表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カイジンの冥婚  作者: 小隹雀
第二章 怪人討伐編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/55

【55話】カイジンの冥婚

 修了式も終わった三月。美緒と那岐は学校から帰る花織と伊吹を見送ってクラスに残る。


「そうだ! 那岐に発表したいことがあります⋯⋯! じゃーんっ!!」


 美緒はポケットに隠していたチケットを取り出す。那岐に高崎まつりの当選ハガキを見せつけた。


「展望ロビー——って、当てたのか⋯⋯!」

「そう!」


 前回は電波塔の上から見たが、今年はそれよりも高い場所で合法的に花火を鑑賞できる。


「すごいな」

「えへへ~。でさ⋯⋯今年も一緒に花火見たいんだけど⋯⋯どう、かな?」

「もちろん」

「じゃあ、決まりね!!」


 まだ、正午前だというのに学校は閑散としている。何百人もいる他の生徒たちは既に帰宅しているようだ。

 美緒は鼻歌を口ずさみながら那岐と共に昇降口へと向かう。


「あっ」


 下駄箱から靴を取り出した時、片一方が転がっていってしまった。

 美緒が靴に手を伸ばした矢先、先に靴を履いていた那岐が拾い上げてくれる。那岐はそのまま、立ったままの美緒にローファーを履かせた。


「ありがとっ!」

「どういたしまして」


 いつもは誰かしらいる校庭も人っ子一人おらず、二人の独占状態であった。


「わーーーッ!!」


 たまらず美緒は大声を出しながら校庭を突っ切る。


「怪我するなよー」


 そう言いながらも那岐は顔を綻ばせながら後を付いてくる。

 淡いピンクの花の雲が美緒たちを出迎えた。二人は帰宅せず、鉄棒に寄りかかりながら花見をする。


「そう言えば那岐⋯⋯バイトしてたけど、何か欲しいものあったの?」

「まあ⋯⋯そんなとこかな」


 那岐は手をポッケに入れながらそう答える。


「えー! 内緒なのー?」

「それよりさ⋯⋯ちょっと来て」

「えっ!?」


 那岐は美緒の手を取ってグラウンドの中央に連れていく。


「突然、どうしたの?」


 那岐が無言のまま腰に手を回してくる。


 彼ら彼女の舞踏会が幕を開けた。


 美緒はスカートをなびかせ、ローファーで軽快に踊る。那岐と美緒は舞踏会に相応しいドレスを身に纏っていた。

 那岐がリードし、美緒がフォローする。言葉を発さなくても二人は息のあったダンスを披露する。


 美緒は本当に幸せ者だ。


 ボタンを少しでも掛け違えていたら、こんな幸せな時間は絶対になかった。


 本当に夢みたい——


 踊っている最中、急に那岐が美緒の身体から離れ、地面に跪く。

 那岐はポケットから真四角のケースを取り出し、蓋を開けた。中からルビーの指輪が出てくる。


「ええぇ!!? これって——」


 見覚えのある指輪に美緒は目を丸くした。


「結婚してくれ」


 思っても見なかったサプライズに開いた口が塞がらない。


「那岐⋯⋯那岐——」


 美緒は口を両手で抑えるが、ずっと好きでずっと支えてくれた大好きな人のプロポーズに涙が溢れてくる。


「はい⋯⋯っ!!」


 美緒は声を涙で濡らしながらもそれに応える。

 涙を流す美緒の左手薬指に那岐が指輪を嵌めてくれた。もっと見ていたいのに、拭っても拭っても涙が視界を邪魔する。


「うっ⋯⋯見えない——」


 そのまま那岐の胸元に飛び込んだ。


「ありがと、那岐⋯⋯!」


 那岐は泣きじゃくる美緒の背中をさすってくれる。


「那岐ーーーッ!! 大好きーーーッ!」

「俺もだよ」


 強く抱きしめると、那岐も抱きしめ返してくれた。


 美緒の指に嵌められた指輪が赤くきらりと輝く。


          ◇


 八月。今回の夏祭りは那岐と二人で来ている。美緒は母の力を借りず、一人で浴衣を着付けた。


「伊吹くんもはなちゃん誘えたみたいで良かったね!」

「そうだな」


 辺りはすっかり暗くなっている。もうすぐ花火が始まるとあって、多くの人々が場所取りを行っていた。


「美緒、ちょっといいか?」

「ん?」

「浴衣反対じゃないか?」

「嘘っ!?」

「ほらっ」


 周りを見渡してみると、確かに美緒と同じ向きに浴衣を着ている人は見当たらない。


「ほんとだ!!」

「直してもいいか⋯⋯?」

「うんっ!!」


 二人は物陰に移動し、美緒は那岐の前で浴衣をはだけさせる。那岐が左前から右前に直してくれた。


「——よし。これで大丈夫」

「ありがとっ」


 帯を結んでフィナーレに入る。


 会場となる建物に着くと、エレベーターに乗り込んだ。数字がどんどん増えていき、あっという間に二十一階に到着する。

 扉が開くと、そこには抽選に当選した人たちが既に集まっていた。


 夜の展望ロビーの眺めも絶景で、打ち上げ地点の河川敷も丸見えだった。

 二人も楽しみに待っていると時間になった。烏川から打ち上げられた大量の火薬が光を発している。


 打ち上げ花火が美緒の眼を色とりどりに染め上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