戦いと現実、裏と戸惑い
港で爆発が起き、起こした人の気配を察知した、ルリアルカ。
心情が変わった中で彼女が見せる行動とは。
「翼を広げ空を飛ぶのは久しぶりです」
目的地は王都にある港です。
「でも、今はこの問題を優先ですから」
上空から港の方を見ると、人が逃げているのがよくわかります。走ってもこれでは時間がかかりすぎます。空を選んだのは正解ですね。でも、本命は魔力の方です。ごく一般の人とは魔力の桁が違います。つまり、魔力の持ち主は。
「魔島の出身者です」
爆発の発生元となる場所を確認したので、一気に向かいましょう。
翼に魔力を込めて加速します。着地ぐらい成功しますよ?
地面まであと少しという所で減速し、その場で羽ばたきます。ええ、目の前に魔力の持ち主がいます。男の方ですね。種族は人だと思います。
「……何だお前?」
さすがに驚いたようです。空から人は降ってこないから?緊急事態ですからね。一般常識は通用しませんよ?非常識とか言わないでください。
「別に私の事はなんだっていいのです」
周りは今も爆発音が聞こえます。数名居ましたから、他の人達が行動しているのでしょう。
「お嬢さん、早く逃げろ!そいつは人じゃない!」
「うるせぇ!」
声を上げた人に向かって魔法が放たれます。ですが、防げばいいのです。
「……何しやがった?」
「魔法が当たる前に消しただけです」
「なんだそりゃ?」
呆れながらも警戒されていますね。
「あなたに説明する必要もありませんから」
「そうだなっと!……ちっ、また防ぎやがった」
油断も隙もありませんね。
「私の事はいいから早く避難してください」
「お嬢さんは……」
「言いたくありませんけど、邪魔です!」
声を掛けてくれた人を庇いながらは厄介なのです。邪魔と言われたので、避難してくれましたけど。
「はぁ……。おまえ、ずいぶんとふざけた魔力持ってるな」
「普通の人より少し多いぐらいです」
嘘ですけど。
「魔島出身だよな。俺もそうだ。そうでなけりゃ、お前がやった行動は納得できないところが多すぎる!」
殺意を持ってこちらを狙ってきましたね。大きな火の玉です。
「そうですか?」
「またかよ!?くそ!」
火の玉が私に当たる前に弾けて消えます。何をしているのか?ですか。無属性で消し飛ばしているだけですよ?
「どうして反撃しない」
「反撃する必要あります?」
「………」
相手が黙りましたね。
「はぁ……。ま、一人でやる必要はない」
男は言い終えると、空に向かって火の玉を打ち上げました。花火みたいですね。
「一人相手だと余裕なのかもしれないが、数でかかればなんてことはない。卑怯とか言うなよ?」
「言いませんよ。数がいても結果が変わらなければ、どうするのかはしりませんけど」
少し挑発でもしておきましょう。他に被害が出にくくなると思いますから。
「言うなぁ……。どこの魔島だよ」
「さぁ?場所とか興味なかったので。でも、私から言えることは」
接近する魔力反応は二つ。上空と私の後ろですね。目の前の方を入れると前後と上空ですか。速度が速いですから、左右はどうでもいい扱いなのでしょうか?
「誇りも持たない魔島の人に……」
上空からは土属性、後方からは風属性、そして目の前は火属性です。
(最初に私に当たるのは上空から飛来する石槍の束ですか。こちらは風属性で打ち流せばいいのです)
イメージは風で直撃から背後に流れるように。
(次は後方からくる風属性。こちらは翼で払えばいいですね)
最後に目の前。火の玉ではなく火の弾ですね。前にシエラさんが使った物と形は似ていますが、数が多いです。それよりも、規模の大きい水属性で相殺です)
イメージは飛来する火の弾を包み込むように。
「負ける必要がないからです」
「ちっ!」
「きゃ!」
「なっ!」
言い終わると同時に魔法を一斉に発動させました。綺麗に3方向から声が聞こえましたね。
「むちゃくちゃだな……」
「今のなに!?」
「全方位か……?」
土属性の人は男性で風属性の方は女性でしたか。状況的に性別なんてどうでもいいですね。
「お前、ほんとに何者だよ?」
「ただの人ですよ。受付の仕事とかしてますから」
「「「は?」」」
三人一斉に固まりましたね。嘘は言っていません。
「受付がこんなこと出来るとか、意味わからない!」
女性の方が叫びました。
「納得はできないな……」
続いて男性。
「受付だと……?やっぱり、お前ふざけてるよな」
「嘘は言っていませんけどね」
「エイン、この娘何かおかしいわよ」
「カーラ、名前で呼ぶなっつったろうが!」
「二人とも落ち着け」
火属性の方はエイン、風属性の女性はカーラという名前だそうです。何気に酷い事言われましたけど……。
「てめ!一人だけ名前出てないからって安心しやがって」
「あなたも名乗りなさい」
「なんで敵に向かってわざわざ名乗る必要がある」
「お前一人だけ名前がわからないままってのが癇に障る」
「そうね。あんただけ名前出さないのって嫌ね」
「おまえら……。相手、呆れてるぞ」
「呆れてはいませんが……」
周囲は火が消える事もなく、むしろ広がっていってますね。攻撃は私にきますから、新しい爆発はありませんけど。それでも、この場は惨劇と言っても過言ではありません。亡くなった方もいるとは思います。規模が規模ですから。
「私から逆に聞きたいのですけど」
「なんだよ?」
「何を目的にこんなことを?」
「「「………」」」
「?」
私、変なことでも聞きました?
