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たった一日で、拓海対する想いと冬馬に対する想いが変わってしまった。
そんな自分に驚く。
自分でもどうよ?と思うくらい冬馬に甘えていて、こんなに誰かに甘えたのって子供時以来じゃないだろうか。
新しい自分発見。
てか、冬馬ってこんなに頼りがいがあったっけ?
一緒に朝食を食べながら、顔をうかがい見る。
やっぱり、格好いいんだよね。しかも、今日なんか起きたら朝食できてるし!!
普段はお弁当とか外食ばっかりでまともに料理なんかしないっていってたのに。
流石まゆちゃんの息子。
悔しいぐらいに、完璧な朝ごはんだった。
スープにサラダに、焼いたベーコンと目玉焼き。それにトースト。なにがムカつくって、ドレッシングが手作りだから!!
なんだよ!できるんじゃん!知らなかったよ。
しかも、めちゃくちゃ美味しいし。けちのつけようがない。
私は上機嫌で食べていると、なんだか視線を感じてもう一度冬馬を見ると、それはもう、蕩けるんじゃないかと思うほど甘い笑顔で私を見つめていた。
一気に頬が火照って、赤く染まる。
心臓もバクバク大きく高鳴りだした。
ついでに昨日の夜、とんでもないお願いをして、とんでもない事をさせてしまったアレがフラッシュバック!!
「・・・・・・・・・・・・うっ!!」
「う?」
冬馬がコーヒーを片手に持ちながら首をかしげた。
「うわぁぁぁぁ!!無理っ!!絶対私可笑しい!!」
思わず雄叫びをあげる私に、冬馬は更に笑みを深める。
「大分元気になったね?良かった。桃が元気ないと気持ち悪いしな」
いや、突っ込んで欲しいんだけど。ほら、叫んじゃってんだから。
なに、優雅にコーヒー飲んでるのよ。
「さてと、桃はゆっくり食べてろよ。俺、ちょっと仕事のメール確認してくるから」
そう言って、コーヒーを持ちながら席を立つ。
休みの日でも仕事か。
えらいなぁ。
トーストを口に運びながら感心する。私には真似できないよ。
冬馬が二階に行ってしまってから、大きな溜息をついた。
あ~あ、ご飯美味しいよ。
こんな時でも、ご飯は美味しいし、お腹はすくんだ。
これから、私どうしよう。
とり合えず、あのアパートは引き払うでしょ?
今度は一人なんだから、ワンルームで充分だし。
部屋、探しに行こうかな。
あの家にはまだ、帰りたくない。
拓海がいたらイヤだし、昨日のことを思い出すから。
あんな恐い拓海知らない。
拓海に触られて、気持ち悪いと思ってしまった自分も知らない。
私はいつまで、ゆいちゃんを引きずるつもりなんだっつーの。
ダメダメ、考えない。
考えるとロクな事ないからっ。
まずは、ご飯だよ。
サラダを口に運ぼうと、大きな口を開けたところに、突然リビングの扉が大きく開いた。
そして、誰かが飛び込んでくる。
フリーズしたまま私は思わず、その人と見詰め合ってしまった。
大きく目を見開いて、私を凝視するその人に見覚えがあって記憶を探る。
どっかで会ったことあるんだよね。
「おはようございます」
とり合えず、挨拶してもその人は私を凝視して動かない。
二十代前半を思われるその男の人は、一言でいうなら派手。
金髪に多分カラーコンタクトをしていて、真っ青な瞳をしている。
服装もボロボロのジーンズに、あちこち破けたTシャツ。それにゴッついアクセサリー何年か前の拓海みたいな格好だよ。パンクやってますみたいな。
しばらくフリーズしていた、彼はおもむろに携帯を取り出してどこかに電話をかけ始めた。
だから、挨拶ぐらいしろってーの。
それにしても、どこかで見た顔なんだけどなぁ。
挨拶もしない奴の事を考えてもしょうがないかとサラダを口に入れると彼はとんでもない台詞を口にした。
「大変だよっ!!桃が冬馬の部屋で飯食ってる!とうとう、冬馬の妄想が現実になってるよっ!!どうする!!赤飯?!」
待て待て待て、待って!!
ドコに電話してるのよ。
なんで私の名前・・・・・・。唐突に誰だかわかってしまった。
「ばっ!!ちょっと、馬鹿!どこに電話してんのよ。駄目!違うからっ!そんな色っぽい話じゃないから!!しゅうくん止めてぇぇ」
赤飯ってなんだ!こらっ!
