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魔物使いの娘  作者: 天都ダム∈(・ω・)∋
第七章 たった一人の為の騎士

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接続章 裁かれる蒼の魔女《せいじょ》 Ⅰ

(どうして、テメーはそこまで出来んのかってのを、俺ァ聞いてんだよ)


 声が聞こえる。

 聞いたことのないはずなのに、懐かしい声。

 

(感謝の言葉だけなら、いくらでも吐けるさ。だって何も失わねー!)

(だけどお前はボロボロじゃねーか! 何度も何度も血を流して、馬鹿を見てると思わねーのかよ)


 わたくしは、この(ヒト)を知らない。

 だから、返事をするのは、わたくしじゃない。


(見てられないなら、着いてこないでよ。私は別に、来てくれなんて頼んでないよ?)

(うるせー。俺がいなかったらテメー、そこいらで出血多量でぶっ倒れて死ぬぜ!)

(そしたら、骨を持って帰ってよ。最期くらい、故郷(ルワントン)の土で眠りた――あいたっ! 噛んだなぁ!)

(アホかテメー! いや、馬鹿アホだな。馬鹿アホだテメー!)

(……あのさ、なーんで君、メチャクチャ長生きなのにそんなに語彙力ないの?)


(やっぱりテメーは馬鹿だぜ、■■■■■)

(君も同じぐらい馬鹿だよ、■■■■■)

(なんだとォ!?)


(だって、■■■■■は人間が嫌いでしょ?)

(ああ、嫌いだね。吐き気がする。テメーといると、もっと嫌いになってくる)

 わたくしは、この言葉の続きを、知らない。

だってこれは、わたくしじゃない。

(それが間違ってるんだよ。だってさ――――)

 だけど。

(私はさ?)

 きっと、同じ気持ちを、わたくしも、抱いてる。



 †


「目を……覚まされましたか」

「…………ドゥ、グリー?」


 視界いっぱいに広がる、痩せこけた、幽鬼のような頬。

 歳を重ねるごとに、どんどんと肌が白くなっていく。

 でも、だからこそ、見間違えようのない姿。


「ミアスピカに、向かったの、では……?」

「ええ……一昨日の話です……先程、レレントに戻りました……」

「そう……そう、ですか。あの、かあ――コーランダ大司教は、なんと……」


 わたくしが尋ねると、ドゥグリーは、一瞬口を噤んでから。


「それは……ファイア様が……直接、尋ねるのが……よろしいでしょう」


 そう言いました。


「…………え?」


 どういう意味ですか、と問い返す前に、ドゥグリーは席を立ち、部屋の扉を、開け放ちました。


「ファイア様が、お目覚めになられました……大司教」

「え…………あ?」


 それは、こんな所にいていいはずの人ではありません。

 だって、ミアスピカ大聖堂の、大司教です。オルタリナ王国の中で、最も地位の高いお方なのです。




「ファイア……ああ、ファイア!」




 大司教のみが纏うことを許された聖衣を、汚れることも厭わないで。


「か、あさま?」


 どうして、こんな所に居られるのでしょう。

 どうして、駆け寄ってきてくださるのでしょう。

 どうして、抱きしめてくださるのでしょう。

 どうして。どうして。どうして。どうして。


「良かった、無事で……頑張ったのですね、皆を救うために、頑張ったのですね――ああ、本当に良かった……」

「え、あ、あ? 何――何で、なんで」


 温かい。嬉しい。悲しい。

 怖い。欲しかった。温かい。


「ねえさま、ねえさまが、かあさま、ねえさまが、わたくしの為に」

「聞いています、全て、聞いています――ルーヴィも、あなたの為に、頑張ったんですね……あなたたちは、私の誇りです。私の、全てです」


 ねえさま、ねえさま、ごめんなさい。

 わたくしだけ、ごめんなさい。

 でも、でも。

 抑えきれないのです。


「う、わあああ……あぁぁぁぁ…………」


 わたくしは。

 わたくしは、ずっと、ずっと――――このぬくもりが。

 ほしかったのです。



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