「おい、女」
エインに指をさされました。たしかに女性ですけど。
「こんなことやってる奴に聞くのがおかしいと思わないのか?」
「そんなことをしてる人たちが目の前で勝手に名前を言い出したので、教えてくれるかと思いまして」
素直に答えます。
「いや、教えねぇだろ……」
「教えないわね」
「仕事だ」
「「!?」」
何でしょう?この三人は悪い人には違いありません。ですが、少し面白いかもです。
「答えてくれましたけど」
「はぁ……。もういい、教えてやるよ」
エインは開き直ったようですね。
「お前、魔島出身で間違いないよな?」
「どこの魔島と言われるとわかりませんけど」
「こんなでたらめなのが、どこの魔島かわからないって……」
この女性、結構失礼ですよね?
「どこの魔島かわからないって言ったな。お前、魔島の経済はどうなってるかわかるか?」
エインは思ったより、律儀なのかもしれませんね。それよりも、経済と言われて驚きましたけど……。
「知らないって顔だな。魔島は各属性の頂点に立つやつらの集まり、または家族で構成される。これは出身なら嫌でも知ってるだろう。そして食料、衣類、寝床、この三つは基本自給自足。これも知ってるな?」
「それぐらいは知ってます」
「じゃぁ、足りない場合はどうしてる?」
「足りない場合?」
足りない場合?私の島ではそのような事はなかったのでわかりませんね……。
「知らないみたいだな。仕事があるんだよ」
「仕事ですか」
仕事がこのような物騒な内容ですか。辺りを見渡します。今だに燃え盛る家、火に包まれる船もあります。この惨状が仕事?理解できませんね。
「魔島にくる仕事は色々な国からの依頼がある。ま、それこそ色々だ。人に自慢できる内容もあれば、できないものもある。今回の俺たちみたいな仕事はむしろ言えねぇ。簡単に言うと裏の仕事だ」
「………」
お爺様たちもこのようなお仕事があったのでしょうか……?
「だが、裏といっても利点はある」
「利点?」
「お金になるのよ」
横から、カーラが割り込んできました。
「あなた、本当に魔島出身?翼があるから有翼人だとは思うけど」
「ただの人です」
言いながら、翼を消し去ります。
「え?ちょっとまって、今のなに!?」
「だから人です」
「理解ができない……。これ、ほんとに人間?まさか神族?でも、こんな子供っぽい女神とか……」
「何を見ているのです?」
「別に……。小さいのに胸だけあるとか何よ……」
「胸の小さい人が何かいいました?」
「っ……この!」
「お前ら、何話してるんだ……」
名前がわからない方が呆れていました。
「小娘」
「小娘って私ですよね」
「お前以外に誰かいるのか?」
小さいのはわかってますけど、小娘はないですよね。
「小娘でいいですよ」
「まさか、年上とかじゃないよな……」
「17ですよ」
「この小さいのが17歳!?」
「同じ歳かよ……」
カーラ、エインの感想でした。やっぱり、失礼です。
「同じ歳だったのか。なら小娘ではないな」
勝手に納得されました。複雑です。
「女、裏の仕事は金になると、カーラがさっき言ったな」
「ええ」
小娘でなくなると、女ですか……。こういう行動を取る人達は失礼なのでしょうか?いえ、この三人が特別なのかもしれません!誇りがある他の島の方達に悪いです!
