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ハルといえば実力派と言われ、いくつもの映画やドラマに出演して、出ていないクルーはないんじゃないかと思うほど、主役から脇役までいろんなところに顔を出している。
真っ黒なさらさらの髪に、綺麗な透き通るような白い肌。冬馬に似て優しさが滲む瞳にいつも微笑みを浮かべている口元。実物はテレビで見るより、顔が小さくて体つきが細い。足長いしっ!!うわぁぁぁ眼福っ!!
「・・・・・・・・なんでっ!春臣が俳優やってるって分かって、俺が分からないんだよっ!!差別だっ!」
えっ?春臣って、春くん?一番下の小学生だった?
秋也の叫びに私は状況に頭が追いつかず、思わず冬馬にすがりついてしまった。
「なんだよ、桃。テレビで見てるのに僕の事わからなかったの?冷たいなぁ」
首を傾げる仕草がまた可愛いっ!!
さすが赤ん坊から年寄りまでを虜にするハルだ。似合いすぎてお姉さん鼻血がでるかも。
「・・・・・・・・面白くない」
え?冬馬までなに言い出すのよ。
冬馬の顔を見上げると、眉をギュッとしかめてハルを睨んでいた。
ハル、というか春くんは無邪気に冬馬に笑いかえす。
「本当に恋は病だよね。桃、久しぶり。冬馬にストーカーでもされた?」
なんで家族揃って皆がみな同じこと聞くんだよ。
首を傾げると、ようやく冬馬の足から解放された秋也が立ち上がって手首を降りながら言った。
「桃に振られてから大変だったんだよ。んっとに知らなかったのかよ。高校の時、ほとんどストカーだっただろ?」
「そんな事なかったけど」
「お前鈍いなぁ。朝も夕方もつけ回されたじゃねぇか」
呆れてものがいえねぇよと秋也は呟く。
つけ回された?私が?冬馬に?
全く覚えがない。
「一回冬馬の事を心配して桃のお兄ちゃんが家まで来たもんね?」
兄貴が?私は目を丸くした。
だから冬馬が、兄貴の顔を知っていたのか。
「違うからな。こいつらのいう事は適当だから。桃の事をつけまわしていたんじゃなくて、桃に声をかけるタイミングを逃してたら、結果朝晩毎日ついて回ってしまっただけだから」
・・・・・・・・・・冬馬、それ胸張って言うトコじゃないかも。
そうか、それでストーカーされなかった?って発言になるのか。
思わず笑ってしまう。
しかも、春君達の言い方だと兄貴が心配してるの私じゃなくて冬馬の事だし。一体なんの話をしに行ったんだか。
ギュッと冬馬が私を抱きしめた。
「なに?どうしたの?」
見上げれば、この話は恥ずかしかったのか耳まで真っ赤だ。
「っとに、相変わらず桃には引っ付くンだよな。冬馬のそれ、絶対病気だから。付き合うなら桃、ちゃんと覚悟しておけよ」
「そうだよ。桃、冬馬はあんまりお勧めしない。重たいからこれ。桃の兄ちゃんに、誓約書かかされてたからね?」
誓約書?!
