第八試合 7.コントラスト
「う、わあああああああ~~~~~ん!」
大音量の泣きじゃくる声を背中に受け、譲二は苦虫を噛み潰したような思いで、片目だけ瞑目する。見てくれは可愛い女の子を泣かせるのはさすがに、罪悪感がわくというものだ。
格闘技は、ほぼ必ずといってよいほど、結果に残酷なコントラストを落とす。勝者が敗者にかけられる言葉なんて、この世界にはない。勝ったヤツが偉いのだ。
……それでも、彼女が強かったことに変わりはなく、評価を下げることはないはず。願わくば、これを機に、日鶴人や一般兵を見下すのをやめて、ボンバイエ・モードなどにも乗っかからず精進していってほしい。
「行こう。さすがに疲れた、休みたい」
駆け寄ってきた渚と雅紀の肩に手を回そうとする。雅紀が興奮のあまり抱きついてきた。
渚は安堵するかのように胸に手を当てていた。見れば、頬を汗が伝っている。心労をかけてしまったようだ、と譲二は胸の中で詫びる。って、いつものことか。
リングを降りる際に見渡したら、壁際に立っている曜一郎師匠の姿を見つけた。遠くからだが、口元に微笑をたたえて頷いてくれる。
譲二は何だか嬉しくなって、控えめに拳を突き上げてガッツポーズを返した。
拍手もブーイングも聞こえてこない花道を戻って、暗幕と通用口をくぐる。
廊下には、第二試合のために待機しているマリナ・ルアがいた。口をぽかんと開き、驚愕と軽蔑が入り混じった目で見つめてくる。
姉貴分のヴァレリアの敗北にまさかと大きく動揺しているのは明白だった。次の自身の試合に集中しようとしてもできないのがありありと伝わる。
ヴァレリアに依存心みたいなものを抱いていたらしく、これは尾を引くな、と譲二は思った。




