかがです?凜人坊っちゃま」

由羅様に連れられて、罰が悪そうなお兄ちゃんが入って来た。


 「れいな、すまない。本当にすまない。俺はお前に……」

「凜人、お前は何もしていないよ。あれは夢だ」

「でも、兄さん、あれは未来で、現実で……」

「お前も落ち着いたほうがいいな。俺が話そう」


 「れいな。今どのような状況かわかるかい?」

由羅様の声がすごく優しい。それに名前で呼んでる?

「はい。テュフスにかかって昏睡状態だったと聞きました。あれからどのぐらい経ったのですか?」

「はは。どのぐらいも何も、あの時代はまだ来ていないよ。今は1945年の7月だ」

(え?1945年?だってそれは戦争に勝った年であって、今は1975年のはず)


 「混乱しているようだね。お前が現実だと思っていた世界、それは夢先生が見せていた『夢』だよ」

夢?

「ただ、現実になる可能性のある『夢』だ」


 「いいかい?れいな。俺たちの祖父がなぜ、学院を賜ったか覚えてるかい?」

私はまだ混濁している記憶を手繰る。

「はい。日北鎮圧大戦の敗戦国である、ノースガルトの皇女を『家畜』として仕上げ、神代大元帥閣下に献上したからです」

「いい子だ。よく覚えているね」

頭を撫でてくれた。

(由羅様に撫でられたの初めてだ。こそばゆい)

「その献上した日が今日だ。これから調子に乗ったおじい様や父上がどうしたかわかるよな?」

「規律による従順な駒だけでなく、私たちのような『家畜』製造に力を入れました」

「れいな、少し違う。お前は『家畜』などではない。『人間』だ。履き違えるな。俺たちは、それを停めたいんだ。そして『清く美しく正しい』学院を作りたい。お前も協力してくれないか?」

え?由羅様が真逆のこといってる?でも、もし本当なら、手伝いたい。


 「かしこまりました、由羅様」

由羅様が辛そうに顔を歪めた。

「すまない。れいな。俺はお前の精神をそんなにも侵食してしまっていたんだな。許してくれなくていい。恨んでくれてもいい。だけどこれだけはきいてくれないか?『由羅お兄ちゃん』って呼んでくれ。お前は俺の可愛い妹なのだから」

妹……

「ゆ、由羅さ、由羅さお兄ちゃん」

「ははッ。れいな混ざってるよ」

由羅お兄ちゃんが頭を撫でてくれる。


 「そろそろよろしいでしょうか?」

聖蓮叔父さんの声だ。

「聖蓮か。入れ」

「はい。失礼いたします。おぼっちゃま方。全ての準備が整いましてございます」

「そうか。聖蓮、れいなの診察を。家に連れ帰れそうなら連れて帰る。もちろん、母親の衣栞さんもな」

「仰せのままに、我が主」


ー支配された帝国【番外編】完ー



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