「魔島は世間的には圧倒的な強さがある集団と思われている。それは事実ではあるが、所詮は島だ。限界がある。だから、冒険家になるやつもいるし、大陸で職についてるのもいる。別に島で暮らしていたらいいって話になるかもしれないが、これはさっき言ったように限界がある。自給自足をしているから何でも揃うというわけじゃない。季節によっては食料が足りなくなるかもしれない。衣類も足りないかもしれない。ならどうすればいいか?島から大陸に買いにいくんだよ。当然、金はかかる。だが、自給自足の島に金があるか?」
「ないですね。あったとしても、価値がわかりませんから」
私自身経験しましたからね……。私が『ミューズの安らぎ』で出した金貨は調べてもらったところ、金貨200枚ぐらい価値があるらしいです。最低価格でらしいですけど。
「そのとおり。なら、どうやって金を稼ぐ?急いで必要になる時に、のんびり稼ぐわけにもいかない」
「だから裏の仕事ですか」
理解はできます。ですが、納得はできませんね。
「エインの島は食料不足、カーラの島は衣類不足、そして俺の島は両方だ」
「だからといって、こんな風に他の人に迷惑をかけるのはダメと思います」
「……そうとう甘やかされて生活してたんだろうな」
エインが珍しい物をみたという顔をしています。私は希少生物ではないです!
「甘いわね……」
「なら問うが」
「?」
「お前は自分一人が裏に付けば島全体が助かるという状況になった時、同じ考えでいられるか?」
「………」
「大陸に渡って職を持っているやつは誇りはあるだろう。なら、大陸で残っているやつらはどうなる?各属性の頂点にいようが、万能じゃない。誇りで腹は膨れん」
「そうですね」
食事は大事ですからね。美味しい物ならさらにです。
「なぁ、同じ魔島の出身のよしみとして、ここは引き下がってくれないか?」
「無茶いいますね」
「無茶なのはわかってるんだよ。おい、シュー、仕事の内容こいつに話すぞ」
「構わん。カーラもいいな?」
「いいわ。確かに、酷いことにはなってるけど、理由くらい説明してあげた方が、この娘も納得するかもしれないしね」
おとなしく、仕事の内容を聞くことにしましょう。
「その前に、周囲を安全にしてもいいですか?」
「どういう意味だよ」
「こういうことです」
魔力を集め、広域に広がるようにイメージします。わかりやすくいいますと、雨ですね。
「……ほんと桁違いだな」
「私は止めたかっただけですから」
「それで反撃しねーのかよ……」
エインは納得したくないという感じですね。行動理由は人それぞれです。
「これでいいです」
「そうか。なら、島に来た仕事の内容を話すぞ。内容は生き残りの王女の暗殺」
「暗殺?」
裏のお仕事という時点で物騒だと思いはしましたけど、予想を超えて物騒でした。
「先月、とある国が滅んだんだよ。で、生き残った王女を暗殺して欲しいというのが依頼だ」
「滅んでいるのに、生き残った王女様を暗殺するのですか」
「ああ。国の生き残り達は王女が生きていることを当然、知っている。だから、それを旗印に再起されないようにって意味も含めているんだろうな。依頼した国の名前は言えねぇが、1つだけじゃない」
「なんですかそれ……」
国が滅びて、それでも生き延びたのを暗殺?人のすることではないですよね?
「そんな顔をしたくなるのはわかる。いや、俺らがいうのもあれだけどな。わかるっていうのは、王女は全く悪くはねぇし」
「………」
「滅んだ国の名前はエネディアナ皇国。閉鎖的な国だって聞いたな。大陸にあるが、魔島と言っても過言ではないらしい。閉鎖的ではあるが、一つ特化したところがあってな」
「閉鎖的なのに?おかしな話です」
「外交がないというのが閉鎖的な意味なんだが……嫌な話がありやがる。特化はそれだ。内容は物が足りなければ他国から奪えってことらしい」
「………」
さすがに言葉がでません。足りないから奪う?
「特化しているのは、国の軍備力。強さだけで生き残った国……だったが正解だ」
「そんな国があるのですか……」
「あった……だ。俺もこの仕事引き受けるまでは知らなかった。この国の事を聞いて暗殺って事には別に心すら痛んじゃいない。かと言って、正義とも言えねーがな。あんたも気が付いてるんだろ?」
「まぁ」
私たちの会話を聞いている人がいます。二人ですね。
「そんなわけだ、引き下がってくれねーか?」
「少し考えさせてもらいます」
理解はできます。納得できる理由もわかりました。ですが、ですが何かが引っかかります。
「王女様」
「あん?」
そうです。王女様は悪くないって知られているのです。極端な言い方になってしまいますが、その周りの問題を解決すれば!