あわてて、冬馬のすぐ下の弟秋也に駆け寄ると携帯を切ろうと手を伸ばした。
相手、絶対まゆちゃんだって。
こんなの知られたら、本当に大変だからやめて!
ところが、七年前は私より小さかったしゅうくんは今や立派に成長して私の事なんか相手もしてくれない。
携帯を奪おうと思ったって、ひょいひょい避けるし、私がうっとうしかったのか電話をしながら、私の腰に手を回して動けないようにされてしまった。
「ちょっと、しゅうくん止めてってったら!!」
私の事なんか全然無視しやがってっ!!許さんっ!!
あんなに遊んであげたのに!!
「マジだって、今ここにいるから。しかも冬馬のTシャツ一枚だぜ?嫁だ嫁。嫁決定。お前も来てみろって」
・・・・・・・お前?
あれ?電話の相手まゆちゃんじゃないのか?
それより、Tシャツ一枚じゃないからね。ちゃんと短パン履いてるし。ただ、冬馬のTシャツのほうが長くて見えないってだけだから。
その時、上から大きな怒鳴り声とともに、冬馬が駆け下りてきた。
「秋也!お前なにしてるんだよ。桃を離せっ!」
すると、しゅうくんは携帯を切らずに冬馬を見た。
「冬馬、おはよう。てか、おめでとう。長年の夢が叶ってよかったな。初恋成就って並の執念じゃねぇよなぁ。・・・・なぁ?」
最後はどうやら電話の相手に問いかけたらしい。
あの可愛い、しゅうくんが。
全ッぜん可愛くないっ!!
手を放してくれたから、私はその場でしゅうくんを見上げる。
ほんとに大きくなっちゃって。
声変わりもしてるし、子供っぽさも抜けて随分いい男に育ってる。
と、冬馬に引き寄せられて階段に向って体を押された。
「桃はとりあえず着替えて来いよ」
しゅうくんから目を離さずに言うから、私は短く返事をして二階に上がった。
着替えをおえてすぐに下に降りて行くとしゅうくんがトーストにかぶりついていた。
「なんだ、桃着替えちゃったんだ。残念」
うわぁ、発言が男の発言だし、カルチャーショックが強すぎて目眩がする。
「しゅうくんが、可愛くないっ!!」
「その、しゅうくんってのやめろよ。もう子供じゃねぇんだから。呼び捨てのほうがいくらかマシなんだけど」
嫌そうに最後のひとかけらを口に放り込む。
その姿はやっぱり何処かで見た気がして何となく引っ掛かる。
高校生の時じゃなくて、もっと最近。
でも、この金髪は一度見たら忘れないと思うけど。
ソファに座ってダイニングに腰掛ける秋也の横顔を見つめる。
秋也はすぐに訝しげに私を睨んだ。
「なに?桃が俺を見つめてると、煩いのがいるからやめくんねぇかな」
整った男らしい顔立ちに、金髪に青い瞳、偉そうなこのデカイ態度。既視感があるんだけどなぁ。
まぁ、いいか。思い出せないし。
私は、首をかしげながらも、キッチンに行ってもう一杯コーヒーをもらうことにした。
コーヒーを淹れていると朝食を食べ終えた秋也が食器をさげに来て何故か私を見下ろす。
「なによ」
「桃ちっちゃくなったよな」
・・・・・・・・・・・・んなわけないだろっ!!
「秋也が成長しすぎたんでしょうが。昔はちっちゃくて可愛かったのに、いつの間にかこんなに大きくなって」
見上げなきゃ顔見えないもん。
「成長する前に桃が家に来なくなったんだろ。っかし、冬馬の執念に脱帽だな。お前、ストカーされなかったか?」
髪をかき回されてぐちゃぐちゃにされる。
・・・・・・・・・だから、冬馬のトコは平気で女にさわり過ぎなんだって。
諦めにも似た感情を溜息で逃しながら、その手を払った。
「秋也は随分と、生意気になったね。お前ってなによ。仮にも私のほうが年上だし、てか、冬馬のことそんな言い方しないの」
口の端だけ持ち上げて、秋也は笑う。なんか、すっごい馬鹿にされてるのは分かるンだけど、なんで馬鹿にされなきゃいけないのかが分からない。
「年上ねぇ。てか、冬馬より俺のほうが優しくするよ?一回試してみる?」
どこに話が飛んだのか分からず首を傾げる。
何を試すんだ?