「なによそれ」
「五月蝿いっお前ら余計な事言うなよ。だから、お前ら嫌なんだよ!」
慌てる冬馬に、秋也はさっきの仕返しのつもりなのか、三歩後ずさると嬉しそうに言った。
「確か、桃の嫌がる事はしません。犯罪には手を染めませんだろ?面白いのが、桃の兄ちゃん付回すのはオッケーだったんだよ。ボディガード代わりになるからって。ストーカーは十分犯罪だっつーの」
「そうそう、それでしばらく冬馬に桃の様子を報告させてたよね。桃のお兄ちゃん面白くて、僕好きだもん。お兄ちゃん元気なの?」
私は曖昧に微笑んだ。
昨日のこともあるから、どんな表情をすればいいのか分からない。
だけど、心配をしてくれていた兄貴の行動が少し嬉しい。
多分、あの頃聞いていたら問答無用で大喧嘩になってしばらく口きかなかったけれど。
なに勝手に人の交友関係に口出ししてるんだって。
真っ赤な顔の冬馬がおかしくて、私は忍び笑いをもらした。
兄貴と冬馬じゃ意外な組み合わせだな。誓約書までかかされて、それでも私の後を着いてきてたのか。
「しっかし良かった。これで我が家の長男に子供が生まれる可能性が出てきたな」
「冬馬の場合、桃が相手じゃなきゃ結婚とかしても子供できなさそうだもんね」
・・・・・・君たち、先走りすぎだって。
いきなりなんで子供の話題になるのよ。
「冬馬はね、桃以外の女の子とは、距離があるんだよ。今みたいにくっついたり、手を繋いだりってのが極端に少ないの。桃と一緒にいた頃はいろんな女の子にも肩組んだりしてたみたいだけど。桃に振られたのが相当響いてたんだ」
ハルがコーヒーメーカーにコーヒーをセットしながらそういう。
「さっきから、変な勘違いしてるみたいだけど、私が振ったんじゃなくて、冬馬が私を振ったんだけど。どっから、逆になっちゃったの?」
私がそう言うと、冬馬も頷く。
「もっと言ってやってくれ。いくらそう言っても聞く耳をもたないんだよ」
「聞く耳をもたないんじゃなくて、状況を見ての話だろ。桃をストーカーしてたくせに。あんな事してたら、どっからどう見たって冬馬が桃に振られたようにしか見えねぇよ」
「ほんっとに、うっとうしかったもんねぇ。未練たらたらでさ。連れてくる彼女は皆どっか桃に似てるし。長く続かないし。あげくに、たた・・・・・・」
勢いよく冬馬が春くんの口を塞いだ。
「黙れ」
おぉ、鶴の一声だ。
あまりの迫力に秋也と春くんは口を閉ざした。
タイミング良く、ピーとコーヒーメーカーが音をたてる。
ソレを合図に、私は全員にコーヒーを淹れようとカップを探すことにし、秋也と春くんはリビングに戻っていった。
手早くコーヒーを淹てリビングに持っていくとソファで三人仲良くくつろいでいる。こう見ると春くんと冬馬は雰囲気から似ているけれど、秋也は全く似てない。金髪ってのもあるのかな。
ちょっと迷って、私は冬馬の横に腰を下ろした。
「で?冬馬がやったんじゃねぇーんだったら、ソレ誰がやったんだよ。プレイってわけじゃなさそ・・・・・・・・・って、なにすんだよっ!!」
秋也が口を開いた途端に、冬馬が頭を叩いた。
横で春くんが大きな溜息をつく。
「だから、秋也は彼女出来ないんだよ。いい年して、女の人に聞いていい事と、いけない事の区別もつかないの?」
ちらりと私を見ると、ふわっと優しく微笑んだ。
「気にしないでね?でも、僕の顔忘れてるなんて酷いよ。これからちょくちょく顔を合わせるだろうから、また仲良くしてね?」
そう言って、私の頬に手を伸ばす。
「化粧でかくす?僕いろんな道具持ってるよ?秋の馬鹿がしょっちゅう喧嘩して青あざ作って帰ってくるから、特殊メイクの道具揃えちゃったんだ」
「なんで?べつにいいじゃん青あざぐらい。男の子なんだし」
その場がシンっと静まり返って私は慌ててしまった。
なんで?私変な事いった?
よく見ると、秋也がワナワナと拳を震わせている。
助けを求めて冬馬を見ると、苦い顔をしていた。
「だからっ!なんでハルが分かって、俺が分からないんだよっ!!俺のほうがネームバリューあるだろっ!!」
ネームバリュー?
「ひょっとして、秋也も芸能人なの?」
そう聞くと、春くんが大声で笑い出した。
「やった!ほらみろ、天狗になってるからだよ」
「あり得ないっ!!桃、お前『ストーンクラッシュ』知らないとかいわないよな?オリコンでだす曲全部トップ10には入ってるじゃねぇか。この間はミリオン達成したんだぞ?」
悲痛な叫びに、首を傾げる。
『ストーンクラッシュ』?有名のか?
