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第七試合 3.夜の森

 火の粉がまばらに降り、舞い上がる煤《すす》。わずかにだが、硫黄《いおう》臭が鼻腔を刺激している。


 どこか遠くで何かが燃えている夜の森に、譲二は横たわっていた。自分はここで尽きるのだという、確信めいた実感が胸の内にあった。


 比喩などではない。胸には銃創のような、貫通孔が穿《うが》たれていた。


 人生の終着駅に至り、譲二は己が志半ばで伏しているのか、やりきったのだと満足しているのかどうか、判然としなかった。


 落ちてくる火の粉で途切れ途切れに照らされる橙色の森の光景がぼやけていく。譲二は、自身の瞼《まぶた》が下りようとしているのがわかった。


 細くなっていく視界の中で、闇を切り裂くように、光線が差し込んでくるのが見えた。その清廉な白い光に、過去の記憶が思い起こされる。


『天使の梯子《はしご》ね』


 あのとき、展望用エレベーターから遠間に射《さ》す薄明光線を眺めて、彼女――鹿島芙美香は言った。


 ああ、と譲二は納得する。天上から光の柱を下りて、お迎えの天使が来たのだと。


 既に目を閉じているにもかかわらず、瞼を透かして全てを呑み込むような光が届けられる。続いて、天使の子達に脇を抱えられ、ふわりと体が宙に浮く感覚。


 これで、この苦難と辛苦に満ちた地上にやっと別れを告げられる。さあ、もっと高度を上げてくれ、と譲二は希《こいねが》う。


 恐れはなかった。なぜなら、松浦譲二は名誉の戦死を遂げることができるのだ。


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