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4 生徒会冬合宿(7)

 すでに清坂だけは流れを把握していたようで最初の羽根突き回数対決から、

「じゃあ、とりあえず関崎くんやったことないんだったら、練習がてら私と勝負しない?」

 さっそく勝負を申し込まれた。附属生グループが笑ってやがるがしかたない。受けて立つしかない。そばで名倉が珍しくも、

「場合によっては俺が代わるが」

 手を挙げてくれたもののやはりなれておきたいところはある。

「わかった、順番にやってみよう」

「そうだね。じゃあ、こうやるの!」

 清坂がすぐに羽根をつまみ上げ、バドミントンの要領でぽんと放り投げた。軽やかにてん、てん、てんと打ち続ける。二十回くらいタイミングよく打ち続けた後自分で羽根を拾い、

「バドミントンとは勝手が違うんだけどね。羽根の重みがあるから極端に飛んだりしないの。あまり高く打たないほうが数稼げると思うよ」

 わざわざアドバイスまでよこした。後ろで羽飛の、

「美里もずいぶんサービスいいな」

 皮肉っぽくつぶやくのも聞こえるが知ったことか。

「わかった。だいたい把握した。それならやろうか」

 鴨河先生がお手製羽子板を手渡し、

「それなら、トライアルで始めるとするか。関崎やってみろ」

 指示を出してくれたのを合図に言われた通り打ってみた。確かに羽根の錘が重たいがかえって位置が妙なところにずれないので打ちやすい。集中してないとよそにつっぱしってしまいそうだがその辺は慣れた。それなりに要領は掴んだ。

「関崎くん早いね。もう大丈夫なんだ」

 清坂も感心したようい頷く。

「じゃあ、さっそく試合に入っちゃう?」

「そうだな、よろしく頼む」

 あの空気の重さが羽根の錘程度にまだ流れている。しっかり打ち込んで、打ち消そう。


 清坂は結構手馴れたようで軽やかに羽根を追い続けているが、何かの拍子で頭の上ま飛ばしてしまい更科に拾ってもらいゲームセットと相成った。

「あーあ、落としちゃった。やはりお正月しかやらないと腕なまるね」

 羽飛に話しかけている。

「一年通しでやっても似たようなもんじゃあねえの」

「ひどいなあ。あんたに言われたかないよね!」

「俺に勝とうなんて百年早いっての」

 相変わらずの夫婦漫才を繰り広げているがすぐに鴨河先生に終了させられた。

「とりあえず関崎、お前運動神経かなりいいようだな」

「悪くはないと思います。中学時代陸上部に一時期籍、置いてました。生徒会に入ってやめました」

 事実を伝えるがあまり反応がない。みな知っているんだろう。乙彦は様子を伺っていた名倉に羽子板を渡した。

「じゃあお前やってくるか」

「誰が相手だろう?」

 戸惑う風に名倉が生徒会連中を見渡すと、即、女子チームの阿木が手を挙げた。

「名倉くん、じゃあ私と勝負だね。さっき美里が負けちゃったから、附属生としては勝たなくちゃなんないし。よろしく!」

「いや、俺は男子の方が」

 言いかける名倉を乙彦は黙らせた。ここで無駄な波風立てないほうが今はいい。

「あとで俺が理由を聞いてやる。とりあえず耐えろ」

「わかった」

 吐息セットで名倉は立ち上がり、いたって慣れた手つきで羽根を突き始めた。もっとも羽根を放り投げるまでは、だが。一瞬のうちに落としてしまうといった体たらく。当然阿木には完敗だ。

「わーい、勝った、勝った! 名倉くんドンマイ!」

 はしゃぎつつも阿木は名倉にしっかり労いの声をかけている。その一方で名倉は全く阿木を相手にせずすぐに乙彦へ羽子板を手渡した。もう終わった相手に渡してどうするという気もするのだが、附属上がり連中とできるだけ接触したくない気持ちもわからなくはない。すぐに羽飛へ手渡した。

「そっか、俺か。サンクス。じゃあ相手は誰よ」

「俺と勝負だ。文句あるか」

 即答したのは難波だった。男女ペアで組んでいたのにいきなり立候補するのが解せない。せっかく準備で腰を浮かせていた泉州が、

「あらあら私じゃあ役不足ってことね」

 いやみたらたらだったが思い切り無視している。すぐに阿木から羽子板を受け取ると、

「さあどっからでも、かかってこい」

 勘違いしたポーズで待ち構えている。

「かかるもなにも回数で勝負だもんな。ま、俺も今までこういうの負けたことねえんでな。美里とは違うんだよ」

 ──内部生と外部生の対決じゃあないのか。

 人数的に足りないことはわかっていたが、それにしてもずいぶんいい加減な試合である。

 隣りの名倉が鼻をかんでいる様子をちらと見つつ、乙彦は改めて阿木の態度について思索を凝らしてみた。どう考えても、やはりあれはどう判断しても、だが。


 生徒会に参加してからずいぶんと阿木は名倉にご執心だ。その手の話には疎いはずの乙彦ですらこれはと感じるのだから相当なものだ。同じD組出身者というだけでは片付きそうにない。同じ立場だと泉州もいるにはいる。ただ泉州は基本として男子たちにはほぼ対等に接している。なんとなく元評議連中のふたりには距離を置いているように見えなくもないが、外部ふたりに対してはむしろ乙彦に話しかけることが多い。一方阿木は乙彦の存在をほとんど無視する格好で語りかけてくるケースが多い。

 ──だが、名倉の本命は。

 かの幼馴染、奈良岡彰子という女子であることを知らないわけがないだろうに。乙彦よりも他の附属生たちのほうがそのあたりは詳しいはずだ。なのになぜか阿木だけは無視して名倉に接近してくる。

 ──それに肝心の名倉ときたらな。

 あきれるよりほかにない。名倉の態度はいかにも興味のない女子に対する接し方としか思えない。それどころか邪険すぎるようにも見える。名倉が女子に興味のない朴念仁ではなく、友情関係を平気で作ることが出来ることは静内との関係を見ても明白だ。おそらく阿木はタイプではないのだろうし迷惑がっているのもわからなくないが、一応は生徒会役員同士なのだ、それなりの付き合いをしないとこれからまずいんじゃないだろうか。

 ──俺と総田の時のように生徒会に対する価値観の対立ならしかたないが、明らかにあれは感情的なものだ。なんとかしなくては。


「ちっくしょお! なんで羽飛に俺が負けるんだ!」

 あっさり負かした羽飛が両手を腰に当てて高らかに笑っている。

「ほれほれ、だから言っただろ、俺にかなう相手はこの世の中いないんだよん」

「貴史、あんたひとりなんで威張ってるの。私知ってるんだよ。あんた二年の時、立村くんに負けたじゃないの」

 清坂にまぜっかえされつつも羽飛は満足そうに自分の位置に戻り、ひょいと泉州に羽子板を手渡した。

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