「王女様は悪くない。ですが、暗殺なんですよね?」
「ああ。運が悪い王女もいたもんだな」
「助ける価値はないのですか?」
「助ける価値か……」
エインが空を見上げます。
「生き残った王女ってのは国が何をしていたのか、まったく知らずに育った……いや、知らされずにか。何も知らないから悪くはないというのは、今回ばかりは通らねぇ。奪われ、殺された人の家族には通用しない話だ」
「そうですね」
「だから、運が悪かったんだろう。正直に言うと俺もできれば殺したくはない。でも、やらないと家族が困るんだ」
「家族……」
私にはもう家族はいません。あの滅びを受けた日がきっかけに。でも、家族は大事にするものです……。
「わりぃな。やらせてもらうわ」
エインがそう言いながら私の横を通ります。話を聞いているのは私の背後の方にある焼け残った家の角です。このまま通したら、確実に仕留められます。
「エインはダメよ。私がやるわ」
「なんでだよ?」
「あなたの火じゃ苦しみながら死ぬじゃない。苦しむ間も与えてあげないのがせめてもの慈悲よ」
「そっか……。嫌な役させちまうな」
「仕方ないでしょ……」
悪くない人を殺さないとダメなのですか?助ける価値はないのですか?
わかりません……。その王女様は全く悪くないとわかっているのに、それだと他国の生き残った家族たちに申訳がない?
答えが出ません。私はどうすればいいのか……。今から、私の目の前で王女様と思われる人は殺されます。ここまでわかっているのに、答えがでません。本当に、情けないですね……。
「そこに居るのはわかってるわよ。諦めて出てきなさい。それとも、あなたが出てくるまで、先ほどのようにこの国を壊しまくった方がいいのかしら」
カーラが言いますが、無理して言っている気もします。彼女もまた戸惑っているのかもしれませんね。
「王女様!」
「私が出なければ、この国の人達が先ほどのように酷い目に遭うのです!出ないわけにはいきません!」
王女様が陰から出てきました。真っ白な長髪に薄い青い瞳。服装は隠れる為もあるのでしょう、一般的な服装ですね。容姿は綺麗です。ですが、まだ女の子です。この子を今から殺すのですか?
「あなたに罪がないのはわかっているの。ごめんなさい……」
「殺しにきた側の方に謝られるのは複雑な気分です。でも……」
王女様は諦めましたというよりは、仕方がないですという表情を一瞬しましたが。
「私が死ななければ、この騒動は終わらないのでしょう?」
王女様は微笑みながら、カーラに言いました。
「生きたいとは思わないの?」
「それは……生きたいですね。家族は先の戦争で全員この世にはません。ですが、私が生きている限り、他の方に影響が出るみたいですから。私がここで死ぬというのも意味を持つのでしょう。それを受け入れることに致します」
王女様は寂しそうな笑顔を浮かべていました。
「やらせません!」
突如、王女様の後ろに居た方、ご老人ですね。がナイフを片手に飛び出しました。
「くっ……。王女様がここまで決意してるのに、邪魔しないでよ!」
「がっ!」
カーラの右腕を払うように降ると、風が突風となって、お爺さんを弾き飛ばしました。
「バカ……。刺されたから加減できなかったじゃない……」
カーラの左腕にナイフが深く刺さっていました。出血量も少なくはないです。
「爺!最後なのにこんな……こんな、大怪我なんて……」
王女様が涙を流しながら言いました。最後ですか……。
「血を……血を早く止めないと……」
王女様は自分の衣服を裂いて、止血をしていきます。ですが、傷の方が大きいです。止まる気配はありません。
「私の事はいいのです……。王女様は逃げて下さい」
お爺さんは、ゆっくりと立ち上がりました。立ち上がるのも相当辛いと思います。
「まだ邪魔するの?」
「しますとも……。私の目が黒いうちは王女様を殺させません!」
「そういう想いは嫌いじゃないわ。でも、今はそういうのに付き合ってあげられる程、余裕はないのよ!」
カーラが魔力を集めながら叫びます。先ほどよりも大きな魔力量です。
「次は確実に死ぬわよ?」
「言いましたとも。私の目の黒いうちはと」
「そう……。ほんと、バカね」
「ダメ――――――!」
カーラが腕を振り下ろそうとした瞬間、王女様は叫びながら、カーラの前に立ちました。
「爺を殺さないで!私を殺したら終わるのでしょう?なら、それで終わりにしたらいいじゃないですか!」
涙をボロボロと流しながらですが、凛とした声で話していますね。どうすればよいのかわからない私とは違いますね……。
「……そう…ね。そこまでして、そのお爺さんを助けたいの?」
「当然です。王族は臣下や民を大切にし、護る義務があります!それは国が無くなっても、変わりません!」
「……あなたが大人になっていて、国を治めていたら、変わっていたのかもしれないわね」
カーラはそう言って腕を振り下ろしました。
今回のお話で魔島について少し説明が入りました。
一番の問題はルリアルカは色々知ったことにより、戸惑い動けなくなりました。
正しいと思っていることでも、それはダメとかですね。
この出来事で、彼女はさらに成長するのでしょうか?
次回の更新も書き終わり次第となります。