スッとまだ腫れが残る頬を撫でられる。
「コレに、それらからコレ」
そのまま手を下ろして、あろうことか私のカットソーの首もとに指をかけるとそのまま自分のほうへ引っ張り上から覗きこんだ。
なにやってやがるっ!!
エロガキがっ!!
あまりの事にフリーズしてしまった私の胸元を顎をさすりながら眺める秋也。
「ほら、いやぁ、冬馬にSMの趣味があるとは思わなかった。桃Mだったわけ?それとも目覚めちゃった?てか、桃は胸でかいね」
私は落ち着こうと数を数える。
相手は秋也だし。
五、四、三、二・・・・・・っ!!
落ち着けるかっ!!
そのまま無言で、秋也の鳩尾に拳を叩き込んだ。
「ぐっ・・・・・・・・・」
と唸って秋也はその場にうずくまる。
「エロガキ、ふざけんな。これ冬馬がやったんじゃないし、私冬馬の彼女じゃないっつーの。ろくに事情も知らないくせに変な想像すんなっ!」
「ってぇ・・・・・・・・・。こんのっ」
ガシッとうずくまった秋也が私の足首を掴んだ。
げっ、怒ってる。
下から痛そうに眉をしかめて私を見上げる秋也の目に怒りが浮かんでいる。
イヤ、私悪くないからね。
被害にあったの私だから。
逆ギレ可笑しいよ?!
今の内に避難しとこうと思って、手を振り払おうとしても中々秋也の力が強くて振り払えない。
ヤバっ。
「ふざけろよっ。てめぇ、女のやる事じゃねぇだろ」
低く言われて、少しカチンと来た。
「わざわざ服引っ張って人の胸覗き見しといてなに言ってるのよ。そんくらいで済んで良かったでしょ?」
ギリギリと足首を掴む手に力が入れられ、痛さがじわじわと込み上げてくる。
女相手に力いっぱい握るって、あの夏樹さんの子供とは思えないんだけどっ!
「ふぅん、そう。秋也、分かってるよな?」
私の後ろから冷ややかな冬馬の声が聞こえてきた。
いつの間にっ!
後ろを振り向いて、ちょっとびっくり。
顔は笑ってるけど、目が笑ってないから。恐いよそれ。
冬馬を怒らすのはやめようと心に誓う。
高校生の時よりずっと迫力が増して恐いんだよ。
私の腰に手を回すと、秋也の手が私の足首を掴んでいることに気づいて、そのまま右足を秋也の手首に乗せた。
「ばっ!!冬馬っ!!やめろっ。痛てぇ!!」
「だから何?お前、いい加減にその女嫌い治せよ。桃を傷つけるような事するんじゃない」
静かに静かに氷のような冷たさで冬馬は言う。
比例して秋也の顔が青くなっていって、踏まれた手首が痛いのか、ものすごい形相だ。
「ほら、桃の足首を離せよ。お前俺に逆らっていいと思ってるわけ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・誰?この人。
冬馬が俺様になってるっ!!
俺様だよ?冬馬に一番遠い言葉だよ?
唖然として、冬馬を見上げると私の視線に気づいたのか私の目を見て優しく笑った。
「イヤな思いさせて、ごめんな?俺が代わりに痛い目合わせておくから、勘弁してやって?」
・・・・・・・・・・・イヤ、言葉も表情も優しいけど、内容と行動が全然優しくないからね?
「とっ、冬馬?あのっ、私がもう鳩尾に一発入れちゃったからもういいよ?」
「痛いっ!!冬馬痛いって。悪かった。俺が悪かったからっ!!」
自由になる左手でドンドン床を叩きながら秋也が怒鳴った。
「謝る相手が違うだろ」
なんか、秋也と話す時、ワンオクターブ声が低くなってないか?
意外な冬馬の一面い、驚きと共に首を傾げる。
昔は兄弟仲がとっても良かったのに、今はあんまりよくないのかな。
でも、勝手に入ってきて朝食食べてるくらいだから仲良しの気もするし。
「桃がお泊りしたんだって?!」
またもや、誰かがリビングに飛びこんで来た。
息を切らせて、キッチンに居る私たちのほうへやってくる。
顔を覗かせたその人に、私は目を輝かせた。
「ハルだっ!!」
信じられない。なんでハルがここに居るのっ!!
私大ファンなんだけどっ!!
アレ?今、私の名前呼んだ?
キッチンに顔を出したのは、15歳の時から頭角を現して今や押しも押されぬ若手俳優ナンバーワンのハルだった。
読んで頂きありがとうございます。




