例えばそれが
レイアとの貴重な時間を邪魔され、挙げ句学校でレイアに絡んだとかいう奴を〆てやろうと、うちらは揃って玄関へ。
立っていたのは和桜の国の女王によく似た、というか少し前までレイアと一緒にいた楓花だっけ?女王の娘の…。そいつかと思ったけどちょっと違う。
「誰だお前…」
「ああ? そっちこそ誰だ。俺が和桜の国第二王女茉莉花だと知っての態度か!?」
第二王女…か、つまり楓花の姉?
そんなやつが何しに来やがっ…
考え事をしていたうちの横をすごい速さで通り抜けた影は、茉莉花と名乗った女の頭を鷲掴むと、その勢いのまま玄関の外へ。
…アイナか。 茉莉花は外で引きずり倒されてるし。
「くっ…離っ…」
「アイナ姉様、そいつあの子に何したのかしら?返答によってはこのまま始末してもいいわよね?」
「……」
おいおいアリス、相手は王女なんだろ?流石にそこまではやり過ぎだ!
止めようかと思ったら、アイナは手を離して立ち上がった。
「アイナ姉様?」
「手は出してない…。というか、コイツ、アリサに本気で惚れてる。それを証立てる為にダンジョンで貢物を取ってくるくらいに」
「なっ…!」
やめてやれよ…。本人真っ赤になって座り込んでるぞ?
この人数を前に心の内を暴露されたら無理もないけどな。
「はぁ…あの子は本当にもう!!」
「そやつなら妾はよく知っとるぞ?何度も何度もダンジョンに潜っては己を鍛えておった。何、心根の悪いやつではない」
ああ、カピバラックのダンジョンってノーラのだっけか。
「これ、アイツに渡してくれ!」
茉莉花っていう王女は真っ赤な顔のまま、丁寧に布に包まれたプレゼントとやらを置いて逃げるように帰っていった。
ま、気持ちはわかる。
「レイアへのプレゼントですか…。念の為中身を確認しますか?」
「いや、流石にそれはやったらだめだろ。危ないものでもないだろ?」
惚れてるというなら危険物なんか持ってこないだろうし。
「平気…? プレゼントとして渡すにはどうかとはおもうけど…?」
「セーラもこう言ってるんだ、ちゃんとレイアに渡したほうがいい」
「ユナさんがそれでいいのでしたら」
別にいいだろこれくらい。ユリノが過剰反応し過ぎだ。
部屋に戻って事情を説明し、茉莉花からのプレゼントをレイアに手渡した。
「貰っていいんやろか…」
「別にくれたんだから貰えばいいのよ。可愛い子は貢がれて当たり前よ?」
いや、アリス…。そういう教育はどうかと思うぞ?
「レイアちゃん〜…ちゃんとお礼をしたらいいのよ〜。ね…?」
「せやな。わかったよシノ姉」
さすが長女。というか、詩乃姉は零くんにとってずっとお母さん代わりみたいなものだったからな…。
お返しをするためにも…とレイアはプレゼントの包を開いた。
中身を見て首を傾げてる。それはそーだろ。あの女…うちらのレイアになんてもの渡しやがる。
「プレゼントにはどうかとは思いますが、一般人なら一人で仕留めるには難易度の高い相手の素材ですし…。価値としてもそこそこありますよ」
「ユリノ姉、これなんなん?」
「ダンジョンにいる敵の一部ですね。こちらはワームの歯です」
「ひっ… つまり倒したやつの身体の一部やろ…嫌がらせかよ! わざわざそんなものを届けに来るとかどれだけ嫌われたんだよオレ…」
うん、だよね。それが普通の反応だと思う。うちでもこんなのもらったら捨てるし、二度と口聞かない。
いくら価値があるとか言われても…ねぇ?
「売ればそこそこな値段になるものばかりですよ?」
「なんかあれね…。不器用な男が初恋の相手に必死に集めたものをプレゼントして嫌われる。みたいな?ちょっと可愛く思えてきたわ」
「…アホなんでしょ。アリサ、いらないなら処分するよ…?」
「頼んでいいか?アイナ。 なんか呪われそうやし」
レイアは完全に誤解してるけど、訂正するか悩むところ。
「渡すまでしたのにさすがに可哀想では?悪意が無いことくらいは伝えても…」
「じゃあユリノに任せていいか?うちには理解できないから擁護もできないし」
「ええ…。価値観の違いというのは難しいですね」
「だな…。だけどさ、プレゼントだってんなら他にもあるだろ。それこそ換金してアクセサリー買うとか、やりようはあるだろうに」
「それも一つの手でしょうが、こういったものを狩れるという力の証明でもありますから」
「なるほどな。ただ、それには致命的な問題があるだろ」
「問題ですか?」
「レイアがその敵の詳細も強さも知らない」
「確かに致命的ですね…」
例えるなら飼い猫に取ったネズミを渡されたようなものだからな。猫からしたら価値があるんだろうが、もらった飼い主は複雑だろ。
ユリノはレイアに嫌がらせではないからと説明してるんだけど、納得してないなアレは。
素材一つ一つの説明を受けてるけど終始嫌そうな顔してるし。
「のう、レイア」
「なんだよノーラ。ノーラまでこれは良い物だとか言うのか?」
「例えばじゃ、レイアが美味いと思って勧めたものが相手の口に合わん…そんな事もあるじゃろ?」
「まぁな。好みなんて人それぞれやし…」
「じゃからといってレイアは悪気があって勧めた訳でもないじゃろ?」
「不味いもの勧めるとかいやがらせやろ…」
「同じ事じゃ。それをプレゼントしたやつも本人からしたら良いものなんじゃ。その気持ちだけは汲んでやれ」
「…そういう事ならわかった。じゃあちゃんと持っとくよ」
「うむ。それがよいじゃろ」
おお…。まさかノーラがこんな上手く諭すとは。意外だったな。
「ユリノも価値云々と難しい話をするからこやつも混乱するんじゃぞ?レイアはアホなんじゃから」
「うるせーよ!?」
「まさかノーラに正論を言われるとは思いませんでしたよ」
「なんじゃと!?」
「ノーラ姉様だから言われても仕方ないわ。あたしもびっくりしたし」
「うん…ノーラ成長したね…?」
「フォーラもセーラ姉様もひどいのじゃ!」
最近のポンコツ姿を見慣れてたからちょっと見直した。さすが年の功…。