「ごめん知らない。そういえば、私あんまりメジャーな曲聴いて来なかったかも。だいたい、インディーズだったし、最近『S』しか聞いてなかったからなぁ」
「桃っ!!てめぇ、勝負だっ!春臣、お前桃の支度を整えてやれよ、俺がどんだけ有名か、分からせてやる」
・・・・・・アレ?プライド傷つけたかな。
ちょっと、涙目かも。
春が道具とりに行ってくるねと部屋を出て行ってしまい、私は冬馬を見る。
冬馬は笑いを堪えきれずにソファに突っ伏して肩を震わせていた。
「勝負もなにも別に、秋也が有名でも有名じゃなくても私関係ないし。てか、どうでもいいんだけど」
そういえば、昔から変なところでプライド高かったわ。
ぐっと言いよどむ秋也に呆れて私はコヒーを啜る。
「だいたい、秋也は秋也でしょうが。今日は私忙しいから秋也に付き合ってる暇ないよ」
堪えきれなくなったのか、冬馬がお腹を抱えて笑い出した。
「お前の負けだよ。おっかしい。さすが桃だ。秋也のヘコマし方をよく分かってる」
涙を拭いながらそう言って、私の肩を叩いた。
「俺とデートしたいってか、一目会いたいっていう女のほうが多いんだけど。俺、冬馬より男前だし」
むくれて口を尖らせる仕草は夏樹さんにそっくりだ。
「そう、良かったね。おめでとう」
「なんだよその、棒読み台詞はっ!!本当に俺の事どうでもいいいんだなっ」
「当ったり前でしょうっ!会ったそうそう人の胸覗き込む男なんて、どんなに人気があったって最低だからね」
まだ、怒ってるんだよ、私は。
何事もなかったかのように、話してる秋也が可笑いんだよ。
「秋也は、芸能界はいってから、肉食女子に迫られすぎて女嫌いになったんだよ。だから、勘弁してやって。相当酷い目にあってるみたいだから」
冬馬は言葉を切ると、秋也を正面から見た。
「桃に失礼なことするなよ。お前自分の立場わかってるのか?いくら女嫌いだからって桃まで侮辱するような事をするな。俺は知ってるぞ。俺達兄弟は趣味が似てるんだ。これ以上言われたくなかったら黙れ」
さっと、秋也の顔色が変わって、私から目をそらすとコーヒーに手を伸ばした。
さっすが!やぱっり冬馬はお兄ちゃんなんだ。
「桃、忙しいって?今日はゆっくりしておけば?」
冬馬が話題をスルリと変えた。
そういえば、ドライブとか言ってたな。
「うん。とり合えず部屋を掃除に帰って、その後に新しい部屋を探しにいこうかなと思って」
冬馬が眉をよせて、縦皺を作った。
「じゃぁ、片付けは一緒にするよ。丁度いい具合に手の開いてる奴が、二人ほど都合ついたし。部屋は探すことないよ。ここに住めばいいじゃないか」
ケロリとすごい事いうよね。
んな訳いくかっつーの。
「頭悪い事言わないで。なんで私が冬馬と一緒に住むのよ。今度は一人だからワンルームの部屋探すわよ」
幸い、貯金もある程度あるしね。あまりあの家に帰りたくないけれど。
ふと、昨日の拓海の顔が思い浮かぶ。
一瞬で体が強張った。
思い出したくない。
アレは駄目だ。
記憶に蓋をしなけれなならない。
そう思うのに、痛みを、恐怖を次々に思い出して・・・・・。
膝に熱さを感じて我に返った。
「あつっ!!ヤダ、ごめん」
「桃!」
膝の上にコーヒーが零れている。
冷やさなきゃ、と思い立ち上がろうとした時に冬馬が私を抱えあげた。
読んで頂きありがとうございます。昨日、章を作るのを忘れてました。申し訳ありません。




