17生徒会お茶会(16)
──こんなあり得ない話どこから作り上げたんだ?
信じがたい古川の話に、誰もがあんぐりと口を開けているものだと思っていたが、意外とそうでもない。みななんとなく納得した顔をしているのが不可解だった。難波ホームズのお墨付きを得られたからか。
「雅弘、まさかだよな」
精一杯、信じたい。その一心で問う。
「俺に内緒でそんなことたくらんでいたのか」
当の雅弘は困りきったふうに首をひねっていたが、こくっと頷いた。
「すっごくきつい言い方に聞こえたけど、そうだね、正しいかもしれないね。けど、本当はおとひっちゃんに相談すべきことだったよなあ。そうすればこんなに話ややこしくならなかったよ。ごめん。おとひっちゃん」
いつもの、何があっても、最後は許してしまうあどけない瞳で雅弘は両手を合わせて乙彦を見た。と同時に古川に向き直り、
「確かにそうだね。僕は佐賀さんの置かれている事情に同情したところはあるよ。これはさっきたんとも話ししてたことだけど、一生懸命頑張っている人が足を引っ張られるのを見ていたら、そりゃあ腹が立つよ。なんとか力にならなくちゃ。とは思うよね」
「ふうん」
信じていない様子だが、古川も話を聞く気はあるようだ。腰を下ろして水を刻々飲んだ。
「健吾くんも難しい立場にいるようだし、すっごく大変なんだなとは思ってた。けどさ、あの、ほら、さっきたんの友達の弟のことを聞いて、さすがにあれはないんじゃないかってさ。なんだよあいつ、いきなりありもしないことべらべら並べ立ててさ。佐賀さんはああいったことをこの数ヶ月の間されてきてたんだよ。なんもないのにだよ」
「なんもない? 本当に?」
またも疑い深く古川が問う。
「あたりまえだよ。たしかに僕は一対一で佐賀さんと話をしたことあるよ。おとひっちゃんも見たことあるだろ。青潟市立郷土資料館。ここではどういう内容か話せないけど変なことじゃない。僕が積極的に青大付属に行って説明できれば一番いいことはわかっているけど、行ったら行ったであいつに邪魔される」
それまで黙っていた清坂が、真面目な声で尋ねた。
「立村くんのことね」
またため息をつき、ゆっくりと雅弘に向かい合った。
「三年前のことよね。私もあの場にいたから事情は把握してるの。立村くんは杉本さんのことになると見境なくなるからいろいろ佐川くんには迷惑掛けたわ。ごめんなさい。代わってあやまります」
「え? 俺、困るよ。だって清坂さんはさっきたんと親友だって聞いてたし、なんにも俺たちに謝られるようなことしてないよ」
きょとんとした顔で雅弘が訊ねる。
「あの時は私も、評議委員だったし、立村くんとはいろんな意味でパートナーだったの。今はそうじゃないけどね。たぶん立村くん、あの場で何かしでかすんでないかという予感はあったし、私も本当なら押さえた方よかったと思ってたの。でもそれをしなかった私にも罪があるし」
不意に新井林が立ち上がり清坂に近づいた。激しく首を振る。
「清坂先輩、そんなことはない、絶対にありません!」
周囲の視線が新井林に集中する。ずっと雅弘にだけはらはらしてきた乙彦も思わずぐらついた。
「俺は、入学してから三年間、清坂先輩がどれだけあの、どうしようもない立村さんに尽くしてきたかじっと見てきたつもりです。あなたは本来ならあんな扱いをされるべき人じゃない」
激しく、噛み付くような勢いに、清坂も飲まれてしまっている。いつのまにか羽飛が不安げに、
「おーい。新井林、大丈夫か、酒飲んでないよな?」
様子伺いに来る。
「俺は素面です。羽飛先輩のいらっしゃる前であえて言わせていただきます。佐賀が、俺のことで佐川さんに相談に行ったのは、つまりこういうことです」
新井林はじっと清坂の顔を見据え、声を震わせた。
「もし、あのまま、清坂先輩が高校に進学しても立村さんと付き合ってたら俺は力づくで奪い取っていました。あの霧島を笑うことなどできません」




