我が名はウォンバット
この時点ではまだ俺はオムライスではなく、人のかたちをしていた。ただ服装がもとの皮ジャンから、粗末な布の服に変わっていた。
異世界の渋谷の街は、地形や建物の位置などはほぼもとのままだが、すべてのデザインがファンタジックで演出過剰で中世なかんじに変貌していた。
俺が屋上から落っこちた大型商業ビルは、深い霧に包まれ蝙蝠の群れが飛びまわる古塔に、その向かいの明治通りはワンボックスや2トン車や3トン車やベンダー車などのかわりに大型肉食恐竜や中型肉食恐竜や小型雑食型恐竜の牽引する車が行き交っているのだった。
「ふう、これが平行世界ってヤツか…。」
俺はこの唐突きわまるSF交響ファンタジー的状況にブルブル武者震いしながら、不敵な笑みをうかべ、呟いた。
「まさかこの俺が異世界に転生するとはな…えー、面白くなってきやがっただぜ…!。」
と、その時。
「「グモオオオオ!」」
ギャギャギャギャ…
ギュルギュルギュル
ドカーン。
ズドドドドドドドド
突然、大型肉食恐竜が怒りだし、雄叫びをあげて暴走し、俺のほうへ突進してくるじゃないか!。
俺はブルブル震えあがってしまい、足がすくんでその場から動けなくなってしまった。
ズドドドドドドドド
大型肉食恐竜が牙をむき、俺にせまり来るッ!。
俺は、なんとか歯をくいしばって後ずさりする。と、そのとき、俺の右足が、何かをズルッとふんづけた。
バナナの皮だった。
スッテーン。
コロリ。
俺はその場ですっ転んで一回転半し、ちょうどせまって来ていた大型肉食恐竜の顎にクリティカル・ヒットな回転蹴りをくらわすことに成功した。
ズッドゴオオオン!!。
バッターン。
ズシャアアアア。
「「グモオオオオオオオオ」」
と、そのとき、どこからかひとりの剣士があらわれ、ひっくり返った大型肉食恐竜にヒラリと飛び乗る。
シュバッ。
「でやあああああ!。」
ドュクシ、ドュクシ、
「はあああああァッ」
ドュクシ。
「「グモオオオオ!!」」
スタタタタタタ。
ドュクシ、ドュクシ、
逆からドュクシ。
「「グモオオオオ!!!、ゲボ〜」」
恐竜は泡をふいて失神した。
「ひゅうッ。大型肉食恐竜をキックの一撃でひっくり返すとはッ…、あんた、相当の武術の使い手だな…。」
「えー、いや、その…」
「私の名はウォンバット。
見習い剣士だ。よろしくな!!。」